Sランクギルドの主力メンバーやっていた少女が追放されたので、うちのパーティーに引き抜こうと思う

五月雨蛍

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第三十話 割れた大盾

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「グレイス!スケルトン・ナイトが討伐されたって本当か?」
 ギルド長とおぼしき壮年の男は俺たちの元に来ると、ジャックさんに気づいて軽く会釈をする。

「はい。こちらの方々が大型の魔石を持ってこられまして……大きさ的には、スケルトン・ナイトというのを否定できないのですが」
「他にも、証拠はある」
 アリオンのギルド長と受付が話を進める中、そう言って“割れた大盾”を出す。勿論、二欠片セットでだ。

「⁉︎」
「スケルトン・ナイトは大盾と巨剣を装備していると聞いたが、これで間違いないか?状況によっては、大盾を売ることも考えているんだが」
 “割れた大盾”見て身を強ばらせる二人に、間髪いれずにそう伝えた。

「……」
 暫くして我を取り戻したギルド長が大盾をまじまじと見つめる。周囲にいた冒険者たちも“割れた大盾”を見に来ようとしていたが、ジャックさんが一睨みした時点で近づいてくる者はいなくなった。

「──奥へ」
 暫くして、ギルド長は重々しく口を開き、俺たちも彼に続く。
 受付が残ったので、魔石はそのまま置いてきたが、“割れた大盾”だけは念のために回収してきた。

「先ず、スケルトン・ナイトの討伐報酬だが、すぐに四億も用意することはできない。少し待ってくれないか?」
 ギルド長は会議室の一室に入るなり、すまなさそうにそう言った。

「わかりました」
「そうか、助かる!それで、大盾の事だが……」
 俺が報酬の件を承諾すると、ギルド長の表情が晴れやかなものになる。

「残念ながら、このギルドでの支払いは厳しそうですね。他を当たるこ──」
 ギルド長の言葉に重ねてそう告げると、彼はわかりやすく青い顔をする。俺自身、こういう人間は嫌いではなかった。

「ま、待ってくれ!二億ガレス出す。その大盾を譲ってくれないか⁉︎」
 二億か……まぁ、悪い額ではないな。ギルドとしても、象徴シンボルとしての大盾が欲しいのだろう。

「この大盾は、一部が真金剛石で出来ているんです。別離させて宝石商にでも売ることにします……いや、知り合いの鍛冶屋スミスに譲るのも良いかも知れませんね」
 ただ、俺の欲しい額には届かなかったので、少し脅してみることにした。
 俺の言葉に、ギルド長の顔が青を通り越して真っ白になる。

「二億五千、即金で二億五千万ガレス出すから、その大盾を譲ってくれないか⁉︎」
「……わかりました。但し条件として、魔石の鑑定額を即金でお願いします」
 俺の言葉に、ギルド長は血の気を取り戻すものの、先の魔石の事を思い出し、再び顔が青くなる。
 まぁ、あの魔石は黒色変異種限定の黒魔石だし、ギルド長の気持ちがわからないでもない。
 合算すれば普通にスケルトン・ナイトの討伐報酬を越えるだろうしな。

 ギルド長には少し同情するが、ジャックさんたちともずっと一緒にいるわけでもないので、ここで魔石を捌いておきたかった。なので、これは最低条件だ。
 ギルド長が大盾だけ買い取って魔石の買取をしてくれない可能性もあったからな。
 間違えても、そんなことをさせるつもりはないが。

「待ってくれ、さっき魔石を見たが、あれと大盾を合わせたらスケルトン・ナイトの討伐報酬を越えてしまう!」
「そうですね。では、残念ですが……」
 ギルド長の目尻にうっすらと涙が溜まるものの、彼は必死に金をどう工面しようかと考えているようだった。

「……少し、時間をくれないか?」
「わかりました。ただ、俺たちも早々にこの町を去るので、今日中には回答を下さい」
「わかった……」
 それだけ言うと、ギルド長は少し肩を落として部屋を出ていった。

 実のところ、スケルトン・ナイトの上位種たちの情報もこのギルドで売ろうと考えていたが、完全にタイミングを逃してしまった。
 それについては、スケルトン・ナイトの討伐報酬を受け取ったときに相談することにしよう。

「何て言うか、えげつねぇことするな」
 ギルド長が出ていった後、フレディが少し呆れ気味にそう漏らす。

「別に、冒険者らしい取引をしたまでだ」
 スケルトン・ナイトの報酬を受け取れなくても、これでジャックさんたちの取り分はまかなえるからな。

「でも、ルシェフさんがいつもの調子に戻ったみたいで良かった」
「……そうだな」
 レオナの言葉に、いつの間にかモヤモヤした感覚もなくなっていることに気がつく。今思い出すと、朝食の頃からだろうか。

「それで、何か依頼は受けるのか?」
 入り口の扉に手をかけたところで、ジャックさんにそう尋ねられた。

「いえ、適当な依頼もなかったので」
「そうか」

「ルシェフ、それなら俺の方に付き合ってもらおうか」
 俺たちの話を聞いていたフレディに声をかけられる。声色から、彼の意図を察することができた。

「……わかった」
 それからすぐにギルドを出た俺たちは、一度宿に戻ることにする。

「……」
「ニコ?」
 足音も立てずに先頭を歩いていたニコが、何かに気づいて立ち止まる。
 彼女の視線を追うと、一件の屋台が目に入った。あれは、アイスクリーム──いや、あの無駄に凝ったデコレーションは、ロイヤルアイスクリームか。

 店頭には、雪だるまをモチーフにしたものから、グランパスに似せたものまで、多種多様なアイスのイラストが描かれたメニュー表が掲げられていた。

「買ってくか?」
「うん」
 屋台の元へと向かい、ロイヤルアイスクリームを人数分買う。留守番している二人が騒ぎそうなので、二人の分も忘れずに買っておいた。

 宿で二人と合流した後は、フレディとジャックさんの三人で近くの森へと来ていた。

「……」
 三人で森を歩く中、周囲を少し重い空気が包む。勿論、三人の間に会話はない。別に、仲が悪いからでも何でもなく、会話がなくなる位にはフレディが真剣だっただけだ。

 女性陣は買い物に出掛けるそうだ。
 アメリアとオリビアの外出は避けたかったが、あまり宿に詰めさせておくと後が怖いので、今回は止めなかった。

「この辺りで良いか?」
「あぁ」
 俺の言葉に、フレディが重々しく頷く。

「好きな方選べ」
「……」
 俺が【四次元空間】から取り出した二本の木剣を見せると、フレディは手近にあった方の木剣を取る。

「魔法と竜化、能力の使用は禁止。使えるのは魔力運用での強化までだ。後は何かあるか?」
「それで構わない」
 フレディは、それだけ言うと三歩下がり、木剣を素振りして感触を確かめる。

「二人とも、準備は良いか?」
「はい」
 二人とも重なるタイミングでそう答える。

「始め」
 俺たちが頷いた事を確認したジャックさんが、淡白な声でそう告げた。
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