Sランクギルドの主力メンバーやっていた少女が追放されたので、うちのパーティーに引き抜こうと思う

五月雨蛍

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第四十五話 魔剣

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「ブラウンさん聞いてるんですか⁉︎」
「聞いてる聞いてる」
 憤慨するオリビアの頭を軽く撫でて宥める。
 まだ飲み始めてから二十分ほどだったが、いつもよりオリビアの酔いが回るのが早いように見える。今日は色々ありすぎたからなのか、それとも酒の質が良かったのか。

 料理も順次運ばれてきており、初めは酒のつまみ程度しかなかったテーブルには、古今東西様々な料理が並べられていた。
 ニコの故郷は東の国だし、俺やアメリア、オリビアの故郷は西の国で、レオナは北の国、カールは中央らしいので、それぞれに合わせようとしたらこうなるのは目に見えていたが。

 運んできたスタッフが「何か食べたいものがありましたら、お気軽にお声がけ下さい」とも言っていたし、これだけの種類を作るとなると、腕が良いというだけでは説明がつかない。
 恐らく、国で雇われたシェフもこの店に派遣されてきているのだろう。

 カールは初め何かと理由をつけて飲酒を避けようとしていたが、最後にはキャロルに古代のワインを注がれてしまい、断るに断れなくなっていた。

 横目に見ると、ニコの尻尾がゆったりと椅子の後ろから顔を覗かせては消えるのを繰り返している。
 ニコの隣に座るアメリアがそれに気づいてそわそわとしているが、慣れたのかニコがそれを気にする様子もなかった。

「──それで、ウィルに作らせた魔剣についてですが、今は誰の手に?」
 豪勢な料理が並ぼうが、古代のワインを出されようが、ここに来た目的を忘れたりするつもりはない。
 その魔剣の持ち主こそ、前世で神器に見染められた人物と見て間違いない筈だ。
 実際、あの魔剣は神器の使い手でなくても使えただろうが、性能の高い武器というだけであれば癖の強い性能を持つ神器に拘る必要はないからな。

「殆どは中央の国に譲ってあります。余程優秀なスカウトがいたのか、向こうは人材に恵まれているようでしたので」
 何か思うところがあるのか、王女は笑みを崩さないまま手に持つグラスをゆったりと回し、揺れる赤ワインを見つめる。

「殆ど、ということは残りの魔剣は手元にあるのですか?」
「はい。神導カリドヴールに関しては、私の手元にあります」
 何やら含みのある言い方だ。キャロル自身が何かを隠そうとしているのか、そもそも魔剣の事について話すつもりがないのか。
 キャロルの目的がカールにあることは知っていたが、魔剣の話をするつもりがないのならカールだけでなく俺たちまで呼んだ理由は別にあるのだろうか?

「そんな顔をしないで下さい。今の私からは言えるのは一つだけです」
 一度目を閉じた王女はため息を吐くように呼吸を整えた。

「来るべき決戦に向け、必要な人材の確保はできています。なので、貴方方だけで戦う必要はありません。──貴方方だけで全てを背負う必要もないのです」
 そう言って俺たち一人一人を見つめるキャロルの目には、普段彼女が見せることのない力強さがあった。
 ──彼女なりの覚悟の表れ、なのだろう。

 キャロルの宣言にキョトンとするアメリアを他所に、カールだけは何か言いたげに彼女を見つめ返す。二人の関係は未だにわからないが、何か相容れない事情があるのだろう。

「ところで、魔剣の行き先を尋ねるなら、私よりも適任がいるのでは──?」
 キャロルの意味ありげな視線の先には、彼女から逃げるように視線を伏せてパスタをフォークで巻くカールの姿が。
 俺たちの視線に気づいてはいるようだったが、彼は頑なに視線を合わせようとはしなかった。

「……カール」
「はい」
 顔を上げたカールがぎこちなくはにかむ。

「魔剣の行き先に心当たりはないか?」
「魔剣、ですか……?いえ、私には何のことやら」
 薄い笑みを浮かべてとぼけるカールを見て、彼も神器について話す気がないことを理解した。
 魔剣の話を聞かないのなら、俺がこの場にいる意味も薄いだろう。

「──アクワグラシェリア。この名前にも聞き覚えがありませんか?」
「っ⁉︎」
 何の前触れもなく王女から発せられた神器の名前に、思わず肉を刺したフォークを落としそうになる。

 【アクワグラシェリア】。前世で俺の手に渡る前は、幼少期に同じ師を仰いだ幼馴染みの少女が俺と敵対する際に使っていた神器だ。

 カールを睨むと、彼も軽薄な薄ら笑いをやめた。もう誤魔化すことはできないと理解したのだろう。
 彼は刹那の間俺を見つめた後、キャロルに憎悪を孕む視線を送る。それに気づいたアドルフが心底悪そうな笑みを浮かべ、好戦的な“圧”を放っていた。

「──本当に何も知らないんだな?」
「……はい。私は何も」
 少し顔を伏せたカールは、感情を押し殺したように平坦な声で呟いた。

「ルシェフ。貴方があの幼馴染みの彼女に固執する気持ちはわからなくはないですが、今はそれ以上の詮索はやめておいた方がいいでしょう」
 ……どうやら、キャロルも彼女のことを知っているようだ。

「王女、もし何か知って──」
「待ってください。──幼馴染みって誰のことですか?」
 肩をぐい、と掴まれて振り向くと、無表情で口元だけ笑みを使ったオリビア──いや、セレイナが見つめてくる。心なしか、目のハイライトが消えているように見えた。

「前にも言ってたよね?私もその話を詳しく聞きたいかな」
 先程までうつらうつらとうたた寝をしていたレオナも、屈託のない笑みを向けてくる。
 酔いからかほんのりと頬の赤い彼女の幼なげな表情は可愛らしく見えたが、何故か彼女がドス黒いオーラを纏っているように見えた。

「──」
 思わぬ伏兵に、少し顔を引き攣らせる。
 答えを間違えれば、この店くらいは潰れかねないな……。
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