Sランクギルドの主力メンバーやっていた少女が追放されたので、うちのパーティーに引き抜こうと思う

五月雨蛍

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第五十五話 予期せぬ再会

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 翌朝、俺たちはアリオンのギルドにいた。理由は教えてもらえなかったが、剛から必ずここへ来るように言われていたからだ。

 《青薔薇の女王》の討伐証明に関しても昨日剛に預けるつもりでいたが、彼からそれは王都で直接渡すようにとも言われていた。

「お兄ちゃん──?」
 聞き覚えのある声に振り返ると、そこには皮鎧に身を包み、腰にレイピアを差した少女の姿があった。

 暫く会わないうちに見た目は大分見違えたが、少女は昔と変わらない茶髪と胡桃色の瞳で俺を見つめてくる。
 見た目こそ変われど、甘えているようにも聞こえる彼女の朗らかな声を忘れられるはずがなかった。

「アルマ……どうして君がギルドに……」
 妹であるアルマにそう尋ねる。確かに彼女は冒険者に憧れている節はあったが、それでも、年齢的にはまだ冒険者として活動を始めるには早いのではないかという懸念があった。

「どうしてって、冒険者がギルドに来たらいけないの?」
 アルマが心底不思議そうに首を傾げる。
 俺としては色々と言いたいことはあったが、今はアルマと普通に話せているだけでも満足だった。

「冒険者になってから、どのくらい経ったんだ?」
「半年くらいかな。心配しなくても良いよ。リディアやゴランもいるんだから」
 俺が心配しているのを察してか、アルマが少し苦笑しながらもそう言ってくれた。

 ──リディア?

「リディアって、もしかして……」
「うん。昔よく遊んだでしょ?」
「あぁ。覚えている。それでギルドへは何しに来たんだ?」
「ギルドに用事というか、お兄ちゃんに会いに来たんだよね。昨日、鈴木剛って人に会って、ここに来れば、家出したお兄ちゃんに会えるからって」
「そうなのか」
 やはり、剛──いやキャロルの手引きらしい。

「──ところで、ゴランって言うのは誰のことなんだ?」
 お兄ちゃんとしては、少しその辺りの事情を詳しく聞いておきたいな。間違えても女性名ではないだろうし、状況によっては、その男とは二人でをする必要があるかもしれないから。

「知らないのも無理ないよ。私も三年前に知り合ったばかりだし。因みに私の彼氏でもあるから」
「……そうか。アルマもそういう年頃だもんな」
 おどけるように話すアルマに、なんとか平静を装ってそう答える。
 ──どうやら、彼とはじっくりお話をする必要がありそうだな。

「二人もそろそろ来るんじゃ──あ、あそこかな?おーい!」
 アルマが少し離れた場所にいる男女に大手を振る。

「──⁉︎下がれっ!」
 二人の存在に気づくのと同時にアルマを抱き抱え、後ろへと飛び下がる。オリビアだけは俺と同時に後退しており、彼女が前世で愛用していた杖を模した魔剣を取り出していた。

 アルマを下ろし、俺も【四次元空間】からダインスレイヴを取り出す。
 ただならぬ俺たちの雰囲気に、他のメンバーも近づいてくる二人から距離をとってくれた。

「どうかしたの?」
 ギルド内にいる冒険者からの視線に晒されるなか、事情を知らないアメリアがそう尋ねてきた。

「俺が聞きたいくらいだ……!」
 近づいてくる二人──そのうちの一人である男を睨みながら聖剣を構える。

 見た目と気配だけなら一般の冒険者に相違ない。容姿も違えば、纏う気配さえも変わっていたが、それでも俺が奴の正体に気づかない筈がなかった。
 どれだけ姿形が変わろうと、どれだけの時が過ぎようと、あの日の誓いが、呪われた俺の魂が、奴の存在を見紛う筈がなかった。

「──魔王ゲオギオス……!」
「魔王……」
 不穏な単語にレオナが息を呑む。ニコも事情はわかっていないだろうが、迫る危機に際し、レオナの前に出てナイフを構えた。

 俺たちの反応を見たゲオギオスは、困った様子でポリポリと頬を掻くと、二言ほど隣の女性と言葉を交わし、その場に立ち止まった。

 女性だけはゆったりとこちらへ歩み寄ってくる。彼女も暫く会わない内に大分見違えたが、喪服のような修道服から見える白雪のような白い肌も、日の光に当てられて煌めく銀の長髪もそのままだった。

「久しぶり。元気にしてた?」
 幼馴染みリディアが真っ直ぐに俺を見つめて微笑む。

「あ、あぁ」
 昔はアクティブな少女という印象だったが、数年の内に別人と疑う程綺麗になっていた幼馴染みに対し、動揺を隠すことができない。

「イタッ」
 刹那の間リディアに見惚れていると、頬を膨らませたレオナに肘で脇腹をつつかれた。

「ゴランから伝言。悪目立ちするから、場所を変えましょうって」
「……わかった」
 ギルド近くでの戦闘は避けたかったし、その提案には賛成だ。
 彼とは別の意味で話し合いが必要だしな。

 あくまでも武器はそのまま、全員でゲオギオスの元へと向かう。

「ゴラン・ザスタレスです。二人とは、パーティーを組ませてもらっています」
 ゴランと名乗った男は、筋肉質な見た目とは裏腹に、まるで王国騎士かのように丁寧口調で、爽やかな笑みと共に挨拶をした。

 見た目だけなら好青年に見えなくもないが、信用はできない。腰に剣を刺してはいるが、彼の前世を考えれば魔法職に徹するのが板だ。見た目に騙されるつもりも、少し離れたこの距離から警戒を解くつもりもなかった。

「レオル・アリオンだ。名前にくらい聞き覚えはないか?」
「はい、聞いていますよ。耳にタコが出来る程には。──ですが、ぜひ貴方には今の名前をお教え願いたい。少し宿命さだめが違っていれば、きっと貴方とは良友となれていた筈ですから」
 彼の語り口はゲオギオス特有の重責を担う者の重みなある低い声とは違い、何処か芝居がかったもののようにも聞こえた。

「……ルシェフ・ブラウンだ」
 アルマのいる手前、一応名前だけは告げておく。中身が誰であれ、奴は半年間アルマを支えたパーティーメンバーでもあるからだ。

「運命の悪戯とはいえ、こうして話し合いの機会を得られたのです。──どうでしょう?何処かに腰を落ち着けてでも」
 ゲオギオス──ゴランから戦う意思は感じない。今はどうあれ、彼が前世の記憶を保持している以上、街に被害を出さないためにも無闇な争いは避けるべきか……。

「──アルマ、この後の用事とかあるのか?」
「ううん、特には」
 俺の言葉に、アルマは少し思考を巡らせてからそう答えてくれた。

「そうか」
 用事のないと言ったアルマたちと共に荷馬車組合へと向かう。
 俺たちがこのまま実家に帰省することを話したら、三人もついてくることになったからだ。

 ゴランとの話し合いに関しては、彼の希望で夜に酒でも飲みながらということで落ち着いた。
 アルマ辺りは俺とゴランの関係を不審に思っているようだったが、それもまた後日話し合いが終わってから説明することを約束していた。

 荷馬車組合に着くと、丁度アルフィード行きの商隊を見つけることが出来たため、その馬車に乗せてもらう体で話を進める。

 そのときアルフィードまでのルートを聞いてみたら、迂回はせずに森の中を通るとのことだった。
 以前森で俺たちの同行していた商隊が襲撃を受けたことは知っているようだったが、それ以降特にそういった話を聞かないため、問題がないと判断していたようだ。

 それでも、一商隊にしては少し護衛の数が多いように見えることから、この問題を蔑ろにしているわけではないことが窺える。
 まぁ、あのレベルの魔物が出てこようと、これだけのメンバーが揃っていれば問題にはならないだろうが。

「そういえば、オリビアさんって、《西の国の悪魔》と巨大な黒竜に乗って何処かに向かって行ったって新聞で見たんですけど……?」
 馬車に揺られること二十分程。日も大分高くなり、初めてオリビアに会ったときの興奮がある程度冷めたアルマが、不思議そうにそう尋ねる。

 それにしても、彼女の不思議そうに首を傾げる姿にはえも言えない可愛さがあるな。
 思わず撫でたくなる衝動に駆られるものの、そこまで子供じゃないと怒られてしまいそうなので、やりはしないが。

「黒竜の方とはもう別れましたが、《西の国の悪魔》の方なら、横にいますよ?」
「──え」
 オリビアの言葉に、横に目をやったアルマの顔が少し青くなる。

「初めまして」
 言いながら、ようやく自己紹介の叶ったアメリアが柔和に微笑む。彼女はずっとアルマに興味を示していたが、中々話すタイミングを掴み損ねているようだったからな。

「は、初めまして……」
 微笑むアメリアに対し、緊張からかガチガチになったアルマが、アメリアの出した手を辿々しくとった。

「ルシェフ、聞いてるの?」
 先ほどからひっきりなしに近況を話したり、俺たちの様子を聞いたりと忙しそうなリディアが、不満そうにそう尋ねてきた。

「あぁ、聞いてるよ」
 リディアの言葉に平坦な声でそう返す。俺としても、多少年の離れた妹だけに、色々と心配になることもあるんだ。このくらいは許してくれ。

「なら、良いけど……」
 尚も訝しむようなリディアの視線にさらされるものの、言葉通り、そこまで気にしていないかのようにリディアが話を続けた。

 やたらと絡んでくるリディアの相手をしながら馬車に揺られること一時間、森と町の間を仕切る門の近くで一度休憩をとることになった。

「ルシェフさん、お昼に行こ」
 馬車が止まるなり、無表情のレオナが俺の腕を引っ張る。いつものレオナらしくない行動に少し戸惑いながらも、彼女と共に馬車を降りた。

 オリビアに奢りだからと伝えて好きな店を選んでもらい、アルマたちを加えた八人で近くのレストランに入ることにする。オリビアの見立てなら、まず間違いはないだろうからな。
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