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第五十九話 帰省2
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「飲み比べですか⁉︎」
一段落したのか、戻ってきたオリビアが多分に喜色を含んだ声でそう言う。
「おっ、嬢ちゃんも飲める口かい?」
オリビアの返答を待つこともせず、機嫌の良さそうな親父が来客用のグラスをリキュールで満たし、オリビアに差し出した。
「いただきます!」
「良い飲みっぷりだねぇ!」
笑顔で答えたオリビアが、一思いにリキュールを煽ると、親父が親指を立てた。
オリビアは、酔うと少し面倒になるので、なるべく煽てるのは控えてもらいたかったが、今の親父にそれを言っても意味はないだろう。
「お待たせ~」
母が色取り取りの野菜が乗ったピザを大皿に乗せて運んでくる。
アルマとレオナもそれに続き、他にも運ぶものがありそうだったので、俺も手伝いに席を立つことにした。
「サンクレイア」
一通り食器も運び終わり、全員席に着いたところで食前の挨拶を済ませる。
「どうぞ」
「ありがとう」
何故かいきなり切り分けたピザをオリビアに渡される。
「どう、ですか?」
俺がピザを一口食べると、オリビアが期待に満ちた表情でそう尋ねてきた。
このピザに使われていた野菜が少しワイルドな斬られ方をしていたところと合わせて考えるに、このピザの調理にオリビアも携わっていたのだろう。
「美味しいよ」
「なら良かったです!」
オリビアは無邪気な笑みを浮かべると、自分でもピザを一欠片取ってかぶりついた。
「ルシェフさん」
オリビアと話していたのが気に入らなかったのか、ほろ酔いになったレオナが、甘えるように肩に手を回してくる。
ここ最近気づいたのだが、レオナは俺が他の人間と話しているときに割り込んでくることが多い。嫉妬なのか何なのか、どうやら彼女にはそういう節があるようだ。
レオナにそれとなく飲みすぎないように注意しておき、俺もリキュールを煽った。
「お邪魔します」
飲み始めてから暫く経ち、レオナが寝落ちした辺りでリディアが家を訪ねてきた。
「実家は良かったのか?」
「うん。簡単に挨拶もしてきたし」
俺の言葉に、リディアは少しムッとしながらもそう言った。表情の小さな変化ではあるし、声色もいつも通りではあったが、それでもわかってしまうのは幼少期の付き合いがあったからだろう。
少し、俺も選んだ言葉が悪かったかもしれないと反省する。
「ガイアさん」
「おっ、ありがとう!」
リディアが親父に何かが入った袋を渡し、親父が嬉々としてそれを受けとる。
──親父に渡したのなら、どうせ中身は酒だ。
「イデアさん。母から、これを持って行くようにと言われまして」
「まぁ、そんな気を利かせなくても良いのに」
口ではそう言いながらも、母は躊躇うことなく何かを受け取った。中身は恐らく何らかの料理だろう。
「リディアちゃんは、夕食は食べてきた?」
「はい、少しだけ」
母の言葉に、リディアが少し悪い笑みを浮かべてそう言った。
どうやら、強かになったのはアルマだけではないようだ。
「良かったら、家で食ってきな!」
「ありがとうございます」
先と同様機嫌の良い親父に促され、リディアが部屋に入ってくる。
「もう、寝ちゃってるんだね……」
レオナの隣に座ったリディアが、何とも言えない表情でそう漏らす。
「あぁ。酒にはあまり強くないからな」
「ルシェフたちは、この先どうするの?」
自身のピザを小さな噛り跡をつけたリディアが、何でもないようにそう聞いてきた。
「一回王都に行って、その後南の国に行く予定だ」
「そうなんだ」
「何で王都に?」
俺たちの話を横で聞いていたアルマが不思議そうにそう尋ねてくる。
「ちょっと、野暮用でな。ついてくるか?」
「良いですね、一緒に行きませんか?」
何か思いついた感じのオリビアがそう続け、アルマに手を差し出す。
オリビア的には、俺とアルマが少しでも一緒にいられるようにしたいのだろう。
「うーん……路銀も稼がないといけないから……」
オリビアからの誘いだし、即決で受けるのかと思っていたが、そういうわけでもないようだ。
しっかりパーティーのことも考えているらしい。
「良いんじゃないですか?王都なら、それなりに稼げるだろうし、運が良ければ、荷馬車の護衛を受けられるかもしれないので」
アルマが考えていたところで、ゴランもそう切り出した。
「なら、良いのかなぁ……」
「私も、ついていきたいかな」
「じゃあ、ご一緒させていただきますね!」
リディアの言葉に、アルマも決心がついたのか、笑みを浮かべてオリビアの手をとった。
「ルシェフ~王都に行くんなら、また何か良い酒頼むわぁ」
酔いが回り、机を挟んだ向こうで横になっていた親父が、申し訳程度に片手だけあげる。
「わかったから、そのまま寝とけ」
「お~」
俺の言葉に、親父は気だるそうな声でそう返し、唯一見えていた彼の手がテーブルの向かいに消えた。
「……」
翌日目を覚ますと、風邪を引かないようにか、テーブルを囲んで寝ている人間には大きめの毛布が掛けられていることに気がついた。状況から察するに、昨日は飲んだまま寝てしまったみたいだ。
「よぅ、ルシェフ。やっと起きたのか」
遠くから、小気味良くまな板と包丁のあたる音が聞こえる。どうやら、母はもう起き出しているようで、俺が目を覚ましたことに気づいた親父が、嬉しそうに酒を煽った。
「親父、仕事あるのに、朝から飲んでて良いのか?」
「別に、酔ったままでも畑の世話くらいは出来るさ。本格的な仕事は午後にやれば良い」
「なら、良いんだが……」
親父も相変わらずだな……。
「おはよう……」
目を覚ましたレオナが寝ぼけ眼を擦る。彼女は一番初めに寝ていたので、起きたのも早かった。
「体調は大丈夫か?」
「……うん」
寝起きだからか、少しぼおっとしているレオナが頷く。
「じゃあ、洗面台に案内するから、顔洗いに行こう」
「わかった」
レオナと連れ立ち、洗面台へと向かう。まだ少し彼女の足取りがおぼつかなかったので、移動中は彼女の手を引いていた。
「そうだ。一先ず王都までだが、アルマたちがついてくることになった」
「そうなんだ」
言いながら、レオナが小さく伸びをする。
洗面台に着くと、近くの窓から薪割りをするゴランの姿を確認することが出来た。
親父のやつ、ゴランを働かせておいてよく飲めるな……。
──いや、もしかしたら、ゴランが働いているさえ知らない可能性もあるのか……。
「ちょっと、ゴランの方に行ってくる」
「うん」
レオナと別れ、家を出てゴランのいる薪割り場に向かう。
「おはようございます」
近づく俺の姿を確認したゴランが、爽やかな笑みを浮かべた。これで前世が三日もかけずに一小隊で国の一つを落とした魔王だなんて誰も信じまい。
「あぁ、おはよう。ゴラン、親父も飲んでるし、別に薪割りなんて良いぞ」
「すいません、何かしてないと落ち着かなかったので、イデアさんに無理言ってやらせてもらったんです」
「……もうすぐ朝食になる。そこの薪が終わったら、戻るぞ」
どこまでも紳士な対応をするゴランに、どう返そうかと一瞬戸惑ってしまう。
「ありがとうございます」
「それは、こっちの台詞だ」
これ以上、ゴランだけを働かせるのも嫌だったので、四人の俺とゴランで一気に終わらせることにする。
ゴランが、「わざわざ能力まで使わなくても……」と言っていたが、朝食に遅れるとイデアがあり得ないほどキレると伝えたら、それ以上は何も言わなかった。
「……はよ」
「あぁ、おはよう」
割り終わった薪を所定の場所に運び、ゴランと二人で家に戻ったところで、眠そうにうつらうつらとしているニコに声をかけられた。
その横にはアメリアの姿もある。二人で何処か出かける気だったのだろうか?
「アメリア、どこに行くんだ?」
「宿のチェックアウトをしてこようかと思って」
「そうか」
何だかんだ、全員家に泊まっていっていたから、その必要があるのか。
「朝食には遅れるなよ!」
「わかったー!」
遠ざかるアメリアに伝えると、彼女は大きく手を振った。
一段落したのか、戻ってきたオリビアが多分に喜色を含んだ声でそう言う。
「おっ、嬢ちゃんも飲める口かい?」
オリビアの返答を待つこともせず、機嫌の良さそうな親父が来客用のグラスをリキュールで満たし、オリビアに差し出した。
「いただきます!」
「良い飲みっぷりだねぇ!」
笑顔で答えたオリビアが、一思いにリキュールを煽ると、親父が親指を立てた。
オリビアは、酔うと少し面倒になるので、なるべく煽てるのは控えてもらいたかったが、今の親父にそれを言っても意味はないだろう。
「お待たせ~」
母が色取り取りの野菜が乗ったピザを大皿に乗せて運んでくる。
アルマとレオナもそれに続き、他にも運ぶものがありそうだったので、俺も手伝いに席を立つことにした。
「サンクレイア」
一通り食器も運び終わり、全員席に着いたところで食前の挨拶を済ませる。
「どうぞ」
「ありがとう」
何故かいきなり切り分けたピザをオリビアに渡される。
「どう、ですか?」
俺がピザを一口食べると、オリビアが期待に満ちた表情でそう尋ねてきた。
このピザに使われていた野菜が少しワイルドな斬られ方をしていたところと合わせて考えるに、このピザの調理にオリビアも携わっていたのだろう。
「美味しいよ」
「なら良かったです!」
オリビアは無邪気な笑みを浮かべると、自分でもピザを一欠片取ってかぶりついた。
「ルシェフさん」
オリビアと話していたのが気に入らなかったのか、ほろ酔いになったレオナが、甘えるように肩に手を回してくる。
ここ最近気づいたのだが、レオナは俺が他の人間と話しているときに割り込んでくることが多い。嫉妬なのか何なのか、どうやら彼女にはそういう節があるようだ。
レオナにそれとなく飲みすぎないように注意しておき、俺もリキュールを煽った。
「お邪魔します」
飲み始めてから暫く経ち、レオナが寝落ちした辺りでリディアが家を訪ねてきた。
「実家は良かったのか?」
「うん。簡単に挨拶もしてきたし」
俺の言葉に、リディアは少しムッとしながらもそう言った。表情の小さな変化ではあるし、声色もいつも通りではあったが、それでもわかってしまうのは幼少期の付き合いがあったからだろう。
少し、俺も選んだ言葉が悪かったかもしれないと反省する。
「ガイアさん」
「おっ、ありがとう!」
リディアが親父に何かが入った袋を渡し、親父が嬉々としてそれを受けとる。
──親父に渡したのなら、どうせ中身は酒だ。
「イデアさん。母から、これを持って行くようにと言われまして」
「まぁ、そんな気を利かせなくても良いのに」
口ではそう言いながらも、母は躊躇うことなく何かを受け取った。中身は恐らく何らかの料理だろう。
「リディアちゃんは、夕食は食べてきた?」
「はい、少しだけ」
母の言葉に、リディアが少し悪い笑みを浮かべてそう言った。
どうやら、強かになったのはアルマだけではないようだ。
「良かったら、家で食ってきな!」
「ありがとうございます」
先と同様機嫌の良い親父に促され、リディアが部屋に入ってくる。
「もう、寝ちゃってるんだね……」
レオナの隣に座ったリディアが、何とも言えない表情でそう漏らす。
「あぁ。酒にはあまり強くないからな」
「ルシェフたちは、この先どうするの?」
自身のピザを小さな噛り跡をつけたリディアが、何でもないようにそう聞いてきた。
「一回王都に行って、その後南の国に行く予定だ」
「そうなんだ」
「何で王都に?」
俺たちの話を横で聞いていたアルマが不思議そうにそう尋ねてくる。
「ちょっと、野暮用でな。ついてくるか?」
「良いですね、一緒に行きませんか?」
何か思いついた感じのオリビアがそう続け、アルマに手を差し出す。
オリビア的には、俺とアルマが少しでも一緒にいられるようにしたいのだろう。
「うーん……路銀も稼がないといけないから……」
オリビアからの誘いだし、即決で受けるのかと思っていたが、そういうわけでもないようだ。
しっかりパーティーのことも考えているらしい。
「良いんじゃないですか?王都なら、それなりに稼げるだろうし、運が良ければ、荷馬車の護衛を受けられるかもしれないので」
アルマが考えていたところで、ゴランもそう切り出した。
「なら、良いのかなぁ……」
「私も、ついていきたいかな」
「じゃあ、ご一緒させていただきますね!」
リディアの言葉に、アルマも決心がついたのか、笑みを浮かべてオリビアの手をとった。
「ルシェフ~王都に行くんなら、また何か良い酒頼むわぁ」
酔いが回り、机を挟んだ向こうで横になっていた親父が、申し訳程度に片手だけあげる。
「わかったから、そのまま寝とけ」
「お~」
俺の言葉に、親父は気だるそうな声でそう返し、唯一見えていた彼の手がテーブルの向かいに消えた。
「……」
翌日目を覚ますと、風邪を引かないようにか、テーブルを囲んで寝ている人間には大きめの毛布が掛けられていることに気がついた。状況から察するに、昨日は飲んだまま寝てしまったみたいだ。
「よぅ、ルシェフ。やっと起きたのか」
遠くから、小気味良くまな板と包丁のあたる音が聞こえる。どうやら、母はもう起き出しているようで、俺が目を覚ましたことに気づいた親父が、嬉しそうに酒を煽った。
「親父、仕事あるのに、朝から飲んでて良いのか?」
「別に、酔ったままでも畑の世話くらいは出来るさ。本格的な仕事は午後にやれば良い」
「なら、良いんだが……」
親父も相変わらずだな……。
「おはよう……」
目を覚ましたレオナが寝ぼけ眼を擦る。彼女は一番初めに寝ていたので、起きたのも早かった。
「体調は大丈夫か?」
「……うん」
寝起きだからか、少しぼおっとしているレオナが頷く。
「じゃあ、洗面台に案内するから、顔洗いに行こう」
「わかった」
レオナと連れ立ち、洗面台へと向かう。まだ少し彼女の足取りがおぼつかなかったので、移動中は彼女の手を引いていた。
「そうだ。一先ず王都までだが、アルマたちがついてくることになった」
「そうなんだ」
言いながら、レオナが小さく伸びをする。
洗面台に着くと、近くの窓から薪割りをするゴランの姿を確認することが出来た。
親父のやつ、ゴランを働かせておいてよく飲めるな……。
──いや、もしかしたら、ゴランが働いているさえ知らない可能性もあるのか……。
「ちょっと、ゴランの方に行ってくる」
「うん」
レオナと別れ、家を出てゴランのいる薪割り場に向かう。
「おはようございます」
近づく俺の姿を確認したゴランが、爽やかな笑みを浮かべた。これで前世が三日もかけずに一小隊で国の一つを落とした魔王だなんて誰も信じまい。
「あぁ、おはよう。ゴラン、親父も飲んでるし、別に薪割りなんて良いぞ」
「すいません、何かしてないと落ち着かなかったので、イデアさんに無理言ってやらせてもらったんです」
「……もうすぐ朝食になる。そこの薪が終わったら、戻るぞ」
どこまでも紳士な対応をするゴランに、どう返そうかと一瞬戸惑ってしまう。
「ありがとうございます」
「それは、こっちの台詞だ」
これ以上、ゴランだけを働かせるのも嫌だったので、四人の俺とゴランで一気に終わらせることにする。
ゴランが、「わざわざ能力まで使わなくても……」と言っていたが、朝食に遅れるとイデアがあり得ないほどキレると伝えたら、それ以上は何も言わなかった。
「……はよ」
「あぁ、おはよう」
割り終わった薪を所定の場所に運び、ゴランと二人で家に戻ったところで、眠そうにうつらうつらとしているニコに声をかけられた。
その横にはアメリアの姿もある。二人で何処か出かける気だったのだろうか?
「アメリア、どこに行くんだ?」
「宿のチェックアウトをしてこようかと思って」
「そうか」
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