Sランクギルドの主力メンバーやっていた少女が追放されたので、うちのパーティーに引き抜こうと思う

五月雨蛍

文字の大きさ
66 / 78

第六十五話 迷路

しおりを挟む
 二組に別れて探索をするといっても、索敵で互いの位置は確認できる状態だ。

 俺とオリビアの索敵があるため、蝙蝠の奇襲に関しては万全の態勢で迎え撃つことが出来たが、この階層からは、索敵にかからない敵が現れていた。

 仮に、ゴーストと名づけたその敵は、人型の半透明な肉体を持ち、索敵にかかることなく忍び寄ってくる。
 物理系の攻撃は一切効かず、倒すのには魔法を使うしかない。
 うちにはオリビアがいたため難なくゴーストの対処が出来ていたが、向こうは大丈夫だろうか?

「اريد ان اعيش!」
 曲がり角から奇襲気味に飛び出してきたゴブリンを一太刀で屠る。
 ゴブリンもそうだが、この階層からはさらに魔物の種類が増えてきていた。

 能力の一部使用禁止に種類の多い魔物、そして小道や曲がり角の多いこの地形は、待ち伏せや奇襲に適している。
 本当、良く作られてるな……。このダンジョンを作った存在の性格の良さが滲み出ているようだ。

「……」
 ダンジョンの中を無言で歩く。
 こういう時は、オリビアやアルマ辺りが何か話してそうだったが、如何せん奇襲を好む敵が多いため、オリビアは索敵に集中していた。

 アルマに関してはゴーストが苦手なようで、目尻にうっすらと涙を溜めながら、何度も後ろを振り返ったりと挙動不審に進んでおり、そのお陰でゴーストの早期発見も出来ていたが、少し可哀想ではあった。

「また、別れ道ですか……」
 少しげんなりとしたオリビアが、億劫そうにそう漏らす。

「一応、マッピングはしてるけど、気を抜いたら迷いそうだな……」
 オリビアに釣られ、思わず溜め息を吐いた。

「ごめんなさい。私が天啓を使えれば良かったのだけど……」
「別に、君のせいじゃないよ」
 申し訳なさそうに言ったリディアにそう告げる。この先【天啓】の価値は今以上に上がるだろうし、彼女には余力を残していてもらう必要があるからな。

 マッピングをしながらダンジョンを進み、昼頃に昼食をとる。その時、予定通りにアドルフたちが顔を見せに来た。

「そっちはどうだった?」
「めぼしい戦果はない」
「そうか」
 合流したアドルフたちの地図と俺たちの書いた地図の情報を合成し、地図をより精巧なものにする。
 戦った魔物の情報も共有し、向こうの戦った魔物も俺たちと大差ないことが確認できた。

「……昼を食べたら、間の抜けている部分を埋めていこうか」
 二つの地図を合成したところで、に気づき、地図の空白部分のマッピングを行う。

 昼食後、空白のマッピングを終え、疑問は確信に変わった。
 曲がり道や小道が多いとは感じていたが、やはりというか、俺たちの捜索していたルートとアドルフたちの捜索していたルートが、複数繋がっている。
 つまり、俺たちは長い間探索をしていたが、マッピングさえしっかりしていれば、門からこの場所に来るまで十分とかからなかったのだ。

「一回、門の位置を調べてみるわ」
 リディアはそれだけ言うと、その場で立ち膝になり、両手を組んで祈りを捧げる。

「……」
 全員で見守ること数分、リディアがそっと目を開いた。

「どうだ?」
「……門が見える所にないみたいね。アーカム様が言うには、ダンジョン内に何かギミックがあるようなのだけど、ここのダンジョンは管轄外みたいで……」
「いや、そこまでわかれば良いよ。ありがとう」
 まるで、アーカムの管轄内にあるダンジョンが別に存在しているかのような言い方を不審に思いながらも、一度引き返して今後の探索に必要な道具を揃えるべきではないかと思考を巡らせる。

「アドルフ、一回ひ──」
「まさか、引き返すなどと言うまいな?」
 俺が引き返すと言う前に、アドルフに釘を刺された。

「だが、門の位置が分からないとなると、探しようがないぞ」
「地図を完成させてから改めてギミックを探せば良いだろう?それに、ここまで楽しめそうなダンジョンは久しぶりなんだ。帰るなどと言わせんぞ」
 何が楽しいのか、アドルフは一人、ニヒルな笑みを浮かべた。

「──わかった。一度地図を完成させよう」
 アドルフは、ああ言ったら聞かないだろうし、ここで彼の機嫌を損ねるのは悪手だしな。

 再び二組に別れて地図の空白を埋め、夕食前には再び合流した。

「どうだった?」
「特にめぼしいものはなかった」
「そうか……」
 向こうも何かを見つけられたりはしなかったようなので、一先ず地図の情報を擦り合わせた。

「なぁ、この×印は何だ?」
 アドルフたちの探索していた地図には、何故か一ヶ所だけ印がされていることに気づく。アドルフが何もなかったと言っていただけに、余計に気になった。

「アメリアが見つけた、落とし穴のあるところ」
 俺の問いに、ニコが淡白に答える。見つけたというよりかは、また引っ掛かったんだな……多分。

「アメリア……」
 俺の視線に気づいたアメリアが乾いた愛想笑いを浮かべた。

「……アドルフ、この落とし穴の下は確認したか?」
「いや、確認はしていないが──」
 アドルフを含む他のメンバーも、俺と同じ可能性に気づいたようで、一度例の落とし穴の場所に向かうことにした。

「……何も見えんな」
 落とし穴のある場所に着き、落とし穴を覗き混んだアドルフが、苦々しくそう漏らす。

「あぁ……」
 索敵を使っているにも関わらず、穴の下がどうなっているのかが全く分からない。一つ言えることがあるとすれば、先が見えなくなるくらいには深い位置にあるということくらいか。

 試しに、ダンジョンの外壁である煉瓦の一部を削り、穴に投げ落としてみた。

「……」
 暫く見守るも、穴からは何も反応がない。石の落ちた音が聞こえない程深くに繋がっているようだ。

「……降りてみるか?」
 見ているだけでは埒が明かないので、取り敢えず降りてみないかと提案してみる。

「なら、俺が先行しよう」
「あ、おいっ!」
 言うが早いか、アドルフが穴に飛び込んだ。
 アドルフの姿はみるみるうちに遠くなり、彼の姿は闇に消えた。

「アドルフ、聞こえるかー!」
「……」
 少し待ってみるものの、アドルフからの返事はない。

「おい!アド──」
「呼んだか?」
 俺が叫ぼうとした所で、目の前に見覚えのある魔方陣が出現し、その中心にアドルフが現れた。

「──どうだった?」
「当たりだ。光源の一切ない、大きな空間に繋がっていた。広すぎて、部屋の全貌はおろか、外壁すら見ることができん」
 言いながら、アドルフが心底楽しそうに笑みを浮かべる。

「魔物は?」
「見た限りは大丈夫そうだ」
「そうか。なら、夕食だけ食べてから降りようか」
 昨日のように二組に別れて西の国で夕食を済ませ、アドルフの転移で下の階層へと降りる。

 オリビアが目一杯に光球体を光源として展開したが、それでも部屋の全貌を確認することはできなかった。

「少し時間をちょうだい」
 それだけ言うと、【天啓】を使うときのようにリディアが祈りを捧げる。
 それから間もなく、オリビアの使う【アトラフェニクス】程の巨大な光球体が俺たちの頭上に現れ、部屋を照らした。

 部屋が照らされたことを確認したオリビアが、一度光球体を消す。
 辺りが十分に照らされたところで、周囲を見回した。

 比較的大きなこの部屋には、疎らに柱が立っており、左にある道以外には、特にこれといったものは見つけられない。
 部屋の外壁は、上層と同じくレンガで出来ているようだ。

「ブラウンさん、ブラウンさん」
 移動を始めようとしたところで、オリビアに袖を掴まれた。

「どうした?」
「さっき、無意識に詠唱を省いてたんですけど、ここは能力が使えるみたいなんです」
「──え?」
 バッグに手を入れて【四次元空間】が使えるかを試すと、確かに能力を使えることが確認できた。

「ルシェフさん」
 【四次元空間】の確認が済んでからすぐ、俺と視線も合わせないレオナに小声で声をかけられた。

「どうした?」
「勘違いだと思うんだけど、何かから見られているような気がして……」
「そうなのか?」
 俺にはわからないし、索敵にも何もかかっていないが、先のゴーストのような存在もあるため、警戒するに越したことはないか……。
 エルフである彼女だからこそ感じる何かがあるのかもしれないからな。

 柱の影など、敵が隠れられる場所が多くあるため、そういった所を警戒しながらゆっくりと左に見える通路に向けて進む。

「……」
 俺たちの雑踏以外、これといった音は聞こえない。
 レオナの言っていた視線のことも気になるし、視界を遮るように屹立する柱の裏でほくそ笑んでいるであろう何かの存在への警戒を怠ることはできなかった。

 半刻ほどかけ、通路につく。その間、敵の襲撃などはなかったが、集中しているからか、やけに体力を消耗したように感じた。
 通路に抜けたところで、リディアが巨大な光球体を解き、代わりにオリビアが手の平サイズの光球体を数個浮かべる。

「ここで、少しだけでも休もうか」
 アドルフは事前に気づいていたようだったが、このダンジョンが他のものに比べて異質な造りになっていることが、俺にも理解でき始めていたので、念のために一度休憩をとることにした。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします。

樋口紗夕
恋愛
公爵令嬢ヘレーネは王立魔法学園の卒業パーティーで第三王子ジークベルトから婚約破棄を宣言される。 ジークベルトの真実の愛の相手、男爵令嬢ルーシアへの嫌がらせが原因だ。 国外追放を言い渡したジークベルトに、ヘレーネは眉一つ動かさずに答えた。 「国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします」

《完結》「パパはいますか?」ある日、夫に似た子供が訪ねて来た。

ヴァンドール
恋愛
嫁いですぐに夫は戦地に赴いた。すると突然一人の男の子が訪ねて来た「パパはいますか?」 その子供の顔は戦地に行った夫にそっくりだった。

ウルティメイド〜クビになった『元』究極メイドは、素材があれば何でも作れるクラフト系スキルで魔物の大陸を生き抜いていく〜

西館亮太
ファンタジー
「お前は今日でクビだ。」 主に突然そう宣告された究極と称されるメイドの『アミナ』。 生まれてこの方、主人の世話しかした事の無かった彼女はクビを言い渡された後、自分を陥れたメイドに魔物の巣食う島に転送されてしまう。 その大陸は、街の外に出れば魔物に襲われる危険性を伴う非常に危険な土地だった。 だがそのまま死ぬ訳にもいかず、彼女は己の必要のないスキルだと思い込んでいた、素材と知識とイメージがあればどんな物でも作れる『究極創造』を使い、『物作り屋』として冒険者や街の住人相手に商売することにした。 しかし街に到着するなり、外の世界を知らない彼女のコミュ障が露呈したり、意外と知らない事もあったりと、悩みながら自身は究極なんかでは無かったと自覚する。 そこから始まる、依頼者達とのいざこざや、素材収集の中で起こる騒動に彼女は次々と巻き込まれていく事になる。 これは、彼女が本当の究極になるまでのお話である。 ※かなり冗長です。 説明口調も多いのでそれを加味した上でお楽しみ頂けたら幸いです

処理中です...