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03 9年前ー事件ー
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過去の説明回です。
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女王ジェラルディンは4人きょうだいだったが、今ではこの王宮には彼女と末の弟しかいない。
女王は当年32歳。18歳の時、前王が崩御し王位を継いだ。
父王の治世は、歴代王の中では『多少悪い』程度だった。しかし社会全体が進歩しているのに政治や社会制度の進歩が遅すぎ、それを歴代の王が積み重ねてきたため、ギャップが限界まで大きくなり社会は破綻寸前の状態だった。
しかし権力を握るのは特権階級だったため、平民の搾取を増やせば自分達の安寧はほぼ確保できたので、彼らの危機感は薄かった。
強者たる既得権層の機嫌を損ねる改革をあえて施行して、自分の安全や既得権を捨てようと考える特権階級の者はおらず、わずかにいても周囲に潰された。
そんなツケが綿々と積み重ねられ限界に達していた。
後を継いだジェラルディンはため息をついて、父と歴代の先祖と中枢の貴族が積み上げた負債の処理として様々な改革を行った。行わざるを得なかった。
『理性が残っている者が損をする~♪』と、大衆劇場で流行している喜劇の歌を口ずさみながら。
既得権層の反発も大きく、また若くして王位を継ぐことや女性への差別で困難はあったが、幼少から政治や経済や風土や国際情勢などを真摯に勉強してきたことと、持ち前の骨太な王者の器により、見事難局を乗り切った。
ようやく国内が落ち着いた23歳の時、すぐ下の弟アンドリューがクーデターを起こした。
当時、女王の弟妹は長弟アンドリュー20歳、妹16歳、末弟11歳。
アンドリューは支配欲や権力欲が強く、父親である前王とは、似た者同士ゆえにぶつかることが多い犬猿の仲だった。
前王が崩御する際、男子相続優先の風潮が強い時代背景にも関わらず、長男ではなく3歳年長とはいえ女子のジェラルディンを次王に指名したのは、王としての資質がジェラルディンの方が上だったという客観的事実より、気に入らない息子にだけは絶対王座をやりたくなかったからだということは、ジェラルディンのみならず周囲の一致した見解だった。
こうした幼稚さも、本当によく似た二人だった、とジェラルディンは遠い目をして思う。
アンドリューは国民の生活や幸せには興味がなく、自分自身と権力と、ちやほやされることが何より大好きな人物だった。そのために王座を欲した。
そして、有力貴族であった妹の婚約者と組んでクーデターを起こしたのだった。
ジェラルディンの治世の改革は国民に称賛されたが、既得権を奪われたと恨む貴族は一定数いた。
ジェラルディンに言わせれば『いや、まだまだ搾取しすぎだろう?これは第一段階なんだが?』とのことであったし、国民の大半は同意見だったが。
また、『女の下につく』ことに感情的な拒絶反応を抱えるタイプの男性の層や、搾取や暴力を既得権として正当化してくれる伝統的世界観を失うことに恐怖を感じる層が、彼に飛び付いた。
妹のエレインは婚約者の動きから事前にクーデターの企みを知り、婚約者を諌めたが、16歳の小娘の言うことと嘲笑をもって拒否された。彼女は葛藤の末、姉へ婚約者達の企みを告げた。
やがて、犠牲を出しながらもクーデターは鎮圧され、大逆の首謀者であるアンドリューと、エレインの婚約者は、毒杯を与えられることとなった。
仮にも王族直系の王弟なのだから、助命し幽閉を、と言う貴族もいたが、最終的に死罪の判断を下したのは姉たる女王だった。
王族や貴族が親族で命を狙うことは歴史上珍しくない。しかし冷徹すぎるという声が上がり、一方で、女王自身が命を狙われた以上気持ちは理解できると擁護する声が上がった。
しかし、女王が言った理由は全く別の視点だった。
「彼らの命令で、選ぶことすら許されず戦わされた兵士が何人も神に召され、また傷ついた。彼らの命が首謀者の命より軽いとは思わない」
その言葉は、血の繋がりや貴賤を免罪符にしない厳しくも公正な視点と、国民一人一人に寄り添う情深さとして語り継がれることとなった。
実はジェラルディンはこの時、貴族達の頭から貴族未満の者の命や人生の価値がすっぽり抜け落ちていることに、『改革の進みは未だこれ程低いレベルなのか…道は遠い』と一人ため息をついていた。
また、王族や貴族に限り処刑方法は毒杯が許され名誉を守るって何だそれ、とも思っていた。
後に改革王と呼ばれる果断の女王も、歩みの遅い周囲に一応根気強く付き合っていたのである。
エレインは、婚約者が国賊となったことで一時は窮地に立たされたが、企てに荷担せず、むしろ阻止に功績があるとして罪に問われることはなかった。
しかし、優しく繊細な人柄の彼女は、心を引き裂かれるような出来事の数々に疲れ果て、王族の立場と半ば縁を切る形で王宮を出ることを願い出、女王はそれを許した。彼女の心を守るにも政治的にも、それが最善と思われた。
現在エレインは、孤児や暴力を受け苦しむ女性の救済施設の運営を担っている。
多くのクーデターがそうであるように、このクーデターも軍部が大きく関与していた。
そのため、鎮圧に当たり、女王は隣国イリヤーナの軍を借りねばならず、大きな借りを作った。
その結果、王族の婚姻による同盟を結ぶこととなった。
しかし前王の子4人のうち、長男は刑死、次女は王宮を出、そして次男は生まれつき病弱で成人できないかもしれないと言われる身だった。
結局、女王自身がイリヤーナの第3王子クラレンスを王配として迎えることとなった。
女王は23、クラレンスは13であった。
この国でも政略結婚は多いが、女性が10も年上という例はあまり多くない。
女王の末弟は11歳。早くに親をなくした上、病弱で体も立場も弱い末弟に、彼女は親代わりの役も務めてきた。
末弟と大して変わらぬ年頃の子供を伴侶にという話をイリヤーナ王から持ちかけられ、流石の女王もぴくりと眉を上げた。
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女王ジェラルディンは4人きょうだいだったが、今ではこの王宮には彼女と末の弟しかいない。
女王は当年32歳。18歳の時、前王が崩御し王位を継いだ。
父王の治世は、歴代王の中では『多少悪い』程度だった。しかし社会全体が進歩しているのに政治や社会制度の進歩が遅すぎ、それを歴代の王が積み重ねてきたため、ギャップが限界まで大きくなり社会は破綻寸前の状態だった。
しかし権力を握るのは特権階級だったため、平民の搾取を増やせば自分達の安寧はほぼ確保できたので、彼らの危機感は薄かった。
強者たる既得権層の機嫌を損ねる改革をあえて施行して、自分の安全や既得権を捨てようと考える特権階級の者はおらず、わずかにいても周囲に潰された。
そんなツケが綿々と積み重ねられ限界に達していた。
後を継いだジェラルディンはため息をついて、父と歴代の先祖と中枢の貴族が積み上げた負債の処理として様々な改革を行った。行わざるを得なかった。
『理性が残っている者が損をする~♪』と、大衆劇場で流行している喜劇の歌を口ずさみながら。
既得権層の反発も大きく、また若くして王位を継ぐことや女性への差別で困難はあったが、幼少から政治や経済や風土や国際情勢などを真摯に勉強してきたことと、持ち前の骨太な王者の器により、見事難局を乗り切った。
ようやく国内が落ち着いた23歳の時、すぐ下の弟アンドリューがクーデターを起こした。
当時、女王の弟妹は長弟アンドリュー20歳、妹16歳、末弟11歳。
アンドリューは支配欲や権力欲が強く、父親である前王とは、似た者同士ゆえにぶつかることが多い犬猿の仲だった。
前王が崩御する際、男子相続優先の風潮が強い時代背景にも関わらず、長男ではなく3歳年長とはいえ女子のジェラルディンを次王に指名したのは、王としての資質がジェラルディンの方が上だったという客観的事実より、気に入らない息子にだけは絶対王座をやりたくなかったからだということは、ジェラルディンのみならず周囲の一致した見解だった。
こうした幼稚さも、本当によく似た二人だった、とジェラルディンは遠い目をして思う。
アンドリューは国民の生活や幸せには興味がなく、自分自身と権力と、ちやほやされることが何より大好きな人物だった。そのために王座を欲した。
そして、有力貴族であった妹の婚約者と組んでクーデターを起こしたのだった。
ジェラルディンの治世の改革は国民に称賛されたが、既得権を奪われたと恨む貴族は一定数いた。
ジェラルディンに言わせれば『いや、まだまだ搾取しすぎだろう?これは第一段階なんだが?』とのことであったし、国民の大半は同意見だったが。
また、『女の下につく』ことに感情的な拒絶反応を抱えるタイプの男性の層や、搾取や暴力を既得権として正当化してくれる伝統的世界観を失うことに恐怖を感じる層が、彼に飛び付いた。
妹のエレインは婚約者の動きから事前にクーデターの企みを知り、婚約者を諌めたが、16歳の小娘の言うことと嘲笑をもって拒否された。彼女は葛藤の末、姉へ婚約者達の企みを告げた。
やがて、犠牲を出しながらもクーデターは鎮圧され、大逆の首謀者であるアンドリューと、エレインの婚約者は、毒杯を与えられることとなった。
仮にも王族直系の王弟なのだから、助命し幽閉を、と言う貴族もいたが、最終的に死罪の判断を下したのは姉たる女王だった。
王族や貴族が親族で命を狙うことは歴史上珍しくない。しかし冷徹すぎるという声が上がり、一方で、女王自身が命を狙われた以上気持ちは理解できると擁護する声が上がった。
しかし、女王が言った理由は全く別の視点だった。
「彼らの命令で、選ぶことすら許されず戦わされた兵士が何人も神に召され、また傷ついた。彼らの命が首謀者の命より軽いとは思わない」
その言葉は、血の繋がりや貴賤を免罪符にしない厳しくも公正な視点と、国民一人一人に寄り添う情深さとして語り継がれることとなった。
実はジェラルディンはこの時、貴族達の頭から貴族未満の者の命や人生の価値がすっぽり抜け落ちていることに、『改革の進みは未だこれ程低いレベルなのか…道は遠い』と一人ため息をついていた。
また、王族や貴族に限り処刑方法は毒杯が許され名誉を守るって何だそれ、とも思っていた。
後に改革王と呼ばれる果断の女王も、歩みの遅い周囲に一応根気強く付き合っていたのである。
エレインは、婚約者が国賊となったことで一時は窮地に立たされたが、企てに荷担せず、むしろ阻止に功績があるとして罪に問われることはなかった。
しかし、優しく繊細な人柄の彼女は、心を引き裂かれるような出来事の数々に疲れ果て、王族の立場と半ば縁を切る形で王宮を出ることを願い出、女王はそれを許した。彼女の心を守るにも政治的にも、それが最善と思われた。
現在エレインは、孤児や暴力を受け苦しむ女性の救済施設の運営を担っている。
多くのクーデターがそうであるように、このクーデターも軍部が大きく関与していた。
そのため、鎮圧に当たり、女王は隣国イリヤーナの軍を借りねばならず、大きな借りを作った。
その結果、王族の婚姻による同盟を結ぶこととなった。
しかし前王の子4人のうち、長男は刑死、次女は王宮を出、そして次男は生まれつき病弱で成人できないかもしれないと言われる身だった。
結局、女王自身がイリヤーナの第3王子クラレンスを王配として迎えることとなった。
女王は23、クラレンスは13であった。
この国でも政略結婚は多いが、女性が10も年上という例はあまり多くない。
女王の末弟は11歳。早くに親をなくした上、病弱で体も立場も弱い末弟に、彼女は親代わりの役も務めてきた。
末弟と大して変わらぬ年頃の子供を伴侶にという話をイリヤーナ王から持ちかけられ、流石の女王もぴくりと眉を上げた。
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