VRMMOで素早さを極限まで伸ばしてみた~当たらなければどうってことはない精神でゲームライフを楽しみます~

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八話 キャシーと師匠

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■キャシー編■



「じゃあここに手をかざしてみて下さい」
「――こう?」


 キャシーは宿酒場の受付嬢に言われるがまま、青白く半透明な水晶に手をかざした。


「あぁ、残念ですがキャシーちゃんは魔力0ですね」
「えぇぇぇ? じゃ、じゃあキャシーはどうすればいいのぉ?」


 宿酒場に響き渡るほど大きな声で、キャシーは表情豊かに驚いて見せた。


「大丈夫ですよ。まだ道はありますから。次はこれに触れて下さい。ストレングスの値を図るパネルです」
「うーん、キャシーはあんまり脳筋は嫌なんだけどな……仕方ないかぁ」


 四角い半透明のパネルに触れるもまたもやストレングス0のキャシー。
 どんどんキャシーの気分は落ちていく。

 気を使った受付嬢はキャシーを励ますように次なる装置を目の前に出した。


「キャシーちゃん! 次こそ大丈夫ですよ。はい、やってみて下さい」


 鉄の装置を取り出した受付嬢は唖然とした。もはやこの子には何の資質もないのではないかと。
 鉄の装置に手を入れるともう驚きもしなかった。もちろん資質0。


「やっぱりキャシーは何も使えないのかなぁ……」
「キャ、キャシーちゃん。これ、最後の装置です。手を入れてみて下さい!」


 その最後の装置とは、鍛冶技能の資質があるかどうかを図る装置だった。半ば諦めモードのキャシーはため息を付きながら中に手を入れた。

 すると――


 ピッ。


「キャシーちゃん! 反応しましたよ。資質1……です」
「え? ホント? キャシーも何か職人になれるの?」
「はい、もちろんです。よかったですね」


 受付嬢は内心ホッとしていた。
 このまま何の資質もなかったらあまりにも可哀そうだと。そのせいか自分のことのように嬉しかったのだろう。
 受付嬢は飛び跳ねて喜んだ。


「資質1でもキャシー頑張る」
「はい、頑張って下さい。そうだ! 師匠を紹介しましょうか?」
「師匠?」


 師匠を持てるなどと考えもしなかったキャシーは、目を輝かせ二つ返事でお願いした。


「ほしい! キャシーの師匠ほしい」
「わかりました。では連絡してみますね」


 こうしてキャシーは師匠を持つことになり、師匠の元で鍛冶のセンスを磨くのだった。





「師匠! 出来たよぉ。見て見て」
「キャシーよ、それではダメだ。全くなっとらん。一からやり直しだ」


 キャシーに取って師匠とはかけがえのない存在だ。師匠に喜んでもらうためにキャシーは頑張って鍛冶について勉強し特訓した。

 しかし資質はあったものの才能はない。
 キャシーは思ったように行かず師匠には怒られてばかりだった。

 そんなキャシーを見兼ねた師匠は、しょぼくれているキャシーに声をかけた。


「のぅキャシーよ、何も焦ることはないぞ。自分のペースでゆっくりと確実なものを作るのだ。焦って作ってもいい物など出来るはずもない」
「師匠……キャシーにも出来るかなぁ?」
「出来るか……ではない。やるのだ」
「師匠……うん! キャシー頑張る」


 師匠の一言でキャシーはやる気を取り戻したのか、今までの失敗が嘘のように着々と上達していった。



 そして数か月後――





 ステータス
 キャシー 鍛冶レベル50
 資質1
 《スキル》
 短縮――作業時間が半分になる。
 努力――たまに同じ装備が二つ出来ることがある。
 頑強――固い鉱石類を素材に制作出来るようになる。
 傑作――制作時、失敗することがなくなりより良い装備が出来るようになる。
 瞬時――作業時間がなくなり瞬時に装備を作り出せる。
 変化――稀に別の上位装備に変化する。
 特性――制作した装備に特性が付くようになる。
 天使――制作した装備の性能が格段に上がり、上位の装備しか出来なくなる。
 無敵――制作に使う素材を一度登録すれば、制作する際素材が自動で生成されるようになる。





「よくもまぁここまで上達したな。最初はどうなることかと思ったが……ここまで育てば思い残すこともあるまい」
「……どういうこと?」
「いや……なんでもないわい」


 最近師匠の様子が変だ……。なぜかはわからないが、キャシーを避けているようだ。
 キャシーは不安で仕方なかった。
 大事な師匠だから。



 そしてある日の事。
 師匠はキャシーの事をある森へ誘った。
 特別な鍛冶の素材を取りに行くとか。


「キャシー準備できたか?」
「うん、じゃあ出発シンコー!」


 こうして二人は旅へ出た。
 しかしピクニック気分で向かったキャシーとは裏腹に、師匠の方はそうでもなかった。

 突然だった。
 キャシーが鼻歌交じりに獣道を歩いている時。
 師匠が音も立てずに倒れた。
 キャシーの言葉に反応しなかった師匠を不思議がって振り返り――


「師匠――! 大丈夫? どこか痛いの?」
「あぁ……持たなかったかの」
「何を言ってるの? 師匠……しっかりしてぇ!」


 キャシーは師匠の体を揺するが逆効果だった。どんどん苦しそうになっていく師匠を見て、キャシーはどうすることも出来ずに目に涙を浮かべた。


「キャシーよ、泣くでない。こうなることはわかっていたのだ」
「でも……師匠、死んじゃ嫌だよぉ」


 誰か――誰か探しに行かなきゃ。

 キャシーはその小さな足で必死に走った。
 こんなところに誰もいるはずはないが、キャシーは助けを呼ぶために走り続けた。


「助けて――誰かぁ。師匠を――」


 キャシーは涙で前が見えずに、地面の石につまづいて転んでしまった。
 その場に座り込みすすり泣きをするキャシー。

 するとキャシーの願いが届いたのか、目の前から人が歩いてきた。


「あんなところに子供が……!」
「行くぞ」


 それは冒険者であろう格好をしている男女だった。


「どうしたの? どこか痛いの? 名前は?」


 女性がキャシーに優しく声をかけ事情を聞いた。


「師匠を――助けてぇ」


 すすり泣きをするキャシーの話を聞き、キャシーは二人を連れて師匠の元へ急いだ。





「師匠――人を連れてきたよぉ! 起きて! もう大丈夫だよぉ」


 動かない体を一生懸命揺らしながら、師匠に声をかけ続けるキャシーを見兼ねて男性が口を開いた。


「その御仁は既に亡くなっている……」
「そんなことないもん! 師匠はキャシーを置いていかないもん!」


 キャシーはいつまでも師匠の胸で泣き続けた。
 それを見た女性はキャシーの肩に手をポンと置き、師匠のお墓を造ろうと提案した。


「お墓……?」
「えぇ……そうすればきっと師匠も喜ぶはずよ」


 そう言って三人は、師匠が最後に寄りかかった桜の木の下に墓を掘った。



 相当泣いただろうか。
 泣きつかれたキャシーは、墓の前に座り込み気が付くと眠りについていた。

 そしてその後、キャシーは師匠に学んだ鍛冶技能を活かして、二人……メルティとグレッツの専属鍛冶職人となることになったのだった。
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