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九話 露店
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「グレッツが言ってたのってここかな」
大都市の東区、グレッツが教えてくれた情報を頼りにここに来ていた。
大都市は大きく分けて四つの区に分かれていて、広場を中心に北区にはでっかいお城がそびえ立つ宮殿区になっている。
南区には港がある。ようは船乗りの仕事場だ。
西区は住宅街となっていて、西区の外れにはお金のない人たちが暮らすスラム街に繋がっている。
そして東区は、ざっというと商店街。
冒険者ギルドや宿酒場、武具屋やその他商店などが並んでいる。
東区の外れに行くと華園と呼ばれる広場になっていて、ここはプレイヤーが自由に商売が出来る言わば市場になっていた。
俺の貧相な装備を見兼ねたグレッツが、ここを紹介してくれたんだ。
足元見て馬鹿高い値段で売り付けてくるあくどいプレイヤーもいるらしいが、市場を回れば店売りよりも安く大量に売っている良心的な店もあるらしい。
そういったプレイヤーは大抵自分で錬金術や制作技術があるから、安く売りに出せるのだとか。
市場は思ったよりも賑わっていた。
沢山の露店が開かれている。
さまざまな外観の露店があり、敷物を敷いているだけの露店もあれば、外見に気を使っているのか、ゴテゴテした飾りだらけの一見目が痛くなるような露店もあった。
そしてグレッツによると、露店に命かけてるトップ陣はちゃんとした屋根がある家型のお店を貰い、きちんとした経営をしているらしい。
そういったプレイヤーは一部だが、販売の実績が大量にある商売人はもう一日中制作や錬金術をして、販売することだけにゲーム人生を捧げてるのだとか。
俺は絶対に向かないが、まぁそういうゲームの仕方もありだろうな。
俺はどっちかっていうと、敵を狩ってその素材を換金して大金持ちになりたいんだ。
そしてゆくゆくはこの街に家を持ちたいんだ。
「よし、回ってみるか」
市場を一通り見渡すと、その傾向がなんとなくわかってくる。
市場の中心には、敷物の上にポツンと座っているプレイヤーがほとんどで、その中に一際目立つゴテゴテの店構えがあったりする。
「なるほど……」
市場の中心は目立ちたいプレイヤーか、外見に気を使わない適当なプレイヤーしかいないんだ。
ってことは、あんまり良心的な値段では売っていないだろう。
グレッツも言っていたが、良心的な露店はきちんとしたお店を持っている一部のプレイヤーのみ。
俺みたいな市場初心者がふら~っと立ち寄って、あわよくば買ってくれたら設けもんくらいにしか思ってないようだ。
広場の中心を避け、周りには木や石づくりのカウンターを前に商売しているプレイヤーが無数にいた。
この人たちは一見埋もれてしまいそうなお店かもしれないが、実はこういった普通の露店から物を買うのが一番無難らしい。
中心を避けていることで、自分たちは安全だって見せているみたいだな。
なんだか商売一つとっても、みんな色々気を使ってゲームしているんだな。
俺みたいに何も考えずにプレイしてるわけじゃないんだ……。
「お、あの露店よさそう」
ふら~っと歩いていると、その露店の周りだけ行列が出来ていた。
俺は惹かれるがままその露店に近づき覗いてみた。
「あ~ダメダメ! キミ、ちゃんと並んでね」
露店を除こうとしたら注意されてしまった。
別に横入りをしようとしたわけではないのに……。
すると大量にならんでいるプレイヤーから、一斉に睨まれ後ろに並べと言わんばかりに俺に注目が集まった。
俺は咄嗟に列の最後尾に走り並んでしまった。
特に買うものとかは決まってないけど、今更抜けるわけにもいかない……。
俺の後ろは次々と列をなして並んでいく。
そして俺の番が近づく。
「なぁ、何買うよ?」
「んなもん順番が来てから考えようぜ。俺はクルミンに会うためにこんなに時間かけてるんだからよ」
「それもそうだな」
どうやらこの人たちのほとんどは商品には興味がなく、この露店を出している人に興味があるようだった。
でもちゃんと物が欲しい人に迷惑じゃないかな。そんなことしたら……。
よく見たら並んでいるほとんどが男のプレイヤーだ。
そうこうしているうちに俺の番が来た。
「いらっしゃい。何をお求めで?」
「えっと……」
俺が悩んでいるとプレイヤーは急かすように口を開いた。
「いっぱい並んでるから早く決めてくれる?」
「あ、ごめん……なさい。じゃあ……これで」
俺は適当に欲しくもないアイテムを指さしてしまった。
「はいよ~お兄さんお目が高いね、これは今日入ったばっかの新商品だよ。金貨三枚ね」
「……は?」
俺は耳を疑った。
「だから金貨三枚だよ。他のお客もいるから早くしてよね」
「あ、はい。じゃあ……これ」
俺は急かされるがまま金貨三枚を渡してしまった。
なんという失態を……。
せっかくのホーンドラゴンのコアを換金したお金が……。
俺はガクっと首を下げ俯きながらその商店を後にした。
「こんなのが金貨三枚ね……」
俺が買ったものはなんと……ただの石? 少し大きめのそこら辺に落ちてそうな見た目の普通の石だった。
こんなものが金貨三枚なんて……馬鹿げてる。
まぁ買ったものは仕方ないと、俺は投げ入れるようにそのただの石をバッグパックにしまった。
『賢者の石 アイテムランク10』
賢者の石――死んだものを生き返らせることが出来る。どんな難病も治す効果があるとても貴重な石。
「な、なにぃぃぃ?」
とっさにバッグパックに放り投げたのだが……どうやらこれはただの石ころではなかったようだ。
アイテムランク10って……一番レアリティが高いアイテムだ。
こんなものを露店に出せるなんて……あのプレイヤーは一体何者なんだ?
ちゃんとしたお店を持っているわけでもなかったし。
俺はその賢者の石を放り投げたことを悔やみ、大事にバッグパックにしまいアイテムを間違って捨ててしまわないように、ロック機能を使った。
これは合成や制作に使用されないように、大切なアイテムにロックをかける機能だ。
「――これでよしっと」
俺は市場を後にし、グレッツに市場体験を語る為に宿屋に向かうのだった。
大都市の東区、グレッツが教えてくれた情報を頼りにここに来ていた。
大都市は大きく分けて四つの区に分かれていて、広場を中心に北区にはでっかいお城がそびえ立つ宮殿区になっている。
南区には港がある。ようは船乗りの仕事場だ。
西区は住宅街となっていて、西区の外れにはお金のない人たちが暮らすスラム街に繋がっている。
そして東区は、ざっというと商店街。
冒険者ギルドや宿酒場、武具屋やその他商店などが並んでいる。
東区の外れに行くと華園と呼ばれる広場になっていて、ここはプレイヤーが自由に商売が出来る言わば市場になっていた。
俺の貧相な装備を見兼ねたグレッツが、ここを紹介してくれたんだ。
足元見て馬鹿高い値段で売り付けてくるあくどいプレイヤーもいるらしいが、市場を回れば店売りよりも安く大量に売っている良心的な店もあるらしい。
そういったプレイヤーは大抵自分で錬金術や制作技術があるから、安く売りに出せるのだとか。
市場は思ったよりも賑わっていた。
沢山の露店が開かれている。
さまざまな外観の露店があり、敷物を敷いているだけの露店もあれば、外見に気を使っているのか、ゴテゴテした飾りだらけの一見目が痛くなるような露店もあった。
そしてグレッツによると、露店に命かけてるトップ陣はちゃんとした屋根がある家型のお店を貰い、きちんとした経営をしているらしい。
そういったプレイヤーは一部だが、販売の実績が大量にある商売人はもう一日中制作や錬金術をして、販売することだけにゲーム人生を捧げてるのだとか。
俺は絶対に向かないが、まぁそういうゲームの仕方もありだろうな。
俺はどっちかっていうと、敵を狩ってその素材を換金して大金持ちになりたいんだ。
そしてゆくゆくはこの街に家を持ちたいんだ。
「よし、回ってみるか」
市場を一通り見渡すと、その傾向がなんとなくわかってくる。
市場の中心には、敷物の上にポツンと座っているプレイヤーがほとんどで、その中に一際目立つゴテゴテの店構えがあったりする。
「なるほど……」
市場の中心は目立ちたいプレイヤーか、外見に気を使わない適当なプレイヤーしかいないんだ。
ってことは、あんまり良心的な値段では売っていないだろう。
グレッツも言っていたが、良心的な露店はきちんとしたお店を持っている一部のプレイヤーのみ。
俺みたいな市場初心者がふら~っと立ち寄って、あわよくば買ってくれたら設けもんくらいにしか思ってないようだ。
広場の中心を避け、周りには木や石づくりのカウンターを前に商売しているプレイヤーが無数にいた。
この人たちは一見埋もれてしまいそうなお店かもしれないが、実はこういった普通の露店から物を買うのが一番無難らしい。
中心を避けていることで、自分たちは安全だって見せているみたいだな。
なんだか商売一つとっても、みんな色々気を使ってゲームしているんだな。
俺みたいに何も考えずにプレイしてるわけじゃないんだ……。
「お、あの露店よさそう」
ふら~っと歩いていると、その露店の周りだけ行列が出来ていた。
俺は惹かれるがままその露店に近づき覗いてみた。
「あ~ダメダメ! キミ、ちゃんと並んでね」
露店を除こうとしたら注意されてしまった。
別に横入りをしようとしたわけではないのに……。
すると大量にならんでいるプレイヤーから、一斉に睨まれ後ろに並べと言わんばかりに俺に注目が集まった。
俺は咄嗟に列の最後尾に走り並んでしまった。
特に買うものとかは決まってないけど、今更抜けるわけにもいかない……。
俺の後ろは次々と列をなして並んでいく。
そして俺の番が近づく。
「なぁ、何買うよ?」
「んなもん順番が来てから考えようぜ。俺はクルミンに会うためにこんなに時間かけてるんだからよ」
「それもそうだな」
どうやらこの人たちのほとんどは商品には興味がなく、この露店を出している人に興味があるようだった。
でもちゃんと物が欲しい人に迷惑じゃないかな。そんなことしたら……。
よく見たら並んでいるほとんどが男のプレイヤーだ。
そうこうしているうちに俺の番が来た。
「いらっしゃい。何をお求めで?」
「えっと……」
俺が悩んでいるとプレイヤーは急かすように口を開いた。
「いっぱい並んでるから早く決めてくれる?」
「あ、ごめん……なさい。じゃあ……これで」
俺は適当に欲しくもないアイテムを指さしてしまった。
「はいよ~お兄さんお目が高いね、これは今日入ったばっかの新商品だよ。金貨三枚ね」
「……は?」
俺は耳を疑った。
「だから金貨三枚だよ。他のお客もいるから早くしてよね」
「あ、はい。じゃあ……これ」
俺は急かされるがまま金貨三枚を渡してしまった。
なんという失態を……。
せっかくのホーンドラゴンのコアを換金したお金が……。
俺はガクっと首を下げ俯きながらその商店を後にした。
「こんなのが金貨三枚ね……」
俺が買ったものはなんと……ただの石? 少し大きめのそこら辺に落ちてそうな見た目の普通の石だった。
こんなものが金貨三枚なんて……馬鹿げてる。
まぁ買ったものは仕方ないと、俺は投げ入れるようにそのただの石をバッグパックにしまった。
『賢者の石 アイテムランク10』
賢者の石――死んだものを生き返らせることが出来る。どんな難病も治す効果があるとても貴重な石。
「な、なにぃぃぃ?」
とっさにバッグパックに放り投げたのだが……どうやらこれはただの石ころではなかったようだ。
アイテムランク10って……一番レアリティが高いアイテムだ。
こんなものを露店に出せるなんて……あのプレイヤーは一体何者なんだ?
ちゃんとしたお店を持っているわけでもなかったし。
俺はその賢者の石を放り投げたことを悔やみ、大事にバッグパックにしまいアイテムを間違って捨ててしまわないように、ロック機能を使った。
これは合成や制作に使用されないように、大切なアイテムにロックをかける機能だ。
「――これでよしっと」
俺は市場を後にし、グレッツに市場体験を語る為に宿屋に向かうのだった。
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