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十三話 グレッツとラル2
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ラルは元気だろうか……。
あれから数日が経つ。薬を届けるためにも様子を見に行くことにした。
ラルの病気は治らないのだろうか――俺はそんなことを考えながらラルの家へ向かった。
俺の妹……ライムは幼い頃に病気でこの世からいなくなっちまった。
何も楽しいことをさせてやることが出来なかった。
そんな思いはさせたくない。
そう思いラルの家の扉をノックした。
「……」
ノックをしたが返事がない。
寝ているのかな?
倒れていたらどうしようと、心配になり俺は少し強引だが勝手に扉を開けて中に入ることにした。
「ラル……入るぞ」
ラルはゴザの上で横になり眠っていたようだ。少し安心した俺はラルの横に薬を置き家から立ち去ろうとした。
「グレッツ……?」
「すまない、起こしてしまったか?」
ラルは起き上がり横に置いた薬を飲みありがとうと笑顔を向けた。
「もう帰っちゃうの?」
「眠りの邪魔をしないようにと……」
「もう少しお話したい」
その言葉に俺は帰ろうとした足を止め、再びラルの隣に座りラルの体を支え寝かせた。
「あたし……グレッツの旅のお話聞きたいな」
ラルの要望に叶うかどうかはわからないが、俺は現実のことは伏せてこの世界での旅の話をした。
メルとの出会いやキャシーが馬鹿なこと、フライという頼もしい男のことも……。
そして今まで行ったダンジョンの話や、世界の美しい景色などさまざまなことを話してやった。
なぜだろう……ライムに話してるうような気分だ。
ライムの楽しそうな笑顔が浮かぶ。ラルとライムをどうしても重ねてしまう。
駄目だ……ラルはラルだ。
俺はせめて話だけでもと思い俺の全てを話した。
ラルは外の世界を見れないのだから。出来れば直接見せてやりたいものだが……。
「グレッツ……」
ラルは俺の話を聞くと何かを言いたそうにモジモジしていた。
俺が優しく尋ねると……
「あたしの病気が治ったら……グレッツの旅に連れて行ってほしいの」
「それは……」
「お願い! グレッツの話聞いてて、綺麗な景色とか自分の目で見てみたいの」
俺はなんと返事をしていいのかわからなかった。
ラルの病気が治ってほしいのは事実だが、治る保証はなかった。
それに、もし治ったとしてこんな小さな子を連れて冒険なんて出来るわけがない。
魔物だっているし危なすぎる。
「どうせあたしの病気は治らないかもしれないけど……あたしの最後のお願い」
「……わかった」
俺は仕方なく了承した。
ライムに楽しいことをさせてやれなかったのもあって、俺はラルに綺麗な景色を見せてやると約束をした。
そのためにも早くラルの病気を治す方法を探さないと。
「ありがとう……グレッツ。約束だからね」
「あぁ……」
そして数日後――
俺はラルに薬を届けるついでに、また旅の話をしてあげようと思い家に向かった。
するとラルはいつものゴザではなく、台所でうつ伏せになり倒れていた。
「――ラル! どうした? 大丈夫か?」
俺は急いでラルをゴザの上に寝かせ、ラルの口を開き急いで薬を飲ませた。
すると先ほどまでゼイゼイしていたラルは、様態が落ち着きスヤスヤと眠り始めた。
「……よかった」
心を撫でおろすと俺は家を後にし、東区の外れにある市場へ向かった。
なぜかというと、どんな病気も完治させてしまうという幻の石、賢者の石を探すためだ。
これはある時宿屋でプレイヤーが話していたのを聞いたのだが、プレイヤーが営む露店にしか並ばないレアもんらしいのだ。
あるかどうかはわからないが、行ってみる価値はある。
俺は東区の市場へ向かいかたっぱしから露店を巡った。
金はいくらかかっても構わない。金貨なら今まで稼いだ金貨が腐るほどある……。
これを例え全部使ってでもラルを救う。俺はそう誓って市場を駆け巡った。
しかし俺の頑張りはむなしく市場を駆けずり回っても、賢者の石なんてアイテムを出しているプレイヤーは誰一人としていなかった。
俺は半ば諦めていたのだが、内心はまだ助けたいという気持ちはあったのだ。
あれから数日が経った頃、俺はフライとメルとキャシーとクエストの残党討伐を行うために、ラルがいるスラム街に来ていた。
正確にはスラム街のもっと奥の外れに用事があるのだが……。
そこで思わぬことが起こったのだ。
なんとフライが数日前に賢者の石を購入していたそうだ。
俺はなんとしてでも手に入れたいという思いから、なんとか譲ってくれないだろうかとフライに頼み込んだ。
市場で買ったという金貨三枚より多い、金貨五枚を出すから譲ってほしいと頼んだ。しかし人のいいフライは元の値段の金貨三枚でいいと言って、あっさり賢者の石を譲ってくれたのだ。
これは俺に運が向いてきたということなのだろうか。
俺は残党退治を三人に任せて、一目散にラルの元へと向かった。
「――ラル! お前の病気治るぞ」
「え? どういうこと?」
「いいから……そこに寝ていろ」
俺は喜びのあまり柄にもなく声を荒げてしまったが、すぐに冷静になりラルをゴザに寝かせ賢者の石を取り出した。
ラルの真上に賢者の石を掲げると宙に浮いて魔力を帯び始める。
しばらくするとその魔力に包まれた賢者の石は、魔力だけがラルの体に入り込み賢者の石はラルの胸にポトっと落ちた。
落ちた賢者の石をバッグパックに入れるとその名称が変わっていた。
『魔力を失った石』
魔力を失った石――賢者の石を使用して効果がなくなった姿。ただの石だ。
「あたし……よくなったの?」
「大丈夫だ……ゆっくり寝るんだ」
効果はわからないが、おそらく大丈夫だろう。
ラルを寝かせて今夜は現実に戻ることはなく、ラルの側に付いていることにした。
そして翌朝――
「ねぇ、グレッツ起きて!」
どうやら俺は眠ってしまっていたようだ。
目の前を見ると……ラルが起き上がって元気な笑顔を向けていた。
「ラル……大丈夫なのか?」
そう聞くとラルは笑顔でグレッツに抱き着いた。
「うん! グレッツのおかげだよ、ありがとう! 全然辛くないし、今までのが嘘みたいだよ」
「そうか……よかった」
まだ万全とは言えないが、俺は久々に迷いのない笑顔を作れたかもしれない。
そして数日が経ち、俺はラルとの約束を果たすために、ラルを家から連れ出し俺の旅に同行させることにした。
そして俺がラルの特別な能力を知るのはまだ先の事だった――
あれから数日が経つ。薬を届けるためにも様子を見に行くことにした。
ラルの病気は治らないのだろうか――俺はそんなことを考えながらラルの家へ向かった。
俺の妹……ライムは幼い頃に病気でこの世からいなくなっちまった。
何も楽しいことをさせてやることが出来なかった。
そんな思いはさせたくない。
そう思いラルの家の扉をノックした。
「……」
ノックをしたが返事がない。
寝ているのかな?
倒れていたらどうしようと、心配になり俺は少し強引だが勝手に扉を開けて中に入ることにした。
「ラル……入るぞ」
ラルはゴザの上で横になり眠っていたようだ。少し安心した俺はラルの横に薬を置き家から立ち去ろうとした。
「グレッツ……?」
「すまない、起こしてしまったか?」
ラルは起き上がり横に置いた薬を飲みありがとうと笑顔を向けた。
「もう帰っちゃうの?」
「眠りの邪魔をしないようにと……」
「もう少しお話したい」
その言葉に俺は帰ろうとした足を止め、再びラルの隣に座りラルの体を支え寝かせた。
「あたし……グレッツの旅のお話聞きたいな」
ラルの要望に叶うかどうかはわからないが、俺は現実のことは伏せてこの世界での旅の話をした。
メルとの出会いやキャシーが馬鹿なこと、フライという頼もしい男のことも……。
そして今まで行ったダンジョンの話や、世界の美しい景色などさまざまなことを話してやった。
なぜだろう……ライムに話してるうような気分だ。
ライムの楽しそうな笑顔が浮かぶ。ラルとライムをどうしても重ねてしまう。
駄目だ……ラルはラルだ。
俺はせめて話だけでもと思い俺の全てを話した。
ラルは外の世界を見れないのだから。出来れば直接見せてやりたいものだが……。
「グレッツ……」
ラルは俺の話を聞くと何かを言いたそうにモジモジしていた。
俺が優しく尋ねると……
「あたしの病気が治ったら……グレッツの旅に連れて行ってほしいの」
「それは……」
「お願い! グレッツの話聞いてて、綺麗な景色とか自分の目で見てみたいの」
俺はなんと返事をしていいのかわからなかった。
ラルの病気が治ってほしいのは事実だが、治る保証はなかった。
それに、もし治ったとしてこんな小さな子を連れて冒険なんて出来るわけがない。
魔物だっているし危なすぎる。
「どうせあたしの病気は治らないかもしれないけど……あたしの最後のお願い」
「……わかった」
俺は仕方なく了承した。
ライムに楽しいことをさせてやれなかったのもあって、俺はラルに綺麗な景色を見せてやると約束をした。
そのためにも早くラルの病気を治す方法を探さないと。
「ありがとう……グレッツ。約束だからね」
「あぁ……」
そして数日後――
俺はラルに薬を届けるついでに、また旅の話をしてあげようと思い家に向かった。
するとラルはいつものゴザではなく、台所でうつ伏せになり倒れていた。
「――ラル! どうした? 大丈夫か?」
俺は急いでラルをゴザの上に寝かせ、ラルの口を開き急いで薬を飲ませた。
すると先ほどまでゼイゼイしていたラルは、様態が落ち着きスヤスヤと眠り始めた。
「……よかった」
心を撫でおろすと俺は家を後にし、東区の外れにある市場へ向かった。
なぜかというと、どんな病気も完治させてしまうという幻の石、賢者の石を探すためだ。
これはある時宿屋でプレイヤーが話していたのを聞いたのだが、プレイヤーが営む露店にしか並ばないレアもんらしいのだ。
あるかどうかはわからないが、行ってみる価値はある。
俺は東区の市場へ向かいかたっぱしから露店を巡った。
金はいくらかかっても構わない。金貨なら今まで稼いだ金貨が腐るほどある……。
これを例え全部使ってでもラルを救う。俺はそう誓って市場を駆け巡った。
しかし俺の頑張りはむなしく市場を駆けずり回っても、賢者の石なんてアイテムを出しているプレイヤーは誰一人としていなかった。
俺は半ば諦めていたのだが、内心はまだ助けたいという気持ちはあったのだ。
あれから数日が経った頃、俺はフライとメルとキャシーとクエストの残党討伐を行うために、ラルがいるスラム街に来ていた。
正確にはスラム街のもっと奥の外れに用事があるのだが……。
そこで思わぬことが起こったのだ。
なんとフライが数日前に賢者の石を購入していたそうだ。
俺はなんとしてでも手に入れたいという思いから、なんとか譲ってくれないだろうかとフライに頼み込んだ。
市場で買ったという金貨三枚より多い、金貨五枚を出すから譲ってほしいと頼んだ。しかし人のいいフライは元の値段の金貨三枚でいいと言って、あっさり賢者の石を譲ってくれたのだ。
これは俺に運が向いてきたということなのだろうか。
俺は残党退治を三人に任せて、一目散にラルの元へと向かった。
「――ラル! お前の病気治るぞ」
「え? どういうこと?」
「いいから……そこに寝ていろ」
俺は喜びのあまり柄にもなく声を荒げてしまったが、すぐに冷静になりラルをゴザに寝かせ賢者の石を取り出した。
ラルの真上に賢者の石を掲げると宙に浮いて魔力を帯び始める。
しばらくするとその魔力に包まれた賢者の石は、魔力だけがラルの体に入り込み賢者の石はラルの胸にポトっと落ちた。
落ちた賢者の石をバッグパックに入れるとその名称が変わっていた。
『魔力を失った石』
魔力を失った石――賢者の石を使用して効果がなくなった姿。ただの石だ。
「あたし……よくなったの?」
「大丈夫だ……ゆっくり寝るんだ」
効果はわからないが、おそらく大丈夫だろう。
ラルを寝かせて今夜は現実に戻ることはなく、ラルの側に付いていることにした。
そして翌朝――
「ねぇ、グレッツ起きて!」
どうやら俺は眠ってしまっていたようだ。
目の前を見ると……ラルが起き上がって元気な笑顔を向けていた。
「ラル……大丈夫なのか?」
そう聞くとラルは笑顔でグレッツに抱き着いた。
「うん! グレッツのおかげだよ、ありがとう! 全然辛くないし、今までのが嘘みたいだよ」
「そうか……よかった」
まだ万全とは言えないが、俺は久々に迷いのない笑顔を作れたかもしれない。
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そして俺がラルの特別な能力を知るのはまだ先の事だった――
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