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4、推しが家で待ってるって最高

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「ほら、晴人起きて」
「ん…」
「あら、ハルトくん来てたのね」
「おはようございます」

晴人の寝癖を直して、ロイ様と一緒の食卓につく。

「晴人も来てたんだな」
「…まぁ」
「そういえば、そうか。夜に来たんだよ」
「気づかなかった」
「フフ、窓から入ってくるからね」
「本当に気をつけてね!ハルトくんの綺麗な顔に傷がついたらおばちゃん生きてけないわぁ」
「気をつけます」

母さんがいつものように、晴人の顔をうっとりしながら見ている。

「そういえば、ロイくんの制服は?」
「え」
「え?ロイくんは違う学校に通ってるの?」
「そ、その…実はロイは今夏休みなんだ!」
「夏休み?今は6月だけど…」
「アメリカの学校に通ってて、今は夏休みだから来たんだよね!」
「あら、そうなの?なおさら、ちゃんと言っときなさいよ」

ごめんごめん、と言いながら俺は内心ものすごく焦っていた。
ロイはよく分からないと行った顔をしている。

「ロイは今日は母さんの手伝いをしてね!」
「俺にできることがあるのならば、なんでもしよう」
「頼もしいわね」
「それじゃあ、行ってきます」
「行ってきます…」

今日はなんだか、晴人が静かだ。いや、いつも静かなのだけれど俺といる時はもっと喋る。

「あのロイって奴…どこで知り合ったの?」
「え?えっと…ネット!」
「ふーん…」
「どうして?」
「別に」

晴人はプイッとそっぽを向いた。多分、嫉妬しているのだろう。昔からよく、他の友達と遊ぶと拗ねていたから。

晴人に距離を寄せる。

「フフ、晴人が一番の親友だよ」
「っ!…べ、別に嫉妬なんかしてない」
「そう?ロイと喋ってる時ずーっとこっちを恨めしそうに見てたじゃん」
「そんなことないし…」

晴人は照れたように、怒る。それが面白くて笑っているとほっぺを掴まれた。
ムニムニといじられる。

「い、いひゃいれす」
「フフ、変な顔」

晴人の笑顔もなかなか破壊力がある。幼馴染ながら惚れてしまいそうだ。

学校についてからも、晴人は俺にくっついてばかりだ。

「お、またイチャイチャしてんのか?」
「イチャイチャしてないですー」
「…」

晴人は違う奴が来た途端に静かになる。だが、周りもそれを承知しているので特に誰も気にしない。

「あ、そうだ。玲と晴人さぁ、来週空いてる?」
「え?なんで?」
「合コンあるんだよ!可愛い子がたくさん来るぜ」
「あー…遠慮しておく」
「…俺も」

合コンで上手くいったこと一回もないし、晴人が来ると皆んなそっちに寄っていくしで俺は空気と化してしまう。

「そぉ?じゃあ、他の奴誘うか…」

そう言って、友人が離れて行った途端に晴人が俺に距離を寄せる。

「晴人さぁ、合コン行ってみたら?」
「え、なんで」
「ん?だって、晴人はかっこいいし彼女とかできるんじゃない?」
「別にいらない」
「本当?俺は欲しいなぁ」

周りは次々と恋人を作っていくのを見ていると、羨ましく思う。

「玲は俺がいればいいでしょ…」
「あー…かもしんない。晴人といるのが一番楽しいし」
「…じゃあ、つくんないでもいいじゃん」
「そうだけどさぁ…本当に欲しくないの?俺たち一生童貞かもしれないんだよ?」
「別にいいでしょ」
「よくないね!俺はよくない!」

可愛い彼女をつくって、デートしたりしたい!キスすら未経験のままだ。
そんな俺をみて晴人は呆れたような表情をしていたのだった。





家に帰ると、ロイ様がリビングでくつろいでいた。

「ロイ!ただいま!」
「玲!おかえり」

あぁ!推しにおかえりと言われた!!なんてことだ…鼻血が出そうだ

「今日はどうだった?」
「新しいことばかりで楽しかったぞ、掃除とか料理とかやったんだ」
「へー!どんな料理つくったの?」
「えっとな!」

楽しそうに話すロイ様を見て俺は思わず携帯を構えていた。
ロイ様って本当にかっこいい…大好き…ん?好き?そういえば、ロイ様がいた世界では今どうなっているんだろう?

「ねぇ、ロイ」
「なんだ?」
「ロイのいた世界でさ、彼女とかいた?」
「か、彼女?恋人か?いなかったな」
「ふーん…じゃあ、好きな人は?」
「好きな人は…いたな」

やっぱりか、ヒロインはいたのか。しかし、ロイがいなくなった今、元の世界ではどうなっているんだろうか?

「どんな人?」
「優しくて、笑顔が可愛くて、表情が豊かだ」
「フフ、随分と惚れてるね」
「そうか?そんなことはない」

照れたように笑うロイ様を見て、なんだか少しモヤモヤする。

「ロイはその人に告白したの?」
「した…でも、断られてしまった」
「そっか…失恋しちゃったのかぁ」
「だが、諦めるつもりはないぞ!もしかしたら、勝機があるかもしれん!」

今度は嬉しそうに笑うロイ様はとてもかっこいい。ここまで、人に好かれるというのはいいなと思う。

「…今日は一緒に寝てもいいかな?」
「もちろんだ!」

なんだか、ロイ様の近くにいたい。そう思ったのだった。




 



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