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07:手綱をとる者
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ベルがサロンへ行き、朝食を終えたギデオンは部屋でひとり、落ち着かない時間を過ごしていた。
(さて……。どんな顔で戻ってくるかな)
リネアが怒り狂ってベルを泣かせて帰すに違いない、と彼は自信満々だった。
なにしろ、新婚の夫が朝っぱらから愛人と絡み合っていたのだ。まともな女なら、八つ裂きにしたって足りない案件である。
ギデオンはクッションをふっくら整え、ついでに自分の髪も整え、帰ってきたベルを慰める準備まで完璧に済ませていた。
廊下から、足音が聞こえてきた。
だが部屋のドアが開いた途端、ギデオンは思わず目を瞬いた。
ベルが、ふらふらしながら部屋に入ってきたのだ。
肉体疲労かと思ったが、雰囲気が違う。足どりは弱々しいのに、顔だけは陶酔のそれだった。
言葉を失うギデオンに、ベルはぼんやりと天井の方を見て、心底うっとりした声を出した。
「リネア様……素敵……」
「…………え?」
聞き間違えたと思った。
しかしベルの顔は、どう見ても怒られた人の反応ではなかった。
「ちょっと待て。ベル、何があったんだ?」
問い詰めるギデオンに、ベルは夢見るような表情で振り返った。
「ギデオン様。ベル、気づいたの」
「何をだよ」
「ベルはリネア様のことが好きだって」
「……はァ!?」
ギデオンは思わず立ち上がった。床が鳴った。心臓も鳴った。
「だから、これからは敵同士ね。ギデオン様は、リネア様の旦那様だけど、リネア様の心は渡さない。ベル負けないんだから!」
「そもそも戦ってないッ!!」
まっすぐな瞳で言われて、ギデオンは即座に突っ込んだ
「ベル、本気で言ってるのか。お前、媚薬か何か飲まされたんじゃないのか?」
「失礼なこと言わないで。……リネア様は本当に優しくて、カッコ良くて、そして素敵な人なの」
ベルは胸のあたりを押さえ、うっとりと目を細める。
彼女があまりに陶酔しすぎて、ギデオンの思考は動きを止めた。
もっとも、彼の脳はもともと深い思索とは無縁で、止まった所で誰も気づかない程度の働きしかしていないのだが。
回らない頭で、懸命に考える。
(いや、あの女は嫌な奴だ。僕を見て息ひとつ乱さないし、澄ましていて腹が立つ)
ギデオンの中で、リネアは究極に性格の悪いタイプとして分類されている。
つまり、彼女に恋するなど、理解の範囲外だ。
何と言えばいいのか分からず、沈黙を抱えたまま時間だけが過ぎていく。
「怒られなかったのか? 本当に?」
その果てにようやくこぼれたのは、そんなひと言だった。ベルはこくんと大きく頷いた。
「うん。それどころかベルのこと、大事にするって言ってくれたの」
「だいじ……」
「あとね、リネア様、額にキスをしてくれたのよ……」
「きす……」
「それで分かったの。ベルはリネア様のこと愛してるって」
「あい……」
驚き過ぎてギデオンの返事は、すっかりひらがなに退化していた。
思考が止まると語彙まで簡略化されるあたり、彼の脳は実に正直だった。
「……ああ、愛しいリネア様」
ベルの魂はもう完全にリネアへ飛んでいて、目の前のギデオンは空気扱いだった。
夫の仕返し計画が、なぜか愛人の妻への恋で幕を閉じる。この世にこんな誤算があっただろうか。
ギデオンの顔から、ゆっくりと血の気が引いていった。
(……あの女、いったい何をした!)
ベルがうっとりと呟いた「リネア様」という響きが、耳の奥でいつまでも消えない。
気がつけば、ギデオンはもう部屋を飛び出していた。
自尊心に火がつくと、彼の行動はいつも直線だ。廊下をずかずか進み、ノックもそこそこにリネアの部屋の扉を勢いよく開ける。
「リネア!」
中では、当の本人が机に向かい、書類の束を静かにめくっていた。
顔を上げたリネアは、やってきたのが夫であろうと、召使いであろうと、大差ないような落ち着きで視線だけを向ける。
「……なあに?」
その涼しい声が、ギデオンの神経を逆撫でする。
「ベルに、何をしたんだ!」
前置きもなく詰め寄ると、リネアは瞬きを一度だけした。
「何を、とは?」
「とぼけるな。媚薬でも盛ったんだろう! あんな顔で戻ってきたんだ、普通じゃない」
ギデオンは思わず机に手をついた。書類の角が少しくしゃりと鳴る。
リネアは、溜息もつかず、眉も動かさない。
「私はあなたじゃないんだから、そんな事しないわ」
その言い方がまた癇に障った。あなたならやるでしょうけれどと、暗にしれっと告げている。
「じゃあ、なんでベルが……」
「ギデオン。そんなことより、今日の分の仕事は、もう終わったの?」
「……え?」
唐突に話題を変えられ、ギデオンの思考は一瞬空白になる。
「領主としての書類よ。先週分から溜まっているじゃない。徴税の報告書に、陳情書、組合からの確認書……」
淡々と並べられる書類名の数々。
そのたびに、ギデオンの想像の中で紙の山がひとつ、またひとつと積み上がり、気付けば山脈になっていく。耐えきれず、頭をぶんぶん振り回し、憤ったように目をつり上げた。
「そんなものより、ベルの方が先だろ! それに、お前、本当に何も感じなかったのか? さっきの、見ただろ。僕とベルが抱き合ってたのを」
「ギデオン……」
「なっ、なんだよっ」
「お前、じゃないでしょ?」
リネアは首を少しだけ傾げた。
たったそれだけだが、ギデオンの声が途切れた。反論より先に、喉がひっかかる。そんな彼にリネアは言葉を続ける。
「それと、私に何を感じて欲しかったの?」
「何って……」
ギデオンは息を呑み込んでから、きゅっと奥歯を噛み締めた。
「怒りとか! 嫉妬とか! 夫と愛人が抱き合ってるの見て、普通、何かあるだろ!」
「なるほど」
「説明しないと伝わらないあたりが、もう気持ち悪いんだよ、お前……いや、君は…!!」
リネアを傷つけてやろうと、吐き捨てたつもりだった。
だが「お前」を慌てて「君」に言い直したせいで、どうにも締まらない。
するとリネアは胸の前で両手を組み、肩を落としてみせた。
「妻を差し置いて愛人と抱き合うなんて、ひどいわ。それに夫に気持ち悪いと言われるなんて……。きっと一生の傷だわ……。どうしましょう……」
抑揚の抜けた声は、誰が聞いても分かる、見事なまでの「やってます」という芝居だった。
ギデオンのこめかみが、ぴくりと跳ねる。
「バカにしてるだろ」
「いいえ? これくらいで良いかなと思って」
リネアはあっさりと手をほどき、にっこりと笑った。
「これで少しは気が済んだ? じゃあ、そろそろ仕事しましょうね」
「仕事なんか、やってられるか!」
ギデオンは叫び、踵を返した。
この状況で書類など眺めていられるほど、彼の精神は鍛えられてはいなかった。
だが、一歩、踏み出そうとした所、しゅっという鋭い音が空気を引き裂いた。
「……あ?」
思考より先に足が止まる。
気づいた時には、黒い鞭がギデオンの手首にくるりと巻きつき、ぴたりと締まっていた。鞭の根元は、リネアの手に収まっている。踏み出した体が不自然に引き戻され、よろめいた。
「どこへ行くつもり?」
リネアは微笑んでいた。
いつもの柔らかさのままなのに、鞭の黒が、その微笑を艶やかに縁取っていた。
光の下で、彼女の瞳だけがわずかに深く沈み、獲物を捕らえた肉食獣のような煌めきを宿す。
ギデオンの喉が、ひとりでに鳴った。
逃げたいのに、脚が動かない。怒っているはずなのに、言葉が出ない。
鞭を見下ろし、悔しさとも恐怖ともつかない感情を噛みしめた。
ベルが言った「素敵」。
自分が感じた「恐怖」。
その相反が一人の人間に収まるのが、彼にはどうしても腑に落ちなかった。
(さて……。どんな顔で戻ってくるかな)
リネアが怒り狂ってベルを泣かせて帰すに違いない、と彼は自信満々だった。
なにしろ、新婚の夫が朝っぱらから愛人と絡み合っていたのだ。まともな女なら、八つ裂きにしたって足りない案件である。
ギデオンはクッションをふっくら整え、ついでに自分の髪も整え、帰ってきたベルを慰める準備まで完璧に済ませていた。
廊下から、足音が聞こえてきた。
だが部屋のドアが開いた途端、ギデオンは思わず目を瞬いた。
ベルが、ふらふらしながら部屋に入ってきたのだ。
肉体疲労かと思ったが、雰囲気が違う。足どりは弱々しいのに、顔だけは陶酔のそれだった。
言葉を失うギデオンに、ベルはぼんやりと天井の方を見て、心底うっとりした声を出した。
「リネア様……素敵……」
「…………え?」
聞き間違えたと思った。
しかしベルの顔は、どう見ても怒られた人の反応ではなかった。
「ちょっと待て。ベル、何があったんだ?」
問い詰めるギデオンに、ベルは夢見るような表情で振り返った。
「ギデオン様。ベル、気づいたの」
「何をだよ」
「ベルはリネア様のことが好きだって」
「……はァ!?」
ギデオンは思わず立ち上がった。床が鳴った。心臓も鳴った。
「だから、これからは敵同士ね。ギデオン様は、リネア様の旦那様だけど、リネア様の心は渡さない。ベル負けないんだから!」
「そもそも戦ってないッ!!」
まっすぐな瞳で言われて、ギデオンは即座に突っ込んだ
「ベル、本気で言ってるのか。お前、媚薬か何か飲まされたんじゃないのか?」
「失礼なこと言わないで。……リネア様は本当に優しくて、カッコ良くて、そして素敵な人なの」
ベルは胸のあたりを押さえ、うっとりと目を細める。
彼女があまりに陶酔しすぎて、ギデオンの思考は動きを止めた。
もっとも、彼の脳はもともと深い思索とは無縁で、止まった所で誰も気づかない程度の働きしかしていないのだが。
回らない頭で、懸命に考える。
(いや、あの女は嫌な奴だ。僕を見て息ひとつ乱さないし、澄ましていて腹が立つ)
ギデオンの中で、リネアは究極に性格の悪いタイプとして分類されている。
つまり、彼女に恋するなど、理解の範囲外だ。
何と言えばいいのか分からず、沈黙を抱えたまま時間だけが過ぎていく。
「怒られなかったのか? 本当に?」
その果てにようやくこぼれたのは、そんなひと言だった。ベルはこくんと大きく頷いた。
「うん。それどころかベルのこと、大事にするって言ってくれたの」
「だいじ……」
「あとね、リネア様、額にキスをしてくれたのよ……」
「きす……」
「それで分かったの。ベルはリネア様のこと愛してるって」
「あい……」
驚き過ぎてギデオンの返事は、すっかりひらがなに退化していた。
思考が止まると語彙まで簡略化されるあたり、彼の脳は実に正直だった。
「……ああ、愛しいリネア様」
ベルの魂はもう完全にリネアへ飛んでいて、目の前のギデオンは空気扱いだった。
夫の仕返し計画が、なぜか愛人の妻への恋で幕を閉じる。この世にこんな誤算があっただろうか。
ギデオンの顔から、ゆっくりと血の気が引いていった。
(……あの女、いったい何をした!)
ベルがうっとりと呟いた「リネア様」という響きが、耳の奥でいつまでも消えない。
気がつけば、ギデオンはもう部屋を飛び出していた。
自尊心に火がつくと、彼の行動はいつも直線だ。廊下をずかずか進み、ノックもそこそこにリネアの部屋の扉を勢いよく開ける。
「リネア!」
中では、当の本人が机に向かい、書類の束を静かにめくっていた。
顔を上げたリネアは、やってきたのが夫であろうと、召使いであろうと、大差ないような落ち着きで視線だけを向ける。
「……なあに?」
その涼しい声が、ギデオンの神経を逆撫でする。
「ベルに、何をしたんだ!」
前置きもなく詰め寄ると、リネアは瞬きを一度だけした。
「何を、とは?」
「とぼけるな。媚薬でも盛ったんだろう! あんな顔で戻ってきたんだ、普通じゃない」
ギデオンは思わず机に手をついた。書類の角が少しくしゃりと鳴る。
リネアは、溜息もつかず、眉も動かさない。
「私はあなたじゃないんだから、そんな事しないわ」
その言い方がまた癇に障った。あなたならやるでしょうけれどと、暗にしれっと告げている。
「じゃあ、なんでベルが……」
「ギデオン。そんなことより、今日の分の仕事は、もう終わったの?」
「……え?」
唐突に話題を変えられ、ギデオンの思考は一瞬空白になる。
「領主としての書類よ。先週分から溜まっているじゃない。徴税の報告書に、陳情書、組合からの確認書……」
淡々と並べられる書類名の数々。
そのたびに、ギデオンの想像の中で紙の山がひとつ、またひとつと積み上がり、気付けば山脈になっていく。耐えきれず、頭をぶんぶん振り回し、憤ったように目をつり上げた。
「そんなものより、ベルの方が先だろ! それに、お前、本当に何も感じなかったのか? さっきの、見ただろ。僕とベルが抱き合ってたのを」
「ギデオン……」
「なっ、なんだよっ」
「お前、じゃないでしょ?」
リネアは首を少しだけ傾げた。
たったそれだけだが、ギデオンの声が途切れた。反論より先に、喉がひっかかる。そんな彼にリネアは言葉を続ける。
「それと、私に何を感じて欲しかったの?」
「何って……」
ギデオンは息を呑み込んでから、きゅっと奥歯を噛み締めた。
「怒りとか! 嫉妬とか! 夫と愛人が抱き合ってるの見て、普通、何かあるだろ!」
「なるほど」
「説明しないと伝わらないあたりが、もう気持ち悪いんだよ、お前……いや、君は…!!」
リネアを傷つけてやろうと、吐き捨てたつもりだった。
だが「お前」を慌てて「君」に言い直したせいで、どうにも締まらない。
するとリネアは胸の前で両手を組み、肩を落としてみせた。
「妻を差し置いて愛人と抱き合うなんて、ひどいわ。それに夫に気持ち悪いと言われるなんて……。きっと一生の傷だわ……。どうしましょう……」
抑揚の抜けた声は、誰が聞いても分かる、見事なまでの「やってます」という芝居だった。
ギデオンのこめかみが、ぴくりと跳ねる。
「バカにしてるだろ」
「いいえ? これくらいで良いかなと思って」
リネアはあっさりと手をほどき、にっこりと笑った。
「これで少しは気が済んだ? じゃあ、そろそろ仕事しましょうね」
「仕事なんか、やってられるか!」
ギデオンは叫び、踵を返した。
この状況で書類など眺めていられるほど、彼の精神は鍛えられてはいなかった。
だが、一歩、踏み出そうとした所、しゅっという鋭い音が空気を引き裂いた。
「……あ?」
思考より先に足が止まる。
気づいた時には、黒い鞭がギデオンの手首にくるりと巻きつき、ぴたりと締まっていた。鞭の根元は、リネアの手に収まっている。踏み出した体が不自然に引き戻され、よろめいた。
「どこへ行くつもり?」
リネアは微笑んでいた。
いつもの柔らかさのままなのに、鞭の黒が、その微笑を艶やかに縁取っていた。
光の下で、彼女の瞳だけがわずかに深く沈み、獲物を捕らえた肉食獣のような煌めきを宿す。
ギデオンの喉が、ひとりでに鳴った。
逃げたいのに、脚が動かない。怒っているはずなのに、言葉が出ない。
鞭を見下ろし、悔しさとも恐怖ともつかない感情を噛みしめた。
ベルが言った「素敵」。
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