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第2章
見知らぬ凱旋者
しおりを挟むユリウスが、ルシエルを怯えさせた「あの男」の正体を知るまでには時間を要した。
あの日以来、ルシエルの支配はさらに苛烈なものとなった。
ユリウスは他の者と口を利くことを一切禁じられ、王宮の一室から一歩も出してもらえない日々が続いたからだ。
窓の外からは、連日のように街の賑わいや、どこか浮き足立った国民たちのざわめきが聞こえてくる。だが、その中心にいるのが誰なのか、ユリウスに届く情報は完全に遮断されていた。
だが、ついにその日から一週間後。
事態はユリウスの意思とは無関係に動いた。
部屋を訪れたルシエルは、苦虫を噛み潰したような顔で、吐き捨てるように言った。
「……今夜、あの騎士たちの慰労パーティが開かれる」
「騎士たち、ですか?」
「ああ。その場には、さすがにお前を参加させないわけにはいかないそうだ」
ルシエルは忌々しげに舌打ちをした。
本音では、連れて行きたくはない様子だ。
だが、国の重要人物が集まる公式の祝宴、王代理の右腕であるユリウスを欠席させることは政治的に不可能だと臣下たちにでも進言されたのだろうか。
(騎士の慰労パーティ……?)
ユリウスは身支度を整えられながら、思考を巡らせた。
ルシエルの言葉と、あの日見た不揃いな鎧。
そして国民の熱狂的な歓迎ぶりから推測するに、あの騎士団はおそらく他国の地で数多の戦績を残し、英雄として帰還した者たちだ。
今の実質的な国のトップであるルシエルが無視できず、顔色を窺うほどの存在となれば、彼らが上げてきた功績は並大抵のものではないはずだ。
一国の軍事バランスすら左右するほどの力を持っているのかもしれない。
だが、解せない点がある。
ユリウスは次期宰相として、この十年、国の政務の中枢にいた。軍の派遣状況や外交情勢は全て把握しているはずだ。
そんなユリウスでさえ、あのような騎士団が他国に派遣されていることなど知らなかった。
正規の騎士団ではないのか?
だが、それならばなぜ国民はあれほど彼らを熱狂的に迎えたのか。
知らない騎士団が、国外でものすごい功績を上げ、いきなり帰還して国を揺るがす。
そんな馬鹿な話があるだろうか。
「……行くぞ、ユリウス。俺の傍から離れるなよ」
「はい、ルシエル様」
ユリウスは、あまりにも分からないことだらけのまま、ルシエルの腕を取り、パーティ会場となる大広間へと向かった。
その扉の向こうに、止まっていた時間を動かす「答え」が待っているとも知らずに。
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