【完結】獅子は鳥籠を砕く

真大(mahiro)

文字の大きさ
29 / 112
第2章

見知らぬ凱旋者

しおりを挟む

 ユリウスが、ルシエルを怯えさせた「あの男」の正体を知るまでには時間を要した。

 あの日以来、ルシエルの支配はさらに苛烈なものとなった。
 ユリウスは他の者と口を利くことを一切禁じられ、王宮の一室から一歩も出してもらえない日々が続いたからだ。

 窓の外からは、連日のように街の賑わいや、どこか浮き足立った国民たちのざわめきが聞こえてくる。だが、その中心にいるのが誰なのか、ユリウスに届く情報は完全に遮断されていた。

 だが、ついにその日から一週間後。
 事態はユリウスの意思とは無関係に動いた。
 部屋を訪れたルシエルは、苦虫を噛み潰したような顔で、吐き捨てるように言った。

「……今夜、あの騎士たちの慰労パーティが開かれる」
「騎士たち、ですか?」
「ああ。その場には、さすがにお前を参加させないわけにはいかないそうだ」

 ルシエルは忌々しげに舌打ちをした。

 本音では、連れて行きたくはない様子だ。
 だが、国の重要人物が集まる公式の祝宴、王代理の右腕であるユリウスを欠席させることは政治的に不可能だと臣下たちにでも進言されたのだろうか。

(騎士の慰労パーティ……?)

 ユリウスは身支度を整えられながら、思考を巡らせた。
 ルシエルの言葉と、あの日見た不揃いな鎧。
 そして国民の熱狂的な歓迎ぶりから推測するに、あの騎士団はおそらく他国の地で数多の戦績を残し、英雄として帰還した者たちだ。

 今の実質的な国のトップであるルシエルが無視できず、顔色を窺うほどの存在となれば、彼らが上げてきた功績は並大抵のものではないはずだ。
 一国の軍事バランスすら左右するほどの力を持っているのかもしれない。

 だが、解せない点がある。
 ユリウスは次期宰相として、この十年、国の政務の中枢にいた。軍の派遣状況や外交情勢は全て把握しているはずだ。

 そんなユリウスでさえ、あのような騎士団が他国に派遣されていることなど知らなかった。

 正規の騎士団ではないのか?
 だが、それならばなぜ国民はあれほど彼らを熱狂的に迎えたのか。

 知らない騎士団が、国外でものすごい功績を上げ、いきなり帰還して国を揺るがす。
 そんな馬鹿な話があるだろうか。

「……行くぞ、ユリウス。俺の傍から離れるなよ」
「はい、ルシエル様」

 ユリウスは、あまりにも分からないことだらけのまま、ルシエルの腕を取り、パーティ会場となる大広間へと向かった。

 その扉の向こうに、止まっていた時間を動かす「答え」が待っているとも知らずに。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】選ばれない僕の生きる道

谷絵 ちぐり
BL
三度、婚約解消された僕。 選ばれない僕が幸せを選ぶ話。 ※地名などは架空(と作者が思ってる)のものです ※設定は独自のものです ※Rシーンを追加した加筆修正版をムーンライトノベルズに掲載しています。

流れる星、どうかお願い

ハル
BL
羽水 結弦(うすい ゆずる) オメガで高校中退の彼は国内の財閥の一つ、羽水本家の次男、羽水要と番になって約8年 高層マンションに住み、気兼ねなくスーパーで買い物をして好きな料理を食べられる。同じ性の人からすれば恵まれた生活をしている彼 そんな彼が夜、空を眺めて流れ星に祈る願いはただ一つ ”要が幸せになりますように” オメガバースの世界を舞台にしたアルファ×オメガ 王道な関係の二人が織りなすラブストーリーをお楽しみに! 一応、更新していきますが、修正が入ることは多いので ちょっと読みづらくなったら申し訳ないですが お付き合いください!

六年目の恋、もう一度手をつなぐ

高穂もか
BL
幼なじみで恋人のつむぎと渉は互いにオメガ・アルファの親公認のカップルだ。 順調な交際も六年目――最近の渉はデートもしないし、手もつながなくなった。 「もう、おればっかりが好きなんやろか?」 馴ればっかりの関係に、寂しさを覚えるつむぎ。 そのうえ、渉は二人の通う高校にやってきた美貌の転校生・沙也にかまってばかりで。他のオメガには、優しく甘く接する恋人にもやもやしてしまう。 嫉妬をしても、「友達なんやから面倒なこというなって」と笑われ、遂にはお泊りまでしたと聞き…… 「そっちがその気なら、もういい!」 堪忍袋の緒が切れたつむぎは、別れを切り出す。すると、渉は意外な反応を……? 倦怠期を乗り越えて、もう一度恋をする。幼なじみオメガバースBLです♡

ただ愛されたいと願う

藤雪たすく
BL
自分の居場所を求めながら、劣等感に苛まれているオメガの清末 海里。 やっと側にいたいと思える人を見つけたけれど、その人は……

運命の番は僕に振り向かない

ゆうに
BL
大好きだったアルファの恋人が旅先で運命の番と出会ってしまい、泣く泣く別れた経験があるオメガの千遥。 それ以来、ずっと自分の前にも運命の番があらわれることを切に願っていた。 オメガひとりの生活は苦しく、千遥は仕方なく身体を売って稼ぐことを決心する。 ネットで知り合った相手と待ち合わせ、雑踏の中を歩いている時、千遥は自分の運命の番を見つけた。 ところが視線が確かに合ったのに運命の番は千遥を避けるように去っていく。彼の隣には美しいオメガがいた。 ベータのような平凡な見た目のオメガが主人公です。 ふんわり現代、ふんわりオメガバース、設定がふんわりしてます。

【完結・ルート分岐あり】オメガ皇后の死に戻り〜二度と思い通りにはなりません〜

ivy
BL
魔術師の家門に生まれながら能力の発現が遅く家族から虐げられて暮らしていたオメガのアリス。 そんな彼を国王陛下であるルドルフが妻にと望み生活は一変する。 幸せになれると思っていたのに生まれた子供共々ルドルフに殺されたアリスは目が覚めると子供の頃に戻っていた。 もう二度と同じ轍は踏まない。 そう決心したアリスの戦いが始まる。

たとえ運命じゃなくても、僕は

mimi
BL
「僕は自分の気持ちを信じたい。 たとえ運命から背を背けようとも」 音楽大学に通うΩの青年・相田ひなた。 努力家の先輩αと、 運命の番だと告げられた天才α。 運命か、愛情か―― 選ぶのは、僕自身だ。 ※直接的な描写はありません。

【運命】に捨てられ捨てたΩ

あまやどり
BL
「拓海さん、ごめんなさい」 秀也は白磁の肌を青く染め、瞼に陰影をつけている。 「お前が決めたことだろう、こっちはそれに従うさ」 秀也の安堵する声を聞きたくなく、逃げるように拓海は音を立ててカップを置いた。 【運命】に翻弄された両親を持ち、【運命】なんて言葉を信じなくなった医大生の拓海。大学で入学式が行われた日、「一目惚れしました」と眉目秀麗、頭脳明晰なインテリ眼鏡風な新入生、秀也に突然告白された。 なんと、彼は有名な大病院の院長の一人息子でαだった。 右往左往ありながらも番を前提に恋人となった二人。卒業後、二人の前に、秀也の幼馴染で元婚約者であるαの女が突然現れて……。 前から拓海を狙っていた先輩は傷ついた拓海を慰め、ここぞとばかりに自分と同居することを提案する。 ※オメガバース独自解釈です。合わない人は危険です。 縦読みを推奨します。

処理中です...