【完結】獅子は鳥籠を砕く

真大(mahiro)

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第2章

生きるための約束

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 決行開始の合図が味方の先遣隊から出される直前、ユリウスはレオナルドの影のように、ぴったりとそばに張り付いていた。

 レオナルドのそばから決して離れないこと。
 それを、周りの騎士たちからも、そしてレオナルド本人からも、耳にたこができるほど懇々と言い含められていたからだ。

 王都の闇に紛れ、息を潜めて決行の合図を待っている時だった。
 張り詰めた沈黙を破り、レオナルドが小声で話しかけてきた。

「……ユーリ。少し、いいか?」
「何だ?レオ」

 視線を鋭く周囲に向けたまま返すと、レオナルドは深く息を吐き、こちらに向き直って真剣な顔で言った。

「先程は言えなかったが、……俺には今、この時点では君に言えていないことが、たくさんある」

 言えていないこと?
 ユリウスは何のことか分からず、怪訝な顔をした。作戦に関わる機密事項だろうか。
 だが、レオナルドの言葉は続いた。

「……カイエンを奪還したら、全て話す。
必ず、全てをだ。……だから、待っていてくれ」

 強く、念を押すように言われた。
 カイエンを奪還していない今の段階では、明かせない真実。
 それが何なのか、ユリウスには全く想像がつかなかった。
 だが、レオナルドの瞳があまりにも切実で、拒否することはできなかった。

「……分かった」

 とだけ、短く答える。
 言われてみれば、確かにそうだ。

 レオナルドはずっと、ユリウスと話す時に、何かを言いたげに言葉を飲み込むような瞬間があった。

 それは、今に始まったことではない。
 思い返せば、在学中――ユリウスが「アルファ」として生きるために、彼との関係を事務的なものに変えてから。

 そして、あの卒業式の前夜、拒絶されたあの日も。
 十年ぶりに再会してからも、ずっとだ。

(……何を、レオはずっと抱えているというんだ?)

 十年もの間、彼が沈黙を守り続けてきたこととは、一体何なのか。

 ユリウスは内心、苦笑した。
 誰よりも軽い捨て駒として、この作戦中に死ぬつもりだったのに。

 「全てを話すから待っていろ」なんて言われたら、それを聞くためには生きて帰らなければならなくなってしまう。

(……心残りになるようなことを、しないで欲しかったな)

 死にゆく足枷になるような約束はずるいと、素直にそう思いながら。

 ユリウスはレオナルドの隣で、夜空に打ち上がるはずの決行の合図を静かに待った。
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