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第3章
地獄の刻印⚠️
しおりを挟むユリウスをその腕の中に取り戻したルシエルは、これ以上なく甘い、とろけるような声で囁いた。
「さあ、帰ろう。ユリウス」
ユリウスは、光を失った硝子玉のような瞳でそれに頷き、歩き始めた。
無理やり連れ去られるのではない。
自らの足で、地獄へと向かうのだ。
背後で、レオナルドが絶望的な表情でそれを見ていることも理解した上で、ユリウスは足を止めることなく、愛する人たちに背を向けた。
そして、再び王宮の最上階、あの鳥籠のような部屋へと連れ戻された。
二人きりになったルシエルは、不気味なほどに優しかった。
まるで、これから初夜を迎える花嫁を扱うかのような丁重な手つきで、ユリウスの服を一枚一枚脱がしていく。
そこで、急にユリウスの身体に異変が起きた。
ドクン、と血が沸騰し、下腹部が濡れる。
それは、完全にヒートの反応だった。
(……なぜ、今?)
ここにはレオナルドはいないのに。
ユリウスは朦朧とする頭で考えた。
おそらく、昨夜十年ぶりに起こしたヒートの熱をまだ引きずっており、先程までレオナルドと触れ合い、その匂いを浴びていたことが引き金となって、身体が錯覚を起こしているのかもしれない。
だが、ルシエルにとって、それは至上の喜びだった。
立ち昇る濃厚で甘美なオメガフェロモンに、彼は陶然と酔いしれた顔になった。
「……これが、ユリウスのフェロモンか……最高だ」
恍惚とした表情で笑う。
そして、それからは突発的かつ一時的なヒート状態になったユリウスの「オメガらしい反応」を一つ一つ楽しむように、ルシエルはユリウスの身体を貪り始めた。
後孔から溢れ出る蜜のような愛液を指で救い、美味なる酒のようにクチュクチュと音を立てて舐められた時、ユリウスの背筋にはおぞましい悪寒が走った。
だが、身体は拒絶できない。
そのまま、奥の奥まで、腰がおかしくなるくらい執拗に指で攻め立てられる。
身体は、昨夜初めてレオナルドに抱かれた快感の記憶を鮮明に覚えていて、馬鹿みたいにそれを求めて反応してしまうのだ。
(……違う、これはレオじゃない……っ)
心は完全に砕け散っているのに。
身体だけが熱く疼き、快楽を拾ってしまう。その乖離が、ユリウスを何よりも深く傷つけた。
生理的な涙が溢れる。
だが、ルシエルにはそれが、快感で泣いているように見えているのだろう。
「いい子だ、そんなに気持ちいいか」と、硝子玉のような瞳から流れる涙を、嬉しそうに舐め取った。
「……これでついに、お前は俺のものだ。ユリウスがオメガだなんて、夢みたいだ」
うわ言のように呟きながら、ついに限界まで昂ったルシエルの楔が、ユリウスを貫いた。
「――ッ!!」
その先は、苦痛でしかなかった。
昨夜の、全てを脳が溶けるような快感として受け止めたレオナルドとの行為とは、ヒート中であるにも関わらず、全てが真逆だった。
ただ痛い。ただ苦しい。ただ気持ち悪い。
異物が中を荒らし回る感覚に、吐き気だけが込み上げる。
そして、胎の奥で何度も何度も射精され続け、種を注ぎ込まれた直後。
ルシエルがユリウスの首筋に覆い被さった。
ガブリッ!!
思い切り、首の後ろにある腺を、犬歯で噛み破られた。
「あ、あ゛あ゛あ゛あ゛ッ!!!」
ユリウスの口から絶叫が迸る。
魂を焼き切られるような強烈な痛み。
そして、それを遥かに上回る、生物としての根源的な拒絶と嫌悪感。
自分の魂が、無理やり別の色に塗り替えられていくような冒涜的な感覚。
その全てが電流のようにユリウスの身体を駆け巡り、脳の処理能力を超えた。
ユリウスは、昨夜の幸福な気絶とは違う、絶望によるショックで、そのまま意識を闇へと手放し失神した。
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