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第5章
未来を紡ぐ愛(完)
しおりを挟むあれから、三年の月日が流れた。
国はかつての活気を取り戻し、外交も盛んに行われるようになった。
その再開した外交の中で親交を深めたある国の王女を、カイエン国王は妻に迎え、結婚することになった。
三十歳となったカイエンと、二十歳になったばかりの王女。
十歳の年の差はあるが、王女は気が強く快活で、物怖じしない女性だ。
穏やかで優しい王であるカイエンとは、まさに「静と動」で相性が良いと、外交の際にも何度も顔を合わせているユリウスは、二人の姿を微笑ましく見守っていた。
そして、この三年の間にジークヴァルト公爵家にも大きな変化があった。
屋敷の改装と増築は予定通り進められ、二人で過ごすための広く快適な新しい寝室、そしてレオナルド念願の広大な馬小屋が無事に建設された。
だが、一番大きな変化は、ジークヴァルト家の後継者として育てるために、二人の養子を迎えたことだ。
それぞれ違う貴族の家から、まだ幼い子どもを一人ずつ。
嫡男に生まれなかったが、幼い頃から才覚溢れる子をもっと陽の当たる場所へと送り出したいと願う親元から引き取った。
どちらも、カイエンの強い推薦もあって決めた縁だ。
迎えた子どもは、六歳。
ちょうど、カイエン、ユリウス、そしてレオナルドが初めて「顔合わせ」をした時と同じ歳だ。
一人は、マハト。
六歳にしてすでに生家にいる時から剣の稽古を始めている活発な少年だ。
レオナルドから剣を教わるのが楽しくて仕方ない様子で、一度のめり込んだら一筋になるタイプだ。
「七歳になったら馬に乗せてやる」とレオナルドと約束し、目を輝かせている姿を、ユリウスはいつも微笑ましく眺めている。
もう一人は、ケイン。
マハトとは正反対で、本を読んでは色々な知識を漁るのが好きな、静かながらも芯の強い子どもだ。
何でも吸収したい好奇心旺盛なタイプで、六歳なのにすでにユリウスが話す外交の話や国の仕事の話に興味津々で耳を傾けてくる。
かつて、自分は面白みのない人間だと思っていたユリウスだったが、そんな自分の話をケインが夢中になって聞いてくれるので、今では教育が楽しくて仕方ない。
二人を養子にしたのは、後継者として競い合って欲しいという理由ではない。
どちらかが当主となったあと、一人で重責を抱えていくのではなく、それを支え、二人でジークヴァルト家をよくしていって欲しいという考えからだった。
かつての自分とカイエンのように、あるいは今の自分とレオナルドのように。
その願い通りに、正反対の二人は出会ってからすぐに仲良くなり、お互いの良いところを認め、足りていないところを埋め合い、支え合う兄弟のような関係になっている。
ジークヴァルト家、そして今後また未来でこの国を支えていく人間として、立派に育って欲しいと心から願う。
夜。
ユリウスは、絵本を読んで二人を子ども部屋で寝かしつけたあと、廊下を渡り、レオナルドとの寝室へと静かに向かった。
扉を開ける。
すると、レオナルドがもうすでに待ち構えていたかのように目の前にいて、部屋に入るや否や腕を引かれた。
その逞しい腕の中にすっぽりと収まると、レオナルドが強く、愛おしげに抱きしめてくれる。
「ユーリ。……今日もお疲れ様。国の仕事もして、家のこともして、子どもの相手もして……疲れただろう」
「それはレオもそうだろう。騎士団の仕事に、マハトの稽古まで……ふふ、こら、」
レオナルドが優しい慰労の言葉を口にしながら、ユリウスを抱えたままベッドまで連れて行き、流れるような手つきでシャツのボタンを外し始めたので、その手早さにユリウスは笑ってしまった。
「お疲れ様と言いながら、こんな……」
「疲れているからこそだ。……君のことを、たっぷりと気持ちよくして『癒して』あげる」
「……そんなこと言って……」
癒しと言いながら、いつも通り貪られて、明日の朝には足腰が立たなくなるまで愛される。
そんな未来が容易に見えた。
何度夜を重ねても、お互いを番として求める本能を抑えることは出来ず、2人は理性を失って愛し合ってしまう。
だが、ユリウスは本当はそれを望んでいるので、それ以上は言わなかった。
時が経っても、どれだけ行為を重ねても、家族が増えても。
ユリウスを一人の伴侶として心から求め、熱情を注いでくれるこの愛しい獅子に、頭の先から爪先まで食べられてしまいたい。
そんな幸福な欲求は、ユリウスの中で変わらず存在しているからだ。
シャツが滑り落ち、熱い肌が触れ合う。
「……レオ……愛してる……」
「ああ、俺もだ。……ユーリ……愛してるよ」
重なる唇が、言葉以上の愛を語る。
そうして、愛し合う二人の甘く長い夜は、幸せな微睡みの中へ溶け込むように、いつまでも続いていく。
(完)
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