せめて 抱きしめて

璃鵺〜RIYA〜

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せめて 抱きしめて〜転〜

せめて 抱きしめて〜転〜 24

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「そんなこと言うな。オレは、千都星が生まれて来てくれて、感謝してる。千都星が好きだから、逢えて良かったと思ってる!」
「剛さん・・・」

ボクは顔を上げて、涙でぐしゃぐしゃの顔のまま、剛さんをまっすぐに見つめた。

「本当に?・・・ボク、生まれて来て良かったの?」
「当たり前だ。誰が何と言おうと、オレは千都星が好きだ」
「剛さん・・・キスして。抱いて」

自然とそんなことを懇願していた。
涙は止まらず、相変わらずポロポロと流れている。

剛さんは、優しくキスをしてくれた。
柔らかい口唇で、ボクの口唇を塞ぐ。

いつまでも、いつまでも、こうしていたかった。
この温もりを手放したくなかった。
抱きしめて、いて、欲しかった。

それ以外は、何も望んでいなかったのに。

剛さんは、ボクの頬にも額にも口唇を落として、首にも胸にもキスをしてくれる。
泣いているボクを慰めるように。
ボクの心に空いている穴を、埋めるように。

「剛さん・・・信じて・・」
「なに?」

ボクは剛さんの愛撫に体を捩(よじ)らせながら、呼吸を荒くしながら、

「お願いです・・・ボクを信じて・・・本当に、本当に貴方が好きなんです。貴方だけが、大好きなんです」

まだ、言えないけど。
輪姦されたこと、色んな男とセックスしてきたこと。
恐くて、まだ言えないけど。

いつか言うから。
ちゃんと、言うから。
だから、今は、ボクのこの気持ちだけは、信じて下さい。
ボクの、たった一つの真実なんです。

これ以外は、何も持ってないんです。

剛さんは、体を起こしてボクの顔を覗き込む。
心配そうに眉根を寄せている。
ボクはその首筋に抱きついて、泣きながら懇願していた。

「お願いです・・・ボクのこの気持ちは疑わないで・・・こんなに人を好きになったのは、初めてなんです・・・貴方が好きなんです」
「千都星・・・わかった。わかったから、もう泣くな」
「好き、好き、大好き」

その後、剛さんに抱かれながら、ボクは何度も叫んでいた。
剛さんに抱かれて、嬌声を上げながら。

それでも泣きながら。

縋りついて。

何度も。
何度も。

好きと。

大好きと。

繰り返し、叫んでいた。



季節が秋へ変わろうとしている。
蒸し蒸しした猛暑が徐々に落ち着いてきて、朝晩の気温がいくらか下がり、熱帯夜になる日が少なくなって来ていた。
寝る時に冷房をつけると朝方は寒くて目が覚めるほどだ。
まだ半袖で生活できるけど、近いうちに長袖じゃないと風邪をひく気温に下がるだろう。

ボクは学校が新学期を迎えていたので、大人しく学校へ通っていた。
秋は色々なイベントがあるので、学校生活は慌ただしくなる。
学園祭もあるし、ボクの高校は10月に運動会も行われる。
行事とは一切関係なしにテストも行われるので、みんなあれやこれやと忙しく、しつこいセフレもボクに構う余裕がないみたいだ。

ボクはあまりイベントには興味がないので、学園祭も運動会もずる休みしている。
友達がいないボクにとっては、何ともうざったいイベント。
だからみんなが準備などで走り回っていても、ボクは早々に下校して剛さんのところへ通っていた。

剛さんにしか興味がないので、他の誰に何と言われようと平気だった。
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