そっと、口吻けを。

璃鵺〜RIYA〜

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そっと、口吻けを。

そっと、口吻けを。 15

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珀英に向かって怒ったりしたことはなく、気になったところは無言で直していたんだけど、それを珀英は見ていてオレに合わせてくれていたってことだ。

思えばたしかに、珀英がうちに押しかけてきた最初の頃は、色々気になって直していたけど、今では何にも気にならない。
それは珀英がオレに合わせてくれていたという証拠だった。

全然気づかなかった・・・それもそれでどうなんだ?

自分で自分にツッコミながら、二人はオレの理解できない拘(こだわ)りを、あーだこーだと言い合っている。
3人ともお寿司を食べ終わって、お茶を啜(すす)って一心地(ひとここち)ついた時に、オレは少し大きめの声で、

「あーーーーもうやめ!いつまでその話しする気?!」

と、二人を諌(いさ)めた。二人はきょとんとオレを見つめると、

「あ・・・すみません・・・永遠に話しできます・・・」
「私も・・・」
「はあ?!どういうこと?!」

ちょっと不機嫌そうに言ったら珀英が大慌てで、

「違います!緋音さんのことだから、緋音さんが大好きだからずっと話しができるってことです」
「そうそう」

フォローした珀英に便乗(びんじょう)して美波が大きく頷(うなず)く。
とてもそんな風には思えないけど、まあいい。

いつの間にか美波と珀英が打ち解けていて、尚且(なおか)つオレと珀英が付き合っていることを妙に受け入れてくれていることに、安堵(あんど)していた。

珀英と別れることを考えなくて済んで。

本当に、良かった。



美波ちゃんが自宅に帰ったので、オレは再び緋音さんの家に行っていた。

オレは風呂場の掃除やら、洗濯物のチェックをして深い溜息をついた。
美波ちゃんがいた時は父親として、洗濯やらなんやら必死にやっていた痕跡(こんせき)が、家の中のいたる所に残っている。
それでも、全然ダメなところがやはり目に付いてしまう。

掃除は隅々(すみずみ)までやってないし。呼吸器系があまり強くない人だから、ホコリは注意して拭き取るようにしている。
洗濯も柔軟剤使ってなくてゴワゴワだし。そもそも柔軟剤使わないと、ゴワゴワのせいですぐ肌が荒れるのは緋音さん本人なのに。
トイレ掃除も洗剤使ってるのかちょっとわからない感じで、汚れが出て来たし。

オレは、元の状態に戻すべく、緋音さんが仕事に行っている間に、炊事掃除洗濯に没頭(ぼっとう)していた。
緋音さんほど忙しくない仕事量なのが恨めしいが、今はちょっと助かる。

美波ちゃんが2週間後にイタリアに飛び立ってしまうので、その見送りができるように、緋音さんは急ピッチで色んな仕事をこなしていた。
オレはそれを察知(さっち)して、緋音さんが普通に生きられるようにサポートしていた。
仕事に没頭すると、すぐ『仕事』以外疎(おろそ)かになる人だから。
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