普通の会社員の異世界冒険物語〜程々に強いがちやほやされる訳でもなく、悪い奴もそんないない異世界で必死に生きる〜

ときすでにおすし(サビ抜き)

文字の大きさ
17 / 46
第3章 王都ラーメン編

03.さようなら盗賊村、そして個人的な緊急クエスト発生

しおりを挟む
「旅人先生、旅にもどるそうじゃな」

 旅支度を整え、最後の診療所の手伝い中、昨日親分と話しただけだったのに、もうこのじいさんは知っていた。さすが剣豪・・・


「耳が早いですね、今日の午後に出発しようと思います。お世話になりました」

「何を言っとる。世話になったのはわしの方じゃ。先生の治療術のおかげで、信じられんことに現役の時よりも体が自由に動くようになった。先生は不思議な力を持っておられるようじゃな。」

 お、やっちまったか、適当に治療魔法かけながらストレッチ補助してただけなんだが・・・
 魔法的な何かが作用しちゃったようだ。
 気づかれたっぽいな、どうしよう。

「安心せい、誰にもこのことは言わん。恩人を裏切るようなことはせん。ここで初めて弟子ができてな。わしの剣を残すことに喜びを感じておる。体が自由になった分、より多くの者を育てることができるじゃろう。孫にも迷惑かけんでよくなった。この恩は、一生忘れん。先生ありがとう」


「お気遣いありがとうございます。どうか、内密にお願いします」

「先生が旅にでるのもきっと、きっとそん力に関係したことなんじゃろうな」

 いえ、ラーメンを食べに・・・なんて絶対言えない。



 最後のリハビリが終わり、これで俺の手伝いは終了となった。

 今まで見てきた患者と治療院のスタッフの人たち総出で、見送りにきてくれた。
 親分もいた。

 あ、これ、このまま旅に出る流れですね、ちょっと食堂でご飯食べようと思ってたんですが・・・
 泣いてる子もいるし、行くしかないな・・・


「みなさん、お世話になりました。また会いましょう、お元気で」

 そういって、旅に戻った。
 さよならはいわない。

 親分がでかい声で「また来いよ!」と言っている。みんなも何か言ってる。
 


 最近気がついたが、俺は巡り合わせがいいとおもう。訪れるところ、皆良い人ばかりだ。
 これはチートなのだろうか。もしそうなら、感謝したい。

 



 さて、やっと王都に向けて再出発だ。
 今回は、ちゃんと食料や物資の準備もしたし、ガイさんの地図に盗賊のみなさんの地形の最新情報を追加してきた。
 これで大丈夫だ。今更だが結構遠い、王都。


 そして、盗賊村の縄張を黙々と歩いて抜けて、山道を歩く。
 いま登ってる山を越えれば、王都が見えるはずだ。

 たまに商人や旅人にすれ違うので、挨拶する。山道ではすれ違うときに挨拶しないとな。
 みんな急に挨拶されてビビっているが、ぎこちなく挨拶を返してくれる。


 とくに魔物がでることもなく、黙々と山道を歩く。
 2個目の太陽が夕日になりはじめたので、そろそろキャンプの準備だ。
 ちょうどよく、ひらけた場所があったので、そこで野宿することした。

 夕日のうちに、薪になりそうな木をさがす。
 ある程度たまったので、石を集めてかまどを作り、そこで火を起こした。
 前みたいに、魔石を贅沢につかうのではなく、あくまで種火で使う程度にする。

 大きめの薪に、火がつき始めたぐらいで、あたりは、すっかり夜になった。
 リュックから、ナイフとフライパン、バター、ボア肉、卵、パン、それと調味料一式を取り出した。
 フライパンを火にかけて、バターを落とす。
 バターが良い感じに溶けたところで、ボア肉を適当に切って焼く。
 胡椒と塩をふって両面をよく焼いて、横に卵を落とす。
 卵に火がとおり始めたら、火の弱いところに置いてしばらく放置した。
 肉の中までじんわり火が通ったところで、出来上がりだ。
 肉を切って、目玉焼きと一緒にパンに挟んで食べる。

 う、うまい。うますぎる。

 
 匂いにつられたのか、狼系の魔物が何体か出てきたが、後処理が面倒なんで魔法で脅かして追っ払う。後片付けをちゃっちゃとすまして、簡易結界の水晶を置いて寝ることにした。
 何事もなく朝を迎え、そそくさと片付けて、旅を再開する。
 今日も良い天気だ。


 まだまだ、山道は続く。
 だいぶ、標高が高くなってきて、周りは岩肌が目立つ。
 しばらく歩いていると、先の方で、人が狼に襲われているのが見える。
 中華鍋を振って応戦しているが、このままだとまずいな。

 身体強化をして速度をあげて近づき、石を拾って投げる。
 ちょうど睨み合って静止していた狼にあたった。
 結構な速度で投げたようで、そのまま狼は絶命した。

 襲われていた人は、その場に倒れた。


 旅人の格好をした男性だった。
 近づいて確認したが、気を失っているだけのようだ。
 とりあえず、リュックを枕にして、平らな場所に横に寝かせておく。
 念のため、治療魔法もかけておく。


 しばらくして、男性が目をさます。
 
「気を失っていたのでしょうか。確か狼に襲われていた記憶が・・・」

「危なそうだったので、勝手ですが助太刀しました。冒険者をしてます、タケシです」

「ありがとうございます。食料を投げて逃げてきたのですが、一匹がどうしても振り切れなくて、本当にありがとうございます。」

 俺に感謝をしてきた。
 このイベントが女性だったらと思うと、悔しくてしょうがない。
 テンプレ的な展開になってたはずだ。助けて惚れられてイチャイチャ系の急展開とか。くそ、逃した。


「・・・いえいえ、気にしないでください。」

「私は、王都でラーメンの店を開くために、ラーメン武者修行しています。アガリといいます。」

 ラーメン武者修行?
 な、なんだと!?個人的に非常に気になる修行だ。

「実は私もラーメンに魅せられてて、王都の激戦区に向かう途中なんです。私は、食べる方ですが」

 なんという偶然だろうか、作る側と食べる側がこんな出会い方をするなんて、運命的だ。きっと、この人のラーメンはうまいに違いない。ぜひ、作っていただきたいものだ。至高のラーメンを!

「おお、そうだったのですね!では、自分が店をだしたら、是非食べにきてください!王都にはまだないジャンルのラーメンになりますが、味噌ラーメンという非常に美味しいラーメンを提供しようと考えてます」

「味噌ラーメン!すばらしい。ぜひ食べにいきます。では、王都まで護衛いたしますので、すぐに出発しましょう」

「そ、それはありがとうございます。ただ、お金は開業資金しかなくお支払いすることができないのですが・・・」

「いえいえ、味噌ラーメンを食べられるなら、そんなものいりませんよ」

「そういうわけには。そうだ、私は王都までの飯を作りましょう」

「ラーメン職人が作るご飯ですか、ぜひお願いします。食材は、私が持っているものも提供しますので」

 

 というわけで、アガリさんという貴重な味噌ラーメン職人を、無事王都に届けるという緊急クエストが発生したのだった。

しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜

KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞 ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。 諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。 そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。 捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。 腕には、守るべきメイドの少女。 眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。 ―――それは、ただの不運な落下のはずだった。 崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。 その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。 死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。 だが、その力の代償は、あまりにも大きい。 彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”―― つまり平和で自堕落な生活そのものだった。 これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、 守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、 いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。 ―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。

転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする

ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。 リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。 これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める

自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。 その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。 異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。 定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。

傷物転生令嬢マグダリーナと原初の魔法使いエステラの幻想譚-女神とスライムの光とともに- (旧タイトル:ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる―― ※他サイトでも掲載しています ※ちょいちょい手直ししていってます 2026.12.14 タイトル変更 旧タイトル:ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

優の異世界ごはん日記

風待 結
ファンタジー
月森優はちょっと料理が得意な普通の高校生。 ある日、帰り道で謎の光に包まれて見知らぬ森に転移してしまう。 未知の世界で飢えと恐怖に直面した優は、弓使いの少女・リナと出会う。 彼女の導きで村へ向かう道中、優は「料理のスキル」がこの世界でも通用すると気づく。 モンスターの肉や珍しい食材を使い、異世界で新たな居場所を作る冒険が始まる。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

処理中です...