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第十一章

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「ふむ、名声が欲しいと?」

 ああ、倒すだけなら、たぶん、なんとでもなる。
 とはいえ、ここはオレが倒したっていう見せどころが欲しい。
 どうせこうなっちまったんだ、マッチポンプだろうとなんだろうと結果だけは良くしたい。

「それならば任してくれ、竜王ホウオウを討ち取ったというのならば、君の名を国内に轟かせることを約束しよう」
「ああ、こんな名剣を貸し出してくれただけでも、十分に価値がある」
「剣聖ゴウキの名に置いて、君を竜王討伐の第一功績者として報告しようではないか」

 おお、それなら手段はどうでもいいか。
 よし安全第一だ。アクアにドカンとやって……

「お待ちください、アクアのアレだと、欠片も残らないかも知れません」

 モンスターゲットの鉄則、殺さず瀕死にさせる。などと言って来る。

「えっ、お前、アレゲットするつもりなの?」
「当然じゃないですか」

 大丈夫か? 扱いきれるか?
 お前……そんなに自信マンマンで任しといてくださいって言われてもなあ。
 逆にその自信が怖いよ。

「それに、そちらの方々も、剣でケリを付けなければ納得しないでしょう?」

 そうは言うがおめえ、相手は全身火達磨なんだろ?
 剣なんて接近戦、無理じゃね。

「纏っている炎なんてこけおどしですよ。炎など、所詮は光の塊、アレ事態に攻撃力はありません」

 いやでも、長時間炙られると火傷するぞ。

「一人一合、それぐらいなら問題ないでしょう。そして、それだけあれば仕留められますよね?」

 剣聖以下、全員が頷く。
 マジかこいつら、本気で、剣であの巨大な竜王を打ち倒すというのか?
 いや、こいつらが持つ古代王国の名剣シリーズ、ドラスレと同等の切れ味を持つということは、十数回も切り込めば、倒せない、という事も無いのか。

 そしてラピスが立ち上がりそんな連中を見渡す。

「それでは攻略方法を説明します」

◇◆◇◆◇◆◇◆

「で、なんでこんな事になってる訳?」

 目の前には真剣を構えた剣聖さん。
 逃げ出そうにも高い壁に囲まれた闘技場。
 大入りとなった観客席から手を振ってくるラピス。

 あのクソラビット……面倒だからといって、交渉事を全部あいつに任せるんじゃなかった。

 竜王ホウオウ戦については、まあ、アクシデントもあったがなんとかなった。
 問題はその後。
 結局、剣聖様ご一行は、あんま役に立たなかった訳で、一番の功績者であるオレに討伐報酬やらなにやらを譲ろうという話になったのだが。

 それには、国の君主に会ってお話が……などと言うので全部ラピスに放り投げた。

 そしたらラピスにココに連れて来られて、ちょっと待っていてください。って言うので待っていると、フル武装の剣聖様が現れる。
 どうやら話に聞くと、君主なお人が、オレが竜王ホウオウを倒した事を信じなかったご様子。
 剣聖より活躍したなんてありえない。って言うので、じゃあちょっと、そこの剣聖倒してその称号を頂きましょうか。などと言ったらしい。ラピスが。

 何やってんのぉおお! 無理に決まってるだろぉおお!

「大丈夫ですよ、装備はフルオッケーにしてもらいましたので」

 完全装備な上に、リミットブレイクの使用まで許可してもらったとか。
 ここで勝てば、お坊ちゃまこそが剣聖です。こんな事、またとないチャンスですよ。
 って、グッドサインを送ってくるラピス。

 まてまて、たとえリミブレ使ってもペンテグラムには勝てなかったんだぞ!
 そのペンテグラムといい勝負するコイツに勝てるわけ無いだろう。
 えっ、私はお坊ちゃまを信じてます? おめえの大丈夫は大丈夫だった試しがねえじゃねぇかぁああ!

 ホウオウとの戦いだって、剣聖がドラスレ持ってれば一瞬で終わったかもしれないのに。

 この国の平和のため、オレとエクサリーとの未来のため、いざ竜王を打ち倒そうと向かったその先。

 まずは、ローゼマリアが奴の敷地に侵入し暴れ回る。
 すっ飛んでやってきたアイツを背中から、ドラゴン(大)に変身したロゥリが急襲し、地面に押さえつける。
 すかさず剣聖の弟子達が、ホウオウの首に全力の一刀を順次叩きこむ。

 最後は、抉られたその場所を剣聖が一閃! ボトリと地面に落ちるホウオウの頭。

 なんだあっけないな。と思ったのも束の間、さすがは竜王、一筋縄ではいかない。
 落ちた頭が一瞬にして燃え尽きたかと思うと、斬られた首から炎と共に復活するホウオウの頭。
 その後、剣聖達が命がけで猛攻を掛けるが、斬られた傍から先ほどと同じように復活する。

 どうやら古代王国の名剣シリーズでは、竜王の体を切り刻めても、それがダメージとは直結していない模様。

 ただ一つ、ラピスが持っているドラスレのみは、斬られた箇所が復活していない。
 いや、していない訳ではないが、その速度はかなり遅い。ドラスレだけは十分なダメージを与えられている。
 さすがは対ドラゴン戦の切り札、ドラゴンスレイヤー!

 その性能の効果の程は、竜王と言えど例外ではない!

 しかし、幾ら魔法耐性の高いホワイトドラゴンとて、炎の塊のようなホウオウを何時までも押さえつけて置く事は出来ない。
 とうとうロゥリの拘束を振り切って立ち上がるホウオウ。
 そして、その纏った炎の温度がどんどん上昇していく。

 その温度は、斬りかかった鉱石Mが溶けてしまうほど。

 そんな高温となったホウオウと相対できるのは、テンカウントというチートスキルと、一瞬で距離を取れるスピードを持つラピスぐらい。
 しかしラピスの力では、浅く斬り付けるのが限界だ。
 そこでオレはラピスからドラゴンスレイヤーを借り受ける。

 左手に未来予見のスキルを持つ、聖剣ホーリークラウン。
 右手に唯一、奴にダメージの通るドラゴンスレイヤー。
 むろん、リミットブレイクも使う予定だ。

「危険ですお坊ちゃま!」
「アイツはどうしても、オレの手で倒さなければならない理由が出来た」
「…………?」

 そう言うとオレは、ロゥリに乗せてもらってホウオウに肉薄する。
 体の周りには防炎役の鉱石Mを張り巡らせて。
 ホウオウの正面に回ったオレは鉱石Mを奴の体に伸ばす。

 ん、そんな事をしても溶けて役に立たないだって?

 何言ってる、溶けるなら溶けるで、使い用はいくらでもあるんだよ!
 オレは鉱石Mを遮眼子、そう、視力検査で使う片目を隠すスプーンのような形状にして奴の両目にかぶせる。
 そのまま鉱石Mをオレから切り離す、そしたら溶けて奴の目に張り付く鉱石M。

 そんなマグマの状態なら、なかなか取れないだろうよ!
 
 奴さん、大層暴れて近づけさせないようにするが、オレには未来予見がある!
 どんなに暴れていようとも動きはしっかりと認識できる。
 そしてそんな未来世界を、自由に掛けられる翼もある!

『パワードスーツ・リミットブレイク!』

 目が見えなくて隙だらけな奴の体に飛び移り、その上を駆け上がる!
 今回はリミットブレイクにカシュアの回復魔法は併用しない。
 カシュアには、防御魔法と回復魔法で燃えるこいつの体からオレを守ってもらう。

 この一分が勝負だ!

 オレは脆くなっているであろう、最初に剣聖達が切り落とした首の辺りまで走る。
 首の辺りの一部から色が変わっている場所がある。
 オレはそこをめがけ、全力でドラゴンスレイヤーを叩き付けた!

 そして、今度こそ本当に頭を落とされる、竜王ホウオウの姿がそこにあるのだった。
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