龍帝皇女の護衛役

右島 芒

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第7話ー2

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胸焼けと共に思い起こされる夕食から2日後俺達は本戦が開催される特別演習場に集まり学園長の労いの言葉を聴いていた。周りを見ればやはり見知った顔が殆どで予想通りと言えたが中でも俺が妙に気になっている一組、中国からの留学生チーム。劉鴻釣が率いる道士系の良く纏まったチームだけど戦い方は異彩を放って見えた。なんというか機械的と言えばいいのか、システマチックと言えば良いのか?術者らしからぬ個を殺した非常に合理的過ぎるのが気になっていた。
左端に並んでいる彼らのチームを見ると不意に先頭に立つ劉鴻釣と目が合った。人懐っこそうな顔で俺を見てきた、その笑顔に既視感の様な懐かしい様な感覚を覚える。彼の口が開く声は聞こえないがなぜかハッキリとこう聞こえた。
這已經很長時間了お久しぶりです

 劉鴻釣の言葉が頭から離れなかった、俺としては初対面だが何処か出会っていたのか?首を傾げながら学園長の指示で施設内の控え室に戻って歩いていた。
「勇吾君どうしたの?さっきから変だよ。緊張してる?」
「いやな、初めて会った人に久しぶりって言われるとさ、向うは覚えてるけど俺覚えてないってなんかモヤモヤしないか?もしかしたらどっかで会ってるのかな?」
やっぱり思い出せない。割りと人の顔は覚えている方なんだけどさっぱりだ。
「さっきの会場にいた人?そしたら試合の時に話せば思い出すかもしれないよ。」
確かに月子の言う通りかも知れない今は考えてもしょうがないな直に思い出すかも知れないしな。気持ちを切り替えて控え室に入ろうとすると丁度隣のチームも控え室に入る所だったらしく目が合う…しまった。さっきの事を考えすぎていて隣のチームがあの人達だった事を見逃していた。俺は目が合ったのを無かった事にしたくて何事も無いかの様にドアを開け控え室に入ろうとしたが遅かった。2メートル近い男性剣士とポニーテイルの巫女姿に女性が俺を見ている。
逃げようとする俺に向かって女性が駆け寄り抱き着いて来る。
「ユウ君!何で目を逸らすの!それにまず挨拶でしょ!それと、久しぶりね!同じ学校にいるのに何で会いに来ないの?お姉ちゃんの事嫌いになった?」
「兵頭、久しいな。どうだアレから腕を上げたか?俺か?俺は凄いぞ!」
この情熱的なスキンシップをしているのが香澄千草先輩でその様子を見ながら我関せずに話し始めているのが伽島柾影先輩。
「ち、ちょっと離れて下さい!千草先輩!」
「嫌!高等部に上がったら一度も顔を出さない薄情な弟分にはお姉ちゃんの愛情を再確認させておかないと。」
そう言われると多少後ろめたく感じてしまうけれどでもこうも密着されると胸とかが当たって反応に困ってしまう。それに髪の毛から良い臭いがするなってうわ!!今横目をちらりと向けた先の月子が角でも出しそうなほど不機嫌になっていらっしゃる。いやいや、俺悪くないよ!むしろ助けて欲しい、分かるよな?そんな感じのアイコンタクトと表情を作るもその顔は不機嫌のまま…
「す・み・ま・せ・ん!勇吾君が困っている様なので離れていただけませんか!彼は私のパートナーです。」
何だ月子分かってくれてたのか…でもなんでかな?妙に寒気がする位魔力がだだ漏れですよ月子さん?
「何処から声がするかと思えば小さくて見えなかったわ。それにユウ君が嫌がっている訳じゃないの久しぶりだから照れてるだけよね?」
月子の魔力に反応するかのように千草先輩から静か且つ凍える様な魔力が吹き上がっている。誰か助けて!
「もう一度だけ言います。勇吾君が困ってますので離れて下さい。勇吾君の事はパートナーの私が一番分かっていますから!」
「たかが3ヶ月程度一緒に居るくらいで一番気取るの?私なんか一緒にお風呂入った仲だもんね~♪」
ゴキン!鈍い音と共に月子の足元の床が粉々になっている。
「へー、ちょっとそのあたり詳しく聞きたいですね。どう言う事ですか兵頭さん?」
ぎゃー!敬語モードになってる!ヤバイ絶対なんか勘違いしている!
「ひっ、勘違いすんな!ちぃ姉ちゃんもガキの頃の話持ち出すな!」
「事実でしょ、ユウ君が十子師匠の家に来た時からの仲だもん!2、3ヶ月の俄かパートナーに大きな顔されたくないわ
ねーユウ君。」
「に、にわか!…でっでも長いからと言って言い訳では有りませんうちと勇吾君も会ってから24時間いつも一緒に居ましたから!それにお風呂出た後にいつも髪の毛乾かしてもらっています。」
うわ、月子お前何言ってんだよ!張り合うなよ!あっ、ちょっと待ってちぃ姉ちゃん首!首絞まってる!
誰か助けて…柾陰先輩は…何でこの状況で素振りし始めてるんだ!?
「な、何ですって!ちょっとユウ君お姉ちゃん聞いてないんですけど!」
「勝ちました!さあ、勇吾君は返してもらいます!」
もう何の勝負だよ!まあお陰でちぃ姉ちゃんの拘束する力が緩んだので本人を引き剥がして離れる事にする。
「あー、死ぬかと思った。それと月子、お前何口走って!痛い痛い、抓らないで!何で怒ってるんですか!」
「この異常に馴れ馴れしい女性は何処のどなたですか?」
「説明するからその怖い笑顔止めてくれないかな?っかなんでそんなに怒ってるんだよって痛い痛い痛い!!」
「お姉ちゃんの前でそんなに仲良くして!」
仲良く?一方的に虐げられてる最中ですけど?眼科行った方が良いぞ。そんな良く分からない闘争に一区切り付いたのを察してか柾陰先輩が良い汗かきながらコチラに声を掛けてきた。
「どうした。終わったか?」
「終わったか?じゃねぇ!何素知らぬ顔で素振り始めてるんですか?少しは止めてくださいよ!」
「スマン!長くなりそうだったので肩を温めておこうと思ってな!で、どうなった?」
「どうにもなって無いですよ。は~二人と絡むと異常に疲れるから嫌だったのに…しょうがないか。月子も威嚇するの止めろ、ちぃ姉ちゃんもだよ!」
さてどうやって収拾を着ければいいのやら…
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