龍帝皇女の護衛役

右島 芒

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第7話ー3

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 まずお互いの相互理解から始めよう。俺達には言葉があるのだからまずは話し合うのが筋だと思う。
「知ってます。香澄千草先輩ですよね。」
「知ってるわ。白金月子ちゃんでしょ。」
言葉の圧が強い!未だ臨戦態勢を解かずに俺を間に挟んでの睨みあい継続中。
「なあ、二人ともそろそろ対戦順序が発表されるからさ、この状態を何とかしないか?矛を収めるというか、拳を下ろすと言うか、殺気混じりの闘気に挟まれている俺を解放するとかさ?ね?月子さん?ちぃ姉ちゃん?」
現在両手を二人に握られて滅茶苦茶気まずい状況です。
「そちらが先に放せばうちも離します。」
「コッチの台詞。そっちが先に放しなさい。」
どっちも譲る気無しで再びこう着状態。そんな時素振りをしながら更にスクワットもしていた柾陰さんが良い汗かいた良い笑顔でとんでもない事を言う。
「このままでは埒が明かないぞ。こう言うのはどうだろう?
兵頭をお互い引っ張り合って相手から奪えば勝ちとするのは如何だろうか?」
「馬鹿じゃねぇの!この二人がムキに成ってそんな事始めたら俺の体が裂けるわ!」
思わず先輩の柾陰さんに対して本気ツッコミしてしまう。まさかとか思うだろう?けどこの二人ならやりかねない。基本筋力は年相応の月子だけど霊力によるブーストと体重移動で瞬間的な爆発力が出せる。ちぃ姉ちゃんはあの十子姉さんの弟子でもあり神代流の技術と息をするかのように自然に身体強化をしてる人だ。その二人が全力で俺を引っ張れば想像しただけで血の気が引いていく。
仕方ないここは少々強引だが強気に出る。後々怖いけど背に腹は帰られない。
「いい加減にしてくれ二人とも!こんな所で子供じみた喧嘩して恥ずかしくないのか?月子、お前らしくないぞ?少し冷静になれ。それとちぃ姉ちゃん、まがりなりにも上級生の癖に後輩にムキになるな。」
ちょっと強く言い過ぎたか?二人とも無言で俺の手を離す。俯いたまま黙ってしまった。
「あー、そのなんだ少し言い過ぎたかなっぺど!!」
沈黙に耐えられなかった俺が口を開いた瞬間に右顎を斜め上に打ち上げる強烈な一撃!脳を揺らす一撃を超えた脳を貫く掌打!それとほぼ同時に腹部に刺さる強烈な突きは背骨に響く!
「ユウ君のバーカ!ロリコン!ペド!十子師匠に言いつけてやるんだから!」
「やっ止めろ馬鹿姉、言いがかりで俺を社会的に殺す気か!
くっ、月子?なぜマジパンチ?」
「そんな事も分からないの?お説教だね。」
計算違いをしてました。俺怒る→二人とも意気消沈○に成るはずが俺怒る→二人とも怒りチャージ→俺への制裁○でした
ちぃ姉ちゃんは恐ろしい事を口走りながら自分達の控え室に駆け込んでいった。そして俺は龍に睨まれたカエル状態に。
「兵頭、気にするな。千草の事だ明日にはケロッとしてる。それはそうとちっちゃい子が好きって言うのは感心しないぞ人生の先輩としてもちょっと心配だ。」
「本気にしないで下さい!」
「そうか?」と言いながらも若干引いた顔をしながら控え室に入る柾陰先輩に一抹の不安要素を感じながら俺は俺で隣で睨んでいる月子をどうにかせねばならない。

 本戦会場の控え室内に備え付けられたモニターにはまだ組み合わせは発表されていない。各チームのリーグ予選での戦いの様子を編集した映像が流れている。
「で、あの人とはどういう関係なの?なんだか親しげだったけど?」
「なんだか言葉に凄く圧を感じるんですけど…香澄千草先輩は幼馴染で姉弟子みたいな所だ。俺の格闘術の師匠は礼司兄の奥さん、十子姉さんなんだけど俺が神代家にひき取られる前から十子姉さんの弟子だったんだ。」
神城家と香澄家は古くからの付き合いで関東の龍脈を守護している伽島家と香澄家そしてその二つの家の跡取りになる者を鍛え上げるのが神代家の役目だったらしい。
現代では形骸化していて伽島、香澄両家にとっては家督を継ぐまでの嗜み程度のものになっていた。そんな中でもちぃ姉ちゃんは熱心でほぼ毎日来ていた。
「俺にとってもう一人の姉みたいな人なんだから変に突っかかるなよ。昔はあんなにべたべたしてこなかったのになんだろな?」
「ほんと、鈍感だよね。」
「なんか言ったか?」
「別に。…あの人凄く強いよね。」
先程までの不機嫌な顔から一変真面目な顔つきで俺に聞いてきた。
「強いよ。苦手な間合いも無く隙が無い。学生の中なら五本の指に入る強さだ。」
近接戦闘は神代流の格闘術で補い、中距離は香澄神道流の剣技、遠距離に対しても卓越した機動力で難無く対応してくるのでどんな場面でも器用に立ち回る。バランスが良いと聞いて器用貧乏に見えてしまいがちだけど、彼女はそうはならない。
「抜群の戦闘センスが彼女の本当の強みなんだ。間合いの詰め方、フェイントの読み合い、相手をよく観察して最善手で責めてくる。正直な話、もし俺が本気で戦っても勝率は5分5分…いや、負け越すかもしれないな。」
序盤は拮抗していても最終局面では詰め将棋のように追い詰めてくる。打つ手を悉く潰されジリ貧にされる。勝ち目が有るとすれば俺ではなく月子のほうだろう。
「二人と対戦する事になったらちぃ姉ちゃんとは月子に任せる事になる。至近距離でのごり押しなら月子のほうが断然上だからな。でも油断するなよ、劣勢の中でも常に勝ち筋を見つける人だからな。」
「分かってる。さっきだって何度もうちの事を殺すつもりだった。あんな怖い人そう居ないよ。」
月子はこう言っているがここまで険悪になる理由が分からない。同属嫌悪?見たいなものとは違うよな。二人ともまるっきり性格違う。普段のちぃ姉ちゃんは裏表が無くとても人好きする性格なんだけど…月子に対してはちょっと意地が悪く感じた。
「勇吾君はあの大きな人、伽島先輩と勝負したいんでしょ?
勝算はあるの?」
勝算と言われたらハッキリ言って皆目見当が付かない。何せ去年戦った時でも善戦しただけで勝てる見込みは無かった。
俺が普通自動車だとしたら柾陰さんは大型重機。馬力と質量と排気量が違いすぎる。力量や技術が劣っているとは言いたくないのは俺も男だからね。あの人に勝つ為に修行も積んできたがあの人もきっとそれ以上に強くなっているはず。実力の差がどれだけ縮まったのかはやってみないと解らない。
 
 控え室に入ってしばらくしてモニターから綴谷のテンションの高い声が聞こえてくる。どうやら対戦順が決まったようだ。
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