龍帝皇女の護衛役

右島 芒

文字の大きさ
36 / 61

第7話ー5

しおりを挟む
『いよいよ実戦演習本戦、第一試合がまもなく開始されます。観客席はすでに浮き足立ち両チームの登場を今か今かと待ち焦がれています。それはそうでしょう、一試合目からいきなり熱いカードが組まれるとなりゃ燃えない訳が無い!
非公式に賭博行為を行う生徒達から秘密裏に入手した今回のカードのオッズは僅かながら三光院チームへの勝利予測だ出ている模様。東北屈指の名家、三光院家歴代史上最高傑作。
三光院輝兼が率いる三光院兄妹弟チーム(ブラザーズ)!
そして中等部時代から三光院選手のライバルであり因縁の相手、予選リーグの初日に観衆を驚かせ今や『王子』など囁かれるがしかし、それだけではないのは皆様ご存知だろう!
現役特技武官の肩書きは伊達じゃない!兵頭勇吾!そして今学園で良い意味でも悪い意味でも最も注目されている兵頭選手の『お姫様』白銀月子!一回戦目から激戦が予想されるこの戦いはもう直ぐ始まります。一秒も目が離せませんのでお手洗いに行くなら最後のチャンスです!』

 試合会場の最終チェックが行われている中、勇吾と月子は2つ有るで入り口の一つで待機していた。本戦前に調整してもらった実戦用礼装と符の枚数をチェックしながら試合開始を待っている。隣で座る月子は少しそわそわしている、落ち着きが無い様子で何度も会場の入り口を見ている。
「緊張しすぎだぞ。」
「だって予選の時より沢山の人が視てると思ったら何だかドキドキして…勇吾君は平気そうだけど。」
「俺はあんまり気にならないタイプだな。それよりさっきのアナウンスの方が気になってしょうがねぇよ。」
「ふふっ、王子だって。」
「何が王子だよ、俺は超庶民だ。まあ、本物のお姫様は隣に座ってるけどな。ぜんぜんお姫様っぽくないけど。」
「うちも竜宮殿に帰れば凄くお姫様だからね!」
「はいはい、いつか見れたらいいですね~♪」
「ああっ!信じてないでしょ!」
二人がじゃれ合ってる所に係員が気まずそうに声を掛けて来た。「すみません、そろそろ試合開始になりますので…」
急に声を掛けられて二人して驚いて顔を見合わせる。今までのやり取りを見られていたかと思って気恥ずかしくなった。
慌ててベンチを立ち居住まいを整えると不意に可笑しさがこみ上げて二人で笑う。
「緊張感が無いな俺たち。」
「うち達らしいよね。きっと向こうもバタバタしてるよ。」
扉を隔てたもう一つの扉の先の三光院達の様子を空想して二人でまた笑ってしまう。そんな二人の予想通り試合開始5分前にも拘らず案の定バタバタしていた。

「まーちゃん、ボクのグローブ片っぽ居なくなちゃった。」
「姉さん、さっきバナナ食べると言い出して外したでしょ。ロッカーに下がってるのは何?」
「まーくん、新調した礼装ちょっと地味じゃないかい?」
「いまさらです。今日は我慢してください。ああっもう!姉さんもうバナナは駄目です!もう直ぐ始まりますから!」
「もう一本!」
開始時間1分前までこんな調子の三光院達の様子を係員はハラハラしながら見ていたようだ。

 試合会場のチェックが終了し係員が試合場と客席を隔てているの壁に刻まれた防御障壁を起動すると試合場を覆うように展開した。万が一の事故に対しても客席には被害が及ばないように何重にも安全策がとられていた。客席の上に設けられた特別展欄室には学園長と各省庁から視察として数名の官僚が試合が始まるのを待っている。しかし余り居心地が良く無さそうで一様に身を竦ませている。そこへドアを乱暴に開けて入ってくる一人の男、手に菓子袋と缶ビールを持って現れた神代礼司その人だった。
「おっと、ギリ間に合ったみたいだな。ババア、俺の席何処よ?隣しか空いてねぇじゃん、俺の煎餅盗るなよ。」
「誰が盗るものかこの馬鹿たれ、学校行事で教員が酒とつまみ持参で来る奴がおるか。」
「いいだろ?生徒に見られる訳でもないし。」
「阿呆、小役人共が視ているだろう。」
「良いの良いの、俺この人等のトコに関係ないしそれに俺をどうこう言えるのはこの世で一人だけだからね。」
学園長こと九重環と神代礼司の何気ない会話なかで割り込む事無くじっとしているしか無い官僚の方々は外務省、警察庁
、文部省、などから次官クラスが来ているのにも拘らず礼司の態度は普段と変わらないのは彼が所属している組織が彼らより上だからである。そして彼らが脅えている理由としては今礼司と口喧嘩をしている彼女である。国家の主幹である官僚の彼らが上司から厳命される事が在る。
『九重環を怒らせるな。』
彼女の存在はこの国にとって最重要存在でもあり災厄でもある。彼女の言葉は重くその指は国家元首にも容易く届く。
「こんな事なら無理矢理にでも哥哥をお連れすればよかった
さすればお前を呼ぶ事はなかったのに。」
「何言ってんだ、フラれたんで俺を呼んだくせに。俺だって先生と一緒に飲みながらモニターで見てても良かったんだぜ
ほれそれよかそろそろ始まるみたいだぞ。」

 試合場の二つの門が開き勇吾と月子、三光院兄妹弟が両端に立つと観客席から歓声が上がる。お互い見据える目には曇り無く身も心も気力に満ちている。試合開始の合図を今か今かと待ち望んでいる。拳を何度も開け閉めしてはやる心を抑える五六八、真っ直ぐに勇吾を見つめる輝兼、その二人を静かに見守り試合の進行をシュミレートする正兼。色合いを揃えた三者三様の礼装に身を包んだ彼らの視線の先に居るのは勇吾と月子もその熱い眼差しを受け止めるべく臨戦態勢は整っている。

「月子、頼んだ。」
「任せて、勇吾君もしっかり。」
今試合開始の合図が響いた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

幼馴染みの婚約者が「学生時代は愛する恋人と過ごさせてくれ」と言ってきたので、秒で婚約解消を宣言した令嬢の前世が、社畜のおっさんだった件。

灯乃
ファンタジー
子爵家の総領娘である令嬢の前に、巨乳美少女と腕を組んだ婚約者がやってきた。 曰く、「学生時代くらいは、心から愛する恋人と自由に過ごしたい。それくらい、黙って許容しろ」と。 婚約者を甘やかし過ぎていたことに気付いた彼女は、その場で婚約解消を宣言する。 前半はたぶん普通の令嬢もの、後半はおっさんコメディーです。

処理中です...