龍帝皇女の護衛役

右島 芒

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第7話ー6 Aパート

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開始の合図と共に月子と五六八がお互いに向かって突進、
手加減無しの拳と拳がぶつかる。月子の一撃のほうが僅かに上回っていた様で五六八は後方に飛んで距離を置く。初撃を制したのは月子だった。打ち合った拳に残る鈍い痛みと軽い手の痺れに嬉しそうに笑う五六八が体をほぐす様にその場て軽く跳躍を数回行うと先程より更に加速して月子に向かって突貫する。上下左右から絶え間無い連撃、乱撃を霊力を込めた掌打、肘、膝で攻撃を防ぎつつカウンターの要領で捌くのと同時に打ち込み確実に五六八の両手両足にダメージを蓄積させているが五六八の攻撃速度は衰えるどころか更に回転数を増していく。ついに防ぎきれなくなった月子の腹部に渾身の一撃が刺さる、数メートル吹き飛ばされた月子だったが直ぐに立ち上がる。余りにも重い一撃に一瞬気が遠くなり落ちかける寸前だった。追撃を警戒し五六八を見据える月子だが
五六八も肩で息を切らしながらその場で呼吸を整えている。
ここまでの攻防が開始数分に満たない時間である。

息を整えながら満面の笑みを見せ月子に話しかける五六八。
「これが月ちゃんの本気か…ヤバイ!ドキドキしてきた。」
手合わせ程度なら何度もしてきた二人だが本気での勝負はこれが初めてになる。キラキラした少年の様な目で月子を見ている五六八の様子を内心強い相手と戦える嬉しさ半分自分の攻撃に対して効いていないのかと驚き半分で見つめる月子。
「五六八ちゃんこそ、うち結構打ち込んだつもりだけど効いてないのかな?」
「まさか、メチャメチャ痛いよ。でもまだ我慢できる。手も足もビリビリだけどドキドキの方がもっと欲しい。ねえ、もっとドキドキさせて、ボクもここから更に上げていくから!!」

息を整えた五六八が低い姿勢でまた速度を上げ月子に迫る。
月子はカウンターを狙う、無防備な五六八の頭部に向けて斬り降ろす様な蹴りが五六八の頭部に当たると思った瞬間月子の体が宙を舞った。月子の蹴りのタイミングは通常ならベストだったが五六八の攻撃速度が月子の予想を遥かに上回っていた。低姿勢から繰り出されるスマッシュに似た軌道のその拳は少女の拳ではなく5、6倍は優にある巨大な石像の拳に変わり月子の予測よりも間合いは広くなり逆に月子がカウンターを貰う事になる。これが五六八の切り札ゴーレムの部分生成と格闘術のコンビネーションである。
 
「あぐっ!」
完全に不意を着かれた形の月子は吹き飛び床に叩きつけられるが苦悶の表情を浮かべながらも何とか即座に立ち上がる。
月子の礼装に付与されている防御術式が自動で発動しダメージの2、3割は軽減されたが月子自身の体に残るダメージは想像以上に大きかった。攻撃を受けると認識している状況であれば意識的にダメージ部分に気や魔力を集め軽減させようとする。勿論月子も同様の技術を習得しているが彼女の場合攻撃が当たる瞬間に高硬度の障壁を張りダメージをほぼゼロにする高等技術の使い手である。しかしそれが完全に裏目に出てしまった。
(良いの貰っちゃった…呼吸が上手く整えられない。)
荒き呼吸を何とか整えようと静かに息を吸い込むが腹部に走る激痛で上手く出来ずにいた。それでも何とか痛みに耐えながら息を整え自身の気を循環させ痛みを和らげる。根本的な治療にはならないが一時的に痛みを和らげる事に成功した。
(あの攻撃は危険だ。もっと慎重にならないと五六八ちゃんのペースに飲み込まれる。)
五六八の追撃を警戒して彼女の様子を窺う。
「今のは本気の一撃だったのに…やっぱ月ちゃんすごい!」
嬉しそうに笑う五六八だがその顔には大量の汗が滲んでいるのと先程月子に打ち込んだゴーレムの拳は砕け散りその中から血だらけの拳が露出していた。五六八の術の原理は彼女の着けているグローブにはゴーレム生成の術式が刻まれているのと彼女の体全身にも術式が刻まれている。一瞬でゴーレムの一部を作り出すだけではなく自身の体の一部に付与する事を条件にする事で無詠唱、無動作、発動時差ゼロの攻撃が出来る。しかしその反動は自身の肉体を著しく傷つける。
「五六八ちゃん、その手!」
「必殺技は一撃で決めないとね。失敗しちゃったけど。でもね後3回、この3回で月ちゃんを倒す!」
彼女の右拳はこの試合中は使い物にならないだろう。激痛が走る拳を省みず痩せ我慢しているのが月子には分かった。
「棄権はしてくれないよね?」
傷の状態と出血量から見て重傷であるのは明らかだった。それでも五六八の性格なら辞退してくれないのは分かっていても聞いてしまう月子。
「やだ!だってまーちゃんにお願いして1対1での勝負にして貰ったんだから…だから、最後まで戦って。」
月子と1対1の勝負を望み正兼の援護を断ってまで月子との勝負に拘ってくれた五六八の思いを無碍に出来ない月子は。
「うん、分かった。では次の一手にて決着を着けます。」
痛みを消す為に練っている氣を全身隈なく行き渡らせると腹部にまた激しい痛みが戻ってくるが唇を噛んで我慢する。
十二分に満ちた氣を両手と両足に集める。見据えた先に居る五六八も月子の気の高まりを感じこの一撃が最後の一撃になる予感を感じ迎撃を準備する。すでに使えない右手を捨てた完全にカウンター狙いの構えで月子の一撃を待つ。
「いざ!」
「応!」
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