龍帝皇女の護衛役

右島 芒

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第8話ー8

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『では!準決勝開始です!!』

 試合開始の合図の声が響いた。しかし観客の声援とは裏腹に両チームの動きは驚くほど静かだった。ゆっくりと間合いを詰めるように試合会場中央に歩いていく。

「さて、このまま進めば俺は兵頭。お前はあの白銀とか言うお嬢さんだがそれで構わないか?」
「ええ、そうしましょ。ユウ君は柾陰が相手してあげて私はあの子とちょっと語り合わないといけないので…」
千草の言葉に異様な圧力を感じた柾陰だが気合が入っているな、位にしか思わなかったがその重く暗い視線は月子を捕らえて離さない。

「この距離からでも殺気が伝わってくる。」
千草から放たれている殺気を真正面から受け止める月子。その想いが自分に向けられているか分かっているからこそ千草との戦いは避けられない。しかし隣に歩く彼はきっと理解していないだろうなと思いながらちらりと彼の顔を見上げる。
「うわ、ちぃ姉ちゃん気合は入り過ぎだろ。こわっ!」
などと言っている。
「でもまあ、こっちは作戦どうりに遣るしかねぇからな。月子、冷静にちぃ姉ちゃんを誘導してくれ。頼んだぜ。」
「うん、任せて。あの人もうちと闘いたがってるみたいだから。後ろは任せるからね。」
「ああ、任せろ。そんじゃ、一発お見舞いするか!」

 観客が固唾を飲みながら試合会場を見つめている最中にそれは突然始まりのゴングの様に響き渡った。
勇吾が柾陰に向けて槍の弾幕を撃ち放った。しかし命中する事は無く彼の手前に突き刺さり土煙が起き視界を塞ぐ。
月子はそれを合図として千草に向かって駆ける。思いも寄らない勇吾の牽制にほんの一瞬、月子から視線を外してしまった千草が自身に向かってくる月子の接近に対応が遅れてしまう。月子は一息で間合いを詰めお互いゼロ距離に為る。深く踏む込み拳を固める。見上げた視線の先にある千草を睨む。
「うちが勇吾君のパートナーに相応しい事をこの一撃で証明する!!」
既に腹部への一撃は避けられないと悟った千草は一瞬で身体強化を腹部に集中させ耐える決意をし月子を睨み見下ろす。
「やってみなさい!!この一撃を耐えて姉の強さとユウ君への想いを証明する!!」
お互いの意地がぶつかり合い少女達の戦いが始まった。
肉を抉る鈍い音と共に月子と千草共に別方向に吹き飛んで行った。

月子と千草の戦いの開始を目の端で捉えつつも勇吾の意識は前方の土煙の中で仁王立ちしている柾陰に集中していた。
「この距離はまだ柾陰さんの間合いじゃない。」
魔力を集中し空中で再び無数の槍を生成する。最小限度の魔力で創り出した槍は脆くとてもじゃないが柾陰に傷を与えられる代物じゃないハリボテの槍だが10分の1以下で創れるて余った魔力で射出も出来る。創り出して使うまでのタイムラグや両手を塞がないで出来る為弾幕や牽制には持って来いの術が出来上がった。
「今度は当てる!」
無数のハリボテ槍の中に一本だけしっかりと魔力を錬りこんだ本命の一本を混ぜて撃つ。再び牽制の槍を打ち込む勇吾だがその全てを一撃で振り払われる。
「そんなチマチマした攻撃でまさか俺を倒せると思ってないよな…兵頭!!」
その声はまるで獅子の咆哮。烈迫の気合を込めた雄叫びは試合会場すらも揺らす勢いだ。若干の苛立ちと怒りが篭った柾陰の視線に冷や汗を掻きながらも平成と余裕を装う勇吾。
「そのまさかですよ。今日の目標は遠距離攻撃だけで勝たせて貰います。」
勇吾は明らかに柾陰を挑発しながらも既に槍を前面に生成し終えて柾陰に狙いをつけている。
「その言葉後悔させるぞ。」
「俺に辿り着けてから言って下さいよっと!」
柾陰の突進と共に射出された槍は真っ直ぐに彼を捉えるが彼の進撃阻む事は出来ない。何度も槍の射出と同時に後方へ飛び退き柾陰との距離を一定に保つが徐々にその間合いは詰まされて行く。後一手で柾陰の間合いに入るその時に勇吾の次の術が発動する。
「これならどうだ!『剣舞乱陣』!」
百を越える剣が柾陰の周りを取り巻くその切っ先の全てが彼に向いていた。飛び退く最中にその場に対象が踏み込んだ時点で発動できる術を仕掛けていた。
「おおおおっ!!!」
手に持った木刀で襲い掛かる剣を三振りでなぎ払う。
柾陰は放たれた剣の悉くを落とし再び勇吾を睨み付けた。
「兵頭、いつまで小賢しい真似を続けるつもりだ?」
全方位同時に放たれた剣の雨を払い除ける荒業を見せて尚その呼吸は乱れていない柾陰に対して勇吾にも焦りの表情は見えない。
「ここからが本番ですよ。」
間合いは既に柾陰の射程圏内、勇吾は腰を落とし構えを取る。身体強化、感覚強化を自身に施し柾陰の次の一手を待ち構える。
「いい面構えじゃないか、ならば挨拶代わりだこの一刀受けて見ろ!!」
轟音を響かせる踏み込みから放たれる袈裟切りに対して勇吾は渾身の魔力で創り上げた術式を発動する。
『百壁盾・真改!』
柾陰の一刀は弾き返され大きな隙を作ってしまう。本来巨大な盾を無数に作り出し鉄壁の城塞の様に使う術を圧縮し一枚の強固な盾に昇華させた。
「なんだと!」
「本番だって言ったでしょ!!これが俺からの挨拶代わりです受け取れ!伽島柾陰!!」
弾かれ持ち上がってしまった両手を戻す間を与える事無く柾陰の懐に飛び込み固めた両の拳に魔力を乗せ全力の連撃を叩き込む。最後に渾身の回し蹴りを正影の分厚い胸板に蹴り込み吹き飛ばす。
「どうですか柾陰先輩?去年の俺とは違うでしょ?」
両手に残る感触は確かに柾陰の体の芯を打ち抜いたがそれ以上に拳と足に痛みと痺れが残っている。
「やっぱり俺の技じゃ決定打にすら為らないですね。」
吹き飛んだ柾陰は多少よろめきながらも立ち上がる。しかしその目からは闘志の陰り微塵も感じる事は無くそれどころか先程以上に燃え盛っていた。
「良いじゃないか兵頭、去年より更に出来るじゃないか。滾るな、やはりお前となら本気を出せる。」
柾陰は前回の試合で見せたあの独特の構えを取り勇吾を見据える。
「壱ノ太刀…雷光!!」
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