龍帝皇女の護衛役

右島 芒

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第3話ー3

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えらく安上がりな遣り方で学園長の結界を突破した俺達は学園長が出現させた扉を開ける。
学園長の私室に入ると二人の人物が俺達を待っていた。一人は勿論学園長、先程俺が追加で送った画像を見ながらホクホク顔で画面を見ている。そしてもう一人は苦虫を潰したかのような顔で俺を睨んでいる師匠だ。
「白銀月子さんをお連れしました。」
「白銀月子です、この度入学を許して頂き有難う御座います。」
学園長は書類の山になっている机から身を乗り出すと月子をまじまじと見る。少し懐かしそうな目で微笑んだ。
小雪シャオシュエにそっくりだ。目元とその美しい銀色の髪は祖母譲りだな。」
「お婆様とお知り合いなのですか?」
学園長は月子の傍に歩いてきた。いつもながら寒気がするほど綺麗だと思う反面この人の二つ名をいやがおなしに思い出す。烏の濡れ羽の様な黒髪は床スレスレまで伸びている。整った顔立ちと愁いを帯びたかのような瞳が男を惑わすのだろう。ぴちぴちのジャージ姿でなければ…月子もそのギャップに困惑しているのが良く分かる。
「よく見せておくれ、ふふっその頑固そうな眼差しは朔太郎とよう似ておる妾はおぬしの祖父母と懇意にしておってな…良い夫婦であった。」
「人が来るのにその格好どうかと思いますけど?師匠が言えばこの人も着替えたでしょう?」
俺に急に話を振られた師匠が言い訳をする。
「いや、我輩は女性のオシャレにはとん疎くてな姑娘がその様な姿でも構わないのではないか?さして話をするのに支障はないと思うが…」
師匠は学園長から視線を外しながら言っているが男なら目がいってしまうほど体のラインがくっきり出ている。
「これは哥哥に魅せておるのだ。久しく妾の姿を愛しい哥哥に見せておらなんだからな。下手に露出した姿だとすぐ逃げてしまわれるゆえ…のう?」
この二人の関係性は少々込み入っている。千年以上を生きる存在の二人には俺達では計り知れない何かがあるのだろう。でも端的に言えば学園長はうちの師匠が大好きで師匠は正直苦手と簡単にも出来る。
「まあ、この姿がTPOにそぐわないと言うならば着替えようかな。」
学園長は両手をぽんと叩くとジャージ姿からいつものスーツ姿になっていた。それでも、なんと言うか妙な艶かしさが隠さないのは師匠への配慮?
なのだろうか。
「では妾は白銀と少々込み入った話をするのでお前は隣で待機していろ。」
「分かりましたよ、終わったら呼んでください。それとあんまり月子をいじめないように。」
先ほどの事をまだ根に持っていた俺は学園長に釘をさすつもりで言ったが。
その言葉を聞いた学園長がアデリアさんと同じような表情して俺を見る。
「ほほう、小僧にしては珍しい。」
このままだとまた弄られるのが面倒なので俺は早々に隣の部屋に入った。
隣の部屋は簡単な応接室の様な作りになっておりちゃんとテーブルには茶菓子も置いてある。俺はソファーに腰掛けると大きく息を吐いた。
普段の小人サイズではなくちゃんとした人間のサイズの使用は結構背が高く
俺より頭一つ分大きい。その大きな体が小さく見えるくらい付かれきった顔をしている。
「勇吾よ、もう少し早く来てくれ。我輩がどれ程大変だったか…」
いつの間にか俺の向かいに座っている師匠が俺以上に大きい溜息をつき心底疲れたという表情を浮かべていた。
「自分で文句言いに行ったのに返り討ちに遭ってたら世話ないよ。」
「それとあの写真いつ取った!お前という弟子は師を何だと思っているのだ!嘆かわしい、これは十子殿に報告案件だ!」
あっ、やっぱりそこも怒っていらっしゃる。先程学園長に送った画像はもしもの時に切り札になりそうな予感がしたので帰省中に隠し撮りしておいた師匠のセミヌード画像である。ちなみにまだストックがあるのでほかの状況にも使えそうな事とかは黙っている。
「その件について十子姉も共犯なのでチクっても無駄だよ。」
十子姉は十子姉で学園長からお願いされてたらしいので便乗して撮ってもらっただけなんだが。「我輩にはプライベートは無いのか!!」パパラッチに追い回されている芸能人のような台詞をはいて頭を抱えている師匠を生暖かい目で見ながらもテーブルに用意されている茶菓子を手に取った。
「話は変わるけど師匠は月子の事何処まで知っているんだ?学園長は込み入ったトコまで知ってる様子だったけど…」
俺の問いに真面目な顔で返してきた。
「我輩からは答えられない。白銀嬢から直接聞け、お前も察しって居るだろうが彼女の出自は特別だ。彼女の身の安全上知っている人間は極力少ない方が良い。」
やはり師匠も月子の事、彼女の家の事とも良く知っている。そしてこれ以上問いただしても絶対教えてくれないだろう。…直接か、そこまで知る必要は本当は無いはずなんだ、彼女はあくまでも護衛対象。彼女自身や彼女の家の事など抜きでも守れれば良いだ。
「分かったよ、月子が話してくれるまで待つ事にする。」
「そうしろ、まあお前達の様子からすれば遠からず分かる事になるだろう」
 
 30分ほど位経っただろうか、暇を持て余してきた丁度その時学園長の部屋から声が掛かった。
「話は終わった、こっちへ来い。」
俺と師匠は学園長の部屋へと続くドアを開けると先程まであった執務室ではなくだだっ広い荒野になっていた。
学園長が腕を組みながら何故かまたあのジャージを着ている。
「ここで妾から命令だ!この場で試合をせい。」
「話が見えねー!」
「相変わらず鈍い小僧だ。お前達二人は明日より寝食を共にする仲になったのであろう?ならば後はお互いの実力をさらけ出し信をおける者かを確かめねばならぬであろう?」
意外にこの人脳筋なんだよな。変なところ滅茶苦茶体育会系のノリを出してきやがった。
「試合をするのは構わないのですが寝食を共にすると言うのは少し語弊があると思います。」
月子が少し照れながらも学園長に反論する。試合は良いのかよ!
「ん?何を言うておる。お主ら二人は今日から同室で生活するのだぞ。」
「「ええー!!」」
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