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第4話ー4 Aパート
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「三光院、俺だ。入るぞ。」
声を掛け奴の部屋のドアを開ける。三光院のは部屋は俺の部屋と違い完全に術者が使う工房に作り変えてある。所狭しと置かれた薬品と鉱石。多種多様な魔術書などいかにも術師の工房だ。俺の部屋の3倍以上の広さを誇る三光院の部屋はいつ見ても圧巻だった。両隣の部屋を買い取り壁を取り外している。部屋の中央の魔方陣には未完成なのか白い布がかけられた大きな物体があった。
「いらっしゃい。悪いね散らかっていて、そこらへんに適当に座って。」
「お前はこの前俺が来た時に片して直ぐにこれかよ。」
俺は手に持っていた土産を比較的片付いているテーブルに置くと床に散乱するゴミを拾い始める。
「どうせ新しいゴーレム組み上げるのに夢中だったんだろ?そいつか?」俺の視線の先にある先程の白い布の中に三光院自慢の一品があるはずだ。
「今度の子は前の子より数段動きを良くしているからね。」
三光院も俺に習って近場のゴミを拾い始めた。数分後何となく足の踏み場と座る場所を確保してようやく本題には入れた。
三光院が出してくれた紅茶を飲みながら今日有った事や月子の事を話せる範囲で話した。
「神代特技官直々の依頼ね、もっと上の方からが本当だろうけどね。」
「そう思うよな。ただなんで俺なんだろうと思ってさ。」
「そうだね適任者は他にも居るだろうね。でも君じゃないといけない理由が神代特技官には有った。たぶんそれは月子君の素性が関係するのかもしれないよ。」
ティーカップを眺めながら不意に出た三光院の言葉に自分で持ってきたお菓子を口に運ぶ手が思わず止まる。
「どういう意味だ?」
「あくまで仮定の話で聞いて欲しい。君も薄々気付いていると思うけど月子君はたぶんかなり高貴な身分の出身じゃないかな?それともかなり古くから存在する名家だとボクは推測している。」
「その根拠は?」
「分かっている癖に人に話させるのは君の悪い癖だよ。一つは学園長と彼女の御祖父母が懇意にしていた事。あの学園長が一介の術者の家系に関わる事など有り得ない。」
こいつの言うとおりだと思う。逆にあの学園長が術者の家系と接点を持つという事自体有り得ない。人と言う種族を嫌いながら人を嫌いになれない
愛した王と国を幾つも滅ぼしてはまた人を愛してしまう。『傾国』の体現者、として生きてきた学園長が関わりを持つ術者の家系とはいったい?
「まあ、月子君の正体はおいおい分かるんじゃないのかな。君に随分心を許しているみたいだし、それと君もね。」
「へ、変な勘ぐりは止めろ、俺のはなんて言うか放って置けないだけだ。それに月子も初めての学校生活で不安だから俺みたいな奴でも信用しちまう、…いや、別に月子を騙している訳じゃないけど、ともかくこの事を話したからにはお前もサポートしてくれ。」
俺は一息で言うと立ち上がり部屋を出ようとした。
「なんて顔しているんだい。その顔は罪悪感を感じているのかな?」
「罪悪感?何で俺が。」
「月子君に黙っている事が嫌なんじゃないのかい。そのくせ自分はあれこれと彼女の素性を詮索している、そんな自分自身に嫌悪感すら感じている。それとも・・・」
「なんだ?」
「何でもないよ、戻るのだろ。月子君によろしく。」
三光院が笑いながら俺を見ている、見透かされている様な気持ちになって気恥ずかしい気持ちのまま俺は三光院の部屋を後にした。
ー勇吾が立ち去った部屋で一人、三光院輝兼は先程の友人の思いも寄らない顔を見て思い出し笑いをしていた。普段めったに見せない表情を見れた事が彼にとって何よりうれしかった。彼のとって兵頭勇吾は唯一自身と肩を並ぶ事を許せる友人であり超えたいと思えるライバルでもある。
初めて自分を打ち負かした人物、彼の生涯で始めての敗北を与えた男は始めてあった時どうにも気に入らない男だった。最年少で特技武官になった天才少年として自分より目立っていたからである。彼のやる事成す事全て鼻に付いた。今思えばただの言いがかりだし自身の器量の小ささを思い出し苦笑いしてしまう。転機は直ぐに訪れた、学園内の実戦演習の中等部選抜を決める大会で彼をボロボロに打ち負かせると思った。本当の実力なら自分の方が上だと自負していたがそれも簡単に崩された。自分の最高傑作を真正面から粉砕した彼が自分の前にゆっくりと歩み寄る姿に恐怖した。
「作り込みが甘いんだよ。手ぇ抜いてんじゃねぇ!」
普段見せない粗暴な口調と闘志を剥き出しにしたその目に彼の本当の姿を見た気がして胸が高まるのを感じた。天才と言われ優等生の振りをしている彼の本当の姿を自分なら見れる。自分がもっと強ければ彼の素の姿を見れるはずだ。それからはずっと彼を追いかけている。兄弟からは変わったと言われたが今の自分がとても楽しい。彼を本気にさせる為の努力を怠らない。今年こそ彼に勝つ為のゴーレムを作り上げている。
「今年こそ勝つ、と言いたい所だけど…どうにも波乱の予感がする。
月子君のあの異質な魔力と妙な胸騒ぎがボクの脳裏から離れないんだよ勇吾くん。」
声を掛け奴の部屋のドアを開ける。三光院のは部屋は俺の部屋と違い完全に術者が使う工房に作り変えてある。所狭しと置かれた薬品と鉱石。多種多様な魔術書などいかにも術師の工房だ。俺の部屋の3倍以上の広さを誇る三光院の部屋はいつ見ても圧巻だった。両隣の部屋を買い取り壁を取り外している。部屋の中央の魔方陣には未完成なのか白い布がかけられた大きな物体があった。
「いらっしゃい。悪いね散らかっていて、そこらへんに適当に座って。」
「お前はこの前俺が来た時に片して直ぐにこれかよ。」
俺は手に持っていた土産を比較的片付いているテーブルに置くと床に散乱するゴミを拾い始める。
「どうせ新しいゴーレム組み上げるのに夢中だったんだろ?そいつか?」俺の視線の先にある先程の白い布の中に三光院自慢の一品があるはずだ。
「今度の子は前の子より数段動きを良くしているからね。」
三光院も俺に習って近場のゴミを拾い始めた。数分後何となく足の踏み場と座る場所を確保してようやく本題には入れた。
三光院が出してくれた紅茶を飲みながら今日有った事や月子の事を話せる範囲で話した。
「神代特技官直々の依頼ね、もっと上の方からが本当だろうけどね。」
「そう思うよな。ただなんで俺なんだろうと思ってさ。」
「そうだね適任者は他にも居るだろうね。でも君じゃないといけない理由が神代特技官には有った。たぶんそれは月子君の素性が関係するのかもしれないよ。」
ティーカップを眺めながら不意に出た三光院の言葉に自分で持ってきたお菓子を口に運ぶ手が思わず止まる。
「どういう意味だ?」
「あくまで仮定の話で聞いて欲しい。君も薄々気付いていると思うけど月子君はたぶんかなり高貴な身分の出身じゃないかな?それともかなり古くから存在する名家だとボクは推測している。」
「その根拠は?」
「分かっている癖に人に話させるのは君の悪い癖だよ。一つは学園長と彼女の御祖父母が懇意にしていた事。あの学園長が一介の術者の家系に関わる事など有り得ない。」
こいつの言うとおりだと思う。逆にあの学園長が術者の家系と接点を持つという事自体有り得ない。人と言う種族を嫌いながら人を嫌いになれない
愛した王と国を幾つも滅ぼしてはまた人を愛してしまう。『傾国』の体現者、として生きてきた学園長が関わりを持つ術者の家系とはいったい?
「まあ、月子君の正体はおいおい分かるんじゃないのかな。君に随分心を許しているみたいだし、それと君もね。」
「へ、変な勘ぐりは止めろ、俺のはなんて言うか放って置けないだけだ。それに月子も初めての学校生活で不安だから俺みたいな奴でも信用しちまう、…いや、別に月子を騙している訳じゃないけど、ともかくこの事を話したからにはお前もサポートしてくれ。」
俺は一息で言うと立ち上がり部屋を出ようとした。
「なんて顔しているんだい。その顔は罪悪感を感じているのかな?」
「罪悪感?何で俺が。」
「月子君に黙っている事が嫌なんじゃないのかい。そのくせ自分はあれこれと彼女の素性を詮索している、そんな自分自身に嫌悪感すら感じている。それとも・・・」
「なんだ?」
「何でもないよ、戻るのだろ。月子君によろしく。」
三光院が笑いながら俺を見ている、見透かされている様な気持ちになって気恥ずかしい気持ちのまま俺は三光院の部屋を後にした。
ー勇吾が立ち去った部屋で一人、三光院輝兼は先程の友人の思いも寄らない顔を見て思い出し笑いをしていた。普段めったに見せない表情を見れた事が彼にとって何よりうれしかった。彼のとって兵頭勇吾は唯一自身と肩を並ぶ事を許せる友人であり超えたいと思えるライバルでもある。
初めて自分を打ち負かした人物、彼の生涯で始めての敗北を与えた男は始めてあった時どうにも気に入らない男だった。最年少で特技武官になった天才少年として自分より目立っていたからである。彼のやる事成す事全て鼻に付いた。今思えばただの言いがかりだし自身の器量の小ささを思い出し苦笑いしてしまう。転機は直ぐに訪れた、学園内の実戦演習の中等部選抜を決める大会で彼をボロボロに打ち負かせると思った。本当の実力なら自分の方が上だと自負していたがそれも簡単に崩された。自分の最高傑作を真正面から粉砕した彼が自分の前にゆっくりと歩み寄る姿に恐怖した。
「作り込みが甘いんだよ。手ぇ抜いてんじゃねぇ!」
普段見せない粗暴な口調と闘志を剥き出しにしたその目に彼の本当の姿を見た気がして胸が高まるのを感じた。天才と言われ優等生の振りをしている彼の本当の姿を自分なら見れる。自分がもっと強ければ彼の素の姿を見れるはずだ。それからはずっと彼を追いかけている。兄弟からは変わったと言われたが今の自分がとても楽しい。彼を本気にさせる為の努力を怠らない。今年こそ彼に勝つ為のゴーレムを作り上げている。
「今年こそ勝つ、と言いたい所だけど…どうにも波乱の予感がする。
月子君のあの異質な魔力と妙な胸騒ぎがボクの脳裏から離れないんだよ勇吾くん。」
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