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第5話ー2
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月子と並んで学園長の部屋を訪ねると既にそこには広大な荒野がまた作られてた。俺たちに何をさせるのか何となくわかって来たので扉を閉めて月子の肩を掴んで反転する。
「面倒な事になりそうだから帰ろう。そうだちょっと早目の昼食にしよう!なっ!」
「駄目だよ、学園長先生から呼ばれたんでしょ?」
これが真っ当な話なら俺だってちゃんと話を聞くだろう、しかしいかにもこれから何かしますよと言わんばかりの状態の部屋を見せ付けられて
は逃げ腰にもなる。
「月子、お昼何食べたい?好きな物頼んでいいから帰ろうぜ。」
「ええっ!急にどうしたの?」
食堂のメニューで生徒が無料で食べれるのは日替わりのA・B定食だけは寮費から食事代として引かれているがそれ以外は実費になる。
食堂のメニューはかなり豊富でわりと他のメニューを頼む奴も多い、
女性徒向けに甘味処も充実している。これで月子を釣る!
「季節フルーツの盛り合わせスペシャルサンデーが旨そうだぞ?」
「いいの?」
HIT!ここで畳み込む!
「任せろ!今朝の事のお詫びも兼ねてだ好きなだけOKだ!」
財布は多少痛いが背に腹は変えられない。今月の給料日まで節約すればなんて事は無い。これで危機を回避できるなら安い物だ。
「随分気前が良いではないかえ?でも一歩遅かったのう。」
間に合わなかった…俺の肩に食い込む学園長の指が万力の如く放してくれない。
「察しが良いのはいい事だが逃げ出すのは許さんぞ。」
声のトーンは優しげに聞こえるけど絶対顔を恐ろしい事になっている怖くて後ろを振り向けない。怒気交じりの妖気がちりちりと俺の背中を焼くのが分かる。
「逃げる等と滅相も無い、ただ昼食の後からでも良いかなーと思っただけですよ。」
「そうか?では一汗かいた方が食事は美味であろう?妾がそれを手伝ってやろう。」
藪蛇だった…襟首を掴まれたまま引きずられ部屋の中に連れて行かれる、なんとも情けない。部屋の中には師匠も待っていて昨日学園長が着ていたジャージの色違いを着ている。お揃いって恥ずかしくないのか?
俺の表情を見た師匠が顔を逸らす、そっか学園長に無理やり着させられたんだな。そして学園長もあのジャージ姿だった。
「二人とも妾が入学式で話した事は覚えておろうな。」
「随分と唐突な話ですが正直参加する生徒は少ないんじゃないんですか?俺は出ますけど。」
「私は入学したばかりなのでそれがどういったモノなのか分かりませんが戦闘訓練と思えばいいのですか?それなら私も出てみたいです。」
「主ら二人は期待を裏切らぬな、良い良い。しかしながら勇吾の言葉も確かである、そこでの飴と鞭よ。明日書面で出すつもりであった事の詳細がこれじゃ。」
俺達に手渡されたのは実戦演習の実施期間や基本ルール、それと上位者への報酬だ。ルールは大まかに言うと個人戦ではなくチームとして参加する事。最低二人から5名までのチームを作り特別に作られた戦闘用の施設で複数対複数で片方のチームメイトが全員戦闘不能になるか降服で決着するらしい。
「報酬は?これどう言う事?」
上位者の報酬は要相談って決まって無いじゃん!
「馬鹿を言う出ない、大概の望みは叶えてやるつもりだ。世界征服したいとかハーレムを作りたいとか言い出す馬鹿者がこの学園に居ないとも限らぬがその手の奴は妾の拳で目を覚まさせてやる。そうではなく個人の研究に対する援助や予算の上乗せ国への口利きなど数多有ると言う事だ。お主は何が良い?」
「…お金下さい。」
「えっ?意外かも!」
月子が驚いた声を出し俺を見る。お金は大事だよ、有り過ぎるのはろくな事無いけど有るなら有るで越した事はない。
「俺が欲しいんじゃなくて俺が世話になった施設に贈りたいんだ。」
児童保護施設って国の援助が有るけど結構カツカツで遣り繰りしているところが多く纏まったお金でも入ればその分施設の運営が楽になる。
「そっか、勇吾君もご両親が…うん!それ凄く良いねうちもそうする。学園長先生、私と勇吾君が一番になったらそのお願い聞いてくださいますか?」
「月子は月子で何か無いのかよ?嬉しいちゃ嬉しいけど。」
月子は俺の顔を見ると笑顔で言った。
「うちは今凄く幸せだからせめて誰かのお手伝いがしたいだけだよ。」
そんな事言われたら言い返せないしその表情は反則だ。思わず可愛いと思ってしまう。
「揃いも揃って欲の無い事だ。さて事の仔細は明日にでも知れ渡ろう。ここからが本題での、勇吾、月子主ら二人には今から試合って貰う。」
ほら来た、何を言い出すかと思ったらそう言う事か。
「学園長先生?話が唐突過ぎてお話の意味が分かりません。」
「そうだそうだ!意味のない事はやめろ!」
普通に首を傾げている月子の尻馬に乗り俺も抗議の声を上げてみる。
「これは異な事を。何故そなた等を同室にしわざわざ二人揃って呼んだと思う。おぬし等でチームを組め、されば各々の力量を確かめるのに都合が良かろう?昨日それをし忘れたのでな。」
…言ってた!確かに言ってた!けどなんか上手い具合に有耶無耶になってたのに覚えてたよこの人!嫌な予感的中した!
俺が頭を抱えて居ると学園長が月子に何か耳打ちしている、嫌な予感しかしない。ほら何だか月子がやる気出した顔付きになってきている。
藁にも縋る思いで師匠を見ると『これも修行だ』なんていう始末。
「その格好ではやり難かろう?それ!」
学園長が手の平をぽんと合わせると俺と月子の制服が学園指定のジャージに変わる。
「マジでやらなきゃ駄目か?月子も…」
「勇吾君、あくまでも試合だからね?でも痛かったらごめんね?」
月子の目が何処となく楽しそうに見えているのは俺の目の錯覚だと思いたい。
「面倒な事になりそうだから帰ろう。そうだちょっと早目の昼食にしよう!なっ!」
「駄目だよ、学園長先生から呼ばれたんでしょ?」
これが真っ当な話なら俺だってちゃんと話を聞くだろう、しかしいかにもこれから何かしますよと言わんばかりの状態の部屋を見せ付けられて
は逃げ腰にもなる。
「月子、お昼何食べたい?好きな物頼んでいいから帰ろうぜ。」
「ええっ!急にどうしたの?」
食堂のメニューで生徒が無料で食べれるのは日替わりのA・B定食だけは寮費から食事代として引かれているがそれ以外は実費になる。
食堂のメニューはかなり豊富でわりと他のメニューを頼む奴も多い、
女性徒向けに甘味処も充実している。これで月子を釣る!
「季節フルーツの盛り合わせスペシャルサンデーが旨そうだぞ?」
「いいの?」
HIT!ここで畳み込む!
「任せろ!今朝の事のお詫びも兼ねてだ好きなだけOKだ!」
財布は多少痛いが背に腹は変えられない。今月の給料日まで節約すればなんて事は無い。これで危機を回避できるなら安い物だ。
「随分気前が良いではないかえ?でも一歩遅かったのう。」
間に合わなかった…俺の肩に食い込む学園長の指が万力の如く放してくれない。
「察しが良いのはいい事だが逃げ出すのは許さんぞ。」
声のトーンは優しげに聞こえるけど絶対顔を恐ろしい事になっている怖くて後ろを振り向けない。怒気交じりの妖気がちりちりと俺の背中を焼くのが分かる。
「逃げる等と滅相も無い、ただ昼食の後からでも良いかなーと思っただけですよ。」
「そうか?では一汗かいた方が食事は美味であろう?妾がそれを手伝ってやろう。」
藪蛇だった…襟首を掴まれたまま引きずられ部屋の中に連れて行かれる、なんとも情けない。部屋の中には師匠も待っていて昨日学園長が着ていたジャージの色違いを着ている。お揃いって恥ずかしくないのか?
俺の表情を見た師匠が顔を逸らす、そっか学園長に無理やり着させられたんだな。そして学園長もあのジャージ姿だった。
「二人とも妾が入学式で話した事は覚えておろうな。」
「随分と唐突な話ですが正直参加する生徒は少ないんじゃないんですか?俺は出ますけど。」
「私は入学したばかりなのでそれがどういったモノなのか分かりませんが戦闘訓練と思えばいいのですか?それなら私も出てみたいです。」
「主ら二人は期待を裏切らぬな、良い良い。しかしながら勇吾の言葉も確かである、そこでの飴と鞭よ。明日書面で出すつもりであった事の詳細がこれじゃ。」
俺達に手渡されたのは実戦演習の実施期間や基本ルール、それと上位者への報酬だ。ルールは大まかに言うと個人戦ではなくチームとして参加する事。最低二人から5名までのチームを作り特別に作られた戦闘用の施設で複数対複数で片方のチームメイトが全員戦闘不能になるか降服で決着するらしい。
「報酬は?これどう言う事?」
上位者の報酬は要相談って決まって無いじゃん!
「馬鹿を言う出ない、大概の望みは叶えてやるつもりだ。世界征服したいとかハーレムを作りたいとか言い出す馬鹿者がこの学園に居ないとも限らぬがその手の奴は妾の拳で目を覚まさせてやる。そうではなく個人の研究に対する援助や予算の上乗せ国への口利きなど数多有ると言う事だ。お主は何が良い?」
「…お金下さい。」
「えっ?意外かも!」
月子が驚いた声を出し俺を見る。お金は大事だよ、有り過ぎるのはろくな事無いけど有るなら有るで越した事はない。
「俺が欲しいんじゃなくて俺が世話になった施設に贈りたいんだ。」
児童保護施設って国の援助が有るけど結構カツカツで遣り繰りしているところが多く纏まったお金でも入ればその分施設の運営が楽になる。
「そっか、勇吾君もご両親が…うん!それ凄く良いねうちもそうする。学園長先生、私と勇吾君が一番になったらそのお願い聞いてくださいますか?」
「月子は月子で何か無いのかよ?嬉しいちゃ嬉しいけど。」
月子は俺の顔を見ると笑顔で言った。
「うちは今凄く幸せだからせめて誰かのお手伝いがしたいだけだよ。」
そんな事言われたら言い返せないしその表情は反則だ。思わず可愛いと思ってしまう。
「揃いも揃って欲の無い事だ。さて事の仔細は明日にでも知れ渡ろう。ここからが本題での、勇吾、月子主ら二人には今から試合って貰う。」
ほら来た、何を言い出すかと思ったらそう言う事か。
「学園長先生?話が唐突過ぎてお話の意味が分かりません。」
「そうだそうだ!意味のない事はやめろ!」
普通に首を傾げている月子の尻馬に乗り俺も抗議の声を上げてみる。
「これは異な事を。何故そなた等を同室にしわざわざ二人揃って呼んだと思う。おぬし等でチームを組め、されば各々の力量を確かめるのに都合が良かろう?昨日それをし忘れたのでな。」
…言ってた!確かに言ってた!けどなんか上手い具合に有耶無耶になってたのに覚えてたよこの人!嫌な予感的中した!
俺が頭を抱えて居ると学園長が月子に何か耳打ちしている、嫌な予感しかしない。ほら何だか月子がやる気出した顔付きになってきている。
藁にも縋る思いで師匠を見ると『これも修行だ』なんていう始末。
「その格好ではやり難かろう?それ!」
学園長が手の平をぽんと合わせると俺と月子の制服が学園指定のジャージに変わる。
「マジでやらなきゃ駄目か?月子も…」
「勇吾君、あくまでも試合だからね?でも痛かったらごめんね?」
月子の目が何処となく楽しそうに見えているのは俺の目の錯覚だと思いたい。
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