能力チート無しで目指す、現代人的ダンジョン踏破 ~成長するのは斜め上~

ふぉ

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三章 あん・あん、いやあん、第三層

48 内燃機関がこの世界には無いねん

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 「エンジン、エンジンんんん~、円陣んん」僕はそう歌いながら一人円陣、腕曲げポーズを掲げた。円陣というより、マルですよのポーズである。もちろんこれを誰かに見られるようなヘマはしない。そんな28日目のスタートだ。

「おはようっす。もしかしアンタがアフタさんっすか?」
「ひょげぇぇ。」
 見られたか? 一人円陣プレイを見られたかぁぁぁ? ここはいつもの何事も無かったかのように全てをスルーだ!

「あ、そうですよ。・・・って、もしかしてこの前、村の前で拾ったイケメン?」
「その節はお世話になったっす。」
「ああ、元気そうでなによりです。」
 見た感じ、本調子ではなさそうだけれど、顔色はだいぶ良くなっていた。

「いやぁ、アフタさん、アンタ、命の恩人っすよ。スカルドラゴンにボコボコにされた帰り道、パーティーがオレ以外全滅。自分にもお迎えが来ていたところを、アフタさんに連れ戻してもらったっす。」
「全滅・・・。」
「スカルドラゴン、あれは無理っす。ちょー無理っす。」
 笑いながら軽そうに言ってるんだけど、仲間全滅だよ?

「そういえば名前も聞いてないんですけど。」
 僕の名前は治療院の人に聞いたのかな? 一応、運び込んだとき名乗ったから。
「オレっすか?オレはカッチェ。よろしくっす。」

「ええっと、カッチェは何をしに来たんですか?」
「もちろんお礼を言いにきたっす。」
「そう。まあ、ちょっと運んだだけだし、大したことじゃ無いですよ。それじゃ僕は作業があるので。」
「それじゃあ、また改めてまた来るっす。治療院のじいちゃんにまだ出歩くなって言われてるっす。」
 そう言うとカッチェは去って行った。外出許可が出ていないのにお礼を言いに来たのか。軽そうに見えるけど、意外に律儀なのかもしれない。

「あ、さっきの踊り、今度教えて欲しいっす。」
 カッチェひょっこり顔を出して言った。去ってなかったぁぁぁ! しかもやっぱり見られてたぁぁぁ!

 そして今度こそ確実に彼は去って行った。余計な置き台詞はやめて欲しい。気を取り直して僕はエンジン作成作業に戻る。ジャンク屋で部品を見繕ったんだけど、どうも第四層は電気系のパーツが多い。エンジンに流用できそうな物もあるんだけど・・・。例えばこのパーツ、電気モーターなんだよね。しかもかなり大型の。流用できるのは回転軸の部分とかかな。

 それと材質が不明な装甲っぽいパーツがあるんだけど、これも流用できそうだ。かなり強度が高い。これならガソリンの燃焼に耐えられる。しかし・・・つまり第四層に行ったら、この無茶な強度の敵が出るということだよね? もうどうやったって勝てる見込みが無い。たぶんボスはSFで出てくるマスターコンピュータみたいな奴で、レーザーとか撃ってくるに違いない。でも、それをまともに突破している冒険者もいるんだよね? もはや強さの桁が違う。

 とにかく資金が尽きる前に作るぞっと、気合いを入れていたところへ宿爺がやってきた。
「ちょっとボイラーの調子が悪いので見てくれんかの?」
「あ、はい、分かりました。」
 僕は露天風呂へ向かった。

 ボイラーをチェックすると排気ノズルが真っ黒に汚れ詰まりかけていた。
「ええっと、前に説明しましたが、一日に一回はこれを掃除しないと故障しますよ。」
「そうか、客がひっきりなしに来るから24時間稼働させたのがいけなかったかの。」
 おい、宿爺! 素人ボイラーになんて無茶をさせるんだ?

「最低限のメンテナンス時間をとってください。あと風呂の清掃もちゃんとやらないと、衛生的に問題が出ますから。」
「うぅぅん、仕方ないかの。」
 宿爺は残念そうにしている。機会損失を気にしているようだ。当初の想像を超えて来客があるらしい。

 僕は再び作業場へ戻る。すると筋肉隆々の強面髭オヤジが僕を待っていた。
「お前がアフタか?」
 強面髭オヤジは僕を睨み付ける。こわぁぁぁいぃぃぃ。

「は、はぃぃぃ。」 
 僕は怯えながら答える。

「そうか、早速だが頼みがある。高温が出せる炉を作って欲しいのだ。」
「え! なんで僕に?」
「宿屋のジジイから色々作れるって聞いてな。俺はここで鍛冶屋をやっているんだが、どうしても加工できない鉱物がある。」
「鉱物って種類は?」
「アダマンタイトだ。」

 どっひゃぁぁぁ。キタよ、キタキタ、アダマンタイト来たよ。幻の鉱物。最強の武器を作る素材!

「さすがにそれは僕の知識では難しいですよ。魔法で何とかならないんですか?」
「大昔、大賢者リコリースがアダマンタイトで最強の武器を作ったという伝承が残されているだけだ。アダマンタイト自体はこのダンジョンの下層で極まれにドロップするんだが、誰も加工できない有様だ。魔法の力で鉄を溶解させる温度までもっていったんだが、びくともしない。」

 さすがアダマンタイト、化学式すらさっぱり不明の謎金属だけのことはある。合金か何かにしても、そんな凄まじい金属は僕の中ではまったく思い当たらない。

 鉄の加工温度はせいぜい1000度、溶解するのは1500度。灯油バーナーは温度の高い部分で1800度ぐらい。融鉄が可能な1500度でびくともしていないのなら、1800度でどうにかなるか非常に怪しい。そもそも温度でなんとかなるんだろうか?

 まあ高温を出すだけなら方法はあるんだけど・・・加工まで考えると、この世界の設備では無理だ。

「・・・温度を上げれば良いんですか? 出来なくは無いですけど、すっごい、ものすっごい危険ですよ?」
「出来るのか? こう見えても俺は第五層の到達者で魔法戦士だ。危険なら何度も乗り越えてきた。まあ、最後の最後は無理だったが。」

 このオヤジ・・・第五層の到達者?! しかも魔法戦士! そして今は鍛冶場の魔法オヤジにクラスチェンジっと。

 なんだかよく分からないけれど、こうして僕はアダマンタイトの加工を手伝うことになった。早くエンジンを完成させたいんだけどなぁ。
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