能力チート無しで目指す、現代人的ダンジョン踏破 ~成長するのは斜め上~

ふぉ

文字の大きさ
50 / 208
三章 あん・あん、いやあん、第三層

50 ボウボウと吹き上げる炎と完成する棒

しおりを挟む
「フレーフレー、鍛冶場の魔法オヤジぃぃぃ。」
 僕は鍛冶場の外から声援を送った。

「誰が鍛冶場の魔法オヤジだぁぁぁ?!!!!」
 あ、ヤバい聞こえていたらしい。まあ、声援だから聞こえないと意味が無いんだけど。

 しばらく時間が経つ。炉も十分に暖まった頃だろう。そして鍛冶場から強烈な光が漏れる。どうやらアルミニウム粉末を投入したようだ。

 カーン、カーン

 高い音が響く。アダマンタイトを打ってるのか? そして鍛冶場の熱が外にいる僕にまで感じられるほどの状態になっている。正直、中の温度がどうなっているのか想像も付かない。一つ言えるのは、遠慮無く燃料が大量投入されていることだ。

「フレーフレー、鍛冶場の魔法オヤジぃぃぃ。」
 僕は再び声援を送る。

 カーン、カーンという音だけが響く。それが魔法オヤジの返事だった。

 暇になった僕は鍛冶場から少し離れて、オヤジの手料理の弁当を食べた。一つ一つが丁寧に作り込まれていて、愛情が詰まっていそうな弁当だった。ちょっと怖い。

 さらに時間が余ったので、手で土を掘って山を作った。近くにあった枝や葉を使って装飾していく。うん、なかなか趣(おもむき)があるものが仕上がったぞ。

 そんなことをしていると、ずっと聞こえていた金属を打つ音が途絶えた。魔法オヤジとうとう・・・。僕は鍛冶場の中を確認しに行く。

「オヤジぃぃぃ。」
 僕はオヤジの生死を確かめた。そこにはあった。プスプスと煙を上げ、焼死体となった魔法オヤジの姿を。

「オヤジぃぃぃ。うぁぁぁぁ魔法オヤジィィ!!!!」
 僕は叫んだ。鍛冶場はまだサウナよりも暑く、呼吸をするだけで喉の粘膜が焼け爛れそうだ。

「うっせぇぇぇ、こっちは休んでんだぁぁぁ、静かにしろや!」
 あ・・・魔法オヤジ、生きてた。

「もしかして成功したんですか?」
 魔法オヤジはプスプスと煙を上げながら、指先で方向を示す。僕はその先を見た。

「棒?」
 そこには棒があった。てっきり刃のような物を想像していたんだけど、それは棒だった。

「現時点で最強の棍(こん)だ。使う者が使えばあらゆる武器を粉砕し、あらゆる魔物を叩きつぶすだろう。」
 相変わらずプスプスと煙を上げながら、魔法オヤジが言った。

「使う者って、誰か当てがあるんですか?」
「第七層到達者、武王ギデアだ。俺の親友だ。」
 七層と言うことは、ブレアのパーティーメンバーか。おそらく彼女に劣らず、凄まじく化け物じみた力を持っているのだろう。僕がその一撃を受けたら、それまで生きていた形跡は跡形も無く消失するのだろう。

「アダマンタイトはまだある。体力が回復したら次の武器を作る。」
 プスプスと煙を上げながら言う魔法オヤジ。完全に死体・・・じゃなかった死に体なんだけど、その目には力が宿っている。

 そして魔法オヤジは立ち上がり、よろよろと鍛冶場を出てきた。そこで突然倒れる。今回魔法オヤジが受けた熱量を僕が食らっていたら、骨ぐらいは残っていたらいいなというレベルだ。さすが第五層到達者、熱耐久力が桁違いだ。

 僕は魔法オヤジを背負って治療院まで運ぶ。彼の体重はおそらく100kgを余裕で超えている。しかし僕も第三層到達者だ。ちょっとヨロヨロしつつも、気持ち的には軽々と運ぶことが出来た。ダンジョン攻略開始前と比べれば、確実に力は強くなっている。何度も言っているけれど、敵の強さのインフレがおかしいだけなのだ。僕が成長していないわけでは無い。

 治療院での診察は疲労と軽度の火傷のみだった。こんな人知を越える耐久力を持つ化け物でさえ、第五層止まりだという事実。知れば知るほどダンジョン踏破というゴールが遠く感じるようになる。

 いや、違う。ゴールの位置は動いていない。僕が一歩踏み出せば、近づくことはあっても、遠くなることは絶対に無い。そして踏み出すのをやめた瞬間こそ、永遠にたどり着けない場所となるのだ。

「あ、アニキじゃないっすか? また人助けっすか? チョー女神っす。」
 どこかで聞いた声が聞こえる。この前、村の前で拾ったカッチェだ。ここは治療院だから、今日も治療を受けていたのだろう。

「アニキって、確実に僕の方が年下ですけど? それと女神って、僕は男なんだけど。」
「命の恩人、チョー感謝してるっす。だからアフタさんをアニキと呼ぶっす。ヒョォォォ!」
 コイツ、テンションがおかしい。体力がだいぶ回復してきたようだ。

「身体の調子は良さそうで良かった。」
「問題ナッシングっす。治療院の人には、しばらくは村で安静にしてろって言われたっすけど。そうだ! 命の恩人アフタアニキの仕事の手伝いをするっすよ。何かあったら、言って欲しいっす。」

 なんだかよく分からないけど、年上の弟分が出来たらしい。

日数  項目          金額     個数 合計     所持金    
-----------------------------------------------------------------------------
29日目 燃料売り上げ       6万0000蝸  1個  6万0000蝸  52万0800蝸 
29日目 借金返済(3)       -1万0000蝸  1個  -1万0000蝸  51万0800蝸 
しおりを挟む
感想 18

あなたにおすすめの小説

異世界遺跡巡り ~ロマンを求めて異世界冒険~

小狸日
ファンタジー
交通事故に巻き込まれて、異世界に転移した拓(タク)と浩司(コウジ) そこは、剣と魔法の世界だった。 2千年以上昔の勇者の物語、そこに出てくる勇者の遺産。 新しい世界で遺跡探検と異世界料理を楽しもうと思っていたのだが・・・ 気に入らない異世界の常識に小さな喧嘩を売ることにした。

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

スマホアプリで衣食住確保の異世界スローライフ 〜面倒なことは避けたいのに怖いものなしのスライムと弱気なドラゴンと一緒だとそうもいかず〜

もーりんもも
ファンタジー
命より大事なスマホを拾おうとして命を落とした俺、武田義経。 ああ死んだと思った瞬間、俺はスマホの神様に祈った。スマホのために命を落としたんだから、お慈悲を! 目を開けると、俺は異世界に救世主として召喚されていた。それなのに俺のステータスは平均よりやや上といった程度。 スキル欄には見覚えのある虫眼鏡アイコンが。だが異世界人にはただの丸印に見えたらしい。 何やら漂う失望感。結局、救世主ではなく、ただの用無しと認定され、宮殿の使用人という身分に。 やれやれ。スキル欄の虫眼鏡をタップすると検索バーが出た。 「ご飯」と検索すると、見慣れたアプリがずらずらと! アプリがダウンロードできるんだ! ヤバくない? 不便な異世界だけど、楽してダラダラ生きていこう――そう思っていた矢先、命を狙われ国を出ることに。 ひょんなことから知り合った老婆のお陰でなんとか逃げ出したけど、気がつけば、いつの間にかスライムやらドラゴンやらに囲まれて、どんどん不本意な方向へ……。   2025/04/04-06 HOTランキング1位をいただきました! 応援ありがとうございます! ※AI学習禁止・無断転載禁止・無断翻訳禁止・無断朗読禁止

「無能」と捨てられた少女は、神の愛し子だった――。 凍てつく北の地で始まる、聖獣たちと冷徹公爵による「世界一過保護な」逆転生活。

秦江湖
恋愛
魔法適性「鑑定」がすべてを決める、黄金の国ルミナリス。 名門ベルグラード公爵家の末娘アデリーンは、十五歳の鑑定式で、前代未聞の『鑑定不能(黒の沈黙)』を叩き出してしまう。 「我が家の恥さらしめ。二度とその顔を見せるな」 第一王子からは婚約破棄を突きつけられ、最愛の三人の兄たちからも冷酷な言葉とともに、極寒の地「ノースガル公国」へ追放を言い渡されたアデリーン。 着の身着のままで雪原に放り出された彼女が出会ったのは、一匹の衰弱した仔狼――それは、人間には決して懐かないはずの『伝説の聖獣』だった。 「鑑定不能」の正体は、魔力ゼロなどではなく、聖獣と心を通わせる唯一の力『調律師』の証。 行き倒れたアデリーンを救ったのは、誰もが恐れる氷の公爵ゼノスで……。 「こんなに尊い存在を捨てるとは、黄金の国の連中は正気か?」 「聖獣も、私も……お前を離すつもりはない」 氷の公爵に拾われ、聖獣たちに囲まれ、これまでの不遇が嘘のような「極上溺愛」を享受するアデリーン。 一方で、彼女を捨てた黄金の国は、聖獣の加護を失い崩壊の危機に直面していた。 慌ててアデリーンを連れ戻そうとする身勝手な王族たち。 しかし、彼らの前には「復讐」の準備を終えたアデリーンの兄たちが立ちはだかる。 「遅いよ。僕らのかわいい妹を泣かせた罪、一生かけて償ってもらうからね」 これは、すべてを失った少女が、真の居場所と愛を見つけるまでの物語。

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

捨てられた貴族六男、ハズレギフト『家電量販店』で僻地を悠々開拓する。~魔改造し放題の家電を使って、廃れた土地で建国目指します~

荒井竜馬@書籍発売中
ファンタジー
 ある日、主人公は前世の記憶を思いだし、自分が転生者であることに気がつく。転生先は、悪役貴族と名高いアストロメア家の六男だった。しかし、メビウスは前世でアニメやラノベに触れていたので、悪役転生した場合の身の振り方を知っていた。『悪役転生ものということは、死ぬ気で努力すれば最強になれるパターンだ!』そう考えて死ぬ気で努力をするが、チート級の力を身につけることができなかった。  それどころか、授かったギフトが『家電量販店』という理解されないギフトだったせいで、一族から追放されてしまい『死地』と呼ばれる場所に捨てられてしまう。 「……普通、十歳の子供をこんな場所に捨てるか?」 『死地』と呼ばれる何もない場所で、メビウスは『家電量販店』のスキルを使って生き延びることを決意する。  しかし、そこでメビウスは自分のギフトが『死地』で生きていくのに適していたことに気がつく。  家電を自在に魔改造して『家電量販店』で過ごしていくうちに、メビウスは周りから天才発明家として扱われ、やがて小国の長として建国を目指すことになるのだった。  メビウスは知るはずがなかった。いずれ、自分が『機械仕掛けの大魔導士』と呼ばれ存在になるなんて。  努力しても最強になれず、追放先に師範も元冒険者メイドもついてこず、領地どころかどの国も管理していない僻地に捨てられる……そんな踏んだり蹴ったりから始まる領地(国家)経営物語。 『ノベマ! 異世界ファンタジー:8位(2025/04/22)』 ※別サイトにも掲載しています。

無能と追放された結界師、三十路のおっさんですが17歳の辺境伯令嬢と婚約して人生逆転します

みかん畑
ファンタジー
無能と蔑まれ、Aランクパーティを追放された結界師フィン。 行き場を失った彼を拾ったのは、辺境伯の娘リリカだった。 国土結界の恩恵が届かない辺境で、フィンの結界は本当の価値を発揮していく。 領地再建、政治の駆け引き、そして少女のまっすぐな想い。 これは無能と呼ばれた男が、辺境で居場所を見つけ、やがて年の差婚へと至る物語。

婚約破棄された元OL悪役令嬢、コンサル知識で潰れかけのギルドを王国一に再建します

黒崎隼人
ファンタジー
エルムガンド王国の第一王子から、卒業パーティーの最中に婚約破棄を宣告された公爵令嬢イザベラ。 断罪のショックで、彼女は自分が現代日本で経営コンサルタントとして働いていた前世の記憶を取り戻す。 ここは乙女ゲームの世界。このままでは爵位剥奪、領地没収の破滅ルートが待っている! 「冗談じゃない。そんな未来、絶対に受け入れてなるものか」 イザベラは破滅フラグを回避するため、父の道楽である赤字続きの冒険者ギルド「白銀の獅子」の運営を引き継ぐことを宣言。 前世で培った現状分析、プロジェクト管理、成果報酬制度などのビジネススキルを駆使し、潰れかけのギルドの改革に乗り出す。 クエストの可視化、新人教育、そしてエルフの賢者や獣人ギルドのマスターとの異種族間連携。 最初は彼女を馬鹿にしていた荒くれ者の冒険者たちも、その圧倒的な手腕とカリスマ性に惹かれ、いつしか彼女の頼もしい仲間となっていく。 やがて彼女のギルドは王都最大の組織へと成長し、彼女を陥れた敵の陰謀すらも打ち砕く! 恋愛よりも仕事! 最高の仲間たちと共に、すべての種族が笑って暮らせる未来を創り上げる、元悪役令嬢の痛快お仕事ファンタジー、開幕!

処理中です...