悪役令嬢とドラゴン王子

杏仁豆腐

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「何か申し開きはあるか?」


目の前で両手をしっかりと組んで鋭い目で私の事を睨みつける王子がいた。
私は何が起こっているのか全く分かっていない。
朝、王宮にある応接間に来るよう国王陛下であり私の父に呼び出されたのだった。
扉を開けるとそこには国王陛下だけではなく私の兄ルシアン王子と、ドルフィン公爵とその娘マチル令嬢、それにサンクアリ―騎士団長が居た。


「わたくしが何をしたというのです、お兄様っ」


本当に心当たりがなかった。
私の事を睨む兄はゆっくりと口を開く。


「私の婚約者であるドルフィン公爵の娘マチルにお前は何をしたのか知らないとは言わせないぞっ!!」
「わたくしは何もしておりません。そうですわよね? マチルさん?」


私はマチル令嬢の方を見つめていたが私の事を拒否し、跳ねのけるかのような態度で私を無視した。
兄が言うには、兄の婚約者マルチ令嬢がお城で花嫁修業をしている際、侍女たちを差し向け階段から突き落としたり、マチル令嬢が使用している部屋の中に毒蛇を入れたり、更には入浴中に石を投げこんだりしたことが全て私の仕業になっているのだ。


勿論私はそんなことをした覚えはない。
しかし侍女たちが口々に私の命令でしたことだと言っているのだ。
なんてこと、誰かが私の事を排除しようとしているのだ。
この期に及んで私の言葉を信用してくれる人は此処には居ないだろう、私は心の中でそう思った。

「良いか、お前は王族の血を受けついてはいるが、私とお前とは母が違うのだ。異母兄弟と言う形で今までが我慢していたが、この度のマチル令嬢への嫌がらせに私はお前を許すことは出来ない。国王陛下の御身の前で言い逃れできることがあるかっ?」

私はそう言われてタジタジになって何が何だか頭の中が真っ白になってしまった。すると国王陛下が口を開いた。

「エリーザよ。今回の騒ぎ、本当にお前ではないのか? それを神に誓えるか?」
「はいっ!! わたくしは決してそのような事をした覚えは御座いません。神に誓ってっ」


嘘、嘘よ、とマチル令嬢が叫んだ。
今にも泣きそうな表情で私を睨みつけ傍に居る兄の腕により縋っている。
私は確かに王族ではあるものの陛下が若き頃赴いたとある街で私の母と出会い恋に落ちてしまったらしい。
その頃の国王陛下には幼少の頃より許嫁が居て母は側室として皇室へ迎えられた。
正室である兄の母には目も暮れず私の母と私を大切に今日まで育ててくれた。
そして私は20歳になり隣国の王子と婚約も決まっていた。
そんな矢先の事だった。
もう父も、兄さえも私の事を信じてはくれない。


「こやつは真実を言ってはいませんぞ、父上!」
「そうですわっ! わたくしに対する数々の苛めにもう限界ですっ」
「殿下……侍女たちに対する取り調べと今回のマチル嬢への嫌がらせ、何れも合致しております。これだけの証拠が揃っている状況では……」
「うむ……」


ルクセンドルフ司教が陛下にそう進言する。
国王陛下は大きくため息を吐いた後、私の事を見つめて口をゆっくり開く。


「エリーザ姫を国外追放の刑に処する」
「そ、そんな……お父様、お父様ぁぁぁあああ」
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