悪役令嬢とドラゴン王子

杏仁豆腐

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第2章 拘束

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美味しいご飯を食べて部屋に戻るとルクが夜中だというのに出掛けてくると言った。
一体どこに行くのだろう、と私が訪ねると笑いながら答えた。


「私はドラゴンだからな。本来魔力を使って人間の姿をしているのだが夜はドラゴンの姿、本来の姿に戻り魔力、自然界にあるマナを吸収しなければならない。そのため夜は何処か森の中の洞穴で休むことにしているのだ。心配ない。朝方には戻る故」


そう言って私の手を取り甲にキスを落とすと部屋を後にした。
残された私はそのままベッドの中で休むことに……。
本当は私も一緒に行きたい、と言いたかったのだがルクが困るのを避けたのだ。
命を助けてもらい、そればかりか妃として迎え入れてくれると言ってくれたルクを困らせたくはない。
目を瞑ると寂しさと侍女に殺されかけた記憶が蘇ってくる。私はそれを振り払いながら布団を頭まで被った。





――翌朝。

窓の外から入り込む太陽の光が眩しくて私は目をゆっくりと開けると、私が起きる前に既にルクがベッドの上で私の事を微笑みながら見つめていた。
やだ、私の寝顔を見られてた!? 
そう思うと恥ずかしさでどうにかなりそうだ。
私は布団で口元を隠した。


「おはよう。エリーザ。昨夜はよく眠れたか?」


爽やかにそう言う彼。
私は小さく頷いた。
すると声を上げて笑うルク。
あの緑色の瞳で見つめられると本当に吸い込まれそうになる。
ドラゴンの姿の彼の目の色も同じ緑色、エメラルドより綺麗なまなこ

「もう少ししたらここを発つ。昨日はこの街を探索していなかったが、これから朝食を食べる次いでに回ってみるか?」


私にそう言うとルクが窓の外を見つめた。
私も釣られて窓の外に視線をやる。
綺麗な水色の空に白い薄い雲が風に揺られてゆっくりと動いているのが見える。


「ルク様が宜しければ一度この街を歩いてみたいと思います」
「様はいいと言っているではないか……呼びにくいのか?」

私はこくりと頷いた。
身分の違う私がルクに対して『様』を取って呼ぶことなんて出来るわけがない。


「そうか。其方の呼びやすいようにすればよい。そう、それとな……其方のその服装、かなり汚れておるではないか。ついでとはあれだが新調しよう」
「ええ……そのような……わたくしには洋服を買うお金が御座いません。お気遣いは大変嬉しいのですが……」


心配ない、と彼が腰に付けていた巾着袋の中身を少し私に見せてくれた。
一人旅にしては大金を所持していた。
やはり一国の王子なんだわ、ルクって……。

それにしてもヨ―ルリアン帝国にいた時、この世界にドラゴンの国などがあることなんて聞いたことがない。
本当に存在するのだろうか、ドラゴンの住まう国が……。


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