悪役令嬢とドラゴン王子

杏仁豆腐

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第3章 逃走 

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エルドランド国を逃げるように私とルクは旅を続けていた。
次の国まで本当は空を飛べば直ぐに到着するらしいのだが私が各国の最重要人物だと広まってしまった為に、目立つことを避けて歩いて次の国へ向かうことになったのだ。


「わたくしの所為で、本当に申し訳ありません。ルク様の旅の邪魔をしていると思うと…胸が苦しいのです」
「何を弱音を……私なら大丈夫だ。それに森の中には多くのマナが取り込めて魔力補充も出来、それにこうしてドラゴンの姿になれる。これは私にとってもこの旅をする上で重要な事なのだぞ。其方が気を止む必要はない。自分を責めるな、よいな?」
「はい……有難う御座います」


森の洞窟で休憩してる私と、ドラゴンの姿のルク。
始めてみた時より驚きも少なくなっていた。
慣れたのだろうか。
ドラゴンの姿になったルクもなんだか可愛いと思えるようになった。


「明日はまた森の中を歩くことになる。今のうちに身体を休めておけ。おお、其方の洋服だがな―――」


そう言えば、エルドランド国を出る前に洋服を買ってくれると言っていたのを思い出した。
しかし私はその時国王の命で護衛兵たちに捕まって買うことが出来なかった。
ルクは小さな袋(ドラゴンの身体をしているので袋は小さいが人間に対しては大きな袋)を取り出して私の目の前に置いた。
三本指で尖った爪が目に付く。


「何でしょう? これは」


私の目の前に置かれた袋を不思議そうに見つめているとルクが話し出した。


「この間、其方が拘束されている間に私が選んで置いた洋服だ。この近くに人が寄り付かぬ湖がある。そこで水浴びをしてその服に着替えると良い。一応其方の傍に魔法結界を施す。安心して水浴びをするがよい」
「まぁ……有難う御座います、ルク様」
「…そ、そのぉ~、なんだ、見られたくないのだ……其方の肌を…誰にも、な」


ドラゴンの姿をしていてもルクの表情が赤くなっているのが分かる。
黒い鱗にエメラルドの眸、そして鋭い牙と爪、どこから見ても怖そうなドラゴンだが、なんだか愛らしくなってしまう。
私は立ち上がってルクの胸の当たりで立ち止まるとぎゅっと抱きしめた。大きな胸板…かしら、この辺りって。


「おいおい、首がくすぐったいぞ。止めぬか、エリーザよ」


ああ、ここは首なのね。
ふふふ、私は口元に手を当てて笑うとルクもぐるぐる音を出して笑った。
人間の姿のルクも素敵なのだけれどドランゴンの姿のルクも素敵。
私はルクに一礼してから湖に向かって洞窟を後にした。
ルクが言っていた通り洞窟を出るとすぐに湖が見えた。


「とてもきれいな水…。本当に誰も来ないのかしら。でもルクが魔法結界をしてくれているから安心して水浴びをしましょう。ちょっと肌がべたついていて気持ち悪かったから丁度いいわ」


私は着ていた服をゆっくり脱ぐ。
産まれたままの姿になった私は足先を湖に付けた。
冷たい、ひんやりと水の冷たさを感じながらゆっくりと両足を付けてお腹の当たり迄浸かり、両手で水を掬って肩に掛けた。

ひんやりして気持ちがいい。
汗でべたついていた身体を洗い流した。



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