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第5章 帰還
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考える時間はそう長くはなかった。
ルクがお城に戻ってから翌日の朝ルクが私を連れて国王と接見することになった。
このまま旅を続けるか、それとも……。
「大丈夫か!? 顔色が悪いぞ、エリーザ」
ルクがそう言って私の顔を覗き込んだ。
緑色の瞳が私を捕らえて離さない。
どうしたらいいの、私はどうすれば……。
頭の中で搔き回される選択肢たち。
王の間で国王を待つまでに決めねばならない。
私はすーっと顔を上げてルクの事を見つめた。
「ルク様…、私は一度祖国に戻ることにします。しかし、ルク様もご一緒に来ては下さいませんか?」
私はそう言ってルクを見つめた。
ルクは驚いた表情で瞳を大きくしていた。
思ってもいなかった私の考えを理解出来ない様子だった。
暫く沈黙が続き、国王が王の間に入って来た。
私は片膝をついて跪き、ルクも同じように跪いた。
「堅苦しい挨拶は止めよう。ルク殿、それにエリーザ姫」
「「はい、アルバーニ国王様」」
国王はゆっくりと席に着いて側近から紙を手渡された。
国王はそれを黙読してからゆっくりと口を開いた。
「エリーザ姫。ヨ―ルリアン帝国王から其方を祖国へ帰還するよう書状が私の所へ届いている。一度祖国へ戻る、それで宜しいか?」
「はい……畏まりました」
私は膝まづいたまま小さく声を出してそう答えた。
隣にいるルクは私の方をちらっと見ると立ち上がり話し出した。
「アルバーニ国王。私もエリーザと同行させて頂きたいと思っております。彼女一人を国へ戻す訳には参りません。道中私が彼女の護衛を致します」
「ルク王子。既に帝国から使者がこちらに向かっておるのだ。其方は自国へ帰られよ。姫は帝国の使者へ引き渡す手はずになっておる故、護衛は必要ない」
そ、そんな……ルクと一緒に祖国へ帰るつもりだったのに。
帝国の使者が此方に向かっているですって……。
それでは此処でルクと離れ離れになるという事なの?
私はそう思いながら胸を詰まらせた。
きゅっと苦しくなる胸の痛みに耐えるだけの力しか出ない。
するとルクが再び口を開いた。
「私はこの者と婚約しております。エリーザ一人を行かせ、自分だけ祖国へ戻ることはありません」
力強い声でそう発したルク。
私は顔を上げて彼の横顔を見つめた。
真剣な眼を国王に向けている。
国王はため息をついて、勝手にせよ、と言い放ち席を立って立ち去って行った。
私は立ち上がりルクの事を見つめた。
ルクは私を見て微笑んでいた。
「使者が…ルク様、大丈夫なのですか?」
「私にも分からぬ。しかし、其方一人を帝国へ引き渡す、何だか胸騒ぎがするのだ。私の直感なのだが……何故だか嫌な予感が…」
ルクはそう言って私の肩に手をやり抱きしめた。
初めて男の人の胸に顔を埋める私。
ドクン、ドクン、と心臓の音が波打っているのが聞こえる。
これがルクの心臓の音。
とても穏やかで落ち着いた音。
私も同じ心臓を持っているのだけれど、これほど心地いい音なのだろうか。
私はそう思いながらルクの胸の中でその音に耳を傾けていた。
使者は明日到着すると、城を出る前にそう国王の側近の者に訊かされた。
ルクがお城に戻ってから翌日の朝ルクが私を連れて国王と接見することになった。
このまま旅を続けるか、それとも……。
「大丈夫か!? 顔色が悪いぞ、エリーザ」
ルクがそう言って私の顔を覗き込んだ。
緑色の瞳が私を捕らえて離さない。
どうしたらいいの、私はどうすれば……。
頭の中で搔き回される選択肢たち。
王の間で国王を待つまでに決めねばならない。
私はすーっと顔を上げてルクの事を見つめた。
「ルク様…、私は一度祖国に戻ることにします。しかし、ルク様もご一緒に来ては下さいませんか?」
私はそう言ってルクを見つめた。
ルクは驚いた表情で瞳を大きくしていた。
思ってもいなかった私の考えを理解出来ない様子だった。
暫く沈黙が続き、国王が王の間に入って来た。
私は片膝をついて跪き、ルクも同じように跪いた。
「堅苦しい挨拶は止めよう。ルク殿、それにエリーザ姫」
「「はい、アルバーニ国王様」」
国王はゆっくりと席に着いて側近から紙を手渡された。
国王はそれを黙読してからゆっくりと口を開いた。
「エリーザ姫。ヨ―ルリアン帝国王から其方を祖国へ帰還するよう書状が私の所へ届いている。一度祖国へ戻る、それで宜しいか?」
「はい……畏まりました」
私は膝まづいたまま小さく声を出してそう答えた。
隣にいるルクは私の方をちらっと見ると立ち上がり話し出した。
「アルバーニ国王。私もエリーザと同行させて頂きたいと思っております。彼女一人を国へ戻す訳には参りません。道中私が彼女の護衛を致します」
「ルク王子。既に帝国から使者がこちらに向かっておるのだ。其方は自国へ帰られよ。姫は帝国の使者へ引き渡す手はずになっておる故、護衛は必要ない」
そ、そんな……ルクと一緒に祖国へ帰るつもりだったのに。
帝国の使者が此方に向かっているですって……。
それでは此処でルクと離れ離れになるという事なの?
私はそう思いながら胸を詰まらせた。
きゅっと苦しくなる胸の痛みに耐えるだけの力しか出ない。
するとルクが再び口を開いた。
「私はこの者と婚約しております。エリーザ一人を行かせ、自分だけ祖国へ戻ることはありません」
力強い声でそう発したルク。
私は顔を上げて彼の横顔を見つめた。
真剣な眼を国王に向けている。
国王はため息をついて、勝手にせよ、と言い放ち席を立って立ち去って行った。
私は立ち上がりルクの事を見つめた。
ルクは私を見て微笑んでいた。
「使者が…ルク様、大丈夫なのですか?」
「私にも分からぬ。しかし、其方一人を帝国へ引き渡す、何だか胸騒ぎがするのだ。私の直感なのだが……何故だか嫌な予感が…」
ルクはそう言って私の肩に手をやり抱きしめた。
初めて男の人の胸に顔を埋める私。
ドクン、ドクン、と心臓の音が波打っているのが聞こえる。
これがルクの心臓の音。
とても穏やかで落ち着いた音。
私も同じ心臓を持っているのだけれど、これほど心地いい音なのだろうか。
私はそう思いながらルクの胸の中でその音に耳を傾けていた。
使者は明日到着すると、城を出る前にそう国王の側近の者に訊かされた。
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