悪役令嬢とドラゴン王子

杏仁豆腐

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第5章 帰還

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ヨ―ルリアン帝国、王の間――――。

「其方の罪、冤罪として処理することになった」

頭を下げている私に向かって国王である父が発した。
私は黙ったまま顔を上げて久々の父の顔を見つめた。
数日会わなかっただけで、ただただ懐かしいと思った。
そして玉座の横に兄が傍に立っていた。


「エリーザ。其方に対する様々な嫌疑は晴れたのだ。もう国外へは行かずここで暮らすといい」
「いえ、私は……旅の途中……此処へは……」


私はそう言いながら父と兄を見つめました。
しかし父たちは私の事を蔑んだ視線で私を見ているのです。
まるで汚い子犬を見ているかのような視線。


「お前は、此処で暮らしてゆくのだ。そして竜族との事は忘れるのだ。良いな。これは国王命令である」
「そ、そんな……」


ショックだった。
私はもう二度とルクと会うことが出来ないと言われてしまったのだ。
でも、そんなことを言われて、はい、とは言えない。
私は再度父に訊ねました。

しかしそれを覆すことは出来ず、父と兄は去ってしましました。
一人取り残された私を部屋に入って来た侍女が話しかけたのだ。



「私はエリーザ様の身の回りをお世話することになりました。ルリ―と申します。以後宜しくお願い致します」
「ルリ―……マリはどうしたのです。彼女は何処にいるの?」
「あの方は……お亡くなりになりました。重罪を犯して死罪となったのです」

死罪……!? 
私を殺そうとしてそれが出来なかったから切り捨てられたという事? 
私は黙ったままその場でしゃがみこんでしまった。
何て事なの……マリ……。


「エリーザ様。御部屋に戻りましょう。ここに居てもなんですし……」
「貴女が今度私を殺そうとしているの?」
「何をバカなことを……私は貴方様の身の回りのお世話をするようにと、命を受けているのです。何もするわけがないでしょう」


嘘……本当は私が寝静まったところを襲うに決まってる。
ルク……ルク……私を助けてっ! 
大きな声を出しても騒いだとしても、彼は来ないだろう。

恐らく父が兵に命じてこの国から出てしまっているのに違いない。
ああ、会いたい。
ルクの傍に居たい。
私はそう願っていた。
ルリ―は私を立たせようと腕を掴んで立ち上がらせようとしている。
私は抵抗するのを止め立ち上がった。


「では、行きましょか。エリーザ様」
「……はい」


王の間を後にして私は小さな声でルリ―に答えた。
ルリ―は淡々とした表情で私の腕を掴んだまま放そうとはせず私が使う部屋に向かったのだった。


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