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第1章
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昼食の前の一時に飲む紅茶の味はまた格別。
私はそう思いながら優雅な気持ちでマロンが淹れてくれた紅茶を啜る。
傍にはあのオロバスと言う魔族が隣で笑顔を作りながら紅茶のカップを持ち、またマロンは私の傍でじっと立ったまま澄ました顔をしていた。
それにしてもこのオロバスという魔族って本当に魔族なのかしら。
見た目普通の人間と変わらないし、銀髪で綺麗な顔立ち、まるでどこかの貴族と言われても全く違和感がないわ。
「貴方、本当に魔族なの?」
唐突な質問をしてしまった。
あ……と口元に手をやる私を見てオロバスはクスクス笑いながら私の耳元で小さな声で囁いた。
「本当ですよ、アレーレ嬢。以前主従契約の時に私の姿をご覧になっているではありませんか。銀馬、あれが私の本来の姿…ですよ」
耳元でそう囁かれて背中がぞくっとしてしまった。
ちょ、ちょっと私耳が弱いのよ、凄く息がかかってぞくっとしたじゃないっ。
しかしそんな素振りをすれば傍に居るマロンに変な誤解を生んでしまう。
私は何もなかったかのような振る舞いでコホンと咳払いをして、傍に立っていたマロンに話しかけた。
「マロン。貴女も一口どうかしら? そこにずっと突っ立っていては疲れなくて?」
何気ない一言だと思った私だったのだが、オロバスもマロンも驚いた表情で私を見つめた。
あ、そうか、私って悪役令嬢だったっけ。
こういう慈愛のある発言は慎んだ方が良いのかしら。
悪役令嬢ってのも案外疲れるわ。
「滅相もございませんっ! 私はアレーレ様のお傍にお仕えしているだけで幸せなのです。そんな、ご一緒にお茶など……罰が当たりますっ」
「アレーレ嬢、少し変わられたのですかな? いつもなら『あなた達少し暇だから余興をして御覧に入れないさい』等と言いそうなところだと思っていたのですが」
余興、余興って……どれだけ卑劣な行為をしてたのかしら、前の私って。
そう思いながらもう一口紅茶を啜るとカップを静かに置いて口を開いた。
「貴方達は私をどういう目で見ていたのかがよく分かりました。オロバス、用が済んだのですから下がりなさい。マロン、少し肌寒くなりましたわ。私をお部屋に案内しなさい」
「御意っ」
「畏まりました、アレーレ様」
私は澄ました表情で2人にそう告げると一斉に頭を下げた。
オロバスは席を立つと黒い霧と共に姿を消し、私が席を立つとマロンが部屋まで誘導してくれた。
私は堂々と胸を張りながら優雅に、そして令嬢に相応しい歩き方でマロンの後をついて行った。
朝いた部屋とはまた別の部屋に到着するとマロンが口を開いた。
「こちらはアレーレ様の書斎でございます。こちらでお昼までのお時間お過ごしください。お時間になりましたら、私めが再びお呼びいたします」
マロンはそう言って深々と頭を下げる。
ここが私の書斎…。
部屋の中に入ると立派な机と大きな椅子が置いてあり壁一面に書棚がびっしり置かれている。
私は書棚にあった本を一冊手に取って開いてみた。
すると一瞬アラビア語のような文字だったのが一瞬にして日本語に変換したのだ。
そうか、私の知っている言語に自動変換してくれるってわけね。
なるほどだからこの世界の人々の言語も理解出来るってわけね。
それで……この本には何が書いてあるのかしら……。
一ページ、また一ページ開いて読んで見ると前世で私が好んで読み漁っていた男同士の恋愛物……所謂BLという類の書物だということが分かった。
「マロン。ここにある本は全て私が好んで読んで集めたものかしら?」
「はい……私共侍女がアレーレ様のご指示でご用意したものです」
何たることなのっ。
以前のアレーレもBL好きってことはアレじゃない……腐女子ってことじゃないっ。
それはそれで分かるけど……しかしこちらのBLは少々味気ないわね。
前世の日本で集めた私の秘蔵コレクションの方がもっと過激で凄かったわ。
真顔の私をマロンが黙って見つめていた。
そんな目で私を見つめないでよ……。
私はそう思いながら優雅な気持ちでマロンが淹れてくれた紅茶を啜る。
傍にはあのオロバスと言う魔族が隣で笑顔を作りながら紅茶のカップを持ち、またマロンは私の傍でじっと立ったまま澄ました顔をしていた。
それにしてもこのオロバスという魔族って本当に魔族なのかしら。
見た目普通の人間と変わらないし、銀髪で綺麗な顔立ち、まるでどこかの貴族と言われても全く違和感がないわ。
「貴方、本当に魔族なの?」
唐突な質問をしてしまった。
あ……と口元に手をやる私を見てオロバスはクスクス笑いながら私の耳元で小さな声で囁いた。
「本当ですよ、アレーレ嬢。以前主従契約の時に私の姿をご覧になっているではありませんか。銀馬、あれが私の本来の姿…ですよ」
耳元でそう囁かれて背中がぞくっとしてしまった。
ちょ、ちょっと私耳が弱いのよ、凄く息がかかってぞくっとしたじゃないっ。
しかしそんな素振りをすれば傍に居るマロンに変な誤解を生んでしまう。
私は何もなかったかのような振る舞いでコホンと咳払いをして、傍に立っていたマロンに話しかけた。
「マロン。貴女も一口どうかしら? そこにずっと突っ立っていては疲れなくて?」
何気ない一言だと思った私だったのだが、オロバスもマロンも驚いた表情で私を見つめた。
あ、そうか、私って悪役令嬢だったっけ。
こういう慈愛のある発言は慎んだ方が良いのかしら。
悪役令嬢ってのも案外疲れるわ。
「滅相もございませんっ! 私はアレーレ様のお傍にお仕えしているだけで幸せなのです。そんな、ご一緒にお茶など……罰が当たりますっ」
「アレーレ嬢、少し変わられたのですかな? いつもなら『あなた達少し暇だから余興をして御覧に入れないさい』等と言いそうなところだと思っていたのですが」
余興、余興って……どれだけ卑劣な行為をしてたのかしら、前の私って。
そう思いながらもう一口紅茶を啜るとカップを静かに置いて口を開いた。
「貴方達は私をどういう目で見ていたのかがよく分かりました。オロバス、用が済んだのですから下がりなさい。マロン、少し肌寒くなりましたわ。私をお部屋に案内しなさい」
「御意っ」
「畏まりました、アレーレ様」
私は澄ました表情で2人にそう告げると一斉に頭を下げた。
オロバスは席を立つと黒い霧と共に姿を消し、私が席を立つとマロンが部屋まで誘導してくれた。
私は堂々と胸を張りながら優雅に、そして令嬢に相応しい歩き方でマロンの後をついて行った。
朝いた部屋とはまた別の部屋に到着するとマロンが口を開いた。
「こちらはアレーレ様の書斎でございます。こちらでお昼までのお時間お過ごしください。お時間になりましたら、私めが再びお呼びいたします」
マロンはそう言って深々と頭を下げる。
ここが私の書斎…。
部屋の中に入ると立派な机と大きな椅子が置いてあり壁一面に書棚がびっしり置かれている。
私は書棚にあった本を一冊手に取って開いてみた。
すると一瞬アラビア語のような文字だったのが一瞬にして日本語に変換したのだ。
そうか、私の知っている言語に自動変換してくれるってわけね。
なるほどだからこの世界の人々の言語も理解出来るってわけね。
それで……この本には何が書いてあるのかしら……。
一ページ、また一ページ開いて読んで見ると前世で私が好んで読み漁っていた男同士の恋愛物……所謂BLという類の書物だということが分かった。
「マロン。ここにある本は全て私が好んで読んで集めたものかしら?」
「はい……私共侍女がアレーレ様のご指示でご用意したものです」
何たることなのっ。
以前のアレーレもBL好きってことはアレじゃない……腐女子ってことじゃないっ。
それはそれで分かるけど……しかしこちらのBLは少々味気ないわね。
前世の日本で集めた私の秘蔵コレクションの方がもっと過激で凄かったわ。
真顔の私をマロンが黙って見つめていた。
そんな目で私を見つめないでよ……。
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