ぬいぐるみ

レストラン

父

みのりといのりの父、夜嵐 創ヨアラシ ツクルはレストランを経営していた。
創のお店なので、経営で間違いないのだが、創自身は経営者というよりも一コックという認識でいた。

創は昔から舌には自信があった。

小さい頃、家のカレーの隠し味にチョコレートが入っていると言い当てて、創の母を驚かせたこともあった。

食材の声が聞こえる、なんていったら格好つけ過ぎか。でも創にとってはそれ以外説明のしようがないのだ。こう調理して欲しい、この調味料と合わせて欲しい、そう食材たちが言っているようでならないのだ。創とってコックという仕事は天職だ。コックという仕事は食材の声に耳をかたむけることだ、そう思いながら日々調理をしている。

声の通りに作り、美味しい物ができる。それが創の喜びなのだ。そして、それが仕事になっている。自分は幸せ者だと感じていた。

とはいえ、大きくないお店でも一人だけで切り盛りしていくには無理がある。

従業員を雇うにもお金がかかる。

それでも、このレストランには創の他に一人見習いコックがいる。専門学校をでたばかりの青年だ。

ランチの時間はAランチ、Bランチ、Cランチの三種類なので、給仕も含めて二人でお店を回すことができる。

しかし、ディナーはそうもいかない。
メニューが多く手が回らなくなるのだ。なので、最近はディナーの時間帯だけ妻の朝子にウエイトレスをしてもらっている。子どもたちも大きくなり、自分のことは自分で出来るようになったから、こういうことが出来るのだ。そういった意味では、家族みんなにこのレストランを手伝ってもらっているのだと思う。