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犯人探求編
5.実技試験①
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掲示板にペーパーテストの合格者が張り付けられる。上から順位が付けられており、あの聖女がなんと学力試験第一位だった。各科目の細かな点数も表示されていた。
「お、俺らもちゃんと合格しとるや~ん!!すげえなチビ!全部ひとりで解きやがって、も~」
にやにやしながら、ペアであるアバラは私をぐりぐりとしてくる。本当にこいつは一切役に立たなかったな。まあ、私もペーパーテストで芸術作品を作り上げていたからお相子であるが。
そう、ただ合格点を狙うだけでは味がないのだ。なので、私はすべての科目で50点を狙って取った。これくらいの遊びがあってもいいだろう。一番上を取って目立つのはまずいが、どうせ私の全50点なんて、人数が多すぎて誰も気が付かないだろうし。
そういえば魔塔主時代と今で同じ筆跡を使っていたな。早急に変える必要があるだろう。帰ったら訓練するか。
「一人で450点か。なかなか頭ええやん。さて、次は実技か。おチビが勉強頑張った分、俺が実技はまくるからな~」
こいつの実力の程はよくわからん。今の私は魔力が少なく、感知も鈍っているのだ。だが、ここまで言うくらいなら相当自信があるのだろう。私も実技のほうは全力が出せないだろうから、この点はペア制度はありがたい。
私たちが一仕事を終えてリラックスしているのとは対照的に、掲示板に名前が載っていなかった面々は鼻を啜りながら立ちすくむ者も多かった。ここまで受験をしにくるのに、村や家族の援助など相当な労力があっただろう。期待を一身に背負って、裏切れない戦いもあっただろう。
これからなんと両親に報告すればいいのか、頭が真っ白になっている者だっている。そういった空気に対して、純粋に喜びを表現するのは慎まれる。
けれどもし入学していれば私の復讐対象になっていたところだ。難を逃れられたとして別の道を探ってほしいと思う。
「魔塔主の気まぐれさえなければ、実技だけだったら俺は受かっていたのに・・・!!魔塔主め!!」
今からあのがら空きの背中を刺してもいいだろうか。その程度の学力、どうせ入ってもついていけないって言葉で追い打ちをかけに行ってもいいだろうか。
私が頑張って怒りを抑えている中、王子アウレリウスは壇上に上がる。
「学力テスト、ご苦労様。勉強が得意で力を発揮できたものも、実技こそが得意で悲しい結果になった者も、どちらもいるだろう。では少し、僕から話をさせてほしい」
合格者も不合格者も、王子を見上げる。学力試験の後に話があるということが異例で、本当であったらここで不合格者は追い返すはず。一体何を喋るつもりなのか。私もじっと王子を見る。
「この学園は元来実力主義だった。魔法の力のみで尺度が測られ、学力はおまけに近かった。それは確かに理屈が通っている。魔法とは実技の世界で、どれだけ頭が良かったとしても使えなくては意味がないからね。頭だけが良いのなら、一般の人にすらこの学園は門戸を開いているよ」
あの王子、私のシステムを批判しているな・・・。生徒会長ということでいずれは倒すべき敵と思っていたが、私の殺意が高まったぞ。隣のアバラも、学力試験への批判に頷いている。
「この学園は、他国でいう士官学校の意味も兼ねられている。故に、問われるのは実力。けれどね、現魔塔主であるローゼルアリオン殿は、統計を取ったんだ。この学園にいる生徒と卒業生の、怪我をするもの、命を落とす者の統計を。するとね、普段の定期テストの点数と相関関係があった」
誰もが、王子の話に聞き入る。私も、話の流れが変わったことに気が付いた。
「窮地に陥ったとき、何が自分の命を助けるか。それは体の底力じゃない。『培った知識』だと。必ずしも頭が悪いものが死にやすいってわけじゃないよ。けれど、知識の重要性を理解している者のほうが、生存率は高い。冷静な判断が下せるから。そう、この入学試験のペーパーテストも、決して魔塔主殿はいやがらせのために実施したわけじゃないんだ。学園に預かった子供たちを少しでも家族の元へ返したいから自分が嫌われてでも施行した、それだけは覚えていてほしい」
それだけ言って、王子は壇上を降りる。私は今の発言を聞いて、瞬きの回数が多くなる。それは驚きだからではなく、初めて自分の思想を言語化してもらえたからだろう。
文句を垂れていたアバラも、今の発言に気まずそうにしていた。不合格の面々も、名誉よりも優先するべきものに気が付いたのか、ただ泣きながら鼻を啜り、静かにこの場を後にする。
私はただ、じっと王子を見ていた。
けれどすぐに頭を横に振る。
いけない、殺意を鈍らせては。入学すらしていないのに、復讐の怒りを鎮火させては。
やがて王子に入れ替わり、別の教授が壇上に上がる。
「これより実技試験の説明をする」
次の試験の説明に、会場は静まった。緊張しながら耳を傾ける。
「実技試験では、魔法のランタンを使用する。これより一組に一つ、ランタンを渡す」
私たちの前に、一つのランタンが配布された。中には青い炎が灯っており、他の受験者たちも不思議そうにランタンを眺めていた。
「条件は自分たちのランタンを守ることと、別ペアのランタンを二つ壊すこと。この条件を一定時間まで満たしたものを合格とする」
ペアは続行ということなのだろう。アバラを見ると、ニカッと笑っていた。
一学年、定員は200人。すると上位100組以内に入っていればいい。ペーパーテストで大分削ぎ落とされたためこの場にいるのは600。その中の三分の一に入っていればいいと考えると難しくはない。ただ、問題なのはこの実技試験では互いに攻撃魔法を使用するために最悪命を失うこともあるのだ。それほどに危険な内容で、私がペーパーテストを実施してからは死傷者数はみるみる減っていったが、「受験者が減ったならそりゃ死傷者数も減るだろ」ということで特に話題には上がっていない。
「これから諸君らを別の場所に飛ばす。思考を巡らせ技術を用い、無事ランタンを守り切れ」
受験者たちの体は光に包まれ、やがて全員姿を消す。
そして目を開くと、私たちは森の中にいた。
「うん?森?不気味やな」
「ここ・・・紫紺の森じゃないか」
私がこの体の復活を遂げた場所でもあり、立ち入りを禁止している区域だ。
「紫紺の森だって?なんで君にそんなことが分かるんだ」
どうやら、私たちと同じ場所に飛ばされた受験生もいるようだ。フワフワの深い緑の短髪。そして気だるげな目をした背の低い少年。そしてその少年の隣には、立木心愛もいる。
「君は、学力一位のレオか」
「ほーん、こいつがおチビに学力で買った坊主なんや」
「そういう君は、全科目で50点取ったアリオンでしょ。隣の彼は答案に参加していないよね。僕がとったのは四科目90点前後。でも君は9科目やったうえで僕より高い点数を五科目出している。・・・負けたよ」
レオという名の少年は、私たちの元へつかつか歩いてくる。一方のペアらしき立木心愛は、面倒くさそうにレオを見ていた。
レオの言葉に私も驚いた。どうやって確認したか分からないが、すべての答案が私の物と推理したのだ。
「凄いなアバラ、あのレオとかいう子、見た目からして君が頭悪いことを見抜いている。油断しないでね」
「確かに油断しとったんやけど、味方から攻撃来るとは思わんかったかな。誰があんぽんたんや」
軽口を叩きつつも、私たちは警戒態勢に入る。私はこの姿となり、大人の姿の頃の魔道具では正体がばれるために、赤い羽根を巾着袋に入れて魔法を使用していた。何故かこの赤い羽根を媒介にすると力が発揮できるのだ。
一方のアバラは籠手が魔道具のようで、見事な手さばきで装着を終えていた。
けれどレオはこちらに片手を差し出す。
「ああ、僕に戦闘の意思はないよ。だって、このルールは協力したほうがメリットがあるでしょ。合格者はおよそ三分の一。少ない人数で動くことのほうがメリットが少ない」
賢い判断だ。その通り。この試験は、大人数で動くことを想定している。実戦の場でも、調子に乗って個人で動く奴から死ぬからだ。故に即席でパーティを作り、自分たちよりも少ないグループを狩る。これが定石になるだろう。
「ちょっとアンタ!私を差し置いて勝手に決めないでよね。私はこんな地味ちんちくりんと、アホの塊と行動なんてしたくないわ!」
友好的なレオとは対照的に、心愛はこちらに対して敵対心を向けてくる。
「・・・と、彼女は言ってるけれど?」
「ああ、彼女、この通り頭が悪いんだ。気にしないで」
「な・・・!あんたね、私を誰だって思ってるの?私は光の魔法を使う、この国の聖女なのよ!?」
私は冷静に立木心愛を観察する。小説の彼女はこんな短絡だったろうか・・・?もっとおしとやかで、静かで優しい女性だった気がする。
ひょっとして、悪役に憑依した私と同様に、彼女もまた憑依したのだろうか。
同郷の可能性が湧いてくると、親近感がわく。けれど同時に、小説のモデルと性格がかけ離れているのなら、彼女もまた私を殺した容疑者という線が浮上してきた。
少し、情報を探ってみようか。
「聖女というのなら、どうしてこんな試験に参加しているんだい?伝説の存在なんだろう?」
「知らないわよ!私だって本当だったら無条件合格してたわよ!けど、あの魔塔主が『試験通過に無条件はいかなる場合であっても認めない』って余計なことをしてくれたからでしょう!?」
・・・そういえばそうだったな。実力のない貴族が入ってきて死なれても困るのだが、ルールではそういった人物たちを対象にしていたため、聖女のことはすっかり忘れていた。
聖女は魔塔のある方向を睨んで、怒りをあらわにしていた。けれど、やがてこちらをキッと睨む。
「ええ、私は聖女ですもの。こういったことだってできるのよ?」
聖女は自分の手を広げると、やがてそこには光が収束する。すると、一つの武器が構築された。
それは、光の短剣だった。
「知ってるかしら?光魔法って、選ばれた人間か、魔法に長けた超上級者の二択しか使えないの。私はどっちも優れているからこんな光の実体化まで出来ちゃうのよ?」
驚いた、私があの日殺されたときも光の短剣だった。心愛はまだ学園に入学していないだろうということで魔法の不得手さから容疑者からは外していたが、まさか自ら容疑者枠に収まってくれるとは。
心愛は私たちがそれを見て恐れ慄くと思ったのだろう。けれど、実際には殺気をあらわにしているため、少しひるんだ様子を見せる。
「レオ。君たちには戦闘の意思がある、ということでいいかな?」
「・・・正直彼女とは意見が合わないから、僕は先に行くことにするよ。彼女はどうでもいいけど、僕は見逃してほしい」
「な・・・!?女性を一人にして去るなんて、あんたそれでも男なの!?」
それでも心愛は構えを解かない。レオの行動に一瞬焦った表情をしたが、しかし再び勝気にこちらを見始める。
「光の魔法は、全魔法の中で最優。故に、命乞いするなら今のうちよ?大人しくそのランタンを渡しなさい」
「お、俺らもちゃんと合格しとるや~ん!!すげえなチビ!全部ひとりで解きやがって、も~」
にやにやしながら、ペアであるアバラは私をぐりぐりとしてくる。本当にこいつは一切役に立たなかったな。まあ、私もペーパーテストで芸術作品を作り上げていたからお相子であるが。
そう、ただ合格点を狙うだけでは味がないのだ。なので、私はすべての科目で50点を狙って取った。これくらいの遊びがあってもいいだろう。一番上を取って目立つのはまずいが、どうせ私の全50点なんて、人数が多すぎて誰も気が付かないだろうし。
そういえば魔塔主時代と今で同じ筆跡を使っていたな。早急に変える必要があるだろう。帰ったら訓練するか。
「一人で450点か。なかなか頭ええやん。さて、次は実技か。おチビが勉強頑張った分、俺が実技はまくるからな~」
こいつの実力の程はよくわからん。今の私は魔力が少なく、感知も鈍っているのだ。だが、ここまで言うくらいなら相当自信があるのだろう。私も実技のほうは全力が出せないだろうから、この点はペア制度はありがたい。
私たちが一仕事を終えてリラックスしているのとは対照的に、掲示板に名前が載っていなかった面々は鼻を啜りながら立ちすくむ者も多かった。ここまで受験をしにくるのに、村や家族の援助など相当な労力があっただろう。期待を一身に背負って、裏切れない戦いもあっただろう。
これからなんと両親に報告すればいいのか、頭が真っ白になっている者だっている。そういった空気に対して、純粋に喜びを表現するのは慎まれる。
けれどもし入学していれば私の復讐対象になっていたところだ。難を逃れられたとして別の道を探ってほしいと思う。
「魔塔主の気まぐれさえなければ、実技だけだったら俺は受かっていたのに・・・!!魔塔主め!!」
今からあのがら空きの背中を刺してもいいだろうか。その程度の学力、どうせ入ってもついていけないって言葉で追い打ちをかけに行ってもいいだろうか。
私が頑張って怒りを抑えている中、王子アウレリウスは壇上に上がる。
「学力テスト、ご苦労様。勉強が得意で力を発揮できたものも、実技こそが得意で悲しい結果になった者も、どちらもいるだろう。では少し、僕から話をさせてほしい」
合格者も不合格者も、王子を見上げる。学力試験の後に話があるということが異例で、本当であったらここで不合格者は追い返すはず。一体何を喋るつもりなのか。私もじっと王子を見る。
「この学園は元来実力主義だった。魔法の力のみで尺度が測られ、学力はおまけに近かった。それは確かに理屈が通っている。魔法とは実技の世界で、どれだけ頭が良かったとしても使えなくては意味がないからね。頭だけが良いのなら、一般の人にすらこの学園は門戸を開いているよ」
あの王子、私のシステムを批判しているな・・・。生徒会長ということでいずれは倒すべき敵と思っていたが、私の殺意が高まったぞ。隣のアバラも、学力試験への批判に頷いている。
「この学園は、他国でいう士官学校の意味も兼ねられている。故に、問われるのは実力。けれどね、現魔塔主であるローゼルアリオン殿は、統計を取ったんだ。この学園にいる生徒と卒業生の、怪我をするもの、命を落とす者の統計を。するとね、普段の定期テストの点数と相関関係があった」
誰もが、王子の話に聞き入る。私も、話の流れが変わったことに気が付いた。
「窮地に陥ったとき、何が自分の命を助けるか。それは体の底力じゃない。『培った知識』だと。必ずしも頭が悪いものが死にやすいってわけじゃないよ。けれど、知識の重要性を理解している者のほうが、生存率は高い。冷静な判断が下せるから。そう、この入学試験のペーパーテストも、決して魔塔主殿はいやがらせのために実施したわけじゃないんだ。学園に預かった子供たちを少しでも家族の元へ返したいから自分が嫌われてでも施行した、それだけは覚えていてほしい」
それだけ言って、王子は壇上を降りる。私は今の発言を聞いて、瞬きの回数が多くなる。それは驚きだからではなく、初めて自分の思想を言語化してもらえたからだろう。
文句を垂れていたアバラも、今の発言に気まずそうにしていた。不合格の面々も、名誉よりも優先するべきものに気が付いたのか、ただ泣きながら鼻を啜り、静かにこの場を後にする。
私はただ、じっと王子を見ていた。
けれどすぐに頭を横に振る。
いけない、殺意を鈍らせては。入学すらしていないのに、復讐の怒りを鎮火させては。
やがて王子に入れ替わり、別の教授が壇上に上がる。
「これより実技試験の説明をする」
次の試験の説明に、会場は静まった。緊張しながら耳を傾ける。
「実技試験では、魔法のランタンを使用する。これより一組に一つ、ランタンを渡す」
私たちの前に、一つのランタンが配布された。中には青い炎が灯っており、他の受験者たちも不思議そうにランタンを眺めていた。
「条件は自分たちのランタンを守ることと、別ペアのランタンを二つ壊すこと。この条件を一定時間まで満たしたものを合格とする」
ペアは続行ということなのだろう。アバラを見ると、ニカッと笑っていた。
一学年、定員は200人。すると上位100組以内に入っていればいい。ペーパーテストで大分削ぎ落とされたためこの場にいるのは600。その中の三分の一に入っていればいいと考えると難しくはない。ただ、問題なのはこの実技試験では互いに攻撃魔法を使用するために最悪命を失うこともあるのだ。それほどに危険な内容で、私がペーパーテストを実施してからは死傷者数はみるみる減っていったが、「受験者が減ったならそりゃ死傷者数も減るだろ」ということで特に話題には上がっていない。
「これから諸君らを別の場所に飛ばす。思考を巡らせ技術を用い、無事ランタンを守り切れ」
受験者たちの体は光に包まれ、やがて全員姿を消す。
そして目を開くと、私たちは森の中にいた。
「うん?森?不気味やな」
「ここ・・・紫紺の森じゃないか」
私がこの体の復活を遂げた場所でもあり、立ち入りを禁止している区域だ。
「紫紺の森だって?なんで君にそんなことが分かるんだ」
どうやら、私たちと同じ場所に飛ばされた受験生もいるようだ。フワフワの深い緑の短髪。そして気だるげな目をした背の低い少年。そしてその少年の隣には、立木心愛もいる。
「君は、学力一位のレオか」
「ほーん、こいつがおチビに学力で買った坊主なんや」
「そういう君は、全科目で50点取ったアリオンでしょ。隣の彼は答案に参加していないよね。僕がとったのは四科目90点前後。でも君は9科目やったうえで僕より高い点数を五科目出している。・・・負けたよ」
レオという名の少年は、私たちの元へつかつか歩いてくる。一方のペアらしき立木心愛は、面倒くさそうにレオを見ていた。
レオの言葉に私も驚いた。どうやって確認したか分からないが、すべての答案が私の物と推理したのだ。
「凄いなアバラ、あのレオとかいう子、見た目からして君が頭悪いことを見抜いている。油断しないでね」
「確かに油断しとったんやけど、味方から攻撃来るとは思わんかったかな。誰があんぽんたんや」
軽口を叩きつつも、私たちは警戒態勢に入る。私はこの姿となり、大人の姿の頃の魔道具では正体がばれるために、赤い羽根を巾着袋に入れて魔法を使用していた。何故かこの赤い羽根を媒介にすると力が発揮できるのだ。
一方のアバラは籠手が魔道具のようで、見事な手さばきで装着を終えていた。
けれどレオはこちらに片手を差し出す。
「ああ、僕に戦闘の意思はないよ。だって、このルールは協力したほうがメリットがあるでしょ。合格者はおよそ三分の一。少ない人数で動くことのほうがメリットが少ない」
賢い判断だ。その通り。この試験は、大人数で動くことを想定している。実戦の場でも、調子に乗って個人で動く奴から死ぬからだ。故に即席でパーティを作り、自分たちよりも少ないグループを狩る。これが定石になるだろう。
「ちょっとアンタ!私を差し置いて勝手に決めないでよね。私はこんな地味ちんちくりんと、アホの塊と行動なんてしたくないわ!」
友好的なレオとは対照的に、心愛はこちらに対して敵対心を向けてくる。
「・・・と、彼女は言ってるけれど?」
「ああ、彼女、この通り頭が悪いんだ。気にしないで」
「な・・・!あんたね、私を誰だって思ってるの?私は光の魔法を使う、この国の聖女なのよ!?」
私は冷静に立木心愛を観察する。小説の彼女はこんな短絡だったろうか・・・?もっとおしとやかで、静かで優しい女性だった気がする。
ひょっとして、悪役に憑依した私と同様に、彼女もまた憑依したのだろうか。
同郷の可能性が湧いてくると、親近感がわく。けれど同時に、小説のモデルと性格がかけ離れているのなら、彼女もまた私を殺した容疑者という線が浮上してきた。
少し、情報を探ってみようか。
「聖女というのなら、どうしてこんな試験に参加しているんだい?伝説の存在なんだろう?」
「知らないわよ!私だって本当だったら無条件合格してたわよ!けど、あの魔塔主が『試験通過に無条件はいかなる場合であっても認めない』って余計なことをしてくれたからでしょう!?」
・・・そういえばそうだったな。実力のない貴族が入ってきて死なれても困るのだが、ルールではそういった人物たちを対象にしていたため、聖女のことはすっかり忘れていた。
聖女は魔塔のある方向を睨んで、怒りをあらわにしていた。けれど、やがてこちらをキッと睨む。
「ええ、私は聖女ですもの。こういったことだってできるのよ?」
聖女は自分の手を広げると、やがてそこには光が収束する。すると、一つの武器が構築された。
それは、光の短剣だった。
「知ってるかしら?光魔法って、選ばれた人間か、魔法に長けた超上級者の二択しか使えないの。私はどっちも優れているからこんな光の実体化まで出来ちゃうのよ?」
驚いた、私があの日殺されたときも光の短剣だった。心愛はまだ学園に入学していないだろうということで魔法の不得手さから容疑者からは外していたが、まさか自ら容疑者枠に収まってくれるとは。
心愛は私たちがそれを見て恐れ慄くと思ったのだろう。けれど、実際には殺気をあらわにしているため、少しひるんだ様子を見せる。
「レオ。君たちには戦闘の意思がある、ということでいいかな?」
「・・・正直彼女とは意見が合わないから、僕は先に行くことにするよ。彼女はどうでもいいけど、僕は見逃してほしい」
「な・・・!?女性を一人にして去るなんて、あんたそれでも男なの!?」
それでも心愛は構えを解かない。レオの行動に一瞬焦った表情をしたが、しかし再び勝気にこちらを見始める。
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