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犯人探求編
10.額に口づけを
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本来であれば入学式後に各授業の説明会が行われるはずだが、爆発騒ぎを経て本日は解散ということになった。マラカイは実際には来賓でもないのに色々騒ぎを起こしたため、私の元婚約者のジェルドの呼び出されていた。
引っ越し作業に私を強制召喚しようとするアバラを撒き、マラカイを探す。
やがて、小さな小部屋にいる二人を発見した。それを部屋の外から伺う。
「貴様、学園の関係者でもないのに、よくものこのことやってきたな」
「関係者です~。ここはせんせーの庭ですから、つまりは僕の庭でもあります~」
生真面目vs不真面目による論争が起こっていた。ジェルドと私は同い年で、マラカイとは3歳差になる。つまりはジェルドが教師になった一年目にマラカイが入学してきたという計算になり、ここは恩師と元生徒という関係性なのだ。
「貴様の元教師である俺の顔に免じて、貴様の罪を問わないこともできる。だがその前に、関係各所に謝罪をしてくるんだ」
「僕の先生はローゼルアリオンだけです。あの人の素晴らしさに劣等感を感じているだけの貴方に、媚びる頭を僕は持っていませんので」
「ふん、奇人の弟子は変人だからな。お前の強情さには昔から手を焼くよ。時間の無駄だ、とっとと帰れ」
「あんたが僕を呼んだんでしょうが~。たくもう」
奇人と言われる私も、相変わらずのジェルドからの嫌われようである。
マラカイの代は、マラカイが主席だった。
故に、本当であれば有望な生徒としてジェルドは誇りに思うはずなのだが、しかしマラカイはジェルドには懐かず、ただ私にだけ懐いた。
私の代では私が首席でジェルドが二位だったため、その時からジェルドから嫌味は受けていたものの、マラカイの件があった年の付近からさらに関係が悪化し、マラカイが卒業した後には、これまた何故かジェルドが私に向ける憎悪はさらに大きくなったように思うのだ。
「本当に、貴方が先生の婚約者なんて、鳥肌が立つ。先生に向ける憎悪も、そろそろただの嫉妬ということを理解してほしいですね~」
「・・・?何の話だ?俺ではなく、あいつが俺に対して憎悪を向けてくるんだろう」
その発言に、私もマラカイも固まる。
どういうことだ?私は、ジェルドの悪口は言った記憶は無い。マラカイも何の話か分からず、じっとジェルドを見ていた。しかし話は終わりとでもいうようにジェルドは去っていった。
ジェルドは、私へ被害妄想をしていた?
私がジェルドの悪口を積極的に言いまわっていたのならともかく、悲しいことだが私にそもそも悪口を言えるような友人自体いない。思えば、生徒達が私のことを積極的に憎むのも何故なのか。ひょっとすると恨みや憎しみなどの単純な話ではないのか?
そうして考えながら急いでその場を後にしていると、後方から誰かが私の肩を叩いてきた。
「君、入学試験に会ったアリオン君だよね?こんなところでどうしたんだい?迷子かな?」
「生徒会長さん?」
「ふふ、ここは広いからね。そうだ、よかったら僕が校内を案内しようか?」
アウレリウスが少し身をかがめ、私の顔を覗き込む。困っていた私が心配で、助けようとしてくれているのか。本当に、心優しい子に育ったんだな。この子は周囲から蔑まれて育ったのに、負けずによくぞまっすぐに育った。
「いいえ、生徒会長はみんなの憧れですから、僕が一緒にいれば嫉妬を買いますので」
「そんなことないよ。僕も気を晴らしたくってね。人を探しに来たのだけれど、何故かいなくて落ち込んでいたから、その気分転換に付き合ってくれると嬉しいよ」
「人探し?」
ここは、学園内でもイベントの運営の準備をするようなエリアだ。故に、生徒は通常であればやってこれないし、客人だってホイホイ現れるような場所ではない。
「うん、アリオン・・・・・・魔塔主だよ。入学式の時は必ず現れていたんだけど、何故か今年はいないんだ。どれだけ探してもいないのだから、今年は欠席なんだろね」
「あ・・・」
「一年に一回しか会えないから久しぶりにお話ししたかったのだけれど、寂しいな」
そう、私は少なくとも毎年入学式には参列だけはしていた。毎年どんな有望な生徒が入ってきたのか、直接自分の目で確認していたのだ。私が姿を現すといつも場の空気が死ぬ関係で、それ以外は例外がない限り行事には顔を出さなかったのだが、確かにアウレリウスからは昨年と一昨年は挨拶をされていた。本当はもっと話したいという顔をしていたものの、私は王族に対して一々礼儀を尽くすのが面倒なので、いつも早めに会話を切っていた。
・・・てっきり社交辞令だと思っていたが、この子は心の底から私を慕っていてくれたのだ。
ふと、心が痛む。近いうちに、ローゼルアリオンの訃報をアウレリウスも耳にするだろう。すると、優しいこの子はどう思うのだろうか。自分は誰にも悲しまれることは無いのだろうと思っていたけれど、アウレリウスだけはきっと悲しんでくれるのだろう。それを想像すると罪悪感がこみ上げる。
ここで私の正体を話すか?
いや、私の復讐計画を聞けばこの子は止めるだろう。アウレリウスに懇願されれば、私は復讐を断念してしまいそうだ。今は唯一の生きる標である、この怨念が絶えることが何よりも怖いのだ。
そうだ、近くにマラカイがいる。もし魔力切れになっても、マラカイがいればなんとかなるだろう。
「生徒会長さん、僕はさっき、魔塔主らしき人を見たんですよ!ちょっと待っててください!」
「え?本当かい?」
私は急いで移動してアウレリウスから大きく距離を取り、木の茂みに隠れ、魔力を解き放つ。
すると、私の姿は空色の髪とワインレッドの瞳を持つ大人の姿へと変貌する。
「おっと、服も変えんとな」
魔力を織って、魔塔主時代に着ていた服を構築。この二点だけで非常に魔力を持っていかれたが、3分はこの体を維持できるだろう。もし次があれば、体を戻すと同時に服も変化するようにしよう。
タイムリミットはあるものの、焦る心を押し隠して優雅にアウレリウスの元へと歩いていく。
私を視界に入れた彼の青い瞳は、驚愕、のちに表情は歓喜に染まる。本当に、私と会うことを楽しみにしていてくれたのだ。
「アリオン・・・久しぶりだね!」
「ああ、お前は随分と身長が伸びたな」
ここでは私たち二人だけしかいないので、ため口で返す。なんというか、こんなに切望されていたとは思っていなかったため、アウレリウスが喜びを全身で表現しながらこちらに駆け寄るのが少しむず痒い。
アウレリウスは、大人になった私の姿より、なお頭一個分背が高い。子供は知らないうちに育つというが、ここまで好青年に育つのは昔を知っている人間からすると誇らしい。私は手を伸ばし、深紅の綺麗なその頭を撫でる。
すると顔を真っ赤にした。あまりに意外なことで、また大人からそんな風に褒められることはなかなか無いのだろう。
「きょ、今日のアリオンはいつもと違うね。いつもならもっと大人っぽいのに、今日はなんだかいつもより積極的というか」
「いいや、お前の成長が嬉しいと思ってな」
「・・・子供扱いは嫌かな。けど、今日は長くお話が出来る?」
「いいや、悪いがそれは出来ない。実はな。今日はお前との最後の別れをしにきたんだ」
先ほどまで照れて真っ赤な表情をしていたアウレリウスは、私の言葉を少しずつ反芻し、やがて段々と青くなっていく。
私は、アウレリウスが在学中はこの学園には手を出さないことを決めた。彼が生徒会長をしている間に事件が起これば、この子の名に傷がつく。故に、容疑者を一年以内に殺し、アウレリウスが卒業した後に殺戮を決行する。
すると、この学園に来年は無い。きっとこの子は、卒業した後も私に会いに来ようと考えているのだろうが、残念ながらそのころには私の訃報と、蘇った犯罪者としての名が残っているだけなのだ。
アウレリウスの体が震える。綺麗な目も、動揺によって焦点が定まっていない。
「ど、どうして?僕が何か悪いことをしたのかい?それともどこか別の国にでも行くとでも?僕を置いて、一体どこへ」
縋りつくように、僕の腕を掴む。惜しんでくれるだろうとは思った。けれど、それ以上の反応に、さすがの私も驚く。
けれど、アウレリウスの綺麗な頭に手を置く。
「いいか?もし私がどうなったとしても、絶対に落ち込まないでほしい。悲しまないでほしい。それだけを言いに来たんだ。私はお前を見守っているから」
「お願いだアリオン、事情を話してほしい。僕に出来ることならなんだってする。いやだ、一人にしないで」
・・・そろそろ変身して三分か。最後の挨拶をしたかったが、中途半端なところで終わってしまう。クソ、この子が未練を絶てるようにしたかったのに、これでは本末転倒ではないか。
仕方がない。
私は私の手を両手で握って顔をうずめているアウレリウスの拘束を外し、彼の頭を優しく両手で挟む。そして、彼の額に口づけを落とした。
これがこの姿で彼に言える、最後の言葉になるだろう。
「ありがとう。お前のおかげで私は命拾いした。これから先どんなことがあっても、私は絶対お前を守るから」
言葉の意味が理解できず、茫然としているアウレリウスを後に、私は残りの力を振り絞って家に転移した。
引っ越し作業に私を強制召喚しようとするアバラを撒き、マラカイを探す。
やがて、小さな小部屋にいる二人を発見した。それを部屋の外から伺う。
「貴様、学園の関係者でもないのに、よくものこのことやってきたな」
「関係者です~。ここはせんせーの庭ですから、つまりは僕の庭でもあります~」
生真面目vs不真面目による論争が起こっていた。ジェルドと私は同い年で、マラカイとは3歳差になる。つまりはジェルドが教師になった一年目にマラカイが入学してきたという計算になり、ここは恩師と元生徒という関係性なのだ。
「貴様の元教師である俺の顔に免じて、貴様の罪を問わないこともできる。だがその前に、関係各所に謝罪をしてくるんだ」
「僕の先生はローゼルアリオンだけです。あの人の素晴らしさに劣等感を感じているだけの貴方に、媚びる頭を僕は持っていませんので」
「ふん、奇人の弟子は変人だからな。お前の強情さには昔から手を焼くよ。時間の無駄だ、とっとと帰れ」
「あんたが僕を呼んだんでしょうが~。たくもう」
奇人と言われる私も、相変わらずのジェルドからの嫌われようである。
マラカイの代は、マラカイが主席だった。
故に、本当であれば有望な生徒としてジェルドは誇りに思うはずなのだが、しかしマラカイはジェルドには懐かず、ただ私にだけ懐いた。
私の代では私が首席でジェルドが二位だったため、その時からジェルドから嫌味は受けていたものの、マラカイの件があった年の付近からさらに関係が悪化し、マラカイが卒業した後には、これまた何故かジェルドが私に向ける憎悪はさらに大きくなったように思うのだ。
「本当に、貴方が先生の婚約者なんて、鳥肌が立つ。先生に向ける憎悪も、そろそろただの嫉妬ということを理解してほしいですね~」
「・・・?何の話だ?俺ではなく、あいつが俺に対して憎悪を向けてくるんだろう」
その発言に、私もマラカイも固まる。
どういうことだ?私は、ジェルドの悪口は言った記憶は無い。マラカイも何の話か分からず、じっとジェルドを見ていた。しかし話は終わりとでもいうようにジェルドは去っていった。
ジェルドは、私へ被害妄想をしていた?
私がジェルドの悪口を積極的に言いまわっていたのならともかく、悲しいことだが私にそもそも悪口を言えるような友人自体いない。思えば、生徒達が私のことを積極的に憎むのも何故なのか。ひょっとすると恨みや憎しみなどの単純な話ではないのか?
そうして考えながら急いでその場を後にしていると、後方から誰かが私の肩を叩いてきた。
「君、入学試験に会ったアリオン君だよね?こんなところでどうしたんだい?迷子かな?」
「生徒会長さん?」
「ふふ、ここは広いからね。そうだ、よかったら僕が校内を案内しようか?」
アウレリウスが少し身をかがめ、私の顔を覗き込む。困っていた私が心配で、助けようとしてくれているのか。本当に、心優しい子に育ったんだな。この子は周囲から蔑まれて育ったのに、負けずによくぞまっすぐに育った。
「いいえ、生徒会長はみんなの憧れですから、僕が一緒にいれば嫉妬を買いますので」
「そんなことないよ。僕も気を晴らしたくってね。人を探しに来たのだけれど、何故かいなくて落ち込んでいたから、その気分転換に付き合ってくれると嬉しいよ」
「人探し?」
ここは、学園内でもイベントの運営の準備をするようなエリアだ。故に、生徒は通常であればやってこれないし、客人だってホイホイ現れるような場所ではない。
「うん、アリオン・・・・・・魔塔主だよ。入学式の時は必ず現れていたんだけど、何故か今年はいないんだ。どれだけ探してもいないのだから、今年は欠席なんだろね」
「あ・・・」
「一年に一回しか会えないから久しぶりにお話ししたかったのだけれど、寂しいな」
そう、私は少なくとも毎年入学式には参列だけはしていた。毎年どんな有望な生徒が入ってきたのか、直接自分の目で確認していたのだ。私が姿を現すといつも場の空気が死ぬ関係で、それ以外は例外がない限り行事には顔を出さなかったのだが、確かにアウレリウスからは昨年と一昨年は挨拶をされていた。本当はもっと話したいという顔をしていたものの、私は王族に対して一々礼儀を尽くすのが面倒なので、いつも早めに会話を切っていた。
・・・てっきり社交辞令だと思っていたが、この子は心の底から私を慕っていてくれたのだ。
ふと、心が痛む。近いうちに、ローゼルアリオンの訃報をアウレリウスも耳にするだろう。すると、優しいこの子はどう思うのだろうか。自分は誰にも悲しまれることは無いのだろうと思っていたけれど、アウレリウスだけはきっと悲しんでくれるのだろう。それを想像すると罪悪感がこみ上げる。
ここで私の正体を話すか?
いや、私の復讐計画を聞けばこの子は止めるだろう。アウレリウスに懇願されれば、私は復讐を断念してしまいそうだ。今は唯一の生きる標である、この怨念が絶えることが何よりも怖いのだ。
そうだ、近くにマラカイがいる。もし魔力切れになっても、マラカイがいればなんとかなるだろう。
「生徒会長さん、僕はさっき、魔塔主らしき人を見たんですよ!ちょっと待っててください!」
「え?本当かい?」
私は急いで移動してアウレリウスから大きく距離を取り、木の茂みに隠れ、魔力を解き放つ。
すると、私の姿は空色の髪とワインレッドの瞳を持つ大人の姿へと変貌する。
「おっと、服も変えんとな」
魔力を織って、魔塔主時代に着ていた服を構築。この二点だけで非常に魔力を持っていかれたが、3分はこの体を維持できるだろう。もし次があれば、体を戻すと同時に服も変化するようにしよう。
タイムリミットはあるものの、焦る心を押し隠して優雅にアウレリウスの元へと歩いていく。
私を視界に入れた彼の青い瞳は、驚愕、のちに表情は歓喜に染まる。本当に、私と会うことを楽しみにしていてくれたのだ。
「アリオン・・・久しぶりだね!」
「ああ、お前は随分と身長が伸びたな」
ここでは私たち二人だけしかいないので、ため口で返す。なんというか、こんなに切望されていたとは思っていなかったため、アウレリウスが喜びを全身で表現しながらこちらに駆け寄るのが少しむず痒い。
アウレリウスは、大人になった私の姿より、なお頭一個分背が高い。子供は知らないうちに育つというが、ここまで好青年に育つのは昔を知っている人間からすると誇らしい。私は手を伸ばし、深紅の綺麗なその頭を撫でる。
すると顔を真っ赤にした。あまりに意外なことで、また大人からそんな風に褒められることはなかなか無いのだろう。
「きょ、今日のアリオンはいつもと違うね。いつもならもっと大人っぽいのに、今日はなんだかいつもより積極的というか」
「いいや、お前の成長が嬉しいと思ってな」
「・・・子供扱いは嫌かな。けど、今日は長くお話が出来る?」
「いいや、悪いがそれは出来ない。実はな。今日はお前との最後の別れをしにきたんだ」
先ほどまで照れて真っ赤な表情をしていたアウレリウスは、私の言葉を少しずつ反芻し、やがて段々と青くなっていく。
私は、アウレリウスが在学中はこの学園には手を出さないことを決めた。彼が生徒会長をしている間に事件が起これば、この子の名に傷がつく。故に、容疑者を一年以内に殺し、アウレリウスが卒業した後に殺戮を決行する。
すると、この学園に来年は無い。きっとこの子は、卒業した後も私に会いに来ようと考えているのだろうが、残念ながらそのころには私の訃報と、蘇った犯罪者としての名が残っているだけなのだ。
アウレリウスの体が震える。綺麗な目も、動揺によって焦点が定まっていない。
「ど、どうして?僕が何か悪いことをしたのかい?それともどこか別の国にでも行くとでも?僕を置いて、一体どこへ」
縋りつくように、僕の腕を掴む。惜しんでくれるだろうとは思った。けれど、それ以上の反応に、さすがの私も驚く。
けれど、アウレリウスの綺麗な頭に手を置く。
「いいか?もし私がどうなったとしても、絶対に落ち込まないでほしい。悲しまないでほしい。それだけを言いに来たんだ。私はお前を見守っているから」
「お願いだアリオン、事情を話してほしい。僕に出来ることならなんだってする。いやだ、一人にしないで」
・・・そろそろ変身して三分か。最後の挨拶をしたかったが、中途半端なところで終わってしまう。クソ、この子が未練を絶てるようにしたかったのに、これでは本末転倒ではないか。
仕方がない。
私は私の手を両手で握って顔をうずめているアウレリウスの拘束を外し、彼の頭を優しく両手で挟む。そして、彼の額に口づけを落とした。
これがこの姿で彼に言える、最後の言葉になるだろう。
「ありがとう。お前のおかげで私は命拾いした。これから先どんなことがあっても、私は絶対お前を守るから」
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