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犯人探求編
14.文通
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カフェテリアの注目は、私とアウレリウスに集まる。相席している副会長のロージは、私の耳に近づき、耳打ちをした。
『おそらく、生徒会のスカウトかもしれませんね』
『いや、僕はまだ何も功績を残していないんですけれど』
『ジェルド殿の補佐に選ばれたのでしょう。その肩書きは絶大なのです』
いや、おそらく違うと思う。昨日の件と言っていたので、ローゼルアリオンの件だろう。あんな別れ方をしたので手がかりが欲しいのだろうと思う。
すると、周囲から感じるこの好奇の視線も上手にかいくぐらなくては。先ほどから立木心愛の私への凝視が痛いのだ。
「昨日の僕の落し物の件ですね!そんな、生徒会長とあろう御方が僕のためにそんな時間を使っていただけてるなんて・・・。本当に申し訳ございません。行きましょうか」
すると、周囲は好奇心の目から、アウレリウスへの称賛の目に変わる。落とし物如きのためにこんなド平民にも心優しい行動をとっているのだ。なんて優しい人なのだろう、と。
咄嗟に付いた嘘ではあるが、少しでもこの子に栄誉が与えられれば私はそれでいい。
アウレリウスも、私が周囲の目を気にしていることを察したのだろう。頷いて、手を差し出してくる。けれどその手を掴んだのは私ではなかった。
「アウレリウス!私もついていくわ!落とし物でしょう、少しでも人手が多いほうが助かると思うわ!」
この瞬間、私とアウレリウスの思ったことは同じだろう。彼女を撒く必要がある。けれど、そんな私とアウレリウスの空気を察したのだろう。我が弟のロージが心愛に耳打ちする。
「彼が落としたのは、少々恥ずかしいものですから。ご婦人は遠慮したほうがよろしいかと」
え?私は今、何を落としたことにされた?
今の言い方だと卑猥な物を落としたように聞こえないか?
ロージは心愛と私にだけ聞こえる声で呟いたことは助かったが、心愛が私に向ける視線は段々と変態を見る目になっていく。
アバラも事情を察した気になったのか、ニコニコと近づく。
「ええ!?落とし物!?も~そんなん俺にもっとはよ言ってや~友人の俺が助けたるのに」
「アバラ、後で僕が色々状況教えてあげるから、今は黙っていようね」
アバラのお節介も、人目を避けたいこちらの事情を察したレオのファインプレーが沈める。この隙にアウレリウスは私の腕を掴み、人ごみを抜けて人目のつかないところまで連れて行った。
「・・・ここでいいかな。急にごめんね。僕も藁に縋る思いだから」
「魔塔主のことですね?」
「・・・うん。どんな情報でもいいんだ。君が現れてからあの人も現れた。僕にはどうしても君が重要なカギを握っているような気がしてならないんだよ」
アウレリウスの顔は、少し青い。本当に体調が悪いのだろう。
まずいな、このままではこの子は本当に魔塔にまで押し寄せてきそうだ。どうにか私のことを忘れてくれると嬉しいが、この様子ではそんなわけにもいかないだろう。
仕方がない。少しリスクを背負うか。
「ここだけの話、魔塔主とコンタクトを取る手段があります」
「本当かい!?」
アウレリウスは私の両腕を掴み、驚きの表情をする。決して情報源を逃すまいと、じっと私を見ていた。
「とはいえ、僕も好きな時に直接接点が出来るわけではないんです。魔塔主から偶に手紙が送られてきますから、文通のやり取りだけなんですけれどね」
「文通・・・?君と魔塔主はどういう関係なんだい?」
少し嫉妬の混じった目で、頬を膨らませている。先ほどの青い顔はもはや見る影もなく、表情がコロコロと変わって何とも面白い。
「絶対に内緒でお願いします。実は、僕は魔塔主の生徒なのです」
「生徒。ああ、だから・・・」
何か私に対して思い当たる節があるのだろう。とりあえず納得して貰えたようで良かった。
「なら、厚かましいお願いになるのだけれど、僕もその文通って出来ないだろうか?」
「はい、魔塔主も喜ぶと思いますよ」
「本当!?ありがとう、じゃあ早速明日手紙を預けるね!!本当にありがとう!!」
僕の手を両手で握り、ブンブンと振る。そしてパッと離して立ち去っていった。
嵐のようではあったものの、あれほどまでに懐いてくれることに悪い気はしない。私の訃報を流すまでの間、彼とは文通をしよう。やがては飽きてくれると嬉しいけれど。すると、なるべく早いスパンで返したほうが彼も早く満足出来るかもしれない。
翌日。
「思ったよりも分厚くなってしまったのだけれど、送れそうかな・・・?」
便箋50枚分の手紙が私に手渡された。
「何ですか?これは。小説?」
「ううん?手紙だよ」
手紙が、50枚・・・?
「魔塔主に論文の推敲依頼ですか・・・?」
「いやだから、手紙だよ」
手紙って、こんなつづりひもで縛られることってあるのか・・・?アウレリウスはわくわくした表情で私を見ている。割と一枚一枚の紙も大きい。一番上の紙は封の代わりか白紙で、本文の内容は捲ってみないと読めないが、ペンの引っ掻き痕から相当びっしり書いていることもわかる。
「どうかな、送れそうかな?転移で送るのかい?」
「はい、少々お待ちください」
私は荷物用の転移の魔法を展開し、マラカイと住んでいる家の私の自室に送る。なお、決してマラカイが読むことのないように金庫の中に送り込んだ。あいつはなんだかんだで私のタブー領域は踏み入れないでくれるから、これで大丈夫だろう。
「アリオン・・・突然の僕からの手紙に驚いてるかな・・・」
「それはもう、驚いてると思います」
そりゃ便箋50枚はな。私はびっくりしたぞ。
帰ってからじっくり読むか。私はアウレリウスに一礼をしてその場を後にしようとするが、アウレリウスは私の後ろをひょこひょこついてくる。
「あの・・・?」
「アリオンそろそろ読み終えたかな?今頃返事の手紙を書いてくれている頃合いだと思うんだ。うう、緊張するね」
私はどれだけ速読を信頼されているんだ。一枚目どころか一文字すら読めてないぞ。
「あの、魔塔主は結構ずぼらで返信が遅い人ですので、気長に待った方がいいかと」
「ああ、そうだよね。でもね、もし返信が来たら一秒でも早く僕は読みたいんだ。大体いつもどれくらいのペースで返信が来るかな?もし返信が来たら真っ先に僕の元へ来てほしいんだけれど、ああでもそれは君にとって迷惑だから・・・」
「なるべくすぐにお届けしますから!!大丈夫ですから!!」
私は走り去る。これは、なるべく早めに目を通しておいて、授業中に返信の内容を考えるべきか。仕方がない。どうせ次の時間は私は授業を取っていない。私はこっそりと学園校舎を抜け出し、すぐ近くにある自分の家に戻ることにした。
「さて、手紙は金庫に送ったはいいが、あの金庫はダイヤル式でやや時間がかかるのがネックで・・・」
乱暴に自宅の扉を開き、そのまま自室を開けると、先住民がいた。
「はぁ・・・。せんせーの香り・・・。らぁいすき」
「何やってんだ・・・?」
マラカイが私の枕を吸っていた。私の途中帰宅は想定外だったようで、顔を上げて驚いている。
「やだ、先生!僕のこれから行われる自慰が気になって見に来たんですか!?まだ明るいのにぃ・・・。・・・いいですよ、来てください。もっと近くで見てください」
「ちょっと待て、お前、まさか毎日この部屋に侵入しているとかじゃないよな。過去にも下品な行動をしたことあるとかじゃないよな」
私はマラカイに近づくが、それを性交の意思と判断したのか、腕を掴んでベッドに引きずり込もうとする。
「やめろ馬鹿!私はここに荷物を取りに来ただけなんだ!!」
「でもぉ、僕はもうここが臨戦態勢なのに、こんな哀れな弟子を追い出すんですかぁ?せんせーで抜かせてくださいよぉ」
「そういうのは自分の部屋で一人で沈めるものだ!!さあ早く、私は急いでるんだ!!」
ちぇーと言いながら、マラカイはベッドから出る。膨らんでいるかもしれないその場所を徹底的に視界から外し、マラカイが出ていった後の部屋の鍵を念のためにかける。そして隠し金庫を取り出してダイヤルを開けていく。外部分には魔法無効の加工をかけているため、鍵開けの呪文や持ち運びの浮遊魔法が通じないのだ。
私は数字を合わせてダイヤルを右に、左に何度も回し、苦労の末、手紙を取り出した。
「これ、触ってみるとわかるが相当良い紙を使っているな。あの短期間で取り寄せたのか?」
まずは一枚目。入学式で会ったときの話。久々に会えたことが嬉しいこと、本当はもっと会いたいこと。こちらの体調を心配する文言。
二枚目。突然の手紙の無礼。手紙を送ることになった経緯。人を経由して申し訳ないこと。
三枚目。私の「もう会えない」という発言の真意の確認。自分はいつでも味方だから、そんなことは言わないでほしい。
四枚目、五枚目、六枚目......
思えば、私とアウレリウスはまともに会話をしたのが、出会ったときのあのたった一回だった。それからちょくちょく会うことがあっても、向こうは立場が邪魔をして、そして私は何もかもを忘れて生きてきた。故に、知り合いの延長戦でしかないはずの関係だ。
だというのに、便箋一枚一枚から私を気遣う優しい心があふれていた。あの過去の出来事は、私にとってただの日常の一ページですらなかったのに、この子にとってはあの一瞬がどれほど心に残り続けたのか。
手紙の締めにはこう括られていた。
「この学園で首席で卒業して、誇りを持って貴方に会いに行きたい」
読み終えた手紙は大事にまとめて金庫に戻し、私は急いで次の授業に走っていくのだった。
『おそらく、生徒会のスカウトかもしれませんね』
『いや、僕はまだ何も功績を残していないんですけれど』
『ジェルド殿の補佐に選ばれたのでしょう。その肩書きは絶大なのです』
いや、おそらく違うと思う。昨日の件と言っていたので、ローゼルアリオンの件だろう。あんな別れ方をしたので手がかりが欲しいのだろうと思う。
すると、周囲から感じるこの好奇の視線も上手にかいくぐらなくては。先ほどから立木心愛の私への凝視が痛いのだ。
「昨日の僕の落し物の件ですね!そんな、生徒会長とあろう御方が僕のためにそんな時間を使っていただけてるなんて・・・。本当に申し訳ございません。行きましょうか」
すると、周囲は好奇心の目から、アウレリウスへの称賛の目に変わる。落とし物如きのためにこんなド平民にも心優しい行動をとっているのだ。なんて優しい人なのだろう、と。
咄嗟に付いた嘘ではあるが、少しでもこの子に栄誉が与えられれば私はそれでいい。
アウレリウスも、私が周囲の目を気にしていることを察したのだろう。頷いて、手を差し出してくる。けれどその手を掴んだのは私ではなかった。
「アウレリウス!私もついていくわ!落とし物でしょう、少しでも人手が多いほうが助かると思うわ!」
この瞬間、私とアウレリウスの思ったことは同じだろう。彼女を撒く必要がある。けれど、そんな私とアウレリウスの空気を察したのだろう。我が弟のロージが心愛に耳打ちする。
「彼が落としたのは、少々恥ずかしいものですから。ご婦人は遠慮したほうがよろしいかと」
え?私は今、何を落としたことにされた?
今の言い方だと卑猥な物を落としたように聞こえないか?
ロージは心愛と私にだけ聞こえる声で呟いたことは助かったが、心愛が私に向ける視線は段々と変態を見る目になっていく。
アバラも事情を察した気になったのか、ニコニコと近づく。
「ええ!?落とし物!?も~そんなん俺にもっとはよ言ってや~友人の俺が助けたるのに」
「アバラ、後で僕が色々状況教えてあげるから、今は黙っていようね」
アバラのお節介も、人目を避けたいこちらの事情を察したレオのファインプレーが沈める。この隙にアウレリウスは私の腕を掴み、人ごみを抜けて人目のつかないところまで連れて行った。
「・・・ここでいいかな。急にごめんね。僕も藁に縋る思いだから」
「魔塔主のことですね?」
「・・・うん。どんな情報でもいいんだ。君が現れてからあの人も現れた。僕にはどうしても君が重要なカギを握っているような気がしてならないんだよ」
アウレリウスの顔は、少し青い。本当に体調が悪いのだろう。
まずいな、このままではこの子は本当に魔塔にまで押し寄せてきそうだ。どうにか私のことを忘れてくれると嬉しいが、この様子ではそんなわけにもいかないだろう。
仕方がない。少しリスクを背負うか。
「ここだけの話、魔塔主とコンタクトを取る手段があります」
「本当かい!?」
アウレリウスは私の両腕を掴み、驚きの表情をする。決して情報源を逃すまいと、じっと私を見ていた。
「とはいえ、僕も好きな時に直接接点が出来るわけではないんです。魔塔主から偶に手紙が送られてきますから、文通のやり取りだけなんですけれどね」
「文通・・・?君と魔塔主はどういう関係なんだい?」
少し嫉妬の混じった目で、頬を膨らませている。先ほどの青い顔はもはや見る影もなく、表情がコロコロと変わって何とも面白い。
「絶対に内緒でお願いします。実は、僕は魔塔主の生徒なのです」
「生徒。ああ、だから・・・」
何か私に対して思い当たる節があるのだろう。とりあえず納得して貰えたようで良かった。
「なら、厚かましいお願いになるのだけれど、僕もその文通って出来ないだろうか?」
「はい、魔塔主も喜ぶと思いますよ」
「本当!?ありがとう、じゃあ早速明日手紙を預けるね!!本当にありがとう!!」
僕の手を両手で握り、ブンブンと振る。そしてパッと離して立ち去っていった。
嵐のようではあったものの、あれほどまでに懐いてくれることに悪い気はしない。私の訃報を流すまでの間、彼とは文通をしよう。やがては飽きてくれると嬉しいけれど。すると、なるべく早いスパンで返したほうが彼も早く満足出来るかもしれない。
翌日。
「思ったよりも分厚くなってしまったのだけれど、送れそうかな・・・?」
便箋50枚分の手紙が私に手渡された。
「何ですか?これは。小説?」
「ううん?手紙だよ」
手紙が、50枚・・・?
「魔塔主に論文の推敲依頼ですか・・・?」
「いやだから、手紙だよ」
手紙って、こんなつづりひもで縛られることってあるのか・・・?アウレリウスはわくわくした表情で私を見ている。割と一枚一枚の紙も大きい。一番上の紙は封の代わりか白紙で、本文の内容は捲ってみないと読めないが、ペンの引っ掻き痕から相当びっしり書いていることもわかる。
「どうかな、送れそうかな?転移で送るのかい?」
「はい、少々お待ちください」
私は荷物用の転移の魔法を展開し、マラカイと住んでいる家の私の自室に送る。なお、決してマラカイが読むことのないように金庫の中に送り込んだ。あいつはなんだかんだで私のタブー領域は踏み入れないでくれるから、これで大丈夫だろう。
「アリオン・・・突然の僕からの手紙に驚いてるかな・・・」
「それはもう、驚いてると思います」
そりゃ便箋50枚はな。私はびっくりしたぞ。
帰ってからじっくり読むか。私はアウレリウスに一礼をしてその場を後にしようとするが、アウレリウスは私の後ろをひょこひょこついてくる。
「あの・・・?」
「アリオンそろそろ読み終えたかな?今頃返事の手紙を書いてくれている頃合いだと思うんだ。うう、緊張するね」
私はどれだけ速読を信頼されているんだ。一枚目どころか一文字すら読めてないぞ。
「あの、魔塔主は結構ずぼらで返信が遅い人ですので、気長に待った方がいいかと」
「ああ、そうだよね。でもね、もし返信が来たら一秒でも早く僕は読みたいんだ。大体いつもどれくらいのペースで返信が来るかな?もし返信が来たら真っ先に僕の元へ来てほしいんだけれど、ああでもそれは君にとって迷惑だから・・・」
「なるべくすぐにお届けしますから!!大丈夫ですから!!」
私は走り去る。これは、なるべく早めに目を通しておいて、授業中に返信の内容を考えるべきか。仕方がない。どうせ次の時間は私は授業を取っていない。私はこっそりと学園校舎を抜け出し、すぐ近くにある自分の家に戻ることにした。
「さて、手紙は金庫に送ったはいいが、あの金庫はダイヤル式でやや時間がかかるのがネックで・・・」
乱暴に自宅の扉を開き、そのまま自室を開けると、先住民がいた。
「はぁ・・・。せんせーの香り・・・。らぁいすき」
「何やってんだ・・・?」
マラカイが私の枕を吸っていた。私の途中帰宅は想定外だったようで、顔を上げて驚いている。
「やだ、先生!僕のこれから行われる自慰が気になって見に来たんですか!?まだ明るいのにぃ・・・。・・・いいですよ、来てください。もっと近くで見てください」
「ちょっと待て、お前、まさか毎日この部屋に侵入しているとかじゃないよな。過去にも下品な行動をしたことあるとかじゃないよな」
私はマラカイに近づくが、それを性交の意思と判断したのか、腕を掴んでベッドに引きずり込もうとする。
「やめろ馬鹿!私はここに荷物を取りに来ただけなんだ!!」
「でもぉ、僕はもうここが臨戦態勢なのに、こんな哀れな弟子を追い出すんですかぁ?せんせーで抜かせてくださいよぉ」
「そういうのは自分の部屋で一人で沈めるものだ!!さあ早く、私は急いでるんだ!!」
ちぇーと言いながら、マラカイはベッドから出る。膨らんでいるかもしれないその場所を徹底的に視界から外し、マラカイが出ていった後の部屋の鍵を念のためにかける。そして隠し金庫を取り出してダイヤルを開けていく。外部分には魔法無効の加工をかけているため、鍵開けの呪文や持ち運びの浮遊魔法が通じないのだ。
私は数字を合わせてダイヤルを右に、左に何度も回し、苦労の末、手紙を取り出した。
「これ、触ってみるとわかるが相当良い紙を使っているな。あの短期間で取り寄せたのか?」
まずは一枚目。入学式で会ったときの話。久々に会えたことが嬉しいこと、本当はもっと会いたいこと。こちらの体調を心配する文言。
二枚目。突然の手紙の無礼。手紙を送ることになった経緯。人を経由して申し訳ないこと。
三枚目。私の「もう会えない」という発言の真意の確認。自分はいつでも味方だから、そんなことは言わないでほしい。
四枚目、五枚目、六枚目......
思えば、私とアウレリウスはまともに会話をしたのが、出会ったときのあのたった一回だった。それからちょくちょく会うことがあっても、向こうは立場が邪魔をして、そして私は何もかもを忘れて生きてきた。故に、知り合いの延長戦でしかないはずの関係だ。
だというのに、便箋一枚一枚から私を気遣う優しい心があふれていた。あの過去の出来事は、私にとってただの日常の一ページですらなかったのに、この子にとってはあの一瞬がどれほど心に残り続けたのか。
手紙の締めにはこう括られていた。
「この学園で首席で卒業して、誇りを持って貴方に会いに行きたい」
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