誰が悪役(アリオン)を殺したか

ひまたろう

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犯人探求編

17.ベッドの上で

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 アウレリウスは私の手紙を丁寧に額縁に仕舞い、壁に飾り始める。なお、魔法界では額縁には加工がされているため画鋲とか接着剤とかそういうのは不要ではあるが、そういう問題ではない。

「ちょちょ、何をしているんですか?」
「嬉しいから、こうして見返したいなって思って。あらかじめ額縁を用意しておいたんだよ。彼から手紙が来るたびにこうして増やしていきたいんだ」

 重い!!その気持ちは本当に嬉しいが、重くもある。アウレリウスって割と天然が入っているな。今のこの姿の私では暴走する彼を止められないため、額縁の件は子供の姿の私から知ったことにして文通で止めるか・・・。

「じゃあ、また手紙を用意するからお願いしたいのだけれど、心愛の邪魔さっきみたいなことがまた起こるのも君に迷惑がかかるからね。手紙の文通の仲介なんて君に全くメリットがないのに、本当にごめんね。魔塔主と僕が直接やり取りできればいいのだけれど」
「ごめんなさい、それは難しいんです。僕のことは気にしないで頂ければ」

 魔塔から私はこうして離れており、もしアウレリウスが転移で手紙を届けようとしたら、どうしても魔塔に送らざるを得ない。それは非常に困るため、嫉妬のまなざしを向けられてもこうして出向く方が何倍もいいのだ。とはいえ、そのたび心愛に邪魔されて記憶を消すというのも危ない橋だが。
 アウレリウスは「そうだ!」と手をポンと叩いた。

「よければここに住まない?どうせ僕一人では部屋が使いきれていないのだし」
「流石に嫉妬で刺されそうなので嫌です」

 既に恨みで刺されたことはあるのだがな。恨みの怖さは私が一番身をもって体験している。それはともかく、住むとなると噂が出回るだろう。本末転倒だ。

「あー・・・。でも確かに、ここは一定の身分が無いと入れないうえに、君が住むとアリオンが僕らの仲を誤解することもあるのか・・・。うん、ちょっとそれはまずいね」

 そもそも、我が家には変態が住み着いている。もし私がこちらに移ろうものなら、あいつもセットになってくるのだ。アウレリウスの教育に悪影響しかないからそれは避けたい。
 それにしても手紙の流通速度を上げるために、こんなちんちくりんと住むことも許容するとは、流石天然。私個人としては別に今のやり取りで充分だが、アウレリウスは一刻も早く私からの返信が欲しいらしい。

「よし!じゃあ君は今日から生徒会に入ろう!ちょうど庶務の席が空いているんだよね!君が適任だ!」
「お断りします」
「えっ」

 断られるとは思っていなかったようで、驚いている。断るに決まっているだろう。私はこの学園に潜伏して犯人を洗い出しに来たんだ。優秀な成績を残して卒業をなんて全く考えてない。それは既に一回やってるんだ。もう飽きた。どうせやるなら平均あたりで留まって、凡人から見える世界を見てみたいんだ。

「うーん、でも僕は君のことが大変気に入ったから庶務になってほしいなって思う。なんだか、君と話をしていると本当に楽しいんだよ」
「それは、光栄だとは思いますが」
「確かに僕の特権で君を生徒会入りさせられるけれど、それでは君が他者の目を気にするのかな。よし、次の中間試験で学年一位を取ってほしい。お願いだ」

 ・・・そういえば、アウレリウスは根っからの王族だったな。嫌だと言ってるのに有無を言わさず意見を押し付けてくる。生徒会長特権を振りかざしてまでも文通を快適にしたいとは。これは、本当に困った。どう断ろうか。私がそうして迷っているとアウレリウスはベッドに座る私の前に跪き、私の両手を優しく包んだ。そして上目使いになる。
 キラキラした愛らしい顔が、その潤んだ瞳とともにこちらをじっと見る。

 ・・・・・・・・・
 そんなんでこの私が復讐に不利になる選択肢を取るわけが・・・!!!

「いいですよ・・・・・。その、一位の保証は全く出来ませんが・・・」
「本当かい!?ありがとう、僕のわがままに付き合ってくれて」

 駄目だった。
 この子のわがままをできうる限り叶えてあげたい自分がいた。

 私は両手で顔を覆う。学生時代に我が子可愛さに子供のためにカンニングを仕組んだアホな貴族の親がいて私は嘲笑ったものだが、こういう気持ちだったんだな。同じ立場になると本当に笑えない。
 笑顔を浮かべるアウレリウスを見て、OKをだしたことにホッとする。そしてそのまま立ち上がり、私の隣に座った。

「君は魔塔主のこと、好き?」
「・・・まあまあですかね」

 まあ、自分のことを好きと言われてはいという人間は中々いないだろう。別に嫌いでもないしまあまあだな。それはそれとして自尊心を傷つけられると怒るが。

「アリオンは、人を守るルールをいつも構築しようとしていたけれど、元来ルールというものは誰か人が死んで、やっと『制定しなければ』となる。彼は、色々やることに先が見えすぎていた。だから強硬的に映りやすかったのかもね。『人を守る』ということは『人の行動を制限する』こと。でも人がそれで死んだという歴史がなければ、制限に必要な理由も提示出来ず、誰も納得出来ない」

 この子は私に対してなついてくれるが、それはそれとして客観的視点で見てくれる。

「もちろん支配者っていうのは、そういうリスクを熟知したうえでやるのだから、アリオンだって誰かに嫌われるなんていちいち考えてないだろうね。でも僕は、彼の考えが間違っていないって僕なりに証明したいんだ。彼はみんなを愛しているから知恵を出してるんだよって」

 やがて立ち上がり、部屋の外へと誘導してくれた。基本的に校舎内では生徒会以外は許可なく魔法の使用をすることは禁止されている。私を転移で送ることも出来ないでもないが、念のためだろう。

 私たちは手を軽く振り、別れる。
 ・・・面倒な話になったな。中間考査は一年生に限り入学した一か月後に存在する。つまりは早いのだ。人数的都合から入学試験だけで成績を多角的に判別することは不可能であるため、次の中間考査を重視して一年のざっくりとした序列が出来る。

 そこで真ん中あたりを維持したかったのに、急遽アウレリウスのために一位を取る必要が出てきた。・・・いや、正しくは一位でなくてもいいのだろう。生徒会の空きは2席あるとのことだった。つまり、トップ3には入っていれば何とかアウレリウスも細工が出来るだろう。

 魔力が万全であれば寝ていても余裕なのだが、如何せんそんな余裕は私にはない。中間考査は内容が常に直前に発表されるが、実技試験が何なのかによって私の結果は大きく異なるだろう。

「こんなところにせんせ~がいないって理性ではわかってるんですけどね~。でも本能が僕を呼ぶんです!僕の先生追尾システムがこっちに反応してるんですよね~どこかな~」

 ・・・なんか、今嫌な声が聞こえた気がするが気のせいだろう。実技試験の前には魔力回復のためにマラカイと何度もキスをする必要がある。今から考えても本当に気が滅入りそうだ。多分それを考えたことにより幻聴が聞こえたのだろう。
 廊下の角。そこで向こうから来た誰かとぶつかる。

「ええ!?せんせーじゃないですか!?これは運命ですね!?」

 そのままマラカイは後ろに倒れかける私をキャッチし、静かに床に横倒しにした。なんで横倒しにするんだ、そういうのは普通体制を戻すのが筋じゃないのか。

「やだ先生ったら。僕が恋しいからって胸に飛び込んできましたね!?そのまま跳ね返るなんておっちょこちょいなんですから。いいですよ、エッチしましょうかここで」
「馬鹿!!離せ!!というかお前何しに来たんだ!!」
「先生が家からいなくなってもう数時間たつじゃないですかあ。匂いが嗅ぎたくなったんですー。とくに実技の授業が終わった後は汗かいてると思いまして!」
「どけ!私は考えなくてはいけないことが多いんだ!!」

 私を押し倒したまま、口づけをする。・・・先ほど立木心愛に魔法を使ったのでこのキスはありがたくはある。舌を入れてくるマラカイを素直に受け入れ、魔力をじわりじわりと満たしていく。
 しかしそれが良くなかった。完全に乗り気と勘違いしたマラカイは、私のボタンをぷつぷつと外していった。嘘だろ、こんなところで盛るなんて、いよいよ変態じゃないかこいつは!!

円盾えんじゅん

 しかし、魔法の詠唱が聞こえた途端マラカイはふと上を見上げ、咄嗟に私から離れる。私の周囲には防御の結界が張られていた。

「・・・あなたは『学園史上最高の天才』と謳われたマラカイ殿ですよね。うちの生徒を強姦しようとは。そういうことをするからアリオンの威光に傷がつくんですよ」
「あー鬱陶しいなあ。どう見たって合意だったじゃん。僕と彼の関係を知らないくせに、邪魔とかやめろよな、小僧が」

 アウレリウスは私を守るために、防護幕を展開したのだ。
 ま、まずい!混ぜてはいけない二人が今まさに睨みあっている!
 けれど私個人としてはアウレリウスの助力は心底助かった。こんな場所で私は雑に処女を失うところだったからだ。廊下でぶつかった為に処女を奪われるってあまりに理不尽すぎないか?

「コレクト」

 マラカイは私に引き寄せを使い、胸元にぽすっと私を受け止めた。私は顔面から飛び込んだせいで呼吸すらままならない。

「ほら、僕たちは恋人なんです~。恋人が交尾することに何の問題があるんですかね~」
「・・・仮にそうだとして、廊下で始める人間がいるわけないよ」

 今度はアウレリウスが私に向かって引き寄せを使う。そのタイミングに合わせて私はマラカイの胸を押したため、何とかアウレリウスに引き寄せられる。そしてそのまま受け止められ、彼の腕の中にいた。

「一応聞いておくけれど、あのマラカイ殿と恋人って言うのは本当かな?」
「いえ、全然。幻覚を見ているんです、彼は」
「ひっどい!!毎日一緒に暮らしていて、毎日一緒のベッドで寝ているじゃないですか~!!」

 私の死体とだろうが!!
 叫びそうになったが、もちろん口に出すことが出来ない。私はただ首を横に振ることで変態と無関係であることを必死にアピールする。それを見たアウレリウスはため息をつき、守護の魔法を展開する。

 一方、マラカイは自分と私の仲を阻む障害物としてアウレリウスを認識した。やがてその目は据わり、指の腹を上に向ける手の形をとる。

 あれは、本気で攻撃しようとしているマラカイの姿勢だ。

 一方のアウレリウスも相手の攻撃意思を受け取ったようで、私を一度放し、守るように前に立つ。

 マラカイの別名は破壊王。攻撃魔法に特化しており、破壊において右に出る者はいない。
 一方のアウレリウスの別名は聖盾。防御に特化しており、いかなる攻撃も通さない。

 どちらが強いのか・・・と一瞬気になりはしたが、仮に彼らがここで本気で暴れた場合、この建物が全壊する。建物どころか一地方が吹きとぶ。

 この学園が現時点で滅ぶのは本当にまずい。何故ならこの学園を滅ぼすのは私だからだ!!復讐の横取りはやめろ!!

 私は私の前に立って守ろうとしてくれるアウレリウスからさらに数歩下がる。完全に彼の死角に周りこんだタイミングで、魔力を解き放ってローゼルアリオンの姿に戻した。
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