誰が悪役(アリオン)を殺したか

ひまたろう

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犯人探求編

21.中間学力考査

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「本当にごめんね、僕が闇魔法を使ったせいで君にも疑いが向いてしまった。感情すら制御できないなんて、こんなのが王太子なんて笑わせるよね。その上庇われるなんて、本当に君には迷惑しかかけていないよ」
「いえ、僕は少しだけ嬉しかったので、気にしないでください」
「嬉しかった・・・?・・・・・・・・・?」

 アウレリウスはこてんと首を傾げた。私が書いた手紙をあれだけ大切にしてくれたんだ。結果はともかくその心は本当に嬉しい。
 あの後アウレリウスは意識を取り戻し、校長に直訴したらしい。けれどあまり深く突っ込むと聖女を追放せねばなくなる。故に、公式的にはこの件は未解決ということで闇に葬られることとなった。

 そして時が経ち、現在九月末。

 いよいよ今日は中間考査の実試験の日。この日に至るまでアウレリウスと文通をしていたが、しかしやはり人目を避けつつ会うのには限界があった。段々と私とアウレリウスの関係を揶揄する輩も現れ出したのだが、けれど手紙を受け取ったときの花がほころぶような笑顔を見るたびに、私も幸せになったものだ。とはいえ急いで生徒会に入り、誰にも噂されない環境で手紙を渡したいのが本音だ。

「ねえ、魔塔主に好きな人っているかな・・・。君なら何か知っているんじゃない?」
「え?こ、婚約者がいるからその人が好きなんじゃないでしょうか」
「あれは義務的な関係。そうじゃなくって、魔塔主が大好きな相手だよ」

 確かに私とジェルドは義務的な関係だが、即断されるとは驚いた。なんでそんなプライベートなことを知っているんだ・・・?
 大好きな相手・・・。まあ、強いて言うなら・・・。

「生徒会長のことは好いてますよ。多分、魔塔主の知り合いの中で一番好感度が高いんじゃないでしょうか」

 アウレリウスは、私の発言に固まった。
 そして私を凝視している。

「アリオンが僕のことを好いている・・・?」
「ま、まあ、そうじゃなかったら筆不精な人なので、こんなに熱心に文通をしてくれていませんからね・・・」
「一番好き、アリオンが僕のことを、知り合いの中で一番好き・・・」

 何度も私の言葉を反芻する。
 親心としての好いているという意味だが、ひょっとして恋愛的な意味にとらえて、気持ち悪いとかでショックを受けてないか?
 アウレリウスから私への未練を絶つことが主目的のはずが、文通が段々と楽しくなってきている自分がいた。それを気持ち悪いと思われたら、今の私にはショックが大きい。
 ひょっとして罵倒をされるんじゃないかと、恐る恐るアウレリウスから離れる。

「あ・・・ご、ごめんね。なんだか、君からそういわれると本人から直接言ってもらったような不思議な感覚になるんだ」

 その顔はとても真っ赤だった。そしてとてもうれしそうだった。
 よかった、恋愛という意味合いでは捉えなかったようで。
 私はアウレリウスよりも肉体的には六歳上のため、なんなら精神的にはさらに上であるせいで、つい年齢差を感じるのだ。その、手紙に古臭い表現とか、気持ち悪い表現とか使っていないかとか。いわゆるおじさん構文とかになっていないかとか・・・。

「さて、今日の中間考査の内容は今朝発表されたのだけれど、準備は出来ているかな?」
「ええ、頑張って立木さんを打倒していきます。会長は安心して待っていてください」
「うん、いってらっしゃい」

 アウレリウスは僕を見送りながら、2日前に実施した学力考査の順位一覧の掲示を見ていた。

 今回の一年生の科目は8科目で、それぞれ選択した授業によって有利不利はあれど、合計点で競う。

 1位は私、アリオン。800点満点中800点。

 2位のレオの620点から大きく点を突き放し、また立木心愛は16位だった。生徒会副会長兼、我が弟のロージも、掲示板を見て、ただ立ちすくんでいた。

「満点な上に、学園の最高記録を圧倒して塗り替えていますね。昨年の僕は650点で学年一位だったんですが・・・」
「凄いね。確か、一年最初の考査は僕が743点で、学園史上最高の天才と言われたマラカイ殿が782点、学園時代のアリオンは733点だったよね。それらを全部凌駕しているなんて・・・」

 学生時代のことなんてほとんど忘れていると思いきや、すべてが基礎に直結する内容であったため、今やり直せば大分簡単だった。日本で言ういわば、中学一年生レベルのことを大人が解いているに等しい。逆に満点じゃなかったらマラカイに笑われていたと思う。

 しばらく歩いていると、今度はジェルドがやってきた。

「学園創設史上最高得点、本当によくやった。お前の名はこの学園の歴史に残るだろう。本当に、縁起の悪い名前というのが唯一の欠点だな」

 褒めの部分はありがたく頂戴しよう。正直なところ、実技が何か分からなかった学力試験の段階では、万が一があると考えた。故に、実技に何か起こっても、学力がニューレコードを取っていれば生徒会へ入る言い訳としては弁が立つと思い、このようなことをしたのだ。

 ・・・いやまあ、本音を言うと立木心愛を圧倒的実力差で完膚なきまで叩きのめしたくなったのが実際のところではあるが・・・。

 ジェルドは、何か私を探るように顔を覗く。

 そして驚愕の発言をする。



 私は、今の発言に驚くあまり、呼吸を止めた。目を見開き、やがて止まった呼吸は荒い形で蘇る。けれどジェルドはふっと息を吐く。

「すまない、悪い冗談だ。・・・実はな、お前が俺の婚約者に似ていると思う時があるんだ。たゆまぬ努力、その末の成果。どうにもあいつの後を追っているような悪い予感がしてな」
「あ・・・いえ、でもそれは、侮蔑の表現ですので金輪際控えていただけると嬉しいです」
「ああ、本当に悪かった。お前とあいつは違う。あいつと違ってお前は友人から慕われ、なにより疑われた際には自分の意見をきっちりと言い放った。あいつとお前は、全く似ていないさ」
「ありがとうございます」

 頭を軽く下げ、会話を打ち切る。心臓に悪い発言を受け、急いでこの場を後にしたくなり、この場から立ち去る。背後からもの言いたげなジェルドの視線を無視し、今度こそ試験会場に向かって進んでいった。

「おチビ~!!お前、満点で学園の記録を塗り替えたんやってな~!!親友として鼻が高いわ~!!」
「おめでとうアリオン。やっぱり君、入試では完全に遊んでたでしょ。でも、そんな君と一緒の学年で、そしてこんなに近くで一緒に学べるのは誇らしいよ」
「ありがとうアバラ、レオ」

 親友といったアバラの言葉は解せないが、一位を祝ってくれたことは嬉しい。そしてレオは、悔しい思いをしているだろうに、素直に祝福をしてくれた。何より私さえいなければ本当はレオが首席になっていた。それについて申し訳なく思う。
 けれどアバラは、私に笑顔を向けた後、その顔は段々と曇っていった。

「アバラ?どうしたの?」
「いや・・・あのな。俺、学力試験最下位やってん。するとな、この実技で上位を取らんと退学って警告されたんよ・・・」
「そっか・・・短い間だったけどありがとうアバラ」
「俺ら親友やおな!?そんな呆気ない別れある!?」

 レオも、アバラとの別れを惜しむような表情をする。私も、段々とこいつに親しみを覚えてくる自分がいた。けれど、ここでこいつを復讐待ち受ける学園から逃がせるのは、本音を言うとちょっとだけ嬉しい。
 レオは、アバラに手を差し伸べる。

「僕は学力二位で、余裕がある。僕にアバラ退学阻止の協力をさせてほしい」
「ありがとな、レオ。でも、それはあかんのや。お前たちは自分の出来ることを精一杯し」
「え・・・いや、そんな余裕アバラには・・・」

 アバラは決意を固めたように拳を握る。

「あかん。上り詰めて、いずれは魔塔主を見返すって決めたんや。それがダチの手を借りてここに残り続けても、それは俺の実力とちゃう。魔塔主にざまあみろっていう時、俺は何も隠すことなく正面から向き合いたいんや」

 私とレオはぽかんとアバラを見つめ、そしてほほ笑んだ。

「・・・アバラ。僕は先で待ってるからね」
「おうよ!おチビはきちっとあの聖女に借りを返してこい!!」

 立木心愛は、学力試験の圧倒的敗北を目の当たりにし、私のカンニング説を広めている。けれど、私より点数が高い者がいない状態で、一体どうしてカンニングが出来ようか。それも、時間配分も酷な状態で。

 過去に不正の疑惑をかけられていたローゼルアリオンでさえ、満点は出せなかった。一体どんな不正をすれば満点がとれるのか。なおかつ私の授業態度は完ぺきだ。故に、教師陣や生徒会の間では私は信用されていた。

 反対に、そういった考察が出来ようもない生徒間では私の不正説は流れている。

「あら、不正をしてまでアウレリウスに引っ付こうとしている地味男じゃない」
「そういう君は、身分の高い人に親し気に名前を呼ぶなんて、その程度の品格すら身につけられていない16位の立木さんじゃないか」
「調子に乗っていられるのもここまでよ。魔法学園はあくまで戦闘を身に着けるところ。どんだけおつむが良かろうと、結局は強い者が優先されるんだから」

 それだけ言うと取り巻きを連れ、どこかへ立ち去る。取り巻き達は私のことを睨み、心愛についていった。

 実技試験は入試と一緒の時と同じ舞台の紫紺の森。
 私たちは足を踏み入れた。

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