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犯人探求編
23.魔塔主vs暗部組織
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魔法の適性はそれぞれ、アバラは近接、レオは水魔法、こっちの男子生徒は風魔法、こっちの女子生徒は・・・。
立木心愛が捕縛されている中、私はこの場の生徒の指揮をする必要がある。時間がかかればほかの生徒もここに殺到するだろう。その前に、連携がとれるこの少人数でこの場の方針を決める必要がある。
明らかに魔塔に責任をなすろうとしているあいつらにこの私が鉄槌を下してやる。私はしゃがんで円になるアバラ、レオ、そして名前を知らない四名の生徒に作戦を説明する。
「観察したところ、奴らは5名で動いている。この中で探知が得意な人はいるかな?」
誰も手を挙げない。探知は無属性。全員、何かしらの色付きの属性が得意なのだろう。それが分かれば十分だ。探知は私がやろう。
「OK。ちょっと待ってて」
私は巾着袋を持つ。万が一敵にも探知係がいた場合、特定範囲の探知をすると疑問に思われる可能性が高いため、広範囲に意識を持っていく。ふむ、この森の暗部組織はこの場に固まっている五人だけだ。拠点から散ればそれだけ無用な証拠を残すためだろう。
「不審者はあそこにいる五名だけだ。すると、僕たちは二手に分かれる必要があるね」
「分かったで!聖女奪還組と、囮組やな!!」
元気よく答えるアバラに、私ではなくレオが答える。
「残念だけど、違うんじゃないかな。アリオンが言ってるのは助けを呼ぶ組と、この場に他の生徒が来ないように押しとどめる組じゃない?」
「レオ、大正解」
その言葉を聞いて、てっきりこれから立木心愛を助けに行くと思っていた他面々は驚いて互いの顔を見る。指揮者として、まずはきっちり全員の意思をそろえるというのも大事な仕事だ。
「いいかい?僕は探知が得意で、他人との力量も計れる。そのうえで、僕らが全員で挑んだとてあそこにいる一人にさえ勝てはしない。格が全然違うんだ。挑めば、返り討ちに遭う」
「なら、聖女さんはどうするんや?このままやと連れていかれるやん」
「僕は彼女を止めた。そのうえで行くと選択したのは彼女。そんな彼女のミスのカバーを、僕はしてあげられるだけの余裕はないんだよ。・・・ああ、僕は彼女と睨みあっているっていうのは噂になっているから、見捨てる判断にみんなは納得しがたいかな?」
けれど、アバラ達面々は、首を横に振った。ここは意見を違える場面ではない、というように。
実際に別意見を持った人間がああして捕まったのだ。一方、私の忠告を素直に受け取ったから、ここにいる面々は今助かっている。故に、そのまなざしからは信頼がにじみ出ていた。
ここは、もっとも頭が切れそうな人間に命運を託そうと、言葉にせずとも心が通じ合う。
・・・これが10人以上だったら絶対に意見の統一は不可能だっただろう。少人数であるからこそ、全員を統率することが出来る。人が増える前に、急いで手を打たねば。
「では後から来た四人。君たちは周辺を見張って、他の子が来ないように見ていてくれないかな?僕には外部に救援を呼ぶ魔法がある。アバラはここより右の木、レオは左の木に寄って奴らの警戒をしていてほしい」
全員が無言でうなずき、配置を取る。レオとアバラも、配置についた。私も茂みに身を隠す。
急いで念話の魔法を展開する。繋げる先は一つしかない。
『マラカイ、紫紺の森の崖のエリアに至急来い』
『せんせー!?せんせーから連絡なんて、珍しいですね!?僕からすると絶交されるから我慢していたのに』
『悪いが緊急事態だ。ここまで何分で来れる?』
『もー先生の為なら1秒でいけますよー!!・・・ってあれ?』
マラカイは念話の先で、驚きの声を上げる。
『おかしいな、飛べません。森の周辺に結界が張ってあります』
『それはそうだろう。立ち入り禁止にする際に私が張り直したんだから』
『いえ、これは先生の魔力じゃなくて、数日前に誰かが張り直していますね。ちょっと、見たことがない魔法式を使っています。ごめんなさい、解読に20分はかかります』
20分・・・!!
長い、それまでにこいつらがここから一歩も動かないことがあるだろうか。
『待っていてください先生。絶対に助けに行きますから』
それだけ言うとぷつりと念話が切れた。さて、20分。無事に時間を稼がなくてはならない。それにしても、何の必要があって誰が結界を張り直した?それも学校側の人間に気付かれず。
ひょっとして、軍の暗部組織の襲来は、この学園もグルの可能性はないか・・・?
やがて、考え込む私に向かってアバラがハンドサインを送る。暗部組織の誰かが、動き始めた。
「ガキんちょ共、まだ一人しか来ねえぞ。今年は不作じゃねえか?」
「崖に木を移したのはやりすぎたかもしれんな。ここは周辺の魔物も強い。そうだ、少し魔物の掃除してお膳立てしてやるか」
その声を聞いていた私とレオとアバラの顔に緊張が走る。まずい、私の陣はあくまで認識を逸らすくらいで、視界に入ったら完全に終わる類のものだ。近づかれれば、詰む。
マラカイが来るまで残り17分。
けれど、暗部組織のメンバーは1人、こちらに向かって歩き出す。
「おい、独断行動はやめろ」
「いやいや、魔塔の服さえ来ていれば相手に警戒心を抱かせずに誤魔化せますって。万が一ガキ共が束になったとて、自分だったら余裕ですし」
歩みを止めない。
ここから闇魔法を使えば、こいつを気絶できるか・・・?
いや、それはまずい。アバラとレオは敵から視線を外していない。万が一ここで闇魔法を使えば、流石に私が言い逃れは出来ない。以前私は立木心愛と闇魔法の疑念の騒動を起こしているのだ。さすがに二度目は偶然とは思ってもらえないだろう。
マラカイが来るまで残り16分。
だったら、闇魔法を行使することを許された人間が使えばいい
私は森の奥にもう少し進み、アバラとレオからより距離を取る。そして、魔力を解放した。髪は長くなり、空色へと変貌する。そのまま流れるように背丈よりも大きい黒の大杖を手に持った。
こちらに歩いてくる暗部組織の一人に、私は気絶魔法を行使した。
「・・・・がっ・・・!!」
先ほどこちらに歩みを進めていた者は、油断していたのか、なすすべなく気を失う。そして、見送っていた男もそれを目撃していた。
「な・・・!?魔塔主!?」
「ローゼルアリオン・・・?なんでここにおるんや!?」
レオとアバラは私の存在に気が付き、驚愕で目を見開く。
「お前達、下がっていろ。足手まといだ」
「え・・・?いや、俺らも戦うで!!あんた一人やと多対一やん!!」
「いらん。邪魔にしかならない。後ろに引っ込んでろ。いいな?」
アバラは不服そうに、レオはこくんと頷いて急いで後ろに下がった。やがてこちらの異常事態に気が付いたのか、先ほど打ち合わせをした生徒のうち二人が、こちらに駆け寄ってくる。しかし私の姿を目の当たりにし、驚いて歩みを止めた。やがて、足手まといになりかねないことを察し、身を隠しつつほかの面々に報告に行った。
「・・・おや、魔塔主さまではございませんか?こんな場所までお越しいただくとは、一体いかなる御用で?」
気絶させた男を先ほど制止していた人物が、まるで自分が魔塔側の人間であるかのように私に話しかける。
男はダークブラウンのくせ毛髪をしており、30代後半に見える。このメンバーの隊長なのだろう。
「お前など知らん。魔塔の皮を被った暗部組織の人間め。よくも誘拐事件の罪を私に擦り付けようとしたな?」
それを聞き、後ろの生徒は息をのむ。やはりこいつらも私が黒幕と思っていたのだろう。よし、これで私が無関係だと刷り込めた。
「おや・・・。それを言い当てるとはさすがは魔塔主殿。察しがいいですね。ですが・・・」
男の後ろからぞろぞろと人数が集まってくる。全員が熟練の魔法使いだ。魔道具を構え、広がりながら近づく。
マラカイが来るまで残り15分。一方私は15分もこの姿を維持できないだろう。
けれど、自分の愛用している黒い大杖を構えた。
戦いが始まる。
敵のうち二人が詠唱し、一人は火炎魔法を、一人は風魔法を放つ。二つの魔法は相乗し、火炎の嵐がこちらに吹き荒れた。さすがは軍部、巧みな連携だ。
まるで意思を持つような赤いそれは、私の命を奪うために襲い掛かるー!
「なーっ!?魔塔主、無事かー!?」
「うるさいな。隠れていろといっただろ。静かにしていろ」
威力はすさまじいが、私は水の盾を召喚した。すると火炎魔法を撃った男たちの、すぐに後ろの面々から雷の魔法が飛ぶが、私は別の防御陣をすぐに張る。
「・・・まあ、流石は魔法使いの頂点ですね。この程度では傷一つつきませんか。けれど、後ろを庇いながら、どれだけ動けますかね」
私の背後の岩が宙に浮かび、鋭利な刃物になってアバラに向かって真っすぐに飛んだ。だが、私も同様に岩を飛ばし、かろうじてアバラを守る。
自分がたった今死にかけたことに、アバラは怯えてへたりこんだ。
「私を魔法で殺したければ、不意をうつか、大隊でも連れてこい」
「ち・・・流石に相手が悪いな。お前達、ここは行ったん引くぞ」
魔法をこちらに撃ちながらも、後退を始める。
させるか!!
紫紺の森が使用され、結解も張り替えられ、そしてこいつらがやってきた。つまり、こいつらも何かしら私の死にかかわっている可能性が捨てきれない。
絶対に手がかりを逃しはしない!!
最後の力を振り絞り、私は上空に七色の巨大な球を召喚した。それと共にあたりは暗くなる。
「魔塔主が光の魔法・・・?いや違う、周辺を闇にすることで逆説的に光を収束させた、のか?そんな、理屈に合わない馬鹿な芸当が・・・・!!」
「星屑爆破」
無数の光の粒子は一斉に男たちに襲い掛かり、着弾と同時に大爆発を起こす。流星群さながらの美しい魔法は、並大抵の防御魔法では太刀打ちできない。故に、これは不可避の一撃。
「すごい、なんて綺麗な魔法なんだ・・・」
後ろからレオの、息を呑んだような声がした。
周辺がキラキラと光り、やがて周囲の明るさも元通りとなる。
本当だったら敵を完封次第ここで拘束をすべきだろうが、もう私には魔力も体を維持することも出来ない。爆発で周囲の視線がばらけている隙に、私は茂みに戻り、倒れた。
マラカイが来るまで残り10分。とはいえ、あの場の敵は全員封じただろう。
「ハッハッ・・・、本当にどういう魔力をしてんでしょうね。全く、お守りを持っていなければ死んでいましたよ」
茂みに倒れこみながら、私は敵の声を聞いていた。凄いな、あれを受けたのに死なずにいたのか。けれど、察するに地面に倒れているようで、起きているのもやっとなのだろう。
「本当に、念の・・・ために、身代わりを、持っていて・・・よかった。では皆様、いずれ、またどこかで」
何とか動ける敵の面々はそれだけを言い残し、逃げるための魔法を発動しているようだ。そう、私は今誰にも見つからない場所で突っ伏しているため、音でしか状況を把握できず、何が起きているのか分からない。一方アバラ達は、姿を消したローゼルアリオンを一生懸命視界に入れようとしている。
その隙をつき、敵は撤退の準備を始めているようだ。
「そうはさせませんよ?」
けれど、遠方から、聞いたことも無い大音量の爆発音が鳴り響き、やがて剛速球で空を切る音がした。そしてその音はこちらにどんどん近づき、やがてまた巨大な音とともに誰かが降ってくる。
「せんせー!!お待たせしましたー!!」
予定の時間より8分余る中、マラカイは現れた。
「魔法の解読が途中で面倒になったので、ぶっ壊してきました!!えへへ、褒めて褒めて!!・・・・・あれ?先生がいないな・・・・?」
立木心愛が捕縛されている中、私はこの場の生徒の指揮をする必要がある。時間がかかればほかの生徒もここに殺到するだろう。その前に、連携がとれるこの少人数でこの場の方針を決める必要がある。
明らかに魔塔に責任をなすろうとしているあいつらにこの私が鉄槌を下してやる。私はしゃがんで円になるアバラ、レオ、そして名前を知らない四名の生徒に作戦を説明する。
「観察したところ、奴らは5名で動いている。この中で探知が得意な人はいるかな?」
誰も手を挙げない。探知は無属性。全員、何かしらの色付きの属性が得意なのだろう。それが分かれば十分だ。探知は私がやろう。
「OK。ちょっと待ってて」
私は巾着袋を持つ。万が一敵にも探知係がいた場合、特定範囲の探知をすると疑問に思われる可能性が高いため、広範囲に意識を持っていく。ふむ、この森の暗部組織はこの場に固まっている五人だけだ。拠点から散ればそれだけ無用な証拠を残すためだろう。
「不審者はあそこにいる五名だけだ。すると、僕たちは二手に分かれる必要があるね」
「分かったで!聖女奪還組と、囮組やな!!」
元気よく答えるアバラに、私ではなくレオが答える。
「残念だけど、違うんじゃないかな。アリオンが言ってるのは助けを呼ぶ組と、この場に他の生徒が来ないように押しとどめる組じゃない?」
「レオ、大正解」
その言葉を聞いて、てっきりこれから立木心愛を助けに行くと思っていた他面々は驚いて互いの顔を見る。指揮者として、まずはきっちり全員の意思をそろえるというのも大事な仕事だ。
「いいかい?僕は探知が得意で、他人との力量も計れる。そのうえで、僕らが全員で挑んだとてあそこにいる一人にさえ勝てはしない。格が全然違うんだ。挑めば、返り討ちに遭う」
「なら、聖女さんはどうするんや?このままやと連れていかれるやん」
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けれど、アバラ達面々は、首を横に振った。ここは意見を違える場面ではない、というように。
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ここは、もっとも頭が切れそうな人間に命運を託そうと、言葉にせずとも心が通じ合う。
・・・これが10人以上だったら絶対に意見の統一は不可能だっただろう。少人数であるからこそ、全員を統率することが出来る。人が増える前に、急いで手を打たねば。
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急いで念話の魔法を展開する。繋げる先は一つしかない。
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『せんせー!?せんせーから連絡なんて、珍しいですね!?僕からすると絶交されるから我慢していたのに』
『悪いが緊急事態だ。ここまで何分で来れる?』
『もー先生の為なら1秒でいけますよー!!・・・ってあれ?』
マラカイは念話の先で、驚きの声を上げる。
『おかしいな、飛べません。森の周辺に結界が張ってあります』
『それはそうだろう。立ち入り禁止にする際に私が張り直したんだから』
『いえ、これは先生の魔力じゃなくて、数日前に誰かが張り直していますね。ちょっと、見たことがない魔法式を使っています。ごめんなさい、解読に20分はかかります』
20分・・・!!
長い、それまでにこいつらがここから一歩も動かないことがあるだろうか。
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「崖に木を移したのはやりすぎたかもしれんな。ここは周辺の魔物も強い。そうだ、少し魔物の掃除してお膳立てしてやるか」
その声を聞いていた私とレオとアバラの顔に緊張が走る。まずい、私の陣はあくまで認識を逸らすくらいで、視界に入ったら完全に終わる類のものだ。近づかれれば、詰む。
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けれど、暗部組織のメンバーは1人、こちらに向かって歩き出す。
「おい、独断行動はやめろ」
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歩みを止めない。
ここから闇魔法を使えば、こいつを気絶できるか・・・?
いや、それはまずい。アバラとレオは敵から視線を外していない。万が一ここで闇魔法を使えば、流石に私が言い逃れは出来ない。以前私は立木心愛と闇魔法の疑念の騒動を起こしているのだ。さすがに二度目は偶然とは思ってもらえないだろう。
マラカイが来るまで残り16分。
だったら、闇魔法を行使することを許された人間が使えばいい
私は森の奥にもう少し進み、アバラとレオからより距離を取る。そして、魔力を解放した。髪は長くなり、空色へと変貌する。そのまま流れるように背丈よりも大きい黒の大杖を手に持った。
こちらに歩いてくる暗部組織の一人に、私は気絶魔法を行使した。
「・・・・がっ・・・!!」
先ほどこちらに歩みを進めていた者は、油断していたのか、なすすべなく気を失う。そして、見送っていた男もそれを目撃していた。
「な・・・!?魔塔主!?」
「ローゼルアリオン・・・?なんでここにおるんや!?」
レオとアバラは私の存在に気が付き、驚愕で目を見開く。
「お前達、下がっていろ。足手まといだ」
「え・・・?いや、俺らも戦うで!!あんた一人やと多対一やん!!」
「いらん。邪魔にしかならない。後ろに引っ込んでろ。いいな?」
アバラは不服そうに、レオはこくんと頷いて急いで後ろに下がった。やがてこちらの異常事態に気が付いたのか、先ほど打ち合わせをした生徒のうち二人が、こちらに駆け寄ってくる。しかし私の姿を目の当たりにし、驚いて歩みを止めた。やがて、足手まといになりかねないことを察し、身を隠しつつほかの面々に報告に行った。
「・・・おや、魔塔主さまではございませんか?こんな場所までお越しいただくとは、一体いかなる御用で?」
気絶させた男を先ほど制止していた人物が、まるで自分が魔塔側の人間であるかのように私に話しかける。
男はダークブラウンのくせ毛髪をしており、30代後半に見える。このメンバーの隊長なのだろう。
「お前など知らん。魔塔の皮を被った暗部組織の人間め。よくも誘拐事件の罪を私に擦り付けようとしたな?」
それを聞き、後ろの生徒は息をのむ。やはりこいつらも私が黒幕と思っていたのだろう。よし、これで私が無関係だと刷り込めた。
「おや・・・。それを言い当てるとはさすがは魔塔主殿。察しがいいですね。ですが・・・」
男の後ろからぞろぞろと人数が集まってくる。全員が熟練の魔法使いだ。魔道具を構え、広がりながら近づく。
マラカイが来るまで残り15分。一方私は15分もこの姿を維持できないだろう。
けれど、自分の愛用している黒い大杖を構えた。
戦いが始まる。
敵のうち二人が詠唱し、一人は火炎魔法を、一人は風魔法を放つ。二つの魔法は相乗し、火炎の嵐がこちらに吹き荒れた。さすがは軍部、巧みな連携だ。
まるで意思を持つような赤いそれは、私の命を奪うために襲い掛かるー!
「なーっ!?魔塔主、無事かー!?」
「うるさいな。隠れていろといっただろ。静かにしていろ」
威力はすさまじいが、私は水の盾を召喚した。すると火炎魔法を撃った男たちの、すぐに後ろの面々から雷の魔法が飛ぶが、私は別の防御陣をすぐに張る。
「・・・まあ、流石は魔法使いの頂点ですね。この程度では傷一つつきませんか。けれど、後ろを庇いながら、どれだけ動けますかね」
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自分がたった今死にかけたことに、アバラは怯えてへたりこんだ。
「私を魔法で殺したければ、不意をうつか、大隊でも連れてこい」
「ち・・・流石に相手が悪いな。お前達、ここは行ったん引くぞ」
魔法をこちらに撃ちながらも、後退を始める。
させるか!!
紫紺の森が使用され、結解も張り替えられ、そしてこいつらがやってきた。つまり、こいつらも何かしら私の死にかかわっている可能性が捨てきれない。
絶対に手がかりを逃しはしない!!
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「魔塔主が光の魔法・・・?いや違う、周辺を闇にすることで逆説的に光を収束させた、のか?そんな、理屈に合わない馬鹿な芸当が・・・・!!」
「星屑爆破」
無数の光の粒子は一斉に男たちに襲い掛かり、着弾と同時に大爆発を起こす。流星群さながらの美しい魔法は、並大抵の防御魔法では太刀打ちできない。故に、これは不可避の一撃。
「すごい、なんて綺麗な魔法なんだ・・・」
後ろからレオの、息を呑んだような声がした。
周辺がキラキラと光り、やがて周囲の明るさも元通りとなる。
本当だったら敵を完封次第ここで拘束をすべきだろうが、もう私には魔力も体を維持することも出来ない。爆発で周囲の視線がばらけている隙に、私は茂みに戻り、倒れた。
マラカイが来るまで残り10分。とはいえ、あの場の敵は全員封じただろう。
「ハッハッ・・・、本当にどういう魔力をしてんでしょうね。全く、お守りを持っていなければ死んでいましたよ」
茂みに倒れこみながら、私は敵の声を聞いていた。凄いな、あれを受けたのに死なずにいたのか。けれど、察するに地面に倒れているようで、起きているのもやっとなのだろう。
「本当に、念の・・・ために、身代わりを、持っていて・・・よかった。では皆様、いずれ、またどこかで」
何とか動ける敵の面々はそれだけを言い残し、逃げるための魔法を発動しているようだ。そう、私は今誰にも見つからない場所で突っ伏しているため、音でしか状況を把握できず、何が起きているのか分からない。一方アバラ達は、姿を消したローゼルアリオンを一生懸命視界に入れようとしている。
その隙をつき、敵は撤退の準備を始めているようだ。
「そうはさせませんよ?」
けれど、遠方から、聞いたことも無い大音量の爆発音が鳴り響き、やがて剛速球で空を切る音がした。そしてその音はこちらにどんどん近づき、やがてまた巨大な音とともに誰かが降ってくる。
「せんせー!!お待たせしましたー!!」
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