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犯人探求編
25.生徒会へようこそ
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誘拐事件が起こった一日後。私はマラカイと何度もキスをしたが、如何せんダメージが大きすぎて、やはりしばらく魔力を貯蓄できない状態になっていた。学園は閉校しているが、アウレリウスは私を待っていたかのように生徒会へと案内する。
「それで、魔塔主から返事って来たかな?」
「いえ、それが妙なことに何の返事もなく・・・」
打ち合わせでは、私は今日、それも丁度今くらいの時間に死んだことになる。故に、この子の意を汲んで文通のために生徒会へ入ったものの、何の意味もないということになってしまい心が痛い。
「そっか・・・。でも彼も忙しいだろうから、僕にばかり時間を使ってもらうわけにはいかないよね。けれど折角学園に来たのなら、僕にも会って欲しかったなあ・・・」
しゅん、としている。
避けられない未来だが、私のせいでこの顔がやがてもっと曇ることになると思うと胸が痛くて仕方がない。
そして私たちは生徒会の部屋の前に辿り着く。
懐かしい。私も昔はここに毎日来たものだ。
「ようこそ、生徒会へ」
アウレリウスが扉を開けると、書類を整理する弟のロージと、知らない女性が座っていた。私たちの入室に気が付き、二人とも手を止め、立ち上がる。
「ああ、アリオン君か。久しぶりだね。無事に生徒会に入れたんだね。今日からよろしく」
ロージは私に手を差し伸べ、握手する。一方見知らぬ女性は、静かに頭を下げた。
「初めまして。わたくしは生徒会の書記をしてます、イヴリンと申します。お見知りおきを」
優雅なカーテシーを披露する。
「僕はアリオンと申します。平民とはなりますがよろしくお願いします」
「凄いな、イヴリン様の優雅な挨拶に全く動じないなんて。大抵の人間は見惚れるのに。これは大型新人が来ましたね、会長」
「アリオン、彼女は侯爵家の出なのだけれど、心優しく誰にでも分け隔てなく接してくれる女性だ。君もリラックスして接してくれていいからね」
美しい新緑の髪が、彼女の動きに合わせてさらさらと流れる。
まさかアウレリウス・・・、心愛に全く興味を示さなかったのは彼女がいたからか・・・?
いや、よくない。そうやって年上の人間が、すぐに子供たちの男女でペアを作ろうとするのは本当に良くない。よくないのだが、立木心愛の内面が浅ましすぎて、目の前の侯爵家の女性がとても輝いて見える。
こちらに向ける微笑みにも品がある。いや、まだだ。裏では平民に辛く当たる可能性だってある。私はアウレリウスの相手に妥協するつもりはない。
ジッとイヴリンを観察していると、何やらアウレリウスが気まずげに私の腕をクイクイと引っ張った。
「・・・じゃあ、二人は引き続き作業を続けてね。アリオンはこっちに来て。色々説明するから」
「会長?説明でしたらわたくしが致しますわよ?」
「いや、僕がやるから二人は戻って」
そしてロージとイヴリンは書類の再開を始めた。そんな二人から引きはがすように、私を隣室へ誘導し始める。
アウレリウス、ひょっとして嫉妬をしている・・・?
まさか、本当にイヴリン嬢に気がある?
「うーん、なんで重ねて見てしまうんだろうなあ。別人だってわかってるのに」
「会長?何か言いましたか?」
「ああ、いや、気にしないで。じゃあ説明を続けるね」
やることの一連の流れの説明を受けるが、私は元生徒会だったため熟知している。一度で理解したため、「流石神童だね」と褒められた。なんか変なあだ名をつけられている。
いや、そんな目の前の仕事より、私はイヴリン嬢とアウレリウスの仲が気になって仕方がない。もし私の訃報が届いても、恋仲の女性さえいれば乗り切れるかもしれない。
「あの、イヴリン様と殿下はどういう関係なんでしょうか!?」
「・・・仕事には関係のない質問だから、答えを差し控えるね」
僕から目を逸らす。ちょっと、怒っているようにも見える。
これは、確実にそういうことだろう。アウレリウスは彼女のことを意識しているのだ!これから一週間、私はいかに二人をくっつけるか。それに尽力しなくてはならない!!
予期せぬ光明を前に、私は震える。
なお、この世界では緑魔法を極めると男性にも子宮を作ることができ、そういった事情から男性同士の婚姻も普通とされているが、どうしても日本出身の私としてはあまりピンとこないシステムである。
・・・日本にいたころは、30代になってもいつまでも縁談に興味を示さない私に、世話焼きのおばさんが見合い写真を押し付けてくることが沢山あった。あの不快感を忘れた私は、年下の恋愛事情に思いっきり首を突っ込もうとしていたのである。
授業がないため、生徒会では今日はまだ顔合わせだけで私を帰宅させる。体もまだ癒えてないだろうという配慮だ。
「せんせーお帰りなさい~。お食事はもうすぐ出来るので待っててくださいね☆今日は先生の訃報を校長に知らせて、決して外部に漏らさないようにしておきました」
「ご苦労。魔塔にも流したか?」
「はい、先生が遺書を残してくれたという設定にして、無事に僕が魔塔主になりそうですー」
「校長の反応はどうだった?」
「あの狸、やはり表情を隠すのがうまいですねー。悲しそうな顔をしていましたが、腹の内は正直分かりませんでした」
よし、無事に計画が進んでいる。
国防に関わることだ、次に魔塔から王へと情報は届く。けれど、極秘事項故に学園に滞在中のアウレリウスにまでは情報はすぐに行かないだろう。
「あれ、せんせー?なんか今日テンション高いですね?僕のこのエプロン姿に興奮してくれたんですかぁ!?次は裸エプロンにしようかなあえへへ」
「いや、実はとても良い女性と会ってな。ふふ、生徒会に入ってよかったよ」
マラカイは、先ほどまで用意していた食器を落とす。皿はそのまま床に落ち、大きな音をたてて割れた。
「おいおい、一応ここは借りている場所なんだ。あまり床をへこませるな。魔法で直せるからって、床は戻すのがやや大変なんだから」
「女?先生、今『良い女』って言いました?」
私の言葉を無視し、料理を放棄してこちらにズカズカと近づいてくる。
「ああ、言ったが?」
「先生は女に興味を持ちません。先生は女に性欲を持ちません。いや、僕以外の人間に先生は心を許すことはありません」
マラカイは、私を無表情でじっと見下ろす。酷い言われようだな。
「あのな、マラカイ。私は男が好きだから男性の婚約者がいたわけじゃないんだぞ。家の命令が無ければおそらく、どこかの貴族の子女と家庭をもってただろうよ」
いや、独身か。別に結婚に興味はない。
「そんなことありませんよ。もし先生が家庭を持っていたら、僕が女を殺していました。先生の元婚約者がまだ生存しているのは、ほおっておいても破局の運命をたどるに違いないから。それで確認ですが、良い女?生徒会に?」
「・・・一応言っておくが、良いといったのは別に私の嫁にしたいという意味ではないぞ?私はロリコンじゃない」
一応イヴリンは18歳とのことだが、六歳下は範囲外だ。私にとっては十分未熟な少女になる。
「じゃあ娘にしたいって言うことですか!?」
「いや違う、気にかけている子の伴侶にいいなと思っただけで・・・」
「じゃあ、先生の伴侶は永遠に僕というわけじゃないですか!!」
「何を言ってんだ?」
とはいえ、誤解は解けたようでマラカイは嬉しそうに台所に戻った。本当に何なんだあいつは。人生楽しそうだな。
師の訃報を流した弟子のその日の行動がウキウキで料理か・・・。
翌日。
私とイヴリン嬢は書類運びのために、二人で廊下を歩いていた。浮遊魔法で運ぶのだが、如何せん、つい先日の事件のせいで量が多いらしい。私は手持ち、イヴリン嬢は書類の束を宙に浮かべ、二人がかりで運んでいた。
「手伝ってくれてありがとう、アリオン君。会長はあまり人を入れたがらないから、書類がかさばったときはいつも私一人で運んでいるのよ」
「いえいえ」
重いものを魔法で持っているのに、イヴリンは流石貴族令嬢。歩き方や身のこなし方が洗練されている。そのまま私たちは雑談を交わすが、どこぞのエセ聖女と違って豹変することもなく。裏では平民を見下す可能性を危惧していたが、そんなこともない。
よし、試してみようか。
「イヴリン様は魔塔主のことをどう思っていますか?」
「魔塔主様?好印象を持っているわよ?制定するルールは私たちのことを思ってのことですし。周囲は悪く言ってるのは知っているのだけど、あまり深く知らないお方相手になんで悪く盛り上がれるのか、不思議に思ってるわ」
私に悪い印象を持っていない・・・?
雷に打たれたようなショックを受けた。
これは、確定だ。私はこの娘だったら納得が出来る!!
私の訃報まで、時間は少ない。なんとかイヴリン嬢とアウレリウスを結べることが出来れば・・・!!
しかし目論見は外れ、二人の距離が縮まるときは全く訪れず。
いよいよ大広間に、全校生徒が呼ばれる日がやってきた。私の訃報が公表される時が来た。
「それで、魔塔主から返事って来たかな?」
「いえ、それが妙なことに何の返事もなく・・・」
打ち合わせでは、私は今日、それも丁度今くらいの時間に死んだことになる。故に、この子の意を汲んで文通のために生徒会へ入ったものの、何の意味もないということになってしまい心が痛い。
「そっか・・・。でも彼も忙しいだろうから、僕にばかり時間を使ってもらうわけにはいかないよね。けれど折角学園に来たのなら、僕にも会って欲しかったなあ・・・」
しゅん、としている。
避けられない未来だが、私のせいでこの顔がやがてもっと曇ることになると思うと胸が痛くて仕方がない。
そして私たちは生徒会の部屋の前に辿り着く。
懐かしい。私も昔はここに毎日来たものだ。
「ようこそ、生徒会へ」
アウレリウスが扉を開けると、書類を整理する弟のロージと、知らない女性が座っていた。私たちの入室に気が付き、二人とも手を止め、立ち上がる。
「ああ、アリオン君か。久しぶりだね。無事に生徒会に入れたんだね。今日からよろしく」
ロージは私に手を差し伸べ、握手する。一方見知らぬ女性は、静かに頭を下げた。
「初めまして。わたくしは生徒会の書記をしてます、イヴリンと申します。お見知りおきを」
優雅なカーテシーを披露する。
「僕はアリオンと申します。平民とはなりますがよろしくお願いします」
「凄いな、イヴリン様の優雅な挨拶に全く動じないなんて。大抵の人間は見惚れるのに。これは大型新人が来ましたね、会長」
「アリオン、彼女は侯爵家の出なのだけれど、心優しく誰にでも分け隔てなく接してくれる女性だ。君もリラックスして接してくれていいからね」
美しい新緑の髪が、彼女の動きに合わせてさらさらと流れる。
まさかアウレリウス・・・、心愛に全く興味を示さなかったのは彼女がいたからか・・・?
いや、よくない。そうやって年上の人間が、すぐに子供たちの男女でペアを作ろうとするのは本当に良くない。よくないのだが、立木心愛の内面が浅ましすぎて、目の前の侯爵家の女性がとても輝いて見える。
こちらに向ける微笑みにも品がある。いや、まだだ。裏では平民に辛く当たる可能性だってある。私はアウレリウスの相手に妥協するつもりはない。
ジッとイヴリンを観察していると、何やらアウレリウスが気まずげに私の腕をクイクイと引っ張った。
「・・・じゃあ、二人は引き続き作業を続けてね。アリオンはこっちに来て。色々説明するから」
「会長?説明でしたらわたくしが致しますわよ?」
「いや、僕がやるから二人は戻って」
そしてロージとイヴリンは書類の再開を始めた。そんな二人から引きはがすように、私を隣室へ誘導し始める。
アウレリウス、ひょっとして嫉妬をしている・・・?
まさか、本当にイヴリン嬢に気がある?
「うーん、なんで重ねて見てしまうんだろうなあ。別人だってわかってるのに」
「会長?何か言いましたか?」
「ああ、いや、気にしないで。じゃあ説明を続けるね」
やることの一連の流れの説明を受けるが、私は元生徒会だったため熟知している。一度で理解したため、「流石神童だね」と褒められた。なんか変なあだ名をつけられている。
いや、そんな目の前の仕事より、私はイヴリン嬢とアウレリウスの仲が気になって仕方がない。もし私の訃報が届いても、恋仲の女性さえいれば乗り切れるかもしれない。
「あの、イヴリン様と殿下はどういう関係なんでしょうか!?」
「・・・仕事には関係のない質問だから、答えを差し控えるね」
僕から目を逸らす。ちょっと、怒っているようにも見える。
これは、確実にそういうことだろう。アウレリウスは彼女のことを意識しているのだ!これから一週間、私はいかに二人をくっつけるか。それに尽力しなくてはならない!!
予期せぬ光明を前に、私は震える。
なお、この世界では緑魔法を極めると男性にも子宮を作ることができ、そういった事情から男性同士の婚姻も普通とされているが、どうしても日本出身の私としてはあまりピンとこないシステムである。
・・・日本にいたころは、30代になってもいつまでも縁談に興味を示さない私に、世話焼きのおばさんが見合い写真を押し付けてくることが沢山あった。あの不快感を忘れた私は、年下の恋愛事情に思いっきり首を突っ込もうとしていたのである。
授業がないため、生徒会では今日はまだ顔合わせだけで私を帰宅させる。体もまだ癒えてないだろうという配慮だ。
「せんせーお帰りなさい~。お食事はもうすぐ出来るので待っててくださいね☆今日は先生の訃報を校長に知らせて、決して外部に漏らさないようにしておきました」
「ご苦労。魔塔にも流したか?」
「はい、先生が遺書を残してくれたという設定にして、無事に僕が魔塔主になりそうですー」
「校長の反応はどうだった?」
「あの狸、やはり表情を隠すのがうまいですねー。悲しそうな顔をしていましたが、腹の内は正直分かりませんでした」
よし、無事に計画が進んでいる。
国防に関わることだ、次に魔塔から王へと情報は届く。けれど、極秘事項故に学園に滞在中のアウレリウスにまでは情報はすぐに行かないだろう。
「あれ、せんせー?なんか今日テンション高いですね?僕のこのエプロン姿に興奮してくれたんですかぁ!?次は裸エプロンにしようかなあえへへ」
「いや、実はとても良い女性と会ってな。ふふ、生徒会に入ってよかったよ」
マラカイは、先ほどまで用意していた食器を落とす。皿はそのまま床に落ち、大きな音をたてて割れた。
「おいおい、一応ここは借りている場所なんだ。あまり床をへこませるな。魔法で直せるからって、床は戻すのがやや大変なんだから」
「女?先生、今『良い女』って言いました?」
私の言葉を無視し、料理を放棄してこちらにズカズカと近づいてくる。
「ああ、言ったが?」
「先生は女に興味を持ちません。先生は女に性欲を持ちません。いや、僕以外の人間に先生は心を許すことはありません」
マラカイは、私を無表情でじっと見下ろす。酷い言われようだな。
「あのな、マラカイ。私は男が好きだから男性の婚約者がいたわけじゃないんだぞ。家の命令が無ければおそらく、どこかの貴族の子女と家庭をもってただろうよ」
いや、独身か。別に結婚に興味はない。
「そんなことありませんよ。もし先生が家庭を持っていたら、僕が女を殺していました。先生の元婚約者がまだ生存しているのは、ほおっておいても破局の運命をたどるに違いないから。それで確認ですが、良い女?生徒会に?」
「・・・一応言っておくが、良いといったのは別に私の嫁にしたいという意味ではないぞ?私はロリコンじゃない」
一応イヴリンは18歳とのことだが、六歳下は範囲外だ。私にとっては十分未熟な少女になる。
「じゃあ娘にしたいって言うことですか!?」
「いや違う、気にかけている子の伴侶にいいなと思っただけで・・・」
「じゃあ、先生の伴侶は永遠に僕というわけじゃないですか!!」
「何を言ってんだ?」
とはいえ、誤解は解けたようでマラカイは嬉しそうに台所に戻った。本当に何なんだあいつは。人生楽しそうだな。
師の訃報を流した弟子のその日の行動がウキウキで料理か・・・。
翌日。
私とイヴリン嬢は書類運びのために、二人で廊下を歩いていた。浮遊魔法で運ぶのだが、如何せん、つい先日の事件のせいで量が多いらしい。私は手持ち、イヴリン嬢は書類の束を宙に浮かべ、二人がかりで運んでいた。
「手伝ってくれてありがとう、アリオン君。会長はあまり人を入れたがらないから、書類がかさばったときはいつも私一人で運んでいるのよ」
「いえいえ」
重いものを魔法で持っているのに、イヴリンは流石貴族令嬢。歩き方や身のこなし方が洗練されている。そのまま私たちは雑談を交わすが、どこぞのエセ聖女と違って豹変することもなく。裏では平民を見下す可能性を危惧していたが、そんなこともない。
よし、試してみようか。
「イヴリン様は魔塔主のことをどう思っていますか?」
「魔塔主様?好印象を持っているわよ?制定するルールは私たちのことを思ってのことですし。周囲は悪く言ってるのは知っているのだけど、あまり深く知らないお方相手になんで悪く盛り上がれるのか、不思議に思ってるわ」
私に悪い印象を持っていない・・・?
雷に打たれたようなショックを受けた。
これは、確定だ。私はこの娘だったら納得が出来る!!
私の訃報まで、時間は少ない。なんとかイヴリン嬢とアウレリウスを結べることが出来れば・・・!!
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