誰が悪役(アリオン)を殺したか

ひまたろう

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犯人探求編

50.マラカイの帰還

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「イヴリンとの会話は随分楽しそうだったけど、収穫はあった?」
「まあ・・・。その・・・そうだな・・・」

 アウレリウスの婚約者にするには、少し難ありというのが分かったかな。彼女のあの目は、自分の研究のために自分もまた同性と結婚することを決意した人間の目だった。悲しい。99%婚約者として好条件であるにもかかわらず、最後の1%が致命的になっているタイプの令嬢だった。

 いや、まだ彼女も思春期なんだ。これから先、男性と結婚したいと思うこともあるかもしれない。私は決してあきらめない。あんな優秀で品のある人材を、あきらめたくはない!
 とはいえ、現段階では他の令嬢のほうが希望を持てるかもしれないな・・・。くそ、イヴリン嬢は私の悪口を言わない絶滅危惧種に等しい淑女だったのに!!

「アウレリウスはハンカチを何枚もらった?」
「もうすぐ三桁だね。最初から数える気がないから目測だけれど」
「モテモテだな。学外からも送られてるとはいえ、流石の人気だな。そんなに一生分のハンカチがあるなら私のは不要では・・・?」
「全部捨てるから!!僕はアリオン一筋だから!!」

 捨てるな。その中に良縁があるかもしれないだろ。

「貰った相手の名前は記録してるか?」
「してないよ。アリオンっていう名前を僕はちゃんと覚えているけれど」
「女性でアリオンか。珍しい。私の悪口は言ってるタイプか?」
「言ってないよ」
「それはよかった」

 そして無言になって森を歩く。アウレリウスは不機嫌になって私のうなじを執拗に摘まむ。不貞腐れているのを行動で示してきていた。

「アウレリウスは、男性か女性でいえばどっちがいい?」
「アリオンが男性だから男性だよ」
「そうか・・・」
「何の話?」

 すると令嬢の路線よりも、子息の路線を狙った方がいいかもしれない。男性が妃か。日本出身としては正直あんまりピンとは来ないが、アウレリウスの好みも考えてあげたい。私の悪口を言わず、人気は高く、能力も高い男性。

「・・・・・・・・・・・・・・・・マラカイ?」
「せんせー!!僕のこと呼びましたか~!?」

 いや、マラカイはないな。国が終わる。一瞬でも想像した自分を戒める。そのせいで余計な幻聴も聞こえたし。

「せんせーお久しぶりです!!もう、先生がいない孤独で死にそうで死にそうで!!先生がチューしてくれないと今にも死んでしまいます!!ささ、先生!!ちゅー」
「うわっ、どこから現れたんだお前は!!」

 目の前には突然金髪がドアップに移る。私の丁度目の前にこの男は転移したのだ。やがて、なすすべなく顎を掴まれて口づけをしてくる。荒々しい舌遣いだ。こいつとのキスはしたくてしていたわけではなかったが、しかしここ数か月、アウレリウスと一緒にいて、体液を押し付けようとしてくるこれまでの経緯を鑑みると、めちゃくちゃ安心するのである。
 マラカイに安心するとは世紀末か?

「変態ッ、アリオンから離れろ!!」

 アウレリウスは私とマラカイの間を縫うように防護幕を張ろうとした。しかし、不発に終わったようだ。

「ぷは、はは、残念だなぁ小僧。僕はこの二か月で先生と邪魔されずにイチャイチャするために、お前をどう無効にするかを研究していたんだ。そこで大人しく僕と先生の蜜月を見ていると良い」
「・・・ふーん。残念だけど、他にも手はあるに決まってるだろ」

 アウレリウスはブローチを触ると、普段は唱えない類の詠唱を唱える。やがて私の体が光に包まれる。

「接触するものを無差別に粉砕する守りだよ。アリオンに張った」

 試しにマラカイが私に触れようとしたところ、小さな爆発がマラカイを襲う。そのまま睨むようにしてアウレリウスを見た。

「・・・僕の先生によくも余計なことを。5分あればこんなのは解除できる。けど、その前にお前を殺す方が手っ取り早い」
「やってみなよ。壊す程度の低俗な魔法でやれるものならね」
「落ち着け!!頼むから双方とも矛を収めろ!!」

 一触即発の空気だ。マラカイも、帰ってくるなりアウレリウスの前で口づけをするのをいい加減にやめろ!!
 私の命令には従うのか、一応二人とも魔道具を下ろす。けれど、攻撃材料さえあれば殺すくらいの空気を纏っていた。

「まずはマラカイ。新生魔塔主の任ご苦労だった。よくぞ投げ出さなかったな。私はそれが一番驚いたぞ」
「ええ、僕はせんせーの忠実な奴隷ですから!!でも、こんな長期間離れるのは本当に辛かったんですよ?撫でてください」
「まだ私の体は光ってるな。この状態で触ったらただでは済まないだろうからやめておくよ」

 マラカイはアウレリウスのほうを向いて凄い形相で睨むが、しかしアウレリウスは鼻で笑っている。

「実はマラカイに頼みたいことが複数あるんだ。一度私の自室に来てくれ」
「アリオン!!年頃の人間なんだから僕以外の人間を部屋に招かないで!!」
「あー・・・。もう分かったから。今から私一人でとってくるから」

 今にも殴り合いそうな二人を後に、先ほどのキスで回復した分の魔力で私は自室を往復する。

「これだ。森で拾ったお守りなんだが、調べてきて欲しい」
「はーい!!持ち主が判明したらぶっ殺してきます!!」
「いらん!!持ち主の情報だけ私によこせ!!」

 以前アバラ・レオが見つけてきてくれた白いお守りを布に包んでマラカイに渡す。

「くんくん。このお守りから闇魔法の香りがするのですが」
「ああ、くれぐれも慎重にな。これを持った人間は結界を通れるように出来る細工がある可能性が高い。つまりは学園側の手引き者だな」
「すると一番怪しいのはドレイヴン氏じゃないですかー?前に僕が破壊した結界ありますよね。あれ、どっかで構築式を見たことあるなあって、先生がいなくて孤独な時に思い出したんですよ。そしたら、学生時代の授業で、一瞬だけあの人のを見たなあって」

 一瞬だけ見た相手の癖を記憶したのか。本当に、学園史上最高の天才は違うな。

「アウレリウス、ドレイヴン教授のことについてどれくらい知ってる?」
「平民出身の50歳。アリオンが魔塔主になる前から魔塔に来てた人っていうのまでは知ってるよね。でもその前は軍部の研究分野にいた人だ」
「研究分野というと、開発あたりか」
「学園卒業後に魔塔に行けるだけの実力がなかった奴らが、滑り止めで行くとこですね~」

 そこから魔塔に来て、学園に来たと。

「なんで魔塔に来られたんだ?誰かの推薦か?」
「移籍の理由は不明だけれど、校長先生の推薦で学園に来たらしいね。なんでも、かつて軍部と魔塔で研究をしていたものの、不祥事を起こした・・・っていう噂があるくらいかな」

 ますます怪しい。これはやはり、一度捜査をする必要がある。そういえば、もうすぐ星辰魔導議会があったな。あれが開かれるとき、教授陣は観客席を守るために全員がコロシアムのような会場で警備をするのが恒例だ。
 丁度、今年は学園創設史上最も注目株であると謳われる、我らがアウレリウスが出る。
 ・・・折角の授業参観に心苦しいが、そのタイミングでドレイヴンの家宅捜索をするしかないだろう。

 しかし捜査となると、それを言うとこの二人は乗ってくるだろうな。二人とも星辰魔導議会の主役に等しいから黙っておくべきだろうな・・・。
 今は誤魔化しておくか。

「慎重に情報を集めたい。しばらくはマラカイがそのお守りについて調べ終わるまで、おとなしくしていよう」
「はーい!!」
「うん、そうだね」

 そうして話し合いは一段落付く。

 やがて帰りたくないと駄々をこねたマラカイだったが、額に口づけをしてやるとなんとか帰った。一方でアウレリウスが不機嫌になったため、もう二度とこいつらを同席させたくないと思うのだった。

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