52 / 124
犯人探求編
51.岩の破片
しおりを挟む
「ちっ、ドレイヴンとかいう陰湿野郎の授業か。はーかったりいなあ」
「えー?王族にまであの教授のヤバい噂届いとるん!?よっぽどやで?それは」
「なんで解雇されてないんだろうね。まあ、学園内は治外法権状態だからか・・・」
次は魔法実技学。噂の渦中であるドレイヴン教授の授業だ。それはいい。まあいい。
私の両脇にはアバラ、レオ、ロギルジョーの三人がいた。ロギルジョーの奴、知らんうちにしれっと「最初から仲間ですが?」というポジションに加わってやがる。どっかいけ。まるで私が第二王子派に見えるだろうが。
くそ、前世も今世も学生時代は、ソロ行動が基本だったのだ。単純に周囲の面々に行動を合わせるというのが面倒くさい。よく女子たちが群れて動いているが、なんでそんな面倒なことが出来るのか、昔から不思議に思っていたんだ。
しかし、現在私がふらっと一人で動こうものなら、必ず誰かが付いてくる。友人同士で雑談をしたい気持ちは分からるんだが、別に教室についた後で喋ればよくないか?分からない、これだけは本当に世間の人間の気持ちが分からない。
「一説ではローゼルアリオンの存在が怖くて、ドレイヴン教授の奴は震えて、いじめも控えめだったんだけどな。亡くなったあたりから目に見えて随分調子に乗ってるらしいぜ。そこのアリオンがいい例だな」
ローゼルアリオンが怖いけれどローゼルアリオンが亡くなったからローゼルアリオンをいじめのターゲットにしているのか。すごいなドレイヴン教授。
「ああ、侯爵家でも話題に上がっていたね。意外と前魔塔主が抑えていた悪人って多いのかもしれないって」
「魔塔主が変わって、今はローゼルアリオン就任前の空気に近いらしいぜ。前ほど締め付けがなく自由だが、最近だと更に失踪者が増えている。元からこの学園での死傷者・失踪者は珍しくはなかったが、流石に最近はおかしいってな」
けれど表沙汰にはなっていない。誰かが情報を操作している?理事長が最高権力を持つこの学園で一体誰が?怪しいのは校長か?
話をしていると、やがて魔法実技学の外の演習場につく。本日は土魔法の演習らしい。レオはロギルジョーの顔を覗く。
「そういえばロギルジョーは何の魔法が得意なの?」
「雷だ。爆音、派手、早い。色付き攻撃魔法の中で雷はやっぱ最優だよな。守ってるだけのどっかの誰かさんとは格が違うんだぜ格が」
【千雷のロギルジョー】。
雷をまるで千の手のように操り、戦場を自在に操る。まさに王族に相応しい魔法といえるだろう。
「雷かあ。めっちゃ強いやん!確かに派手でかっこいいけれど、でもなんで王位継承権で会長さんに劣っとるん?」
「お、おお?歯に着せぬ言い方でさすがの俺も驚いたぞ。むかつくことに理由はいくつかあるんだけどな。最大の理由がローゼルアリオンだよ」
私?
「ローゼルアリオンは支配。基本的に魔法は属性ごとの相性があるけどな、闇魔法と戦えるのは兄貴クラスの盾か光魔法くらいしかないんだよ。万が一魔塔主と王家が争いになった場合、俺と兄貴、どっちが王位についてた方が安心できる?」
「会長さんの盾は闇魔法も防ぐん?なら会長さんのほうが圧倒的に安心やな」
「そう、雷を操っても俺ではローゼルアリオンに太刀打ちできない。王位というのは概念の話であって、周囲が不安に思わないかが問われる。他国への牽制で俺は最強だろうが、現状他国と揉め事が無い今では、国内に求められるのは防御なんだよ」
つまり、私の存在がアウレリウスを王位に近づけたと。なるほど。今、人生で初めて自分の闇魔法適性に感謝をした。
「うーん、じゃあ新しくマラカイ様が魔塔主になったけれど、するとロギルジョーは再び返り咲けるんじゃない?」
「ところがどっこい。次に来た魔塔主のマラカイは、破壊の天才。なんでも、壊すことなら色付き魔法全属性に適性があるという離れ業するらしいじゃねえか。すると、一点にしか特化していない俺は再び兄貴に劣るっていうイメージがぬぐえないわけよ」
つまり、今度はマラカイの存在がアウレリウスの王太子の座を守っているということなのか。マラカイには生涯魔塔主としての任に勤しんでもらおう。
「本当、気品あるとか平民に優しいとかでやたら人気だが、絶対ぇパフォーマンスだよなあいつ!気に食わねえぜ!」
「そういう僻み、が会長が選ばれる所以じゃないのかな」
「お、やんのかアリオン。兄貴の肩持つじゃねえか」
口調はあれだが、ジョークととらえたのか私の脇腹をつつく。アウレリウスと言い、気さくすぎないかこの国の王族。
そんな私たちの前に、突然一人の女子生徒が走ってきた。息を切らしており、髪も乱れている。よほど焦っている様子だ。
「お話し中にごめんね。この似顔絵の子、知らない?ヘレンっていうのだけれど」
「似顔絵の子・・・?」
女子生徒は安価な紙に、女性の似顔絵が描かれたそれを私たちに見せてくる。しかし見覚えはない。ほかの面々の顔を確認するが、同様に知らないようだった。
「この人が何か・・・?」
「先週の魔法実技学の講習中に、忘れ物を取りに行ったっきり帰ってこないの」
友人なのだろう。悲しそうな表情をしている。制服の胸元に刺繍はない。平民だ。すると、友人も平民の可能性が高い。制服の刺繍は赤で、3年生だろう。
「不躾な質問をごめんなさい。学園が嫌になったとか・・・?」
「もうすぐ星辰魔導議会で、この子は出場者として選ばれていたの。そんな栄誉のあることを目前にして、消えるとは思えないわ」
「すると、嫉妬した誰かが誘拐した、とか?」
女子生徒は悲しそうに、ゆっくりと首を縦に振る。
「何か分かったら教えてほしいの。些細なことで良いから」
それだけ言うと女子生徒は去っていく。
「治安悪ぅなってきたなあ。おチビも見た目ひょろいから気を付けや」
私はうなずく。最近妙に、平民という単語を聞く気がするな。
魔法実技学の授業中に消えた、か。担当教授はドレイヴン。
私をいじめのターゲットにしたものの、すべて跳ね返してやった奴だ。あれからも授業ではターゲットにされているものの、実技では一発、座学では全問正答を出している。そのせいか、最近同学年の奴らから英雄視されてきた。
何故ここまで私を執拗に狙うのか。性格が悪いだけと思っていたが、流石にそろそろ本格的に調査をすべきだな。
やがて私たちは魔法実技学の野外演習場にたどり着く。
「静粛に。授業を始める」
授業は始まった。本日の授業は土魔法。なんでも、ドレイヴンの適正も土らしい。故に本日は一段と気合が入っていた。
「・・・というようにして、岩を生成し、相手の急所を鋭く突きさす。アリオン、前に出ろ」
『うわー・・・。出たでおチビいじめ。懲りへんなあの人』
言われたとおりに前に出る。初めて覚える魔法をこれまで一発で成功し、何度も辛酸を舐めさせてきた。しかし、今回はドレイヴンの最も得意とする分野だ。少し体が強張る。そんな私に、冷酷な宣言をした。
「今からお前に岩の破片を打ち込む。お前も岩の破片を操ってすべて撃ち落とせ」
・・・・は?打ち込む?
いやいや、土魔法を習いたての一年生にさせる内容ではないだろ!?外したら大怪我するぞ!!
流石の過激な内容に周囲の面々も驚く。けれどドレイヴンはこちらを一瞥もせず、自身の魔道具の腕時計を触った。途端、空中には30にもわたる岩の破片が漂う。
クラスからは息をのむ声が聞こえる。これは、下手したら死ぬぞ。
仕方ない。私も同様に岩の破片を生成する。しかし、子供のこの体では15個が精一杯だった。およそ相手の半分。周囲の面々も私が半分程度しか出せないことに気が付き、特に女子生徒からは悲鳴が上がる。
やがてドレイヴンは自分の破片に魔力を通す。関係なく打ち込むつもりだ。
半分撃ち落とせば何とか致命傷は避けられるか?やってみるしかない。残り半分は体をよじって何とかダメージを減らすしか出来ないか。
今度こそ私を虚仮にできると確信したのだろう。教授はニヤリと笑う。破片は、私に向かって真っすぐ飛来する。
しかし岩の破片がこちらにあたる前に、誰かが割って入った。アバラだ。私を咄嗟に抱え、軌道から外れる。そして別方向からまた声がする。
「霧の囁き!!」
レオは得意の水魔法で私のいた場所に霧を張った。岩の破片の周辺に、湿気のエリアが作られる。そして。
「雷霆」
ロギルジョーが枝のように分かれる巨大な雷の塔を生成し、湿気のエリアに放つ。すると、水分を含んだ岩は雷によって砕け散った。元来岩に電気が通るかは微妙なところだが、水分を先に撒いたおかげで、砕くことが叶った。
周辺には焦げたような匂いが立ち込める。私は、アバラ・レオ・ロギルジョーの三人によって守られたのだ。私はアバラに抱えられたまま、皆の元へと戻る。レオも駆け寄ってきて私に怪我がないか心配してきた。
「ドレイヴン教授。これはさすがに授業を越えていませんか?」
ロギルジョーはドレイヴン教授に詰め寄った。しかし、王族に詰められているにも関わらず、顔色は変わらない。
「ふん、編入生は知らんだろうがな。入学式の際にマラカイ殿は言っていた。ここは他国でいう士官学校であると。この程度で何を騒々しい。我々の時代では普通だった」
「私はこの件を殺人未遂として上に報告もできますが?」
「・・・・・・・・チッ」
舌打ちをし、どこかに去っていく。やがて姿が見えなくなるとクラスメイト達はこちらに殺到した。
「大丈夫、アリオンくん!?」
「ごめんね、俺たち何もできなかった」
「あはは、大丈夫だよ。三人が守ってくれたから」
私は三人に礼を言うと、三人とも照れ臭そうにしていた。
「にしても、毎年いじめのターゲット作ってるらしいけど、アリオン君が手ごわいせいでエスカレートしてるわね」
「聞いた、気に食わない平民をターゲットにしているんでしょう?」
「自分も平民なのに、何が気に食わないんだろうね」
平民を狙う?
確かに、今の私は平民だ。
そういえばさっき、平民の女子生徒が友人を探していたが、おそらく行方不明の生徒は平民だっただろう。
誘拐された立木心愛も平民。
亡霊に誘拐されたアバラのルームメイトも平民。
幽霊騒ぎで誘拐未遂にあったアバラも平民。
そして殺されたローゼルアリオンは、平民融和政策をしていた。
私は、ドレイヴンの去った方向を凝視していた。
「えー?王族にまであの教授のヤバい噂届いとるん!?よっぽどやで?それは」
「なんで解雇されてないんだろうね。まあ、学園内は治外法権状態だからか・・・」
次は魔法実技学。噂の渦中であるドレイヴン教授の授業だ。それはいい。まあいい。
私の両脇にはアバラ、レオ、ロギルジョーの三人がいた。ロギルジョーの奴、知らんうちにしれっと「最初から仲間ですが?」というポジションに加わってやがる。どっかいけ。まるで私が第二王子派に見えるだろうが。
くそ、前世も今世も学生時代は、ソロ行動が基本だったのだ。単純に周囲の面々に行動を合わせるというのが面倒くさい。よく女子たちが群れて動いているが、なんでそんな面倒なことが出来るのか、昔から不思議に思っていたんだ。
しかし、現在私がふらっと一人で動こうものなら、必ず誰かが付いてくる。友人同士で雑談をしたい気持ちは分からるんだが、別に教室についた後で喋ればよくないか?分からない、これだけは本当に世間の人間の気持ちが分からない。
「一説ではローゼルアリオンの存在が怖くて、ドレイヴン教授の奴は震えて、いじめも控えめだったんだけどな。亡くなったあたりから目に見えて随分調子に乗ってるらしいぜ。そこのアリオンがいい例だな」
ローゼルアリオンが怖いけれどローゼルアリオンが亡くなったからローゼルアリオンをいじめのターゲットにしているのか。すごいなドレイヴン教授。
「ああ、侯爵家でも話題に上がっていたね。意外と前魔塔主が抑えていた悪人って多いのかもしれないって」
「魔塔主が変わって、今はローゼルアリオン就任前の空気に近いらしいぜ。前ほど締め付けがなく自由だが、最近だと更に失踪者が増えている。元からこの学園での死傷者・失踪者は珍しくはなかったが、流石に最近はおかしいってな」
けれど表沙汰にはなっていない。誰かが情報を操作している?理事長が最高権力を持つこの学園で一体誰が?怪しいのは校長か?
話をしていると、やがて魔法実技学の外の演習場につく。本日は土魔法の演習らしい。レオはロギルジョーの顔を覗く。
「そういえばロギルジョーは何の魔法が得意なの?」
「雷だ。爆音、派手、早い。色付き攻撃魔法の中で雷はやっぱ最優だよな。守ってるだけのどっかの誰かさんとは格が違うんだぜ格が」
【千雷のロギルジョー】。
雷をまるで千の手のように操り、戦場を自在に操る。まさに王族に相応しい魔法といえるだろう。
「雷かあ。めっちゃ強いやん!確かに派手でかっこいいけれど、でもなんで王位継承権で会長さんに劣っとるん?」
「お、おお?歯に着せぬ言い方でさすがの俺も驚いたぞ。むかつくことに理由はいくつかあるんだけどな。最大の理由がローゼルアリオンだよ」
私?
「ローゼルアリオンは支配。基本的に魔法は属性ごとの相性があるけどな、闇魔法と戦えるのは兄貴クラスの盾か光魔法くらいしかないんだよ。万が一魔塔主と王家が争いになった場合、俺と兄貴、どっちが王位についてた方が安心できる?」
「会長さんの盾は闇魔法も防ぐん?なら会長さんのほうが圧倒的に安心やな」
「そう、雷を操っても俺ではローゼルアリオンに太刀打ちできない。王位というのは概念の話であって、周囲が不安に思わないかが問われる。他国への牽制で俺は最強だろうが、現状他国と揉め事が無い今では、国内に求められるのは防御なんだよ」
つまり、私の存在がアウレリウスを王位に近づけたと。なるほど。今、人生で初めて自分の闇魔法適性に感謝をした。
「うーん、じゃあ新しくマラカイ様が魔塔主になったけれど、するとロギルジョーは再び返り咲けるんじゃない?」
「ところがどっこい。次に来た魔塔主のマラカイは、破壊の天才。なんでも、壊すことなら色付き魔法全属性に適性があるという離れ業するらしいじゃねえか。すると、一点にしか特化していない俺は再び兄貴に劣るっていうイメージがぬぐえないわけよ」
つまり、今度はマラカイの存在がアウレリウスの王太子の座を守っているということなのか。マラカイには生涯魔塔主としての任に勤しんでもらおう。
「本当、気品あるとか平民に優しいとかでやたら人気だが、絶対ぇパフォーマンスだよなあいつ!気に食わねえぜ!」
「そういう僻み、が会長が選ばれる所以じゃないのかな」
「お、やんのかアリオン。兄貴の肩持つじゃねえか」
口調はあれだが、ジョークととらえたのか私の脇腹をつつく。アウレリウスと言い、気さくすぎないかこの国の王族。
そんな私たちの前に、突然一人の女子生徒が走ってきた。息を切らしており、髪も乱れている。よほど焦っている様子だ。
「お話し中にごめんね。この似顔絵の子、知らない?ヘレンっていうのだけれど」
「似顔絵の子・・・?」
女子生徒は安価な紙に、女性の似顔絵が描かれたそれを私たちに見せてくる。しかし見覚えはない。ほかの面々の顔を確認するが、同様に知らないようだった。
「この人が何か・・・?」
「先週の魔法実技学の講習中に、忘れ物を取りに行ったっきり帰ってこないの」
友人なのだろう。悲しそうな表情をしている。制服の胸元に刺繍はない。平民だ。すると、友人も平民の可能性が高い。制服の刺繍は赤で、3年生だろう。
「不躾な質問をごめんなさい。学園が嫌になったとか・・・?」
「もうすぐ星辰魔導議会で、この子は出場者として選ばれていたの。そんな栄誉のあることを目前にして、消えるとは思えないわ」
「すると、嫉妬した誰かが誘拐した、とか?」
女子生徒は悲しそうに、ゆっくりと首を縦に振る。
「何か分かったら教えてほしいの。些細なことで良いから」
それだけ言うと女子生徒は去っていく。
「治安悪ぅなってきたなあ。おチビも見た目ひょろいから気を付けや」
私はうなずく。最近妙に、平民という単語を聞く気がするな。
魔法実技学の授業中に消えた、か。担当教授はドレイヴン。
私をいじめのターゲットにしたものの、すべて跳ね返してやった奴だ。あれからも授業ではターゲットにされているものの、実技では一発、座学では全問正答を出している。そのせいか、最近同学年の奴らから英雄視されてきた。
何故ここまで私を執拗に狙うのか。性格が悪いだけと思っていたが、流石にそろそろ本格的に調査をすべきだな。
やがて私たちは魔法実技学の野外演習場にたどり着く。
「静粛に。授業を始める」
授業は始まった。本日の授業は土魔法。なんでも、ドレイヴンの適正も土らしい。故に本日は一段と気合が入っていた。
「・・・というようにして、岩を生成し、相手の急所を鋭く突きさす。アリオン、前に出ろ」
『うわー・・・。出たでおチビいじめ。懲りへんなあの人』
言われたとおりに前に出る。初めて覚える魔法をこれまで一発で成功し、何度も辛酸を舐めさせてきた。しかし、今回はドレイヴンの最も得意とする分野だ。少し体が強張る。そんな私に、冷酷な宣言をした。
「今からお前に岩の破片を打ち込む。お前も岩の破片を操ってすべて撃ち落とせ」
・・・・は?打ち込む?
いやいや、土魔法を習いたての一年生にさせる内容ではないだろ!?外したら大怪我するぞ!!
流石の過激な内容に周囲の面々も驚く。けれどドレイヴンはこちらを一瞥もせず、自身の魔道具の腕時計を触った。途端、空中には30にもわたる岩の破片が漂う。
クラスからは息をのむ声が聞こえる。これは、下手したら死ぬぞ。
仕方ない。私も同様に岩の破片を生成する。しかし、子供のこの体では15個が精一杯だった。およそ相手の半分。周囲の面々も私が半分程度しか出せないことに気が付き、特に女子生徒からは悲鳴が上がる。
やがてドレイヴンは自分の破片に魔力を通す。関係なく打ち込むつもりだ。
半分撃ち落とせば何とか致命傷は避けられるか?やってみるしかない。残り半分は体をよじって何とかダメージを減らすしか出来ないか。
今度こそ私を虚仮にできると確信したのだろう。教授はニヤリと笑う。破片は、私に向かって真っすぐ飛来する。
しかし岩の破片がこちらにあたる前に、誰かが割って入った。アバラだ。私を咄嗟に抱え、軌道から外れる。そして別方向からまた声がする。
「霧の囁き!!」
レオは得意の水魔法で私のいた場所に霧を張った。岩の破片の周辺に、湿気のエリアが作られる。そして。
「雷霆」
ロギルジョーが枝のように分かれる巨大な雷の塔を生成し、湿気のエリアに放つ。すると、水分を含んだ岩は雷によって砕け散った。元来岩に電気が通るかは微妙なところだが、水分を先に撒いたおかげで、砕くことが叶った。
周辺には焦げたような匂いが立ち込める。私は、アバラ・レオ・ロギルジョーの三人によって守られたのだ。私はアバラに抱えられたまま、皆の元へと戻る。レオも駆け寄ってきて私に怪我がないか心配してきた。
「ドレイヴン教授。これはさすがに授業を越えていませんか?」
ロギルジョーはドレイヴン教授に詰め寄った。しかし、王族に詰められているにも関わらず、顔色は変わらない。
「ふん、編入生は知らんだろうがな。入学式の際にマラカイ殿は言っていた。ここは他国でいう士官学校であると。この程度で何を騒々しい。我々の時代では普通だった」
「私はこの件を殺人未遂として上に報告もできますが?」
「・・・・・・・・チッ」
舌打ちをし、どこかに去っていく。やがて姿が見えなくなるとクラスメイト達はこちらに殺到した。
「大丈夫、アリオンくん!?」
「ごめんね、俺たち何もできなかった」
「あはは、大丈夫だよ。三人が守ってくれたから」
私は三人に礼を言うと、三人とも照れ臭そうにしていた。
「にしても、毎年いじめのターゲット作ってるらしいけど、アリオン君が手ごわいせいでエスカレートしてるわね」
「聞いた、気に食わない平民をターゲットにしているんでしょう?」
「自分も平民なのに、何が気に食わないんだろうね」
平民を狙う?
確かに、今の私は平民だ。
そういえばさっき、平民の女子生徒が友人を探していたが、おそらく行方不明の生徒は平民だっただろう。
誘拐された立木心愛も平民。
亡霊に誘拐されたアバラのルームメイトも平民。
幽霊騒ぎで誘拐未遂にあったアバラも平民。
そして殺されたローゼルアリオンは、平民融和政策をしていた。
私は、ドレイヴンの去った方向を凝視していた。
4
あなたにおすすめの小説
ラストダンスは僕と
中屋沙鳥
BL
ブランシャール公爵令息エティエンヌは三男坊の気楽さから、領地で植物の品種改良をして生きるつもりだった。しかし、第二王子パトリックに気に入られて婚約者候補になってしまう。側近候補と一緒にそれなりに仲良く学院に通っていたが、ある日聖女候補の男爵令嬢アンヌが転入してきて……/王子×公爵令息/異世界転生を匂わせていますが、作品中では明らかになりません。完結しました。
オメガ転生。
桜
BL
残業三昧でヘトヘトになりながらの帰宅途中。乗り合わせたバスがまさかのトンネル内の火災事故に遭ってしまう。
そして…………
気がつけば、男児の姿に…
双子の妹は、まさかの悪役令嬢?それって一家破滅フラグだよね!
破滅回避の奮闘劇の幕開けだ!!
俺の婚約者は悪役令息ですか?
SEKISUI
BL
結婚まで後1年
女性が好きで何とか婚約破棄したい子爵家のウルフロ一レン
ウルフローレンをこよなく愛する婚約者
ウルフローレンを好き好ぎて24時間一緒に居たい
そんな婚約者に振り回されるウルフローレンは突っ込みが止まらない
婚約破棄させた愛し合う2人にザマァされた俺。とその後
結人
BL
王太子妃になるために頑張ってた公爵家の三男アランが愛する2人の愛でザマァされ…溺愛される話。
※男しかいない世界で男同士でも結婚できます。子供はなんかしたら作ることができます。きっと…。
全5話完結。予約更新します。
第十王子は天然侍従には敵わない。
きっせつ
BL
「婚約破棄させて頂きます。」
学園の卒業パーティーで始まった九人の令嬢による兄王子達の断罪を頭が痛くなる思いで第十王子ツェーンは見ていた。突如、その断罪により九人の王子が失脚し、ツェーンは王太子へと位が引き上げになったが……。どうしても王になりたくない王子とそんな王子を慕うド天然ワンコな侍従の偽装婚約から始まる勘違いとすれ違い(考え方の)のボーイズラブコメディ…の予定。※R 15。本番なし。
悪役令息に転生した俺は推しの為に舞台から退場する
スノウマン(ユッキー)
BL
前世の記憶を思い出したアレクシスは悪役令息に転生したことに気づく。このままでは推しである義弟ノアが世界を救った後も幸せになれない未来を迎えてしまう。それを回避する為に、俺は舞台から退場することを選んだ。全てを燃やし尽くす事で。
そんな俺の行動によってノアが俺に執着することになるとも知らずに。
婚約破棄されたから能力隠すのやめまーすw
ミクリ21
BL
婚約破棄されたエドワードは、実は秘密をもっていた。それを知らない転生ヒロインは見事に王太子をゲットした。しかし、のちにこれが王太子とヒロインのざまぁに繋がる。
軽く説明
★シンシア…乙女ゲームに転生したヒロイン。自分が主人公だと思っている。
★エドワード…転生者だけど乙女ゲームの世界だとは知らない。本当の主人公です。
【完結】星に焦がれて
白(しろ)
BL
気付いたら八年間囲われてた話、する? わんこ執着攻め×鈍感受け
「お、前、いつから…?」
「最初からだよ。初めて見た時から俺はお前のことが好きだった」
僕、アルデバラン・スタクにはどうしても敵わない男がいた。
家柄も、センスも、才能も、全てを持って生まれてきた天才、シリウス・ルーヴだ。
僕たちは十歳の頃王立の魔法学園で出会った。
シリウスは天才だ。だけど性格は無鉄砲で無計画で大雑把でとにかく甘えた、それに加えて我儘と来た。それに比べて僕は冷静で落ち着いていて、体よりも先に頭が働くタイプだったから気が付けば周りの大人たちの策略にはめられてシリウスの世話係を任されることになっていた。
二人組を作る時も、食事の時も、部屋だって同じのまま十八で学園を卒業する年まで僕たちは常に一緒に居て──そしてそれは就職先でも同じだった。
配属された辺境の地でも僕はシリウスの世話を任され、日々を慌ただしく過ごしていたそんなある日、国境の森に魔物が発生した。それを掃討すべく現場に向かうと何やら魔物の様子がおかしいことに気が付く。
その原因を突き止めたシリウスが掃討に当たったのだが、魔物の攻撃を受けてしまい重傷を負ってしまう。
初めて見るシリウスの姿に僕は動揺し、どうしようもなく不安だった。目を覚ますまでの間何をしていていも気になっていた男が三日振りに目を覚ました時、異変が起きた。
「…シリウス?」
「アルはさ、優しいから」
背中はベッドに押し付けられて、目の前には見たことが無い顔をしたシリウスがいた。
いつだって一等星のように煌めいていた瞳が、仄暗い熱で潤んでいた。とても友人に向ける目では、声では無かった。
「──俺のこと拒めないでしょ?」
おりてきた熱を拒む術を、僕は持っていなかった。
その日を境に、僕たちの関係は変わった。でも、僕にはどうしてシリウスがそんなことをしたのかがわからなかった。
これは気付かないうちに八年間囲われて、向けられている愛の大きさに気付かないまますったもんだする二人のお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる