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犯人探求編
52.星辰魔導議会①
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星辰魔導議会の日がやってきた。私は朝からアウレリウスの部屋にいる。
「・・・ハンカチ。受け取ってくれ」
恐る恐るアウレリウスにハンカチを手渡した。何度もアバラに教えられ、何度も手に針を刺しながら作った。しかし、所詮素人。アウレリウスから貰った羽をモチーフにしたはずなのに、とんでもなく歪なものが出来上がった。アバラには涙目で爆笑されたが、今の私にはこれが限界だったのだ。
アウレリウスは私の訪問を知り、なおかつハンカチをくれることを知るとその顔が喜色に染まる。
「ありがとう、本当にありがとうアリオン・・・」
ただのハンカチに過ぎないのに、まるで至宝を手にしたようにアウレリウスは感動していた。手に持って嬉しそうに感想をつぶやく。
「可愛いニンジンだね」
「羽根だが・・・?」
「羽根?」
アウレリウスは刺繍をじっと見た。やがて少しだけ離して見る。今度は角度を変えてみた。
「・・・・・・・・・・・かわいい羽根だね」
「やめろ!!自分が不器用なのはよくわかってるんだ!やっぱり作り直す!!」
「嫌だ!!これはもう僕に所有権が移っているから、絶対に返さない!!」
ハンカチを抱え、私から守る。
「でも、魔塔の主なんて呼ばれて魔法界の頂点にまで立ったあのアリオンが、手先が不器用だなんて・・・ふふ、面白いね」
「うるさい!!もう二度と作らないからな!!」
アウレリウスの部屋の片隅に視線をチラッとやると、大量の布切れが山になっていた。その隣には暖炉がある。私のより遥かに繊細で豪華な装飾をされているだろうハンカチを、そんな雑に・・・。しかも本当に燃料にするつもりだ。いやまあ、確かにあんなにあったとて処理するしか道はないだろうが。貴族などから貰ったものを、売ったり寄付するわけにもいかないからな。
おそらくあの山の中で一番下手くそなのは私のハンカチだろう。アウレリウスはクリスマスにサンタからプレゼントをもらった子供の用にはしゃいでいるが、嬉しい半分、そんなので喜ばせている自分が一番恥ずかしい。
なんだろう、慣れない裁縫を頑張って、子供のゼッケンをつける父親ってこういう気分だったんだな。今から開かれるのは正確には日本でいう体育祭なんだろうが、あまりにアウレリウス一強過ぎて授業参観の気分にしかなれない。
「見ているからな。今日のお前の雄姿」
「・・・うん!!絶対にアリオンに良いところを見せて、格好いいって思ってもらうからね!!」
私の手を掴み、上下に振ってきた。
やがて私たちは教室の方向へ向かい、互いの場所へ分かれていく。一人で観客席に向かって歩いていると、物陰から手を振る人物がいた。
『せんせ~。来てください~』
マラカイだ。こんな外で私を呼ぶとは一体何事だ。
基本的に星辰魔導議会では魔塔主が来ることは必須ではない。しかし、圧倒的な実力者がいる場合に限り会場を守るために馳せ参じる。まさに今年がその年になる。アウレリウスは守りに特化しているが、しかし実力者ということでマラカイが出ざるを得なかった。
マラカイは物陰に私を引っ張る。
「先生、こんなとこでごめんなさい。急遽お知らせしたいことがありまして」
緊急事態以外に念話を使うなと言ってあるので、こうして会いに来たのだろう。厳命するまであいつからのマシンガン念話で鬱になりかけたからだ。
別に私から依頼した案件だったら使ってくれて構わないのだが、「今度念話を私用に使ったら二度とお前と口を聞かんからな」と言って以来、律義に対面するようにしているのだ。
「以前預かったお守りを調べた結果、ドレイヴン教授の痕跡が残っていました。先生の予想通り、結界をくぐる合図の物品ということでしょう」
ドレイヴン、やはり。
「前に暗部組織が先生のピカピカ光る魔法を食らったのに生きながらえていたことがあったでしょう。その際に、これを使ったようです」
それはアバラも証言していた。私はあの時、全力を出し切って場の音を拾うのが限界だった。故に、実際に使うところ事態は目撃していない。
「なんとこれ、身代わりの効果を持っているんです」
「身代わり?」
つまり、傷を肩代わりするということか?仮にそんなものがあってポンポン作れるのなら、王族の不死鳥の守りよりも遥かに優れていないか?
「いえ、代償が重いことが分かりました。これを持つ者は致命傷を受けても、蘇るのです。けれど、持ち主の『最も愛している人間』に、受けた傷を負わせる。つまり、身近な者を犠牲にすることで生きながらえるアイテムです」
それは、なんと醜いアイテムだろう。自分が生きながらえるために最も親しいものを殺すことを厭わないとは。
「お守りが砕けぬ限り何度でも使えるようです。せんせーも気を付けてくださいね?ぜーったい危ないことはしないでくださいね?」
「大丈夫だから、お前もそろそろ出番だろ?行ってこい」
「じゃあ行ってきますのちゅーください♡」
「さてと、一年は向こうだったかな」
唇を近づけてくるマラカイを無視して私は会場に進む。
「あ、アリオンやっと来た!席、とってあるよ」
アバラ・レオ・ロギルジョーのいつもの三人が、既に座って開始を待ちわびていた。
円形の建造物が、太陽の光を遮って巨大な影を落としていた。石造りの外壁は長き歴史と、無数の戦いを物語るかのように、風雨に晒され、ところどころ欠けている。そして中央に広がるのは円形のアリーナ。三年生たちはあの場所で戦いを広げるのだ。
「おお、兄貴たちが入ってきたな」
アウレリウスの赤い髪はよく目立つ。観客たちは一斉に我が国の王子の登場に湧き上がっていた。すごいな、私の時は歴史に残るレベルの罵声だったのにな。笑顔で観客に手を振るアウレリウスは流石、生まれながらの王族だ。これから魔法での戦闘が始まるだろうに、まるで彼の戴冠式を見に来たかのような圧倒的存在感。主役の存在を一手に引き受け、それと戦うことを考えなくてはならない周囲の三年達は居心地が悪そうだった。
やがてマラカイ、校長の順で簡単な開幕の挨拶が終わり、トーナメントということで早速初戦が始まった。
初戦はアウレリウスの戦いだ。相手の三年生は誰だか知らないが、圧倒的アウェイの空気に、この距離からでもわかるほどに震えていた。
「あのお相手さん、可哀そうだね。僕が彼の立場だったら心が折れて、リタイアするかな」
「一応この戦闘では、無礼講ではあるから傷つけても不敬には問われないんだがな。頭で分かってても心は追い付かんだろうなあ」
レオとロギルジョーが冷静に観察する。分かるぞ、名もなき三年生。会場全員がアウェイになる気持ち。凄くわかるぞ。私に至っては罵声だったからな。そんな中、圧倒的勝利を収めてブーイングに変えていったのは、中々滑稽だったな。
やがて、始まった。
名もなき三年生はアウレリウスに対して水魔法を放つ。しかし、当然アウレリウスには通用しない。防護幕を張り、魔法を防ぐたびに観客席から感嘆の声が上がる。しかしアウレリウスは特段長引かせるつもりはないようだ。
「紅蓮」
まるで彼岸花のような炎の花が会場にいくつも咲く。相手が水系統なのに炎を使うとは。しかし名もなき三年の水魔法は、焦るあまりか防御も追いつかず、それどころか水の盾が蒸発する始末。
やがて、三年生の魔道具が爆ぜた。
「やめ!!勝者アウレリウス!!」
一分も経たないあっという間の決着に、会場は一瞬の静寂を挟んで歓声が上がった。アウレリウスは観客席に再び王族らしく上品に手を振っているが、よく観察するとその視線は動いている。
これは、私を探しているな?
一方アバラは隣のレオに話しかける。
「なあなあ、教授たちが観客席の前に、均等に立っとるやん。あれはなんなん?」
「アバラは初めて見る?あれは結界だよ。万が一観客に魔法が飛ばないようにね。出場者たちの守りもしてるんだよ」
「ほーん。全教授が勢ぞろいやんな。あ、あそこにおるの、ドレイヴン教授やな」
アバラは自分たちから右にいるドレイヴン教授を指さす。業務に励んでくれているようで何よりだ。
次の対戦に沸くアバラ達を横目に、私は静かに席を立った。
「・・・ハンカチ。受け取ってくれ」
恐る恐るアウレリウスにハンカチを手渡した。何度もアバラに教えられ、何度も手に針を刺しながら作った。しかし、所詮素人。アウレリウスから貰った羽をモチーフにしたはずなのに、とんでもなく歪なものが出来上がった。アバラには涙目で爆笑されたが、今の私にはこれが限界だったのだ。
アウレリウスは私の訪問を知り、なおかつハンカチをくれることを知るとその顔が喜色に染まる。
「ありがとう、本当にありがとうアリオン・・・」
ただのハンカチに過ぎないのに、まるで至宝を手にしたようにアウレリウスは感動していた。手に持って嬉しそうに感想をつぶやく。
「可愛いニンジンだね」
「羽根だが・・・?」
「羽根?」
アウレリウスは刺繍をじっと見た。やがて少しだけ離して見る。今度は角度を変えてみた。
「・・・・・・・・・・・かわいい羽根だね」
「やめろ!!自分が不器用なのはよくわかってるんだ!やっぱり作り直す!!」
「嫌だ!!これはもう僕に所有権が移っているから、絶対に返さない!!」
ハンカチを抱え、私から守る。
「でも、魔塔の主なんて呼ばれて魔法界の頂点にまで立ったあのアリオンが、手先が不器用だなんて・・・ふふ、面白いね」
「うるさい!!もう二度と作らないからな!!」
アウレリウスの部屋の片隅に視線をチラッとやると、大量の布切れが山になっていた。その隣には暖炉がある。私のより遥かに繊細で豪華な装飾をされているだろうハンカチを、そんな雑に・・・。しかも本当に燃料にするつもりだ。いやまあ、確かにあんなにあったとて処理するしか道はないだろうが。貴族などから貰ったものを、売ったり寄付するわけにもいかないからな。
おそらくあの山の中で一番下手くそなのは私のハンカチだろう。アウレリウスはクリスマスにサンタからプレゼントをもらった子供の用にはしゃいでいるが、嬉しい半分、そんなので喜ばせている自分が一番恥ずかしい。
なんだろう、慣れない裁縫を頑張って、子供のゼッケンをつける父親ってこういう気分だったんだな。今から開かれるのは正確には日本でいう体育祭なんだろうが、あまりにアウレリウス一強過ぎて授業参観の気分にしかなれない。
「見ているからな。今日のお前の雄姿」
「・・・うん!!絶対にアリオンに良いところを見せて、格好いいって思ってもらうからね!!」
私の手を掴み、上下に振ってきた。
やがて私たちは教室の方向へ向かい、互いの場所へ分かれていく。一人で観客席に向かって歩いていると、物陰から手を振る人物がいた。
『せんせ~。来てください~』
マラカイだ。こんな外で私を呼ぶとは一体何事だ。
基本的に星辰魔導議会では魔塔主が来ることは必須ではない。しかし、圧倒的な実力者がいる場合に限り会場を守るために馳せ参じる。まさに今年がその年になる。アウレリウスは守りに特化しているが、しかし実力者ということでマラカイが出ざるを得なかった。
マラカイは物陰に私を引っ張る。
「先生、こんなとこでごめんなさい。急遽お知らせしたいことがありまして」
緊急事態以外に念話を使うなと言ってあるので、こうして会いに来たのだろう。厳命するまであいつからのマシンガン念話で鬱になりかけたからだ。
別に私から依頼した案件だったら使ってくれて構わないのだが、「今度念話を私用に使ったら二度とお前と口を聞かんからな」と言って以来、律義に対面するようにしているのだ。
「以前預かったお守りを調べた結果、ドレイヴン教授の痕跡が残っていました。先生の予想通り、結界をくぐる合図の物品ということでしょう」
ドレイヴン、やはり。
「前に暗部組織が先生のピカピカ光る魔法を食らったのに生きながらえていたことがあったでしょう。その際に、これを使ったようです」
それはアバラも証言していた。私はあの時、全力を出し切って場の音を拾うのが限界だった。故に、実際に使うところ事態は目撃していない。
「なんとこれ、身代わりの効果を持っているんです」
「身代わり?」
つまり、傷を肩代わりするということか?仮にそんなものがあってポンポン作れるのなら、王族の不死鳥の守りよりも遥かに優れていないか?
「いえ、代償が重いことが分かりました。これを持つ者は致命傷を受けても、蘇るのです。けれど、持ち主の『最も愛している人間』に、受けた傷を負わせる。つまり、身近な者を犠牲にすることで生きながらえるアイテムです」
それは、なんと醜いアイテムだろう。自分が生きながらえるために最も親しいものを殺すことを厭わないとは。
「お守りが砕けぬ限り何度でも使えるようです。せんせーも気を付けてくださいね?ぜーったい危ないことはしないでくださいね?」
「大丈夫だから、お前もそろそろ出番だろ?行ってこい」
「じゃあ行ってきますのちゅーください♡」
「さてと、一年は向こうだったかな」
唇を近づけてくるマラカイを無視して私は会場に進む。
「あ、アリオンやっと来た!席、とってあるよ」
アバラ・レオ・ロギルジョーのいつもの三人が、既に座って開始を待ちわびていた。
円形の建造物が、太陽の光を遮って巨大な影を落としていた。石造りの外壁は長き歴史と、無数の戦いを物語るかのように、風雨に晒され、ところどころ欠けている。そして中央に広がるのは円形のアリーナ。三年生たちはあの場所で戦いを広げるのだ。
「おお、兄貴たちが入ってきたな」
アウレリウスの赤い髪はよく目立つ。観客たちは一斉に我が国の王子の登場に湧き上がっていた。すごいな、私の時は歴史に残るレベルの罵声だったのにな。笑顔で観客に手を振るアウレリウスは流石、生まれながらの王族だ。これから魔法での戦闘が始まるだろうに、まるで彼の戴冠式を見に来たかのような圧倒的存在感。主役の存在を一手に引き受け、それと戦うことを考えなくてはならない周囲の三年達は居心地が悪そうだった。
やがてマラカイ、校長の順で簡単な開幕の挨拶が終わり、トーナメントということで早速初戦が始まった。
初戦はアウレリウスの戦いだ。相手の三年生は誰だか知らないが、圧倒的アウェイの空気に、この距離からでもわかるほどに震えていた。
「あのお相手さん、可哀そうだね。僕が彼の立場だったら心が折れて、リタイアするかな」
「一応この戦闘では、無礼講ではあるから傷つけても不敬には問われないんだがな。頭で分かってても心は追い付かんだろうなあ」
レオとロギルジョーが冷静に観察する。分かるぞ、名もなき三年生。会場全員がアウェイになる気持ち。凄くわかるぞ。私に至っては罵声だったからな。そんな中、圧倒的勝利を収めてブーイングに変えていったのは、中々滑稽だったな。
やがて、始まった。
名もなき三年生はアウレリウスに対して水魔法を放つ。しかし、当然アウレリウスには通用しない。防護幕を張り、魔法を防ぐたびに観客席から感嘆の声が上がる。しかしアウレリウスは特段長引かせるつもりはないようだ。
「紅蓮」
まるで彼岸花のような炎の花が会場にいくつも咲く。相手が水系統なのに炎を使うとは。しかし名もなき三年の水魔法は、焦るあまりか防御も追いつかず、それどころか水の盾が蒸発する始末。
やがて、三年生の魔道具が爆ぜた。
「やめ!!勝者アウレリウス!!」
一分も経たないあっという間の決着に、会場は一瞬の静寂を挟んで歓声が上がった。アウレリウスは観客席に再び王族らしく上品に手を振っているが、よく観察するとその視線は動いている。
これは、私を探しているな?
一方アバラは隣のレオに話しかける。
「なあなあ、教授たちが観客席の前に、均等に立っとるやん。あれはなんなん?」
「アバラは初めて見る?あれは結界だよ。万が一観客に魔法が飛ばないようにね。出場者たちの守りもしてるんだよ」
「ほーん。全教授が勢ぞろいやんな。あ、あそこにおるの、ドレイヴン教授やな」
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