誰が悪役(アリオン)を殺したか

ひまたろう

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犯人究明編

63.犯人は誰だ

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「では不出来な我が弟子よ。早速お前に任務を言い渡す。クリスマスにアウレリウスが欲しがりそうなものを挙げるがいい」
「クリスマス・・・?星辰の祝祭の贈り物の話か?あんたのお古の品とかだったらなんでも喜ぶと思うぜ?」
「クリスマスプレゼントに中古を渡すたわけがどこにいる!お前のお宅のサンタさんは子供にお古を渡す変人だったのか!?」
「あんた兄貴が関わると本当に面倒くさいな!」

 ふむ、文房具は消耗品故に渡してもいいのだが、私と同じブランドを使っていたとなるとかなり丈夫な品々なのだ。衣類はサイズがあるし好みもあるし、アクセサリーは王族故に周囲から変な誤解を受ける可能性がある。

「一応確認するが、あんたと兄貴は恋仲なのか?それとも疑似親子関係なのか?」
「疑似とはなんだ。私は親子と思っているが、あの子からはその、のっぴ切らない事情によってつがいと思われてる」
「お互いの認識が随分歪んでないか?」

 ロギルジョーは溜め息をつき、話を続ける。なんだその、事情聴取中に相手が余計な話をするような警察みたいな呆れ方は。

「弟子になった以上は、あんたが王妃になるのも手助けしてやるよ。どうにもあんた、口と態度が悪いだけで中身は悪い奴じゃないし。その怪我だって、俺を庇ったのが発端だしな」

 イヴリン嬢と言いレオと言いロギルジョーと言い、どうして妙に私をここまで王妃に推すのか。こんな悪評だらけの男を妃にして、アウレリウスに何のメリットもないというに。

「それでさっきのプレゼントの話だがな、髪紐はどうだ?消耗品な上に、あんたともお揃いに出来るだろ?」
「髪紐」

 今の私は髪が短いため付けていないが、しかし大人の姿の時は長い髪を三つ編みにしていたため髪を結っていた。そしてアウレリウスも髪がやや長めのため、後ろの方は結ってる。

「髪紐・・・!!良いアイディアではないか。不肖弟子。褒めて遣わす。では次にアウレリウスの好きな色について・・・」
「兄貴の話はもういいよ!!先にこれからのことを打合せしたいんだけど!?」

 アウレリウスの話題は一旦中断し、新たに弟子となったロギルジョーの扱いについて相談する。何がネックかというと、マラカイとアウレリウスという相性最悪な会議の場に、さらにこのロギルジョーを突っ込めば、より混沌とするためだ。なおかつ、アウレリウスも自分ではなく弟の方を新たに弟子に取ったと知れば、確実に拗ねるだろう。マラカイは言うまでもない、たぶん殺しに来る。

「お前はマラカイとアウレリウスから師弟契約を気取られぬように私に協力しろ。さもなくば殺されるからな」
「だよな・・・。でも、そういう危険を冒してでも弟子になりたかったんだ。どんな結末になっても絶対後悔はしねえよ」

 相当肝の据わったやつである。
 犯人の調査に協力を申し出てくれたということで、ここまでの調査結果の情報を共有する。学園に犯人がいるだろうこと、学園への潜入、アウレリウスとの経緯、軍部との戦い、それら知りえた情報を話す。

「・・・なるほど、あんたも相当大変だったんだな。それであんたは、誰を疑ってるんだ?」
「今のところ怪しいのは校長あたりと思っている」
「そうか?話を聞くに、怪しい人間がわんさかいるだろうが」

 ロギルジョーは私のベッドの空いているスペースに座る。こいつの推理は中々見どころがあるため、私は静かに続きを促す。

「一人目。マラカイ殿。聞いた限りかなり怪しい。特に殺人の手段においては、この人以上に細工が出来る人間がいないよな。この人によって証拠品を回収できたのなら、捏造することだって十分可能だった」
「・・・けれど動機がない」
「分からねえぜ?魔塔主の座を狙っていた可能性だって十分にある。ああいうタイプの読めない人間は、腹の内も読みにくいものだ」

 確かに理屈として通っているものの、しかしマラカイのこれまでの彼の行動が嘘とは到底思えなかった。

「二人目、ジェルド教授。この人を味方と判断するのは時期尚早だ。確かにあの人の選んだ平民は全員軍部に行かず、各所で頭角を現している。平民に優しいという立ち位置ではローゼルアリオンと一緒かもしれないが、しかしあんたと性格的に対立していた事実も確かだ。それに思想云々ではなく、そろそろ結婚させられかねないから殺した線だって濃厚だろう?」
「まあ、確かにな」

 理論的に別の視点で諭されてみれば確かにまだ怪しい立ち位置にいる。あいつの一面を知って段々とほだされかけてきたが、しかし白と断定するのは早いだろう。

「三人目、ロージ副会長。まあ、こちらは理由はジェルド教授と一緒だな。あんたを嫌っていた以上、容疑者としては濃厚だ。今は意見が変わったとしても、過去はそうではなかった。四人目、立木心愛。光魔法の使い手は代々闇魔法の使い手を本能で毛嫌いするらしいじゃねえか。だから忍び込んで殺した。王城であいつが転移を使っているところを見たこともあるからな。あんたが殺された時期近辺では兄貴の制服を借りてうろついていたようだから、容疑者としてはちゃんと入っている」

 ロギルジョーは現段階で怪しい人間をポンポンとあげていった。

「あんた、根はかなり優しいからつい情で思考を弄っちまうタイプだろ。俺が冷静な相談役として機能してやるよ。殺された人間はつい冷静な観点を見失っちまうからな。仕方のないことだけどよ」
「お前、意外と役に立つんだな」
「意外とは余計だ!!」

 ともかく、殺人事件の共有をしたことで、我々の関係をどうしていくかの地盤は固まった。私はマラカイ・アウレリウスの手を借りて情報を集めながら、ロギルジョーにこっそり相談を持ち掛ける。中々良い弟子を入手することが出来たように思う。

「それにしても、これを考えた黒幕は中々頭が切れるな。手口がうまいんだ」
「手口がうまい?」
「そう、通常殺人事件とは、ばれないようにするのが鉄則だと思うだろ?いかに死体を見つからないようにするか、いかに自分が疑われないようにするか。けれど、それは素人の考えなんだよ。そうやって動けば、やがて犯行が可能な人間が絞られる。本当にばれない殺人っていうのは、
「・・・つまり、誰でも犯行可能な条件を作っておいて、一切隠し立てをしない、ということか?」
「そう、容疑者が二人以上いるだけで、真実は迷宮入りする。それが三人、四人と増えるほど、手出しが出来ねえ。全員をひっ捕らえることはできねえからな。けれど逆に考えると、殺人犯はさっき上げた面々の中に紛れていると俺は思うね」

 先ほど挙げた人物とはマラカイ、ジェルド、ロージ、立木心愛か。全員犯行が可能そうで、私を殺すには全員致命的な問題を抱えている気がする。もっと他に犯人がいるのでは私は予想していたが・・・。

「・・・随分範囲を絞るのが早くないか?ほかの教授陣だって十分怪しいだろう」
「あくまでただの目安だよ。でもあんたにとって関係が薄い人間ほど、殺意だって薄くなるだろ」
「まあ、一理はある」
「・・・けどな、もう一人、やけに気になる人物がいるんだよな」

 言いづらそうに、ロギルジョーは口を手で押さえながら言うべきかを迷っている。そこまで言うのなら全部言ってくれた方がいいだろう。

「怒らないか?」
「ああ、怒らない」
「兄貴。・・・・・・おい、バカ、怒らない約束だろ!!」

 その単語が聞こえた瞬間、手元にあった枕を全力でぶつけた。ロギルジョーは何とか枕をキャッチし、二度とこっちに投げられないように強く抱えた。

「私はアウレリウスを二度と疑わないと誓っている!たとえあの子が犯人であったとしても、許すと決めている!!」
「でも一応話は聞いて行ってくれ!現在のこの状況、一番誰にとって都合がいいかだよ!!焦がれている人物が婚約関係からフリーになることを達成し、自分の婚約者の聖女は姿をくらまし、想い人は自分と仲睦まじく暮らしているこの状況!!現段階で一番幸福を享受してんのが兄貴なんだよ!!」
「私と一緒に楽しく暮らすのがアウレリウスにとっての一番の幸せということか!!貴様、殺人事件の容疑者を洗い出すと見せかけて、いいこと言うではないか!!許す」

 良いことを言ってはくれたものの、アウレリウスが犯人は絶対に違う。殺人をしておいてあれほど憎しみに囚われた様子で学園に怨念を向けるというのは、流石に無理だと私にもわかる。前世・魔塔で散々人の演技を見抜いてきたこの私を、例え王族であっても10代でしかないアウレリウスが搔い潜るのは不可能であると断言する。

「なんか、下手に兄貴のことディスると、とんでもなく面倒ってことが分かったぜ・・・」
「ああ、最悪殺すから気をつけろ」
「勝手に親面しているうえに、親馬鹿恥ずかしくないの?」

 そうして私たちの議論後半戦も一旦終わる。そうして時は過ぎ、冬期休暇がやってきた。

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