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犯人究明編
66.婚約者
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縁結びの公園に来たら、ジェルドと遭遇した。先ほどまで、この男には私を殺す動機があるかもしれないという話をしていたところなので、心臓が飛び出るくらい驚く。
ロギルジョーはまだまだ発展途上の魔法使いだ。念話は使えるものの、正直パスが安定しない。しかし、緊急事態であるために私は念話を使用する。
『どうする!?殺人犯が話しかけてきたぞ!!』
『いやだから、まだわかんねえから!けど、俺に任せとけ。こういう時のために俺がいるんだからな』
ロギルジョーは認識阻害の効果を持つ変装眼鏡を付けているが、それを一瞬だけ外す。するとジェルドはロギルジョーと私という組み合わせに驚いた。
「・・・つまりはお前たちは二人でここに来たのか?・・・そうか、お前たちそういう関係だったのか」
「違う、違うんだ!!こいつが下町を歩くのは初めてって言うから、案内しているだけだ!!」
ジェルドに私たちの関係を勘違いされ、ロギルジョーは一生懸命否定する。まあ確かに縁結びに二人で来ていたら誰だって勘違いもしよう。
私は軽い挨拶としてジェルドに話しかける。
「ジェルド教授とここでお会いできてうれしいです。縁結びと聞いたのですが、教授はどうしてここに?」
『でたな、猫かぶりローゼルアリオン』
ロギルジョーの茶々入れ念話を無視し、私はじっとジェルドを見る。するとジェルドは居心地悪そうにする。その隙を逃さず、ロギルジョーは攻めの姿勢を取る。
「聞いた話では婚約者はローゼルアリオンなんですよね?相手はお亡くなりになられたばかりでしょうに、どうしてここへ?」
直球勝負である。この手の直球質問は、正体を隠している私にはどうしても出来なかった話題である。特にロギルジョーは天性の空気感を纏っており、踏み込んだ質問でも探っているように感じさせない才能がある。逆に私みたいなのがすると、天気の話でさえ裏がありそうだからな。
私に出来るのは、ロギルジョーと手を組んでるとは思わせないこと。
「ちょっと、ロギルジョー!!ジェルド教授にだって新しい恋はあるよ!!教授、お邪魔して本当にごめんなさい。僕たちは去りますね」
「ええー?でも俺は気になるぜ?あの堅物教授が恋愛なんてよ!気になって夜しか眠れねえぜ」
「それはあんまり気になってないっていうことでしょ!ほら、行くよ!!」
「嫌だ!!」
私は背負われながらロギルジョーの首を軽く絞める。やがて騒がしい私たちに人目が集まる。すると、真面目なお前であれば、そのまま去るという選択肢は取れないだろう?
思惑はあたり、ジェルドは深いため息をつく。
「別に、他に懸想する相手はいない。かなり前にはここに来て結んだこともあったが、偶然通りかかったときに懐かしくなって見に来ただけだ。邪推はするな」
「嘘だ、あの堅物ジェルド教授が誰かに恋心を抱くわけが・・・!!」
「アリオンから見た俺はそう見えるのか?・・・まだ16歳の頃の、運命の相手があんなのだと知って間もないころの話だ」
ジェルドは自分が結んだだろう方向を見る。私たちもつられて同じ方向に視線をやった。青空が広がるなか、光る樹が生い茂り、赤いリボンが風と共に揺れていた。結んだ本人の生真面目さ故か、あの一か所だけ、左右の長さを完璧にそろえられている。ジェルドもかつてはそこに思いを託したのだろう。自分が結ばれる相手が、自分が好くに足る人間であってほしいと。
「・・・その婚約相手がローゼルアリオンなんですよね」
「そうだな。・・・だからこの樹がもたらす良縁なんぞ俺は信じてはない」
そう言い終えるジェルドからは、何かしら寂しい空気が漂っていた。深堀りする気満々だった私たちは、その雰囲気に当てられ、不思議と口を塞いでしまう。
『動機が誰かへの片思いの線は、たぶんねえな』
『ああ、私もそう思う。本当に散歩でもしに来た様子だな』
「ジェルド教授が結んだのは、あちらなんですよね?僕も近くで見ていいでしょうか」
「面白い物でもない。現に、当時結んだときは子供の頃のアウレリウス殿下に遭遇したしな」
今は外であるため、ジェルドはアウレリウスを敬称で呼ぶ。
「当時10歳だったのに、それはもう、つまらないものを見る目で見られたよ。『婚約者がいるのに願掛けとは、相手に失礼では?』とでも言いたげだった」
「兄貴はローゼルアリオンに好意的だからな。既に婚約者っていう縁が出来ている状態でここに来るということは、あんたが新たな縁を結びに来たように見えて、無礼だと思ったんだろうな」
「まったく、王族とは外面でもあんなのにも敬意を払わなくてはならないとは。理解に苦しむ」
『ステイステイ!落ち着け、暴力は絶対にやめろ!!あんた足を怪我してなかったら完全に殴りに行ってただろ!!』
『たわけ!!誹謗中傷されたから怒ったのではなく、アウレリウスの目を疑った発言に怒っているんだ!!』
それにしてもアウレリウスは10歳の段階で私に婚約者がいた情報を得ていたのか。それなのに、どういう思いでここに通っていたのだろう。
『片思いしている相手には、既に婚約者がいたんだ。兄貴からすると相当辛かっただろうな。唯一救いがあるとすれば、二人は不仲だったこと。だからあんたらの婚約が無事に破棄されるように樹に祈りを捧げてたんだと思う。今思うと、もはや呪いの域だな』
「あいつとの婚約は、家同士が決めたもので俺にはどうすることも出来んかったよ。だが、本来であればこの冬あたりに俺たちは結婚するはずだったんだ」
・・・え?初耳だが?
とはいえ私たちも互いに24歳といういい年齢。両者乗り気ではないということで、この時期まで延ばしに延ばしていたが、そろそろ・・・という話にはなっていたのだろう。私にも伝えろ。なんで当事者の私を蚊帳の外にする。
「ローゼルアリオンが生きていれば、もうすぐ夫婦になっていた、と」
ロギルジョーは呟き、アウレリウス専用と言われた樹を見る。
『あの樹、本当に効果あるんじゃ・・・?やっぱり何もかも兄貴の都合の良いように世界が回ってやがる』
「しかし死んだためにそんな未来は無くなった。まあ、俺には結婚生活なんて想像してみても、イメージ一つ浮かばんかったがな」
「けど、ジェルド殿は婚約破棄の正式書類はまだ提出してないよな?」
ロギルジョーの冷静な新事実の指摘にジェルドは息をのみ、私は驚愕した。
な、なんだと?
『嘘を付け、以前こいつが私の墓参りに来た時に、婚約破棄の書類は提出したと聞いてるぞ?』
『婚約は王家が承認した以上は、王家に破棄の書類を出す必要があるよな。けど、調べたんだがそんな書類は見当たらなかった。確認したが、父上もそんなもの受け取ってないと昨日言っていたぞ』
『つまりこいつと私は、書類上はまだ婚約状態ということか!?』
ローゼルアリオンが死んだ以上は実質的に破談状態だろうが、仮に私がこの先正体を明かすことがあろうものならこいつと私は婚約状態が復活するということになる。なんということだ。
「教授はお墓参りで既に書類を提出したとおっしゃってませんでしたか?」
「・・・面倒だから提出していなかっただけだ。もうすぐ、やる」
すこしばつの悪そうにジェルドは顔を背ける。いつも仕事は最速でこなすこの男が、面倒だから後回しにした?破談の書面をすぐに出すと不都合な事実とはなんだ?例えば、破談にした途端に別の縁が出来るとか?
「・・・ひょっとして、ジェルド教授は生涯独身でいたいと思っているとか」
「・・・。まあ、実はというとそういうことだ。だからあいつとの婚約状態は俺にとって都合がいい」
ジェルドはモテるからな。私の死後に他の縁談も来ただろう。けれど、破談にしていない状況のおかげで何とか今の状態をキープできているということか。人の死を利用するな!!
しかしこれで、「誰かに懸想していたから私を殺そうとした」というラインは完全に無くなったように思う。話の辻褄も合っており、それどころか本当に、こいつは殺人事件とは無関係のような気もしてくる。
『いやいや、単純にあんたとの結婚は嫌だから殺したっていうラインが残ってるからな。絶対ぇに信頼はするなよ?』
『ああ、分かってるよ』
冷静で優秀な相談役だ。こいつがいなければここまでジェルドの深堀りは出来なかっただろう。
さて、いただける情報はこれくらいだろう。今が引き際のように思う。別の話題を尋ねるか。
「ところで教授、僕たちとある本を探しているのですが、ご存じないですか?」
「とある本?言ってみろ」
「不思議まぼろし動物図鑑です」
今までの面々と同様に、ジェルドもタイトルを聞いて私を凝視する。
「・・・そのあたりの本屋で売ってるだろう」
「子供向け本じゃないんです。れっきとした貴重な学術書なんです」
「あ、ああ。そういうことか」
顎に手を当てて考え込むジェルド。やがて心当たりがあるのか、ふと顔を上げる。
「禁書の闇市には、あるかもしれんな。とはいえ生徒である貴様らに勧められたものではないが」
「禁書の闇市?」
「あぶねえ本が公権力に隠れて集まってるところだよ。でも、そんな子供向けタイトルの本が闇市にあるか?」
公権力に隠れてということは、人から嫌われすぎて噂が集まらない私が知らないのも道理か。不思議まぼろし動物図鑑は、闇市で好まれるような、危険な生物についても記載されている可能性はある。すると、行ってみる価値はあるだろう。
「ロギルジョーは場所は分かる?今から行ってみようか」
「ああ、あそこは非合法な割に年柄年中やってるから今日もやってるだろ。今からいくか」
「待て、お前達だけでいかせるわけにいかん。俺も行く」
この場を後にしようとした私たちを止め、ジェルドは近寄る。曲がりなりにもこいつは指導者だ。生徒だけでいかせるわけにはいかないのだろう。断るのも不自然なため、私たちは顔を見あって頷く。
そして即席の三人パーティが出来たのだった。私たちは違法建築が並ぶエリアへと足を踏み入れていく。
ロギルジョーはまだまだ発展途上の魔法使いだ。念話は使えるものの、正直パスが安定しない。しかし、緊急事態であるために私は念話を使用する。
『どうする!?殺人犯が話しかけてきたぞ!!』
『いやだから、まだわかんねえから!けど、俺に任せとけ。こういう時のために俺がいるんだからな』
ロギルジョーは認識阻害の効果を持つ変装眼鏡を付けているが、それを一瞬だけ外す。するとジェルドはロギルジョーと私という組み合わせに驚いた。
「・・・つまりはお前たちは二人でここに来たのか?・・・そうか、お前たちそういう関係だったのか」
「違う、違うんだ!!こいつが下町を歩くのは初めてって言うから、案内しているだけだ!!」
ジェルドに私たちの関係を勘違いされ、ロギルジョーは一生懸命否定する。まあ確かに縁結びに二人で来ていたら誰だって勘違いもしよう。
私は軽い挨拶としてジェルドに話しかける。
「ジェルド教授とここでお会いできてうれしいです。縁結びと聞いたのですが、教授はどうしてここに?」
『でたな、猫かぶりローゼルアリオン』
ロギルジョーの茶々入れ念話を無視し、私はじっとジェルドを見る。するとジェルドは居心地悪そうにする。その隙を逃さず、ロギルジョーは攻めの姿勢を取る。
「聞いた話では婚約者はローゼルアリオンなんですよね?相手はお亡くなりになられたばかりでしょうに、どうしてここへ?」
直球勝負である。この手の直球質問は、正体を隠している私にはどうしても出来なかった話題である。特にロギルジョーは天性の空気感を纏っており、踏み込んだ質問でも探っているように感じさせない才能がある。逆に私みたいなのがすると、天気の話でさえ裏がありそうだからな。
私に出来るのは、ロギルジョーと手を組んでるとは思わせないこと。
「ちょっと、ロギルジョー!!ジェルド教授にだって新しい恋はあるよ!!教授、お邪魔して本当にごめんなさい。僕たちは去りますね」
「ええー?でも俺は気になるぜ?あの堅物教授が恋愛なんてよ!気になって夜しか眠れねえぜ」
「それはあんまり気になってないっていうことでしょ!ほら、行くよ!!」
「嫌だ!!」
私は背負われながらロギルジョーの首を軽く絞める。やがて騒がしい私たちに人目が集まる。すると、真面目なお前であれば、そのまま去るという選択肢は取れないだろう?
思惑はあたり、ジェルドは深いため息をつく。
「別に、他に懸想する相手はいない。かなり前にはここに来て結んだこともあったが、偶然通りかかったときに懐かしくなって見に来ただけだ。邪推はするな」
「嘘だ、あの堅物ジェルド教授が誰かに恋心を抱くわけが・・・!!」
「アリオンから見た俺はそう見えるのか?・・・まだ16歳の頃の、運命の相手があんなのだと知って間もないころの話だ」
ジェルドは自分が結んだだろう方向を見る。私たちもつられて同じ方向に視線をやった。青空が広がるなか、光る樹が生い茂り、赤いリボンが風と共に揺れていた。結んだ本人の生真面目さ故か、あの一か所だけ、左右の長さを完璧にそろえられている。ジェルドもかつてはそこに思いを託したのだろう。自分が結ばれる相手が、自分が好くに足る人間であってほしいと。
「・・・その婚約相手がローゼルアリオンなんですよね」
「そうだな。・・・だからこの樹がもたらす良縁なんぞ俺は信じてはない」
そう言い終えるジェルドからは、何かしら寂しい空気が漂っていた。深堀りする気満々だった私たちは、その雰囲気に当てられ、不思議と口を塞いでしまう。
『動機が誰かへの片思いの線は、たぶんねえな』
『ああ、私もそう思う。本当に散歩でもしに来た様子だな』
「ジェルド教授が結んだのは、あちらなんですよね?僕も近くで見ていいでしょうか」
「面白い物でもない。現に、当時結んだときは子供の頃のアウレリウス殿下に遭遇したしな」
今は外であるため、ジェルドはアウレリウスを敬称で呼ぶ。
「当時10歳だったのに、それはもう、つまらないものを見る目で見られたよ。『婚約者がいるのに願掛けとは、相手に失礼では?』とでも言いたげだった」
「兄貴はローゼルアリオンに好意的だからな。既に婚約者っていう縁が出来ている状態でここに来るということは、あんたが新たな縁を結びに来たように見えて、無礼だと思ったんだろうな」
「まったく、王族とは外面でもあんなのにも敬意を払わなくてはならないとは。理解に苦しむ」
『ステイステイ!落ち着け、暴力は絶対にやめろ!!あんた足を怪我してなかったら完全に殴りに行ってただろ!!』
『たわけ!!誹謗中傷されたから怒ったのではなく、アウレリウスの目を疑った発言に怒っているんだ!!』
それにしてもアウレリウスは10歳の段階で私に婚約者がいた情報を得ていたのか。それなのに、どういう思いでここに通っていたのだろう。
『片思いしている相手には、既に婚約者がいたんだ。兄貴からすると相当辛かっただろうな。唯一救いがあるとすれば、二人は不仲だったこと。だからあんたらの婚約が無事に破棄されるように樹に祈りを捧げてたんだと思う。今思うと、もはや呪いの域だな』
「あいつとの婚約は、家同士が決めたもので俺にはどうすることも出来んかったよ。だが、本来であればこの冬あたりに俺たちは結婚するはずだったんだ」
・・・え?初耳だが?
とはいえ私たちも互いに24歳といういい年齢。両者乗り気ではないということで、この時期まで延ばしに延ばしていたが、そろそろ・・・という話にはなっていたのだろう。私にも伝えろ。なんで当事者の私を蚊帳の外にする。
「ローゼルアリオンが生きていれば、もうすぐ夫婦になっていた、と」
ロギルジョーは呟き、アウレリウス専用と言われた樹を見る。
『あの樹、本当に効果あるんじゃ・・・?やっぱり何もかも兄貴の都合の良いように世界が回ってやがる』
「しかし死んだためにそんな未来は無くなった。まあ、俺には結婚生活なんて想像してみても、イメージ一つ浮かばんかったがな」
「けど、ジェルド殿は婚約破棄の正式書類はまだ提出してないよな?」
ロギルジョーの冷静な新事実の指摘にジェルドは息をのみ、私は驚愕した。
な、なんだと?
『嘘を付け、以前こいつが私の墓参りに来た時に、婚約破棄の書類は提出したと聞いてるぞ?』
『婚約は王家が承認した以上は、王家に破棄の書類を出す必要があるよな。けど、調べたんだがそんな書類は見当たらなかった。確認したが、父上もそんなもの受け取ってないと昨日言っていたぞ』
『つまりこいつと私は、書類上はまだ婚約状態ということか!?』
ローゼルアリオンが死んだ以上は実質的に破談状態だろうが、仮に私がこの先正体を明かすことがあろうものならこいつと私は婚約状態が復活するということになる。なんということだ。
「教授はお墓参りで既に書類を提出したとおっしゃってませんでしたか?」
「・・・面倒だから提出していなかっただけだ。もうすぐ、やる」
すこしばつの悪そうにジェルドは顔を背ける。いつも仕事は最速でこなすこの男が、面倒だから後回しにした?破談の書面をすぐに出すと不都合な事実とはなんだ?例えば、破談にした途端に別の縁が出来るとか?
「・・・ひょっとして、ジェルド教授は生涯独身でいたいと思っているとか」
「・・・。まあ、実はというとそういうことだ。だからあいつとの婚約状態は俺にとって都合がいい」
ジェルドはモテるからな。私の死後に他の縁談も来ただろう。けれど、破談にしていない状況のおかげで何とか今の状態をキープできているということか。人の死を利用するな!!
しかしこれで、「誰かに懸想していたから私を殺そうとした」というラインは完全に無くなったように思う。話の辻褄も合っており、それどころか本当に、こいつは殺人事件とは無関係のような気もしてくる。
『いやいや、単純にあんたとの結婚は嫌だから殺したっていうラインが残ってるからな。絶対ぇに信頼はするなよ?』
『ああ、分かってるよ』
冷静で優秀な相談役だ。こいつがいなければここまでジェルドの深堀りは出来なかっただろう。
さて、いただける情報はこれくらいだろう。今が引き際のように思う。別の話題を尋ねるか。
「ところで教授、僕たちとある本を探しているのですが、ご存じないですか?」
「とある本?言ってみろ」
「不思議まぼろし動物図鑑です」
今までの面々と同様に、ジェルドもタイトルを聞いて私を凝視する。
「・・・そのあたりの本屋で売ってるだろう」
「子供向け本じゃないんです。れっきとした貴重な学術書なんです」
「あ、ああ。そういうことか」
顎に手を当てて考え込むジェルド。やがて心当たりがあるのか、ふと顔を上げる。
「禁書の闇市には、あるかもしれんな。とはいえ生徒である貴様らに勧められたものではないが」
「禁書の闇市?」
「あぶねえ本が公権力に隠れて集まってるところだよ。でも、そんな子供向けタイトルの本が闇市にあるか?」
公権力に隠れてということは、人から嫌われすぎて噂が集まらない私が知らないのも道理か。不思議まぼろし動物図鑑は、闇市で好まれるような、危険な生物についても記載されている可能性はある。すると、行ってみる価値はあるだろう。
「ロギルジョーは場所は分かる?今から行ってみようか」
「ああ、あそこは非合法な割に年柄年中やってるから今日もやってるだろ。今からいくか」
「待て、お前達だけでいかせるわけにいかん。俺も行く」
この場を後にしようとした私たちを止め、ジェルドは近寄る。曲がりなりにもこいつは指導者だ。生徒だけでいかせるわけにはいかないのだろう。断るのも不自然なため、私たちは顔を見あって頷く。
そして即席の三人パーティが出来たのだった。私たちは違法建築が並ぶエリアへと足を踏み入れていく。
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