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犯人究明編
76.賭け
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「凄いです先輩!」
「はは、アリオンは分かりやすすぎるんだよ!」
勝てば相手への命令・契約が可能になるギャンブル。私はシンプルなブラックジャックを選択した。
ブラックジャックのルールは簡単だ。手持ちのカードを21に近づければいい。ただし、21を超えてはならない。引き分けを避けるために、スペード、ダイヤ、ハート、クローバーの順に優先して強いとされる。
互いの魔道具を場の中央に置くことで、賭博の魔法が発動される。召喚獣のように現れた魔法のディーラーが全てを進行していく。デッキ一式を使い切るまで、このディーラーは消えない。ランプの精霊のように上半身だけの存在で、公平に試合を進めていく。
「僕から持ち掛けたのですが、先輩は魔道具抜きに僕の真偽が分かるんですか?」
「ああ、俺様の脈拍読みは、魔法じゃねえからな。元からあった才能だよ。遠目からでも嘘は微細な振動で分かるんだ」
こいつ、化け物だな。そんな芸当、人間がたどり着ける境地なのか?
回を重ねるにつれて契約は重くなっていくため、初回は軽い。なお、本ルールの条件として必ず両者本気で挑むこと、また降りるの場合は、敗者への賭け命令が少し弱まるといった特徴がある。
「さて、初回だからな。契約塗り替え程の大きい命令は、最後の方にしか出来ないだろうから、小手調べだ。お前の得意魔法を言ってみろ」
「・・・闇魔法です」
ロキはその言葉を聞いて、驚愕に目を見開く。チッ、嘘はつけんからな。
「でも、僕は決して悪い用途で使ったことはありません。自分が正しいと思ったときにしか」
「あ、ああ。本当らしいな。びっくりしたぜ、よく生き延びてこられたな」
契約が軽い最初のほうは負けてやるつもりだったが、早速私の闇魔法という、痛いところを持っていかれた。こいつもこいつで、ステータスを把握して、私を確保後にどう傀儡にしようと計算しているのだろう。
「では、次に行きましょう」
先ほど使用したカードは消える。けれど、デッキ自体は変わらない。召喚獣のディーラーは私とロキに二枚ずつ配る。やがて互いに準備が整った。
「僕は16です」
「おっと俺様は18だ。はは、また勝っちまったな!」
ロキの勝利だ。さて、次は何が来るだろうか。
「じゃあアリオン。お前の家族構成を言ってみようか」
これは、万が一私が裏切った際に、人質を取れるメンバーの確認をしているのだと見た。契約を塗り替えられたらほぼ奴隷状態に出来るが、それでも確認するに越したことはないのだろう。
「両親と、弟が一人です」
「ふーん、まあ普通の家庭だな。けど、嘘の気配を感じたな?」
ロキは私の嘘に気が付き、睨む。そう、私は意図的に言っていないことがあった。
「息子がいます。とても、可愛い」
「そうか、息子がいるのか。そうか」
ロキは持っていた手札を捨てる。しかし、目をぱちぱちとして動きを止めた。
「息子?え?お前16歳だよな?」
「とても可愛いんです」
「え?」
「そう、世界一の自慢の息子です」
ロキはこの話を深堀りしたそうにしていたが、しかし契約の束縛力ではこれ以上は違反となる。故に押し黙った。
さて、私が息子の話をしたのは、立木心愛とこいつが情報をどれほど綿密に共有しているかの確認をするためだ。この分では、立木心愛は情報を渡していない。ロキの様子を見るに、私と立木心愛の王宮での接点も知らない様子だ。決して私は息子自慢をするためにこの話題を振ったのではないのである。「ひょっとして俺、やべえ奴をスカウトしようとしてないか?」と聞こえたが、そんなことはない。
さて、ここまでの二回戦で使用したカードは八枚。ゲームはデッキを使い切るまで続く。三回戦。今度は私が勝利を収めた。
「ああ、ブタで負けちまったぜ。で?お前の要求はなんだ?」
「実は探している本があるんです。『不思議まぼろし動物図鑑』という、可愛い動物が載っている本。どうしても読みたいんですが、何か知りませんか?」
「あっはっは!!そんなことかよ!!知ってるよ、だって、あれはうちのスカルノス家が保有してっからな!!」
まさか本当に情報を得られるとは思わず、私は固まった。孤児院にあっただろうそれは、スカルノス家に移動されていたのだ!まさか、ジェルドの孤児院予想、そこからロギルジョーの軍部情報から辿り着いた「可能性」が、まさかここで実を結ぶとは想像していなかった!
「いいぜ、契約を塗り替えられたら、うち来いよ!いくらでも見せてやるから」
「本当ですか!」
場所が分かっただけであまりにも大きな収穫だ。と同時に、私が発した命令が害意の無い物であったため、ロキは安堵し、大きく油断を見せる。
四回戦。私は自分の手が悪かったためにフォールドを選ぶ。ロキの勝ちだ。
「ふむ・・・。まだデッキのカサがあるな。けれど、段々命令の効力が大きくなっていくぜ。アリオン。アウレリウス王子の秘密を言え」
これは大きく出たな。ロギルジョーと契約を結んでいるのなら、アウレリウスのほうは言えるはずだと気が付いている。故に、私もこう返そう。
「アウレリウス殿下には最愛の父親がいます。そう、僕・・・」
「嘘つけーーーーーッ!!え、嘘をついてる脈拍じゃねえ。嘘だろ、ど、どういうことなんだ?」
「僕らは親子なんです。血のつながりはない、ね」
「え?養親ってこと?でもお前のほうが年下だよな?それも平民の。ど、ど、どういうこと・・・?」
けれど契約のディーラーは次の試合に行かずに微動だにしない。静かに私を指さした。
「内容的に、最初の質問と微妙にかぶってるせいで今のでは足りなかったようだ。もう一つ言ってもらおうか」
「あの子の私物は、僕の真似っ子をしています。僕が使った羽ペン、僕が使ったインク。アウレリウス王子は僕というパパが大好きなんです」
「うちの軍部、精神異常者は門前払いっていうルールがあるんだが、心の底から迷うな。やべえわお前」
「けれどあの子は僕のことを慕いすぎているので、一度互いの関係を見直そうと思っていたところです。話は変わるんですけど民主化っていいですよね。僕も民主化の良さについて、昔はよく思いを馳せていました。民主化万歳!!」
「もういいわ!!黙れ!!次行くぞ!!」
余りにアウレリウス寄りの発言をすると、スカウトの話が流れかねないので思い出したかのように民主化万歳に話をもっていった。危なかった。完全に親馬鹿がにじみ出てしまっていた。
とはいえ。回数を重ねることで準備は整ってきた。
ロキの目的は私の契約を塗り替えること。故に、ここまでは情報を引き出すという、あくまで些細なことに命令権を使用している。
ここからが本番だよ。大人の汚さを知らない小童め。
五回戦。
「20です」
「負けた、18だ」
契約も重くなっていく。複雑な命令でも下せるようになる。
「不思議まぼろし動物図鑑。今すぐ欲しいです」
「・・・!!」
ディーラーはロキを指さす。すると、ロキの手元には図鑑が収まっていた。年季の入ったもので、しかし丁重に扱っているのがよくわかる。ずっしり重いそれを、私は手に取る。
「随分強硬なことを言い出すからびっくりした。そんなにこれが欲しかったのか?」
にやけが止まらない。ようやく、ようやくこれを入手出来た!これに、番契約を破棄するヒントが載っているかもしれない!
私の歪んだ笑いに、ロキは怯む。
「・・・お前、そんなに動物が好きなのか?」
「いいえ。動物はそれほど好きではありません。だって、不思議と僕は動物から嫌われやすいので」
「じゃあどうして。まあいいや。次だな。ラストが近くなってきたな」
六回戦。いよいよラスト前だ。
「18」
「僕は19です。おや、僕の勝ちですね」
ロキは焦りだす。そろそろ勝って契約を塗り替えなくては、最悪私に妙な命令を下されれば抵抗が出来ない。その顔には余裕が無くなってきていた。私は正座を解き、胡坐をかく。そして足に肘をつき、頬に手を当てた。
「ではロキ。民主化計画について、貴様の知っていることを全部吐いて貰おうか。例えばそう、アジトの場所とか、なあ?」
偉そうな態度、ならびに口調の変わった私に驚愕する。
「お前、誰だ?さっきまでのアリオンと全然雰囲気がちげえ」
「質問権は私にある。言え」
自陣営を探る質問。
ここでロキはやっと、私が敵であると理解した。
故に、唇を噛んで口を閉じる。けれどそれはれっきとした契約違反。ディーラーはロキを指さし、やがてロキの前には地図が現れた。アークランド国の地図と、そこに赤いバツ印が載っている。
「ほお、ここが貴様らのアジトか。有益な情報、誠に感謝する」
「てめえ!!最初から俺様を騙すつもりだったんだな!?」
「小僧。お前は自分の才能である嘘発見に頼りすぎだ。故に、嘘でないと思った途端に安直に信じる癖があるな?そんなので上にのし上がっていけると思うなど、甚だしい」
魔道具は中央。しかし、これを奪って戦闘態勢に入ればディーラーによる鉄槌が待っている。故に、次の最終試合は互いに、必ず勝つ必要がある。
最終試合。
「私は20だ」
「19・・・な、なんで?なんで勝てねえ、なんで終盤になるほど勝てねえ!?イカサマなんてできねえはずだ!なのに、どうして・・・?」
「カード・カウンティングだよ。ギャンブルは運のゲームじゃない。頭を使うゲームだ」
「カード・カウンティング?」
ロキは知らないようで、呟いた声はか細く消える。
カード・カウンティング。イカサマではない、れっきとした技術だ。互いの手札の数字と記号を全て暗記し、やがてデッキの残り枚数の数字の配分の割合を計算する。確実に勝てる方法というわけではない。けれど、対策をしていない相手に対しては、地味に効力がある。
「つまりアンタは、これまでの試合のカードを全部暗記していたのか?ば、馬鹿な」
「別に難しくはないだろ。頭の中でカードの表を作って、埋めていけばいいだけだ。お前達馬鹿は脳の使い方の効率がてんで悪い。こんなもの、訓練すれば誰だって出来る」
カードを捨てると同時に、言葉も吐き捨てる。まるで処刑宣告を待ち受けるかのように、ロキは怯えながら私を見ている。
さて、ここでこいつを奴隷にすることもできるが、それをすると軍部の勘のいい奴に悟られる危険性があるな。すると、今回できるのはこれが限界だろう。
「私とぶつかった下りからすべてを忘れろ。私とお前は今日出会っていない。お前の取り巻きも記憶を失う」
ロキはうつろな目をして、最後にいた場所に戻ろうと、歩き出す。私も自身の魔道具を持って、何事もなかったかのように地上に身を戻す。軍部のアジトの地図は頭の中に叩き込み、燃やした。不思議まぼろし動物図鑑だけを手に持って、次の授業に間に合うように歩き出したのだった。
「はは、アリオンは分かりやすすぎるんだよ!」
勝てば相手への命令・契約が可能になるギャンブル。私はシンプルなブラックジャックを選択した。
ブラックジャックのルールは簡単だ。手持ちのカードを21に近づければいい。ただし、21を超えてはならない。引き分けを避けるために、スペード、ダイヤ、ハート、クローバーの順に優先して強いとされる。
互いの魔道具を場の中央に置くことで、賭博の魔法が発動される。召喚獣のように現れた魔法のディーラーが全てを進行していく。デッキ一式を使い切るまで、このディーラーは消えない。ランプの精霊のように上半身だけの存在で、公平に試合を進めていく。
「僕から持ち掛けたのですが、先輩は魔道具抜きに僕の真偽が分かるんですか?」
「ああ、俺様の脈拍読みは、魔法じゃねえからな。元からあった才能だよ。遠目からでも嘘は微細な振動で分かるんだ」
こいつ、化け物だな。そんな芸当、人間がたどり着ける境地なのか?
回を重ねるにつれて契約は重くなっていくため、初回は軽い。なお、本ルールの条件として必ず両者本気で挑むこと、また降りるの場合は、敗者への賭け命令が少し弱まるといった特徴がある。
「さて、初回だからな。契約塗り替え程の大きい命令は、最後の方にしか出来ないだろうから、小手調べだ。お前の得意魔法を言ってみろ」
「・・・闇魔法です」
ロキはその言葉を聞いて、驚愕に目を見開く。チッ、嘘はつけんからな。
「でも、僕は決して悪い用途で使ったことはありません。自分が正しいと思ったときにしか」
「あ、ああ。本当らしいな。びっくりしたぜ、よく生き延びてこられたな」
契約が軽い最初のほうは負けてやるつもりだったが、早速私の闇魔法という、痛いところを持っていかれた。こいつもこいつで、ステータスを把握して、私を確保後にどう傀儡にしようと計算しているのだろう。
「では、次に行きましょう」
先ほど使用したカードは消える。けれど、デッキ自体は変わらない。召喚獣のディーラーは私とロキに二枚ずつ配る。やがて互いに準備が整った。
「僕は16です」
「おっと俺様は18だ。はは、また勝っちまったな!」
ロキの勝利だ。さて、次は何が来るだろうか。
「じゃあアリオン。お前の家族構成を言ってみようか」
これは、万が一私が裏切った際に、人質を取れるメンバーの確認をしているのだと見た。契約を塗り替えられたらほぼ奴隷状態に出来るが、それでも確認するに越したことはないのだろう。
「両親と、弟が一人です」
「ふーん、まあ普通の家庭だな。けど、嘘の気配を感じたな?」
ロキは私の嘘に気が付き、睨む。そう、私は意図的に言っていないことがあった。
「息子がいます。とても、可愛い」
「そうか、息子がいるのか。そうか」
ロキは持っていた手札を捨てる。しかし、目をぱちぱちとして動きを止めた。
「息子?え?お前16歳だよな?」
「とても可愛いんです」
「え?」
「そう、世界一の自慢の息子です」
ロキはこの話を深堀りしたそうにしていたが、しかし契約の束縛力ではこれ以上は違反となる。故に押し黙った。
さて、私が息子の話をしたのは、立木心愛とこいつが情報をどれほど綿密に共有しているかの確認をするためだ。この分では、立木心愛は情報を渡していない。ロキの様子を見るに、私と立木心愛の王宮での接点も知らない様子だ。決して私は息子自慢をするためにこの話題を振ったのではないのである。「ひょっとして俺、やべえ奴をスカウトしようとしてないか?」と聞こえたが、そんなことはない。
さて、ここまでの二回戦で使用したカードは八枚。ゲームはデッキを使い切るまで続く。三回戦。今度は私が勝利を収めた。
「ああ、ブタで負けちまったぜ。で?お前の要求はなんだ?」
「実は探している本があるんです。『不思議まぼろし動物図鑑』という、可愛い動物が載っている本。どうしても読みたいんですが、何か知りませんか?」
「あっはっは!!そんなことかよ!!知ってるよ、だって、あれはうちのスカルノス家が保有してっからな!!」
まさか本当に情報を得られるとは思わず、私は固まった。孤児院にあっただろうそれは、スカルノス家に移動されていたのだ!まさか、ジェルドの孤児院予想、そこからロギルジョーの軍部情報から辿り着いた「可能性」が、まさかここで実を結ぶとは想像していなかった!
「いいぜ、契約を塗り替えられたら、うち来いよ!いくらでも見せてやるから」
「本当ですか!」
場所が分かっただけであまりにも大きな収穫だ。と同時に、私が発した命令が害意の無い物であったため、ロキは安堵し、大きく油断を見せる。
四回戦。私は自分の手が悪かったためにフォールドを選ぶ。ロキの勝ちだ。
「ふむ・・・。まだデッキのカサがあるな。けれど、段々命令の効力が大きくなっていくぜ。アリオン。アウレリウス王子の秘密を言え」
これは大きく出たな。ロギルジョーと契約を結んでいるのなら、アウレリウスのほうは言えるはずだと気が付いている。故に、私もこう返そう。
「アウレリウス殿下には最愛の父親がいます。そう、僕・・・」
「嘘つけーーーーーッ!!え、嘘をついてる脈拍じゃねえ。嘘だろ、ど、どういうことなんだ?」
「僕らは親子なんです。血のつながりはない、ね」
「え?養親ってこと?でもお前のほうが年下だよな?それも平民の。ど、ど、どういうこと・・・?」
けれど契約のディーラーは次の試合に行かずに微動だにしない。静かに私を指さした。
「内容的に、最初の質問と微妙にかぶってるせいで今のでは足りなかったようだ。もう一つ言ってもらおうか」
「あの子の私物は、僕の真似っ子をしています。僕が使った羽ペン、僕が使ったインク。アウレリウス王子は僕というパパが大好きなんです」
「うちの軍部、精神異常者は門前払いっていうルールがあるんだが、心の底から迷うな。やべえわお前」
「けれどあの子は僕のことを慕いすぎているので、一度互いの関係を見直そうと思っていたところです。話は変わるんですけど民主化っていいですよね。僕も民主化の良さについて、昔はよく思いを馳せていました。民主化万歳!!」
「もういいわ!!黙れ!!次行くぞ!!」
余りにアウレリウス寄りの発言をすると、スカウトの話が流れかねないので思い出したかのように民主化万歳に話をもっていった。危なかった。完全に親馬鹿がにじみ出てしまっていた。
とはいえ。回数を重ねることで準備は整ってきた。
ロキの目的は私の契約を塗り替えること。故に、ここまでは情報を引き出すという、あくまで些細なことに命令権を使用している。
ここからが本番だよ。大人の汚さを知らない小童め。
五回戦。
「20です」
「負けた、18だ」
契約も重くなっていく。複雑な命令でも下せるようになる。
「不思議まぼろし動物図鑑。今すぐ欲しいです」
「・・・!!」
ディーラーはロキを指さす。すると、ロキの手元には図鑑が収まっていた。年季の入ったもので、しかし丁重に扱っているのがよくわかる。ずっしり重いそれを、私は手に取る。
「随分強硬なことを言い出すからびっくりした。そんなにこれが欲しかったのか?」
にやけが止まらない。ようやく、ようやくこれを入手出来た!これに、番契約を破棄するヒントが載っているかもしれない!
私の歪んだ笑いに、ロキは怯む。
「・・・お前、そんなに動物が好きなのか?」
「いいえ。動物はそれほど好きではありません。だって、不思議と僕は動物から嫌われやすいので」
「じゃあどうして。まあいいや。次だな。ラストが近くなってきたな」
六回戦。いよいよラスト前だ。
「18」
「僕は19です。おや、僕の勝ちですね」
ロキは焦りだす。そろそろ勝って契約を塗り替えなくては、最悪私に妙な命令を下されれば抵抗が出来ない。その顔には余裕が無くなってきていた。私は正座を解き、胡坐をかく。そして足に肘をつき、頬に手を当てた。
「ではロキ。民主化計画について、貴様の知っていることを全部吐いて貰おうか。例えばそう、アジトの場所とか、なあ?」
偉そうな態度、ならびに口調の変わった私に驚愕する。
「お前、誰だ?さっきまでのアリオンと全然雰囲気がちげえ」
「質問権は私にある。言え」
自陣営を探る質問。
ここでロキはやっと、私が敵であると理解した。
故に、唇を噛んで口を閉じる。けれどそれはれっきとした契約違反。ディーラーはロキを指さし、やがてロキの前には地図が現れた。アークランド国の地図と、そこに赤いバツ印が載っている。
「ほお、ここが貴様らのアジトか。有益な情報、誠に感謝する」
「てめえ!!最初から俺様を騙すつもりだったんだな!?」
「小僧。お前は自分の才能である嘘発見に頼りすぎだ。故に、嘘でないと思った途端に安直に信じる癖があるな?そんなので上にのし上がっていけると思うなど、甚だしい」
魔道具は中央。しかし、これを奪って戦闘態勢に入ればディーラーによる鉄槌が待っている。故に、次の最終試合は互いに、必ず勝つ必要がある。
最終試合。
「私は20だ」
「19・・・な、なんで?なんで勝てねえ、なんで終盤になるほど勝てねえ!?イカサマなんてできねえはずだ!なのに、どうして・・・?」
「カード・カウンティングだよ。ギャンブルは運のゲームじゃない。頭を使うゲームだ」
「カード・カウンティング?」
ロキは知らないようで、呟いた声はか細く消える。
カード・カウンティング。イカサマではない、れっきとした技術だ。互いの手札の数字と記号を全て暗記し、やがてデッキの残り枚数の数字の配分の割合を計算する。確実に勝てる方法というわけではない。けれど、対策をしていない相手に対しては、地味に効力がある。
「つまりアンタは、これまでの試合のカードを全部暗記していたのか?ば、馬鹿な」
「別に難しくはないだろ。頭の中でカードの表を作って、埋めていけばいいだけだ。お前達馬鹿は脳の使い方の効率がてんで悪い。こんなもの、訓練すれば誰だって出来る」
カードを捨てると同時に、言葉も吐き捨てる。まるで処刑宣告を待ち受けるかのように、ロキは怯えながら私を見ている。
さて、ここでこいつを奴隷にすることもできるが、それをすると軍部の勘のいい奴に悟られる危険性があるな。すると、今回できるのはこれが限界だろう。
「私とぶつかった下りからすべてを忘れろ。私とお前は今日出会っていない。お前の取り巻きも記憶を失う」
ロキはうつろな目をして、最後にいた場所に戻ろうと、歩き出す。私も自身の魔道具を持って、何事もなかったかのように地上に身を戻す。軍部のアジトの地図は頭の中に叩き込み、燃やした。不思議まぼろし動物図鑑だけを手に持って、次の授業に間に合うように歩き出したのだった。
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