誰が悪役(アリオン)を殺したか

ひまたろう

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終章 空色の君を思う

94.羽根の返還※

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 プロポーズの答えを返す時が来た。

 学園は半壊し、寮もめちゃくちゃだ。私は王宮に行き、アウレリウスの自室に向かう。ローゼルアリオンの活躍は各メディアによって有名になっており、私は今では王太子を守るために姿を変えて潜入し、命を張った英雄扱いされているようだ。
 でも、誰から嫌われてももう落ち込まないようにしたのと同様に、褒められて浮かれることももうやめた。私はただ、大切な人たちにさえ信じてもらえればそれでいいんだ。

 思考を巡らして緊張をほぐしながら、アウレリウスの自室をノックする。すると、コンマ一秒で扉が開かれた。

「・・・まさかお前、ずっと扉の前に立っていたのか?」
「・・・・・・うん」

 私が問いかけると、アウレリウスは恥ずかしそうに頬を赤らめた。そして私の手を優しく包み、自室に招き入れる。

 客人に対して茶を入れるような余力もないようで、アウレリウスは私をベッドに誘導した。プロポーズの答えが欲しいのだろう。不安そうにしているので、私は優しく声をかける。

「おいで」

 私は両手を広げた。少し心配そうな顔をしていた彼は、私の行動に目を見開き、子犬のように飛びついた。

「アリオン、僕をこうして誘ってくれたって言うことは、そういうことでいいの?」
「・・・・・・」
「アリオン?」

 不安そうにこちらを見てくる。

「なあ、お前は私が王妃じゃないと駄目なのか?」
「うん」
「お前の父親には、なれないのか?」
「まだ望みがあると思ってたの?」

 少し顔を離し、訝し気な目を向けてくる。私の中身の年齢がもっと上ということを伝えられたらいいのだが・・・。いや、伝えてしまえばいいか。すべての問題が解決したんだ。こういうタイミングでこそ話すべきだろう。

「実はな、私は前世の記憶があるんだ」
「前世の記憶?アリオンは既婚者だった?恋人いた?体の関係は持ったことある?」

 それが真っ先に飛ぶ質問か?もっとこう、「前世って何」みたいに疑ったりしないのか?

「恋人歴は、ない。それはいいんだ、今は関係ない」
「それを聞いて安心したよ。ならこちらこそ、前世の話は関係ないよ。僕は今のアリオンが好きだから」
「あのな、私は前世では30代だから、それこそ今はもう、本当にお前の父親くらいの精神年齢で・・・」
「だから前世の話は関係ないから。それともそうやって僕から逃げるつもり?」

 顔が近い。とても綺麗な顔だ。ここ最近、アウレリウスといると落ち着かないことがある。以前は寿命が迫っていたことが原因だと思った。けれど、今も胸が早鐘を討つ。

「ねえ、アリオン。こうやって受け入れてくれたっていうことは、そういうことでいいの?」

 私は優しくアウレリウスの頭を撫でた。誤魔化すように。



 いいや、残念ながら、



 私は羽根を持ってきた。けれど、今渡しても必ず突き返される。



「アウレリウス、私を抱いてくれないか?」

 アウレリウスは性交の後、熟睡する癖がある。フェニックス自体がそういう習性を持つのだ。アウレリウスはそれをプロポーズの承諾と認識し、私を抱きしめた。

「好き、好き!アリオン、愛してる。世界一幸せな夫婦になろう。絶対にアリオンを幸せにしてみせるから」

 じゃれつきながら、キスの雨を降らす。この羽を返した後に正気に戻れば、今夜のことは彼の中で恥ずかしい思い出になるだろう。それは、とても寂しいけれど、でもそれでいい。

 最後の夜が始まった。

「大人の姿のアリオンと交わるのは初めてだね。あの姿もとても愛らしかったけれど、でもやっぱり僕はこの綺麗な空色が好きだよ」

 私の髪の束を掬って、キスをする。
 本当に、絵にかいたような王子様だ。立木心愛が入れ込むのもよくわかる。麗しの青年がこんなことをしてきたら、正気ではいられまい。

 私もアウレリウスの頬にキスをした。こちらから積極的になることはこれまで少なかったため、アウレリウスは分かりやすく照れている。先ほどまで王子然としていたのに、こういうところはまだまだ可愛らしい。

「・・・すると、こっちのアリオンの裸も初めて見られるのか。楽しみだね」
「そういわれると恥ずかしいからやめろ!」

 上着を脱がせ、下も脱がせてくる。私も脱ぐのを手伝ってやろうと、アウレリウスの服に手を伸ばした。しかし、自分が普段来ている適当な服とは違って構造が分からない。手間取っていると、笑う声がする。

「ふふ、いいよ。アリオンはそのまま不器用でいてくれれば、ふふ、ふふふ」
「うるさい!わ、私だって!」

 けれど余計訳が分からなくなる。アウレリウスは私の手をそっとどけ、自分でほどき始めた。

 互いに一糸まとわぬ状態になる。

「アリオン、とても綺麗だ」
「そ、そうか」

 ここで交わるのは初めてだが、天蓋が付いていることもあって不思議な気持ちになる。

「もう何度も交わってるのに、アリオンは照れ屋さんだね」
「いいから早く始めてくれ!肌寒いんだ!」

 季節は春。寒くはないのだが、恥ずかしいのだ。まじまじと見られるのが。

 準備のため、アウレリウスは私と自身の竿を擦り合わせ、手のひらで擦る。兜合わせだ。互いの敏感な場所が擦れているが、アウレリウスは不敵な笑みで私を見ている。段々と固くなっていき、相手の脈も感じられる。

「ん、----~~ッ!!」

 先に達したのは私だった。こういう刺激には慣れていない。故に、私の白い液でその手と竿は真っ白になっていた。

「抜け駆けずるいなあ。じゃあ、僕はアリオンの中を楽しむよ」

 まだ達していないせいで、限界まで張りつめているそれを、私の中に押し進める。

「あれ、体が成長したのか、いつもとまた違う感触だ」
「そ、うか?私は、全然、分からんが」
「前のアリオンは体が小さかったこともあったから少し罪悪感もあったけれど、今のアリオンだったら存分に動いても大丈夫だよね。よし、本気で行くから、僕にしがみついててね」

 たくましい背中に手を回し、けれど回しきれずに背中に指を立てる形になる。やがて腰を動かし始めた。

「う、ぁ、ぁ、ぁッ!!」
「今日は遠慮なく奥に出すから、覚悟しておいてね。赤ちゃんさえ作ってしまえば、アリオンはもう、絶対に、絶対に、絶対にッ、僕から離れられないから」

 熱を帯びる頭でよく把握が出来ないが、ふと、アウレリウスの目が異様な気がした。互いの指を絡ませ、ベッドの軋む音など気にせず全力でアウレリウスは腰を振っていた。

 やがて、アウレリウスはぴたりと腰をくっつけて私の奥に存分に子種を注ぐ。

「はぁ、はぁ、はぁ、よし。じゃあひっくり返すね。今度はアリオンを後ろから楽しみたいな」

 何度も、何度も、執拗に。絶対に孕ませるという意思を持って私を揺さぶる。


 やがて5回戦が終わったころ、今日の疲れもあってかアウレリウスは動きを止めた。

「むにゃ・・・アリオン・・・愛してる・・・」

 私を抱きしめ、満足そうに眠りにつく。

 完全に意識を閉ざしたのを見届け、私は自分のローブを漁った。そしてあらかじめ用意しておいた箱を取り出す。

 中には赤い羽根が入っている。アウレリウスから貰った宝物を巾着袋で返すのは忍びない。だから丁寧に箱を用意して、そこに収めて、返すことにした。

 そして用意しておいた別れの手紙を置いて私は着替え、部屋を後にした。

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